第15回

平成28年度前期
内容:
14. ステッピングモータ
原理と特性
可変リラクタンス型(VR型)
原理,歯車状鉄心型ステッピングモータ
基礎電気工学
永久磁石型(PM型)
原理,クローポール型ステッピングモータ
第15回
ハイブリッド型(HB型)
原理・構造
15. サーボモータの制御
井上 真澄
モータの制御
直流整流子モータの定速度制御
電圧比例制御,F/V型,位相同期(PLL)制御
14. ステッピングモータ
トルク-パルスレート(パルス周波数)特性
原理と特性
ホールディングトルク
同期モータから派生したモータで,駆動回路が必要
交流で回転磁界を作る代わりに,駆動回路からのパルス波で固定子
コイルを励磁 (パルスモータとも呼ばれる)
独立して動作する固定子コイルの数・・・相数
(2相,3相,4相,5相,等)
1回のパルスで回転する角度・・・ステップ角
(あるいは分解能)
1回転のステップ数・・・分解能
パルス信号を加えるごとに一定の角度回転
→ 総回転角は入力パルスの総数に比例
総回転角は入力パルスの総数に比例
パルス周波数を変えることで回転速度が変わる
→ 回転速度は入力パルスの周波数に比例
回転速度は入力パルスの周波数に比例
デジタル制御が可能
フィードバックが必要ない開ループ制御が可能
工業用途の他,パソコン周辺機器,FAX・コピー機等の事務機器など
身近なところでもよく使われている。
ホールディングトルク(保持トルク)・・・停止時に発生できる最大のトルク
引込トルク・・・始動できるトルク
脱出トルク・・・送っているパルスレートで回転できなくなる(脱調する)ト
ルク
最大自起動周波数・・・始動できるパルスレートの上限
最大連続応答周波数・・・運転できるパルスレートの上限
可変リラクタンス型(VR型)
可変リラクタンス型( 型)
3相コイルによる回転の様子(3相12極固定子,8極突起回転子)
A相→B相→C相と電流を流すコイルを切り換える。
原理
リラクタンス(磁気抵抗)・・・磁気回路における磁束の通りにくさ
(起磁力)/(磁束)
電気回路における抵抗(=(起電力)/(電流))に対応
コイルで発生した磁束
→ 回転子の「歯」(鉄心に設けた突極)を通る
→ コイルと「歯」の位置は磁束経路が最短になるような位置関
係になろうとする
→ 回転子にトルクが発生
A相コイル励磁
ホールディングトルクを発生させるためには電流を流し続ける必要有り
(省エネルギーが図りにくい)
B相コイル励磁
この例の場合1ステップ15˚ずつ回転(ステップ角は15˚)
動作(3相6極固定子, 20歯回転子)
<分解能を高くした構造>
C相コイル励磁
歯車状鉄心型ステッピングモータ
回転子に歯車状鉄心を使用し,固定子コイルの突起の先端に同じピッチ
で歯を刻む
歯車状にすることでピッチを細かくして分解能向上
3相6極でも,回転子に20歯の歯車
状鉄心を使えばステップ角は6˚。
(原理のところで示した構造で3相
6極固定子,4極突起回転子だとス
テップ角は30˚)
歯の1ピッチは18˚ (= 360˚/20)
1ステップで1/3ピッチ(= 18˚/3 = 6˚)回転
永久磁石型(PM型)
永久磁石型( 型)
4相コイルによる回転の様子
励磁コイルを切り換えるたびに励磁コイルに吸引される形で永久磁石の
回転子が回転
原理
永久磁石を使用しているため,他の型式のステッピングモータより
トルクが大きく,効率が高い。
電流を流していない状態でも位置を保持できるディテントトルク
(detent torque)(残留トルクともいう)がある。
A相励磁
D相励磁
B相励磁
C相励磁
この例の場合
ステップ角は
90˚
原理
<分解能を高くした構造>
クローポール型ステッピングモータ
(ハイブリッド型として扱うこともある)
固定子コイルの突起として機能するヨークの歯の形が鳥などの尖った
爪(Claw)に似ていることに由来
構造
1回転48ステップの場合,1相の上下のヨークに各12個の歯があり,
1相で24の突起(1ピッチは360˚/12 = 30˚)。回転子も24極。
2相の固定子は1/4ピッチずらしてある
1回転48ステップの場合,
1ステップで1/4ピッチ (= 30˚/4 = 7.5˚)回転
(ステップ角は7.5˚)
2相8極固定子,50歯回転子1組の場合
ハイブリッド型(HB型)
ハイブリッド型( 型)
原理・構造
永久磁石型のトルク発生原理と可変リラクタンス型の構造を備えたもの。
永久磁石型のような大きいトルクや高い効率を実現しつつ,分解能を高め
ることができる。
3相6極固定子,5歯回転子1組の場合の例
50歯歯車状鉄心
(回転軸方向にN極とS極を着磁
した永久磁石が鉄心間にある)
A相励磁
B相励磁
C相励磁
この例ではステップ角は12˚
15. サーボモータの制御
この例ではステップ角は1.8˚
一般的にはステップ角0.9˚, 1.8˚, 3.6˚のものがよく使われる。
直流整流子モータの定速度制御
モータの制御
電圧比例制御
(電圧サーボ制御,Vサーボ制御,電圧制御ともいう)
トルク,回転速度,回転位置(始動と停止を含む)を制御する場合の
制御システム
・検出器(タコジェネレータ)のアナログ出力を比較回路で目標値の電
圧と比較
・比較回路から駆動回路へパルス波の制御信号が送られてモータを制御
以下では,要求の多い直流整流子モータの定速度制御で使われる
制御方法について説明する。
・回路構成はシンプルだが,アナログ信号は環境要素の影響を受
けやすいので,安定度は高くない。
・精度を要求されない場所に使用される。
F/V制御
制御
位相同期(PLL)制御
制御
位相同期
(F-V制御,FV制御とも書く)
フィードバックがパルス信号の周波数(F: frequency)で行われ,最終的な
調整は電圧(V: voltage)で行われるためにF/V制御という。
(位相同期化制御ともいう)
位相(phase)に同期された(固定された(locked))閉ループ制御
・検出器(ロータリエンコーダなど)のデジタル出力を変換器で電圧にし
てから比較回路で目標値の電圧と比較
・比較回路から駆動回路へパルス波の制御信号が送られてモータを制御
・アナログ信号でフィードバックする電圧比例制御よりも安定度は
高い。
・比較的精度が要求される場所で使用される。
・比較回路では,1パルスごとに位相を比較し,比較回路からは位相
差に応じた制御信号が直流電圧として駆動回路に送られる。
・高精度な定速度制御が行える。
・比較回路は複雑でコストもかかる(一般的にはPLL用ICを利用)。
・目標値の基準信号と検出器(ロータリエンコーダなど)の出力が両方
ともパルス波のデジタル信号。
・基準信号には高精度で安定した信号を発振する水晶振動子を使用。