平成27年9月18日付け申入書

申
入
書
平成27年9月18日
札幌市東区北31条東1丁目7番1号
一般社団法人北海道住生活保全協会
代表理事 田 中
努
殿
山晃ビル2F
〒060-0004
札幌市中央区北4条西12丁目ほくろうビル4階
TEL011-221-5884 FAX011-221-5887
内閣総理大臣認定適格消費者団体
認定特定非営利活動法人消費者支援ネット北海道
理事長 向 田 直 範
当NPO法人は,消費者契約問題に関する調査,研究,消費者への情報提供
等を通じて消費者被害の未然防止を目的に,消費者団体,消費生活専門相談員,
学者,弁護士,司法書士などの消費者問題専門家により構成されている法人で
す(詳細は当法人ホームページ URL http://www.e-hocnet.info/index.html を
ご参照ください)。
また,当法人は,平成22年2月25日から平成21年6月に施行された「改
正消費者契約法」に基づき,内閣総理大臣の認定を受け,差止請求関係業務(不
特定勝田数の消費者の利益のために差止請求権を行使する業務並びに当該業務
の遂行に必要な消費者の被害に関する情報の収集並びに消費者の被害防止及び
救済に資する差止請求権の行使の結果に関する情報の提供にかかる業務)を行
う「適格消費者団体」としての活動も開始しております。
さて,当法人において,貴法人による火災保険等の保険金を利用した建物の
工事請負契約につき,消費者契約法に照らして不当と思われる点があると判断
しました。
そこで,当法人は,貴法人に対し,下記のとおり申し入れます。
つきましては,本申し入れに対する貴法人のお考え・ご対応等を,文書にて,
平成27年10月30日までに,当法人にご回答ください。なお,ご回答の有
無及びご回答内容につきましては,当法人の活動目的のため,公表させていた
だくことを予め申し添えます。
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記
第1 申入れの趣旨
1 貴法人が,消費者との間で,建物を調査したうえで建物の補修等の代金
に充てるために行う保険申請手続きを消費者に代行して行うことを内容と
する契約を締結する際には,損害賠償額の予定又は違約金の定めにつき,
消費者契約法9条1項に反しない適正な内容とすることを求めます。
第2 申入れの理由
1 損害賠償額の予定又は違約金の定めについて
⑴ 貴法人は,消費者に対し,消費者の加入している保険契約を利用すれ
ば建物の補修等が可能であること,保険申請の手続きは貴法人が代行す
ること,建物の補修等の工事については保険金を工事代金の支払いに充
てて貴法人が行うこと等を申し向け,消費者との間で,建物を調査した
うえで建物の補修等の代金に充てるために行う保険申請手続きを消費者
に代行して行うことを内容とする契約を締結していますが,同契約は,
建物を調査したうえで建物の補修等の代金に充てるために行う保険申請
手続きを消費者に代行することを内容とする準委任契約と評価されます。
⑵ そして,貴法人は,上記契約の際,
「火災保険申請代行依頼書」と題す
る書面を取り交わしており,そこには以下の条項(以下「本件条項」と
いいます。)が存在します。
3.依頼費用について
①≪保険が適用されなかった場合≫
1 項の調査に基づき保険申請された結果,保険会社において損害が認定されず,
保険金が支払われなかった場合,ご依頼者様は当協会に対して,保険申請代行手
数料等の費用(以下,依頼費用)を支払う必要はございません。
②≪当協会に対し保険会社に認定された保険金額で工事を発注する場合≫
ご依頼者様が当協会に対し保険会社に認定された保険金額で工事を発注する場
合,ご依頼者様は,当協会に対し,依頼費用を支払う必要はございません。
(保険
金額とは,臨時費用,お見舞い金,残存物処理費用等を含めます:以下,保険金
額とする)
③≪当協会以外の業者様に発注及び,保険金額全額を修繕に利用しない場合≫
ご依頼者様が当協会以外の業者に改修工事を発注する場合及び,保険金額全額を
修繕に利用しない場合,ご依頼者様は当協会に対して,依頼費用として,保険金
額と当協会への発注金額の差額の 30%を支払います・※違約金ではございません
2
⑶
この点、「3.依頼費用について」という条項は、
・①において、実際に申請代行を行っているにもかかわらず、保険金が
支払われなかった場合は依頼費用を払う必要が無いとされていること
・②において、実際に申請代行を行っているにもかかわらず、保険会社
から認定された保険金額で工事を発注する場合は依頼費用を払う必要が
無いとされていること
・③において、保険会社から保険金額が認定された場合において,保険
金額全額による工事が貴社に発注されなかったときは消費者が貴法人に
金銭を支払うという形となっており,申請代行の依頼費用であるならば
貴法人への発注金額の多寡ではなく作業量の多寡に応じた金額となると
思われるところ,その金額が貴法人への発注の有無及び内容に基づき決
定されること
・また,③の金額についても,保険金額と貴法人への発注金額との差額
の 30%と多額に及ぶ可能性があるものとなっていること
などの内容に鑑みますと,本件条項は貴法人との間での請負工事の締結
が当然に予定されていると思料します。
したがいまして,
「火災保険申請代行依頼書」に基づく消費者と貴社の
間の契約には,準委任契約のみならず請負の予約契約も内包されている
と評価でき,本件契約は準委任契約と請負の予約契約の混合契約と評価
できるものです。
そうすると,貴法人のいう依頼費用は,かかる混合契約について中途
で終了させた場合に,消費者が貴法人に対して支払わなければならない
金額を定めるものであり,実質的にみると,解除に伴う損害賠償の額を
予定し,又は違約金を定める条項といえます。
⑷ 消費者契約の解除に伴う損害賠償予定額又は違約金の定めは,それら
の合算額について,
「当該条項において設定された解除の事由,時期等の
区分に応じ,当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業
者に生ずべき平均的な損害を超える」部分は無効となります(消費者契
約法第9条第1号)。
そうすると,本件条項にも消費者契約法第9条第1号が適用されるこ
ととなり,消費者が貴法人との契約関係を解消した場合,貴法人は,消
費者に対し,「平均的な損害」しか請求できないこととなります。
⑸ この点,本件条項は,前述のとおり契約解除に伴う損害賠償額又は違
約金を,保険金額と貴法人への発注金額との差額の 30%と定めているも
のです。
3
しかしながら,消費者による契約関係の解消の時期や貴法人が行った
建物調査の内容等によって,貴法人が掛けた労力や費用は変わってきま
す。また,建物の補修を行う際,無料で見積もりを行う業者が少なから
ず存在することは周知のとおりであり,補修のための建物調査自体に多
額の費用がかかるとは考えられません。さらに,保険申請手続きそれ自
体は,申請書類に記入して保険会社に提出するだけであり,それほど手
間も時間もかからないものと思料します。
そうすると,前記「平均的な損害」が,保険金額と貴法人への発注金
額との差額の 30%等になるとは考えられません。
⑹ 以上により,本件条項につきましては,貴法人に生ずる「平均的な損
害」を超える部分まで請求することとならないよう,適正な内容に訂正
することを求めます。
第3 添付書類
貴法人の「火災保険申請代行依頼書」の写し
【本申し入れに際し,当法人が検討の対象とした書面です。その後,改訂
等が行われていましたら,改訂後の内容が記載された書面を当法人まで
ご提供いただきますよう,お願い申し上げます。】
以上
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