佐久市の「文化会館」建設の是非を問う住民投票の経緯と課題 伊藤久雄(認定NPOまちぽっと理事) イギリスのEU離脱問題から、日本においても国民投票(住民投票)のあり方に注目が 集まっている。私はさる 7 月 11 日から 12 日、日の出町の 6 人の町会議員皆さんの佐久市 行政視察に同行する機会をいただいた。 視察の目的の1つが、佐久市総合文化会館建設の是非を問う住民投票の経緯とその後の 課題について学ぶことであった。この視察では学ぶべきことが多かったが、その中で特に 印象に残ったことを簡単に記しておきたいと思う。 1.住民投票条例の議会における修正について 住民投票実施の経緯については、以下の資料を参照されたい。 ○ 資料1 佐久市総合文化会館建設に関する検討経過及び住民投票の実施について ○ 資料2 パブリックコメント(市民意見募集)の結果について ⇒PDF この経緯の中で、今後の住民投票条例のあり方を考える上で注目したいのが、平成 22 年 9 月の市議会臨時議会である。議会は、条例について1/2の成立要件を付す等の修正を行 った上で可決した。 ○ 平成 22 年 9 月 22 日付 資料3 広報佐久号外 ⇒PDF 議会が修正を行ったのは、平成 21 年 4 月の柳田新市長登場まで、議会は全会一致で総合 文化会館建設に賛成してきたという経緯があったからである。この修正点のうちの1つが、 1/2成立要件の付与であった。 ただし、成立要件を付与したものの、小平市の住民投票条例の修正とは異なり、かりに 投票率が1/2に満たない場合でも開票することを条例上明確にしたことである(条例の 但し書き)。 (成立要件等) 第13条 住民投票は、投票した者の総数が投票権を有する者の総数の2分の1に満たな いときは、成立しないものとする。ただし、住民投票が成立しない場合であっても、開 票作業を行えるものとする。 なお資料1のように、投票率は54.87%と過半数を超え、反対数が70%を超えた。 この結果を受けて、市長は建設を中止した。 2.予定地利用等 文化会館建設を中止したとき、残された課題が3点ほどあった。 ① 予定地の利用 建設予定地は、将来再び文化会館建設することがある場合に備えて、現在は「市民交 流ひろば」として利用されている。公園的利用だが、都市計画公園としての決定は行っ ていない。 ② 合併特例債 建設には合併特例債、約50億円を充てる予定だった。この50億円は他の事業に振 り替えたということであった。 ③ 文化振興 会館建設は資料1のように、1980年代から議論が始まり、建設基金が積み立てら れてきた(その中には市民からの寄附820万円がふくまれる)。その建設基金は現在「文 化振興基金」に振り替えられ、利息の運用で文化事業を行っているとのことである。 3.佐久市型情報公開(佐久市市民意見公募手続)と佐久市型論点整理手法 住民投票の実施に向けては、21回説明会が開催されている。この説明会については、 当日の質疑が翌日の12時までには「論点整理」としてまとめられ、次の説明会に配布す るという作業が繰り返された。 この成果を取り入れ、平成26年から「佐久市型情報公開(佐久市市民意見公募手続)」 と「佐久市型論点整理手法」が始められている。 佐久市広報(平成26年5月号) https://www.city.saku.nagano.jp/shisei/koho/kohoshi/h26/26_5.files/file4472.pdf 4.住民投票のあり方 今後の住民投票のあり方を考える上で、別紙『佐久の住民投票「もろ刃の剣」と実感』 (平 成22年12月1日付け、信濃毎日新聞)を添付しておきたい(佐久市議会議員、飯島雅 則氏提供)。 あえて私からは論評しないが、記事後段の記事内容をぜひ読んでいただきたいと思う。 信濃毎日新聞(取材から) ⇒PDF
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