暮らしを支える生物多様性

暮らしを支える生物多様性
私たちの暮らしは、水、酸素、食料、繊維、木材、燃料、医薬品、安定した気候、自
然災害防止、心を癒す景観、自然のしくみに着想した新技術等、様々な恩恵を生物多様
性 か ら 受け て いま す 。
こ こ では 、 茅ヶ 崎 市が生 物 多 様性 か ら享 受 してい る 恵 みに つ いて 述 べます 。
1)
農業
平 成 18(2006)年の 農業 粗 生 産額 順 位を み ると、 1 位 ホ ウレ ン ソウ ( 12.7% )、 2 位生
乳 ( 12.4% )、 3 位 ト マト ( 10.1% ) とな っ ていま す 。 県内 の 市町 村 との農 業 収 穫量 を
比 較 す ると 、「 かぶ 」 が県 内 で 2 位 、「小 松 菜 」「 ほ う れん 草 」「ね ぎ 」が 3 位 とな って
います。
これらの農作物は私たちの食を支えていますが、農作物の生産は、土壌動物を始め
とした生物の営みが土を作り、作物の種類によっては昆虫等が花粉を媒介することで
支えられています。また、農作物の生産にあたって使用する肥料や薬剤のなかには、
油 粕 、 鶏糞 、 木酢 液 等、生 物 由 来の も のも 多 くあり ま す 。
油粕、鶏糞等の肥料や
木酢液等は、生物由
来。
トマトやイチゴ等の受
粉には、昆虫が大活
躍。
害虫・病気を抑制する
生物がいることで農薬
等の使用が削減され
る。
土は、ミミズ等の微小
な土壌動物や、バクテ
リアの活動によって豊
かになる。
農作物は生きものその
もの。
漬物や酒などに加工す
るときは、微生物が活
躍。
・農地そのものが、多くの生物の生育・生息の場となっている。
・植物による光合成。
・大雨のときに一時的に水を溜める遊水機能も。
農 業 と 生物 多 様性 の 関係
-1-
2)
漁業
昔から相模湾一帯は沿岸漁業の好漁場で、漁業が盛んに行われてきました。茅ヶ崎
でも、しらす、あじなどが陸揚げされ、烏帽子岩付近では、わかめ漁が行われていま
す。しらすは生しらすの他、釜揚げしらすやたたみいわしなどに加工されています。
ま た 、 地び き 網で の 漁は夏 期 を 中心 に 行わ れ 、茅ヶ 崎 の 夏の 風 物詩 と なって い ま す。
豊かな漁場は、植物プランクトンを底辺とした食物連鎖によって支えられており、
その植物プランクトンを育む栄養塩や窒素等は、森林や農地で生産され、相模川等の
河 川 を 通じ て 海へ と もたら さ れ てい ま す。
大型の魚の生息には、
餌となるプランクトン
や小型魚類が豊かであ
ることが必要。
海草の生育に必要な栄
養塩や窒素等は、川を
通じて、山(森)や農
地から運ばれる。
富栄養化で赤潮が発
生、海の生物多様性や
漁業に悪影響がでるこ
とも。
海産物は生きものその
もの。
漁 業 と 生物 多 様性 の 関係
( 単位: kg )
200,000
177,600
180,000
171,300
160,000
134,552
140,000
134,600
124,615
116,100
118,704
120,630
120,000
111,000
108,350
105,600
100,000
93,794
80,662
80,000
85,100
75,926
60,000
78,340
76,424
67,000
71,800
62,895
40,000
43,000
20,000
30,106
0
H12
H13
H14
H15
H16
H17
総漁獲量
H18
H19
H20
H21
しらす
総 漁 獲 量と し らす 漁 獲量の 推 移
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H22
3)
防災
茅 ヶ 崎海 岸 を含 む 湘南海 岸 一 帯で は 、 10 月 から 4 月 に か けて 強 い南 西風 が 吹 き荒 れ
