6回 5/24 1章 生命科学 1

生命情報科学概論 講義計画
6回 5/24 1章 生命科学 1- 6
7回 5/31 1章 生命科学 1-11
1-10
1-13, 1-19
8回 6/7 2章 計算科学 2- 1
9回 6/14 2章 計算科学 2- 6
10回 6/21 2章 計算科学 2-13
2- 5
2-12
2-20
11回 6/28 4章 構造解析 4- 1
12回 7/5 4章 構造解析 4- 7
4- 6
4-12
1-20
13回 7/12 6章 オーミクス解析 6- 1 6- 4 �
14回 7/19 タカラバイオ特別講義(北川先生)
15回 7/26 6章 オーミクス解析 6- 5 6- 8�
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6-1 1)  部分だけを取り出すのではなくて、生物のもつ遺伝子、mRNA、タンパク質、代謝物
などの「全体」をゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームと呼び、
これらをまとめて扱う研究をオーミクス(オミクス = 網羅的解析)という(ゲノミクス、
トランスクリプトミクス、プロてオミクス、メタボロミクス)。
2)  オーミクスは実験装置の発達に支えられていて、おもなものは次世代シークエンサ
(NGS、高速シークエンサともいう)と質量分析機(MS)。これらはこれまでより高速・
大量に解析できるが、そのためにサンプルを分離したり精製する技術もとても重要で、
クロマトグラフィーは分離技術の代表的なもの。
3)  クロマトグラフィーは固定相と移動相の間で分子などを分離する。それぞれの分子は固
定相への親和性が異なるので、移動相に流される間に親和性の高い分子はより長い時間
固定相に吸着されて、その間移動できないので「遅れる」。この移動遅れによって分子
を分離することができる。
質量分析(MS)など
移動相
固定相
移動相
固定相
6-1 1)  質量分析機(MS)はイオン化した分子の質量-電荷比(m/z)で分離する(1-19参照)。主にプロテ
オミクスとメタボロミクスに使われる。通常MSで塩基配列決定(シークエンス)は行われない。
2)  タンパク質の集団(プロテオーム)に含まれるタンパク質の種類を特定する場合は、MS/MS(マ
スマスと読む)を使う。これはクロマトグラフィーで分離したサンプルをまずタンパク質ごと
に1回目のMSで分離して、それらのタンパク質をさらに短いペプチドに分解して2回目のMS
を行う方法。アミノ酸数個のペプチドはm/zの値からアミノ酸の組成を推定できるので、配列
データベースと照合すれば、どのタンパク質が存在したかがわかる。
1回目MS
サンプル(タンパク質集団)
ペプチド分解
2回目MS
100
質量分析機(MS)
イ 80
オ
ン 60
相 40
対
強 20
度
0
分子量からアミノ
酸配列を同定
タンパク質同定
質量電荷比(m/z) マススペクトルチャート
H26-問78
質量分析装置を用いた研究手法として、もっとも不適切なものを選択肢の中から一つ選べ。
1. 
2. 
3. 
4. 
ゲノムシークエンス解析
プロテオーム解析
メタボローム解析
有機化学合成
H23-問76
オーミクス解析に利用される実験機器とその使用目的の組み合わせとして、もっとも不適切なものを選択肢の中から一つ選べ。
H23-問75
RNAはタンパク質や代謝物と比較して網羅的解析に適している。その理由となるRNAの性質として、もっとも不適切なものを選
択肢の中から一つ選べ。
1. 
2. 
3. 
4. 
測定サンプルが少量であっても、PCR法により量を増やすことが容易である。
塩基の相補性を利用することで、各配列に特異的なプローブの作成が容易である。
物理化学的性質が均質であるため、他の生体物質との分離が容易である。
水溶液中で安定した立体構造を形成し、取り扱いが容易である。
6-2 1)  ゲノミクスやトランスクリプトミクスにはシークエンサ(塩基配列を決定する装置)が必要。
2)  サンガー法を使う旧来のシークエンサをキャピラリーシークエンサといい、主に特定の遺伝子
の配列を長めに決定する必要があるときに使われる。
3)  サンガー法は、ATGCの塩基にそれぞれ異なる蛍光色素を結合したものを使う。これらは DNA複製に使うことはできるが、それ以上はDNAを伸長できないので、対応する塩基のとこ
ろでDNA合成がとまる(普通のATGC塩基も入っているので、必ず止まるわけではない)。これ
をキャピラリーゲル電気泳動で分離して蛍光を読み取ると(図では下から上に読んでゆく)、鋳
型DNAの相補鎖のDNA配列になる(相補的な塩基A-T, G-Cに読み替えて上から下に読むと鋳型
DNAの塩基配列)。
C
G
A
T
T
C
T
G
T
G
G
A
C
A
C
A
6-2 1)  次世代シークエンサ(NGS)はキャピラリーシークエンサより高速に大量の配列を決定できる。
現時点では連続して読めるDNAの長さ(リードおよびリード長という)がキャピラリーシークエ
ンサより短いという欠点がある。
2)  エマルジョンPCRやブリッジPCRはDNAを分離してPCRで増幅する技術でNGS解析に重要。
水滴の中に1分子のDNAを単離したり、アレイ上にアダプタDNAに分離することで、均一
DNAサンプルを用意する。
