分子病態に基づく造血器腫瘍の診断と治療

分子病態に基づく造血器腫瘍の診断と治療
第17回日本検査血液学会学術集会 ランチョンセミナー5
www.siemens.co.jp/diagnostics
■ 開催日 : 2016年
8月6日(土)12:10∼13:00
■ 会 場 : 第5会場(福岡国際会議場 4F 411+412)
■ 座 長 : 油布 祐二 先生
飯塚病院 血液内科 部長
■ 演 者 : 木崎 昌弘 先生
埼玉医科大学総合医療センター 血液内科
本セミナーは整理券制です。
(水)
※1. ランチョンセミナー事前参加登録締切(予定):7月6日
学術集会ホームページより、
学会参加登録と同時に、
ランチョンセミナー事前登録を受付けております。
(整理券は事前に申込者へ送付されます) ※2. 当日開催分の整理券配布もございます。
整理券は、
セミナー当日8:00より福岡国際会議場1Fエスカレーター前にて配布します。
(なくなり次第終了となります)
共催:第17回日本検査血液学会学術集会
シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社
分子病態に基づく造血器腫瘍の診断と治療
木崎 昌弘 埼玉医科大学総合医療センター
血液内科
近年、次世代シークエンス技術やSNPアレイなどの革新的な技術の進歩により、
網羅的な遺伝子解析が進
み、
白血病をはじめとする造血器腫瘍においても種々の遺伝子異常が明らかにされ、
病態解明が飛躍的に
多くの体細胞変異が明らかに
進歩した。急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)においては、
された。特に、
エピジェネテイクスに関与する遺伝子、
スプライシング関連遺伝子、
コヒーシン複合体などこ
れまで知られていなかった多くの遺伝子群に変化が見つかった。
現在、
これらの遺伝子変異の病態形成にお
ける意義や臨床的に予後や治療薬の効果との関連などに関する研究が精力的に進められているが、
特に
DNAのメチル化やヒストン修飾を担うエピジェネテイクスに関与する遺伝子変異が注目されている。DNA
のメチル化に関与するDNMT3Aや脱メチル化に関与するASXL1、EZH1/2などの変異はMDSに頻度が高
これらの遺伝子変異
く、
またスプライシングに関与するSF3B1、SRSF2などの変異はMDSに特異的である。
最近では高齢者や非腫瘍性疾患と考えられる再生不良性貧血においても
はMDSやAMLに認められるが、
既
一定頻度で認められることが明らかにされ注目されている。
このことは、MDSやAMLが発症する以前に、
(clonal
に正常人にクローン性造血を惹起するドライバー変異が出現していることを示しており、CHIP
という概念が提唱されている。
hematopoiesis of indeterminate significance)
このように白血病を中心とする造血器腫瘍の診断や予後解析には体細胞変異を中心とした遺伝子解析が診
断に重要であり、
また病態に深く関与する遺伝子変異を標的にした治療法の開発も重要な課題である。
分子
メ
病態を基盤とした分子標的治療薬は、慢性骨髄性白血病(CML)に対するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)
その
シル酸イマチニブが、
草分け的な存在であり、
イマチニブの出現はCMLの治療戦略そのものを変えた。
他、悪性リンパ腫では非抱合型抗CD20抗体リツキシマブは化学療法との併用でB細胞性リンパ腫の予後を
さらにプロ
格段に改善させ、
多発性骨髄腫では2000年以降サリドマイドやその誘導体であるレナリドミド、
テアソーム阻害剤ボルテゾミブなどの新規治療薬が導入され、確実に治療効果をあげた。
本講演では、
MDS/AMLを中心とした遺伝子解析研究の進歩とともに分子標的治療薬の時代に入った造血
器腫瘍の治療の最前線について概説したい。