政策決定過程 - 明治学院大学

1.民意と政策
-多数決原理に基づく政策決定の性質-
2016年度 春学期 金曜4限
中位投票者定理
⇒ 多数決投票によって中位投票者の効用最大化が安定的、
支配的な社会的決定として採択される
⇔ 有権者の選好がばらついていれば、大多数の有権者は採
択される政策に対して不満を残す
⇒ 民主主義下の政治不信
(前提)
 投票対象となる公共サービスが1つに限られ、争点はその
供給量のみ
 すべての投票者の選好が単峰型 ・・・ 効用最大化点から
離れるにしたがって効用が単調減少
 2つの選択肢について投票する

公共政策論 1
政策決定過程:ᢞ⚊
2016.7.9
担 当: 石 川 達 哉
当講義用ホームページはhttp://www1.meijigakuin.ac.jp/~ishikawa
181
[ボーエンとブラックの中位投票者定理]
効用
A
B
C
XA
A
XB
B
D
XC
EC
D
E
2.政策の収束

XA対XBの多数決投票:Aの
みXAを支持、他の人はXB
を支持

XD対XEの多数決投票:Eの
みXEを支持、他の人はXD
を支持

XB対XCの多数決投票:A,B
はXBを支持、C,D,EはXCを
支持

XC対XDの多数決投票:D,E
はXDを支持、A,B,CはXCを
支持

結局、中位投票者Cの効
用最大化点XCが採択され
る
XD XE
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
政権獲得を唯一の目的として行動する政党間の競合
の結果として、中位投票者の選好に近い公約に収束
有権者の数
政策
L
M
R
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[コンドルセの投票のパラドックス]
選
好
順
位
第1順位
A
テニス
第2順位
野球
サッカー
テニス
第3順位
サッカー
テニス
野球
C
サッカー
<投票の順番によって異なる選択の結果>
最初の提案
パターン①
パターン②
パターン③
採決の結果
野球
v.s.
テニス
→
野球
v.s.
サッカー
→
テニス
v.s.
サッカー
→
最終的な選択
テニス
v.s.
サッカー
→
サッカー
野球
v.s.
テニス
→
テニス
サッカー
v.s.
野球
→

1位:4点、2位:3点、3位:2点、4位:1点として集計すれば、

C:25点=3×4 + 3×3 + 2×2

事例1
タイプ1
4人
タイプ2
3人
タイプ3
2人
1位
B
A
D
D:18点=1×4 + 2×3 + 4×2 2位
C
C
A
3位
A
D
C
4位
D
B
B
⇒ 最高得点者はA
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個人A
3
個人C
サッカー
個人Aの選好は単峰型
ではない
野球
187
186
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
MVP投票などで採用される方法
B:21点=4×4 + 1×3 + 1×2
2
185


個人B
野球
[ボルダ投票の問題点]
A:26点=2×4 + 4×3 + 3×2
1
テニス
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
[非単峰型の選好]
順位
個人
B
野球
前述の投票対象者A~Dに新たにEを加えた5人の投票対象
者に対して、各投票人がA~Dに対する相対的評価は変え
ずに、1位:5点、2位:4点、3位:3点、4位:2点、5位:1点を付
与して集計すれば、
事例1にEを加えた評価

A:28点=2×4 + 4×3 + 4×2

B:27点=5×4 + 1×3 + 2×2

C:31点=4×4 + 3×3 + 3×2


タイプ1
4人
タイプ2
3人
タイプ3
2人
1位
B
E
D
2位
C
A
A
D:20点=1×4 + 2×3 + 5×2
3位
E
C
C
E:29点=3×4 + 5×3 + 1×2
4位
A
D
B
5位
D
B
E
⇒ 最高得点者はC
・・・ 各投票人のA~Dに対する相対的評価は変わってい
ないのに、総合得点に基づく評価はAとCの間で逆転
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