3)  NGSは様々な方法があり、その一
つは蛍光標識した塩基を使って
DNAを合成し、合成の順番を直接
観測する方法。キャピラリーシー
クエンサとにているが、DNAに結
合されたときに蛍光を発する。
6-3 1)  シークエンサはそれなりにコストがかかるので、既知の遺伝子など配列がわかっている場合に
は相補的な塩基配列のDNAプローブをガラス基板に植えたDNAアレイ(チップ)を使えば簡単
にどのDNAが存在するかわかる(1色法)。健常者と疾患患者など異なる検体のDNAを異なる蛍
光で標識(2色法)すると、蛍光色で存在比(遺伝子発現の変化)を迅速に測定できる利点がある。
ハイブリダイゼーション
疾病保有者
各mRNAを異なる
蛍光色素で標識
健常者
DNAアレイ・DNAチップ
2)  プローブの種類は測定の目
的によって異なる。タイリ
ングアレイは全ゲノムを分
断してプローブにしたもの。 SNPアレイは1塩基変異を
持った短いDNAをプローブ
にしたもの。
H22-問73
マイクロアレイには1色法と2色法があるが、それらの特徴について述べた以下の記述のうち、もっとも不適切なものを一つ選べ。
1 1色法では、複数のアレイスライドを比較するので、それらのスライド間でスポットの品質が安定していることが必要である。
2 2色法では、2種類の色素の特性の違いによる偽陽性を排除するため、色素を入れ替えて繰り返し実験を行うことがある。
3  2色法では、コントロールサンプルに加えて2サンプルの測定が可能であるため、10点からなる時系列サンプルの測定には5
枚のスライドを用いればよい。
4  1色法、2色法に関わらず、ハイブリダイゼーションの効率はプローブごとに異なるため、異なる遺伝子の発現レベルの比較
は精度が低い。
H24-問79
以下のマイクロアレイのうち、未知の遺伝子を検出できるものを選択肢の中から一つ選べ。
1 タイリングアレイ
2 エキソンアレイ
3 cDNAアレイ
4 化合物マイクロアレイ
6-4 1)  タンパク質の相互作用(インタラクション = 結合)は病気の解析などに重要。プロテオーム中の
相互作用全体をインタラクトームという。イーストツーハイブリッド(Y2H)法は、ベイトとプ
レイのタンパク質が結合できるときだけGAL4転写因子が回復して、レポーター遺伝子が発現
することを利用した方法。
タンパク質群 (プレイ=獲物)
タンパク質A (ベイト=餌)
転写因子(GAL4)
DNA結合ドメイン
ベイト
プラスミド
形質転換・共発現
ベイト
転写活性化ドメイン
(VP16)
プレイ
プラスミド
プレイ
ベイトとプレイが結合できればレポー
ター遺伝子や必須遺伝子が発現する
ベイト(タンパク質A)と相互作用するタンパク質群
2)  ロゼッタストーン法は、必ず結合しなくてはいけ
ないタンパク質の遺伝子が、生き物によっては最
初から1個の遺伝子に融合していることを利用して、
実験をしなくても相互作用を予測できる。
6-4 1)  Y2Hはタンパク質の相互作用を網羅的に検出する方法だが、偽陽性(本当は結合しないか、
結合が弱いのにレポーター遺伝子が発現してしまうケース)が多いとされている。特定の
タンパク質と相互作用する相手をより高精度に探す方法に、プルダウン法と共免疫沈降法
がある。
2)  プルダウンは相互作用相手を探したいタンパク質Aにタグ(目印になる短いペプチドやそ
のほかの分子)をつけたりビーズに結合して、細胞内プロテオームと相互作用させた後に
遠心分離などで沈降(プルダウン)するか、カラムクロマトグラフィーにかける。タンパク
質Aに結合するタンパク質は一緒に沈降する(溶出する)。
3)  共免疫沈降法はプルダウンの一種で、タンパク質Aの特異的抗体を介して沈降させる。
タグ
タグ受容体
タンパク質A
タンパク質A
タンパク質A
タンパク質群
ビーズ
抗タンパク質A
抗体
ビーズ
遠心分離・
カラムクロマトグラフィー
H26-問64
以下のタンパク質間相互作用に関する記述の ( a ) ∼ ( c ) に入る語句の組み合わせとして、もっとも適切なものを選択肢の
中から一つ選べ。
タンパク質間相互作用を大規模に計測する代表的な実験手法として ( a ) と ( b ) がある。( a ) では、ある転写因子をDド
メインとAドメインに分離し、それぞれ相互作用を計測したいタンパク質XとYと融合させて、D−X , A−Y として発現させる。タ
ンパク質X , Yが結合すると、一緒にDドメインとAドメインも結合し、本来の転写因子の活性を取り戻し、レポーター遺伝子の発現
量を上げるため、X とYの相互作用を確認できる。一方、( b ) では、相互作用を計測したいタンパク質Xに、タグと呼ばれる認
識配列を融合させ、測定するサンプルにタグ融合Xを加える。次に、タグと選択的に結合する分子やカラムを用いて、タンパク質を
サンプルから抽出する。このとき、タグ融合Xと結合するタンパク質も一緒に抽出されるので、これを同定する。( b ) のうち、
タグの認識に抗原−抗体反応を利用する手法は ( c ) とも呼ばれる。
1. 
2. 
3. 
4. 
(a)
(a)
(a)
(a)
プルダウン法 ツーハイブリッド法 プルダウン法 ツーハイブリッド法 (b)
(b)
(b)
(b)
ツーハイブリッド法 (c)
プルダウン法 (c)
ツーハイブリッド法 (c)
プルダウン法 (c)
共免疫沈降法 共免疫沈降法 免疫蛍光法 免疫蛍光法