ることがあります。湘南海岸砂防林は、飛砂や塩害、強風を防ぎ、さらに沿岸地域の
景観を彩り、自然環境を保全する重要な緑地としての役割を担っており、神奈川県が
その保護育成を進めています。茅ヶ崎市も、湘南海岸砂防林の一部である柳島のクロ
マ ツ 林 の保 全 、海 浜 植生の 保 全 に努 め てい ま す。
湘 南 海 岸 砂 防 林 は 、 当 初 植 栽 ( 昭 和 3 年 ) か ら 約 80 年 を 経 た 現 在 、 藤 沢 市 鵠 沼 海
岸 か ら 中郡 大 磯町 東 町まで 、 延 長 11.4km、面 積 85.2ha、平 均 幅 80m の広 さ を もつ 良
好 な 海 岸緑 地 に成 長 し、住 民 の 暮ら し を守 っ ていま す 。
湘 南 海 岸砂 防 林位 置 図
4)
水資源
茅ヶ崎市の水道水のほとんどは、相模川(寒川浄水場)から供給されています。相
模川は、山中湖を水源として、富士山北麓や丹沢山麓の水を集めて最後には相模湾に
流れ込みます。上流域の森林が持つ水源涵養機能によって相模川の豊富な水量が保た
れており、これは、私たちの暮らしが間接的に森林によって支えられていることを意
味 し ま す。
主に農業用水として利用されている小出川についても同様です。笹窪谷戸(藤沢
市)を源とし、相模野台地や高座丘陵の 谷戸の水を集めて最後には相模川に合流して
いますが、これらの水も台地・丘陵地の森林が持つ水源涵養機能によって水量が ある
程 度 一 定に 保 たれ て います 。
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5)
文 化 ・ 歴史
市内には歴史的に価値のある樹林や地域のシンボルとなる樹木などが点在して いま
す。文化財として、浄見寺のオハツキイチョウや寺林や鶴嶺八幡社の参道及び参道松
並木等が指定されおり、また、鶴嶺八幡のイチョウや菱沼八王子神社のタブノキ は、
景 観 重 要樹 木 に 指 定 されて い ま す 。
海岸付近には、高砂緑地や氷室椿庭園など、松林 に囲まれた風格あるまち並みが見
ら れ ま す。
茅ヶ崎市の伝統的な祭り「浜降祭」では、浜降祭の契機となった 、流失して海中に
沈んでいた寒川神社の神輿を発見して引き上げたおり にハマゴウを敷き安置したと伝
えられていることから、寒川神社の神輿の下には必ずホンダワラ が敷き詰められ、そ
の 上 に ハマ ゴ ウの 枝 が指し 並 べ られ て いま す 。
6)
観光
えぼし岩やサザンビーチちがさきに代表される 湘南海岸は、茅ヶ崎市の重要な観光
資 源 で あり 、 特に 夏 には多 く の 観光 客 で賑 わ います 。 湘 南海 岸 は 白 砂 青松 100 選 に も
選ばれており、海浜沿いのクロマツ林は海岸の景観を形成する構成要素のひとつと な
っています。また、海側に目を向けると、砂浜や岩礁には多くの底生生物(アサリ等
の貝類、カニ類、ゴカイ類等)が生息しており、これらの生きものが海中や砂に混じ
る有機物をこしとって食べ ることが、海や砂浜ををきれいに保つことにもつながって
います
7)
教育
北部の丘陵地では、コアマップ対象地区を始めとした緑地等において散策路が整備
され、あるいは、その場所をフィールドとする市民団体が市民観察会等を開く等して、
自然とのふれあいの場が提供されています。中でも 神奈川県立茅ケ崎里山公園 は、里
山ならではの豊かな自然とともに、里山文化を体験できる公園として多くの茅ヶ崎市
民に利用されています。また、このような場所で、生き物に触れ、自然の中で遊ぶこ
と を 通 じて 、 命の 大 切さを 知 り 、思 い やり の 心が育 ま れ ます 。
また、自然豊かな場所に限らず、農地や家庭菜園での農作業を通じて生物とふれあ
う こ と で、 癒 しや 和 みを得 る こ とも で きま す 。
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