吉島病院 患者 今号の もくじ さ んと 吉 島 病 院を結 ぶ 広 報 紙 2016 夏号 Vol.62 情報紙 発行日:平成28年7月12日 発行所:吉島病院 発行人:広報委員会 呼吸器センター長 あいさつ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.1 「認知症ケアサポートチーム」始動!・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.3 肺癌に対する免疫チェックポイント阻害療法・・・・・・・・・・P.2 あなたは大丈夫? ~エコノミークラス症候群~・・・・P.3 職場体験(広島市立江波中学校)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.2 呼吸器センター長 あいさつ センター長 池上 靖彦 副センター長 宮原 栄治 この度 大成医師の退職を受けて、呼吸器センター長を拝命いたしました池上と申します。よろしくお願いいたします。 当院は、昭和28年に国家公務員の結核対策として開設され、平成25年には創立60周年を迎えています。現在に至るまで、呼 吸器診療をその中核としており、診療部門のみならず、看護部をはじめ全ての診療支援部門が、専門病院としての誇りと自覚を もって、呼吸器診療に携わっております。平成22年2月から、 “呼吸器センター”を開設しています。患者さんひとりひとりの呼吸 器疾患の診断や治療に関して、内科、外科両方の立場から話しあいを行い、患者さんにとってベストの選択を行うことを目的とし ています。 呼吸器疾患は慢性化、重篤化することが多く、ひとたび入院をすると、自宅に帰るまでに時間がかかることもよくありますが、 最近の医療情勢では退院を急かされることもあり、患者さん、家族のストレスが多くなってきているように感じます。 当院は高い水準の医療を提供する急性期病棟の体制はもちろん、在宅療養のための様々なサポート体制が整っており、急性 期から慢性期まで、検診・診断から治療・緩和まで、ケアミックスでの体制を活用し、あらゆる呼吸器疾患に対して、きめ細やかで、 比較的ゆったりとした医療の提供を心掛けています。 また、呼吸器外科では肺癌だけでなく、慢性呼吸器疾患の手術も以前から積極的に取り組んでいますが、小回りのきく当院の 特徴を生かして、気胸の手術にも今後積極的に取り組んでゆくことを考えております。 診断、治療だけでなく、患者さんとそのご家族の精神的、肉体的な負担を考えながら、患者さんとご家族が幸せな生活を送れる ように、お手伝いをさせていただければ思っています。 呼吸器センター長 池上 患者さんの 権利と責任 1. 2. 3. 4. 個人の尊厳は尊重され、最善で平等な医療を受ける権利を有します。 治療に関する情報を知り、説明を受ける権利を有します。 治療に関する方法を、自己の意思で決定する権利を有します。 医療のどの段階においても、他の医師の意見(セカンドオピニオン)を求める 権利を有します。 5. 個人の情報(プライバシー)が、保護される権利を有します。 6. 医療関係者との信頼関係に基づき、医療への参加の責任を有します。 当院では、患者さんと医療者のパートナーシップを大切にしています。 患者さんと医療者がお互いに協調し、良好な関係を築いてゆきたいと考えています。 靖彦 肺癌最新治療 肺癌に対する 免疫チェックポイント 阻害療法 ― がんによってブレーキがかかった免疫の攻撃力を回復させる治療法 ― 呼吸器外科医長 宮原 栄治 これまでの免疫療法では、免疫機能の攻撃力を高める方法が中心でしたが、最近、がん細胞が免疫のはたらきに ブレーキをかけて、免疫細胞の攻撃を阻止していることがわかってきました。そこで、がん細胞によるブレーキを解除 することで、免疫細胞の働きを再び活発にしてがん細胞を攻 撃できるようにする新たな治療法が考えられました。その中で も、免疫チェックポイントと呼ばれているブレーキ役の部分を 阻害する薬(免疫チェックポイント阻害薬)が実際の肺癌の治 療で使用されるようになりました。当院でも2016年3月から 使用しています。 がん細胞は、がん免疫にかかわるT細胞の攻撃にブレーキ をかける仕組みを持っています。