機能材料組織学 第 8 回 前回: ・ミラー・ブラベー

機能材料組織学 第 8 回
前回:
・ミラー・ブラベー指数
・分解せん断応力
・単結晶の降伏応力
今回:
・結晶粒微細化
・ホール・ペッチの関係式
・純金属の凝固
「機能材料組織学」第 8 回
8.1
結晶粒の微細化
・これまでの転位運動の議論:
・実際の材料:
・問い:すべり面を運動してきた転位が結晶粒界に達した時,どうなるか?
・応力集中の発生:
応力集中:
図 8.1 隣接結晶粒へのすべりの伝ぱ
・
・
●結晶粒微細化により
じん性:
1
「機能材料組織学」第 8 回
8.2
ホール・ペッチの関係式
→多結晶体における降伏強度σY と
結晶粒径 d の関係
σ 0: 結晶粒内の転位を運動させるのに
必要な応力
k:結晶粒界による強化の比例定数
図 8.2 軟鋼における結晶粒径と変形応力の関係
2.57 ×10 6
Pa を示す金属材料に
・ 例題:ホール・ペッチの関係式において σ Y = 13.3×10 +
d
6
おいて,結晶粒径 d = 100.0×10-3 mm の場合の降伏応力σ Y を求めよ.また d = 16.0×
10-3 mm の場合も求めよ.
2
「機能材料組織学」第 8 回
●結晶粒微細化方法
1) 凝固時の冷却速度を著しく高める
→
図 8.3 凝固時の結晶粒成長の模式図
2) 加工(塑性変形)後の熱処理
→
3) 変態(同素変態),例:α-Fe(bcc)⇔γ-Fe(fcc)
図 8.4 再結晶に伴う組織および性質の変化
→
4) 微細化に効果的な元素の添加
8.3 金属の凝固
●金属を炉中で一旦溶融したのち,ゆっくり冷却
しながら温度を測定→経過時間に対してプロット
・純金属の場合
ab 間:
bc 間:
図 8.5 純金属の熱分析曲線
3
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cd 間:
・合金の場合
・TALpLqTB:
・TASpSqTB:
・中間:
図 8.6 合金の熱分析曲線と状態図
・
・
・
・
・ (a)の各曲線で得られた各点を,合金濃度に対応してプロット
→(b),
4
「機能材料組織学」第 8 回
8.4 第 8 回講義に関する意見・感想・質問のまとめ
●意見・感想
・特になし:24
・今週の小テストの出来が良くなかったので次回はちゃんと勉強して臨む,小テストですべり面の取り方を間
違えて後悔した,小テストが難しく感じた,小テストがだんだん難しくなっているように感じる,小テストで指
摘されたようなミスをしてしまった,すべり面が上手く書けなかった気がする:7
・理解できた,分かりやすかった,図があると分かりやすくて良い:5
・金属の凝固の合金の場合が複雑に感じた,高校内容に関連するところまでは理解出来るがそうじゃないと
ころは難しい,今回までの講義内容を忘れていて理解が出来なかった,結晶内→結晶同士や純金属→
合金へと考えることが広がって難しくなった:4
・復習して整理する,復習をしっかりやる,復習頑張る:4
・進行速度は丁度よかった:2
・粒の大きさで応力が大きく変化することに驚いた:2
・計算が終わらなかった,電卓の計算を間違えて残念:2
・図 8.4 の「回復」「等軸粒」の意味がよく分からなかった:2←「回復」とは,加工硬化を生じるほど転位密度
が上昇し結晶形状も変化した状態から,温度を上昇させる(=熱処理)ことにより原子の拡散が生じ,原
子空孔の消滅や転位密度の低下が生じることです.付随して強度や密度の変化も生じます.「等軸粒」と
は,再結晶温度まで温度を上げることにより新たな結晶の核形成→結晶粒の確立がなされた直後の結
晶粒の形状が,三次元的には球に近いような形状(任意の方位に対して極端な長短がない)であることを
表現するものです.
