論文内容要旨 Comparison of CT urography and MRI in Bladder Cancer Detection (膀胱癌検出における CT 尿路造影と MRI の比較) THE SHOWA UNIVERSITY JOURNAL OF MEDICAL SCIENCE Vol.28 No.1 2016 年掲載予定 内科系放射線医学 新谷暁史 目的:膀胱癌は泌尿器系悪性腫瘍で最も頻度が高く,その最終診断は膀 胱鏡と生検による病理診断によりなされる.症状で最も多いのは血尿であ り,臨床的に膀胱癌が疑われた場合は超音波検査,膀胱鏡,排泄性尿路造 影が行われる.経腹的超音波検査は侵襲性がなく簡便な検査であるが,腸 管ガスの影響を受けやすく手技者により客観性にも乏しいなどの欠点が ある.膀胱鏡は最も信頼できる検査であるが,侵襲性は高く気軽に施行出 来る検査とは言い難い.近年,CT 尿路造影(CTU),MRI 拡散強調像などの 新しい撮像法が膀胱癌の検出に有用であるとの報告が散見される様にな り,CT・MRI は血尿のスクリ-ニング検査として普及してきている.しか し,CTU と MRI を比較した報告はみられない.今回の研究では,両者の検 出能を比較する. 方法:2008 年 1 月から 2014 年 12 月までの 8 年間に昭和大学病院で膀 胱鏡が行われ,生検または手術により膀胱癌と診断された症例のうち CTU および膀胱 MRI 検査が 1 ヵ月以内の間隔で行われた膀胱癌 58 症例を対象 とした.平均年齢は 67 歳(35 歳〜84 歳)で,男女比は 46:12 であった. MRI は T2 強調像及び拡散強調像,CTU は造影 CT の腎実質相及び排泄相を 評価の対象とした.膀胱癌は生検または手術により病理組織学的に確定さ れたものを対象とし,多発する膀胱癌では一症例につき 3 つまでを評価の 対象とした.Reader1 と Reader2 はそれぞれ独立して MRI と CTU の axial image を用いて膀胱癌の存在診断を行った. 結果:検出可能であった腫瘍の最大長径は 2.42〜67.2mm(平均 19.0mm) であり,検出できた 73 病変のうち 20mm 未満が 43 病変であった。58 症例 91 病変のうち Reader1 では MRI で 72 病変(79.1%),CTU は 65 病変 (71.4%), Reader2 では MRI で 69 病変(75.8%),CTU は 70 病変(76.9%)が検出され た.Reader1 及び Reader2 のκ値は MRI で 0.780,CT で 0.857 であり,診 断の一致度は高かった.CTU に比べ MRI の方が病変の検出率は高かったが, 統計学的有意差は得られなかった. 結論:膀胱癌の検出率は CTU と MRI で有意差はなかった.X 線被曝も造 影剤使用もなく,侵襲性の低い MRI は膀胱癌検出の有用な検査法であるこ とが示唆された.しかし本研究での膀胱癌の検出率は膀胱鏡と比較すると 決して高いものではなかった.さらに多発する膀胱癌では 3 個までを評価 の対象としており,残りの小さな膀胱癌を含めれば検出率は低くなると予 測される.MRI が膀胱癌のスクリーニング検査として有用性を発揮するた めには,今後のさらなる MRI 装置の進歩ならびに診断技術の改良が必要で ある.
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