がん細胞はPD-L1というア ンテナを出して、がんを攻撃するT細胞にあるPD-1と呼ばれ る受け皿(受容体)に結合し、T細胞の攻撃から逃れています。 PD-1受容体に蓋をして、PD-L1が結合しないようにすれ ば、がん細胞がT細胞の攻撃にブレーキをかけられないように することができます。そこで、PD-1にピンポイントで結合する 抗体(免疫チェックポイント阻害薬)を薬として利用し、PD-1 受容体に対する蓋の役割をさせることによって、PD-1受容体 とPD-L1が結合しないようにします。その結果、がん細胞によ りブレーキがかかり、はたらきが弱くなったT細胞が、再び活性 化してがん細胞を攻撃し、がん細胞が増えるのを食い止める ことができると考えられています。 広島市立江波中学校の職場体験がありました! 今年も5月17日~19日の3日間、当院にて職場体験を行いま した。 中学3年生の生徒さん5名が、白衣を着て医療の現場や院内の 様々な部署を見学し、生徒さん同士で血圧測定や車椅子の移送 などをしました。体験の中で、職員がやりがいを持って働いてい る姿を見て、医療職への興味を持ってくれた生徒さんもいました。 今回の体験が、少しでも生徒さんたちの将来への方向性を決 める手助けになったのではないかと思います。 2 「認知症ケアサポートチーム」 始動! 内科・総合診療科 松村 俊二 記憶障害や様々な脳機能の低下が生じて、社会生活や仕事などが、 これまでのように上手くできなくなった状態を 認知症といいます。認知症の人は一般の人以上に、病気や環境、心理的な要因による影響を受けやすい特徴があり、 特に「入院」は、本人にとって非常にストレスを感じる場面が多く、急な環境変化や病気・治療による身体的苦痛など で認知症が悪化してしまうことがあります。それは、時に妄想・幻覚、不穏や攻撃などの症状として現れ、本人ばかり でなく家族など周りの人たちを苦しめてしまい、本来の治療を受けること自体が困難になることもあります。 そこで、認知症を伴う入院患者さんが、1)なるべく穏やかな入院生活が送れること、2)日常生活動作(ADL)を維 持し低下させないこと、3)元の生活場所に戻れるようにすること、を目標として「認知症ケアサポートチーム」を結成 いたしました。認知症診療に関する十分な知識と経験がある医師、看護師、ソーシャルワーカーを中心に、理学療法 士や栄養士、薬剤師などさまざまな職種によるチームを編成して、入院中の患者さんやご家族、病棟スタッフに対し て治療やケアが適切に行われているかどうか評価し、助言を行うことで認知症治療・ケアの質の向上を図ってまいり ます。 また、退院してからの実際の生活環境の整備やサービスの利用についても、 ソーシャルワーカーを通じて、お住 まいの地域の相談窓口と連携して支援させて頂きます。 あなたは大丈夫? ~エコノミークラス症候群~ リハビリテーション科 理学療法士 神田直人 7月に入り、厳しい暑さもまだまだ続きそうです。近年、熱中症や脱水症、それに伴うエコノミークラス症候群(深部 静脈血栓症)がニュースなどで取り上げられています。 エコノミークラス症候群とは、長時間同じ姿勢でいると足の血液の流れが悪くなって血の塊ができてしまうもので す。中には、その塊が血管を通じて肺の動脈まで運ばれ、最悪の場合、血管が詰まって亡くなることもあります。 エコノミークラス症候群を予防するためには、脱水を引き起こさないように水分を補給することと適度な運動を行 うことが推奨されています。 成人では1日500~1000㎖を目安に水分補給をすることが推奨されています。喉が渇いてから水分を補給する のではなく、こまめに補給を行うことで脱水症の予防に繋がります。楽にできる運動には、足や足の指を動かしたり、 かかとの上下運動などがあります。ふくらはぎを軽くもむだけでも血液の流れを良くする効果があります(下図参照)。 定期的な水分補給と体を動かすことを習慣づけて、 この暑い夏を一緒に乗り越えていきましょう。 ❶足の指でグーを つくる ❷足の指をひらく ❸足を上下につま先 ❹つま先を引き上げ ❺ひざを両手で抱え、❻ふくらはぎを軽く もむ 立ちする る 足の力を抜いて 足首を回す 厚生労働省ホームページより引用 3
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