・以下一人ずつ:
まだすべり面や分解せん断応力をよく理解していないので理解を深めたい,見直しが必要,出てくる単語
だったりピンと来ないのがいくつかあったので調べたい,結晶内のみでなく隣接する結晶内にまで転位が
及ぶというのが分かった,材料中でのき裂の進展に対する抵抗がねばり強さと関係していることを知れて
よかった,ありがとうございます,
凝固時の結晶粒成長について急速に冷却させれば微細化するということだったが塩化銅などの大きな結
晶を作るときはゆっくり冷却していくことを思い出してなるほどなと思った←いいですね,こういう風に既に
知っている知識と新しく学んだことを結びつけるとより理解が深まると思います.
すべり面を図示する能力が足りないと小テストを通して分かった←こういうの能力は得手不得手があるか
もしれませんね・・・でも訓練すれば慣れますよ!
おにぎりを食べている人がいた←初回のガイダンスでも「他人の邪魔にならない範囲の飲食は許可する
(この授業のみ!)」と周知してますので,うるさかったり臭かったりしない限りは OK です.
●質問
・図 8.2 のグラフはどのような実験をして得られたものなのか?←実際に結晶粒径の異なる複数の試験片を
作製して,それらで引張試験を行ったんだと思います.
・じん性の大きさはどう表わすのか?←簡易的には,破壊に至るまでに材料が吸収するエネルギーで表し
ます.より詳しくは,「破壊じん性値」(応力の大きさとき裂の長さを用いて定義するパラメータ)を用います.
・前回の授業を休んでしまってプリントがない場合,もらうことは可能か?←出来ます.ストックしてあるので,
授業前か後に私のところに取りに来てください.
・強化ガラスは何を強化しているのか?←私もよく知らなかったので web で調べたところ,ガラス表面近傍に
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「機能材料組織学」第 8 回
圧縮の作用を働かせることで,き裂が入りにくくしているようです.
・期末試験の前に小テストの点数は知ることが出来るのか?←はい,私の居室(工学部 B212 室)まで聞き
に来てください.
・例題の計算について,電卓でいっぺんに計算すると 6.558×108 となるが,分数部のみを求めると 6.43×
108 となり,そこから足し算すると 6.563×108 となる.今回はどのように計算すればよいのか?←この場合,
正しく有効数字を考慮するとご指摘の通り分数部のみ計算して最終的に和を取ることになりますので,
となります.
・例題の 16.0×10-3mm の場合,σY=13.3×106 +6.425×108 となり,和であるので答えはσY=6.558×
108Pa にならないのか?←上記の通りです.分数部の計算はあくまで有効桁数 3 桁ですので,この答え
のようにはなりません.
・3 種類以上の合金だとどんな状態図になるのか?←3 種類だとこんな感じです.3 つの元素間の組成割合
が三角形を形成し,これに温度変化(縦軸)が加わります.
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「機能材料組織学」第 8 回
第 7 回小テスト解答
8.5
ある bcc 単結晶金属を[ 0 0 1 ]方向に引張応力 20.0 MPa で引張る場合,( 1 0 1 )面[1 1 1 ]方向における
分解せん断応力を考える.
Q.1
引張方向,すべり面,すべり面の法線方向,すべり方向を右図に図示せよ.[4 点]
Q.2
分解せん断応力τ [MPa]を求めよ.[6 点]
A.2
上図よりφ =45°, cosθ =
a⋅ b
からθ =54.73°なので,分解せん断応力の定義式 τ = σ cos φ cos θ
a⋅ b
よりτ = 8.164…=8.16 MPa が求まる.
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「機能材料組織学」第 8 回
参考問題
Q.1
ある材料において,結晶粒径 d = 100 µm の際には降伏応力σ Y = 270 MPa を,d =
16.0 µm の際にはσ Y = 655 MPa を示すことが分かっている.これらの値からホール・
ペッチの関係式を導出せよ.[10 点,部分点あり]
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