-2016年6⽉調査 ⽇銀短観・企業の物価⾒通し- ―不透明な経済環境の下、総じてみると、企業の景況感はやや下振れ― ―⼤企業・製造業・業況判断DIは横這い― ―GDPの概念に近いベースの全産業・全規模の設備投資は16年度+4.3%で底堅い― ―物価全般⾒通し平均は3⽉調査と⽐べ、3年後で変わらなかったが1年後と5年後で低下― 客員エコノミスト 宅森昭吉 コメント 日銀短観とロイター短観(200・400社ベース) (大企業)の業況判断DI比較 (出所)⽇本銀⾏、トムソン・ロイター ⽇銀短観・全国企業⼤企業の業況判断DI (「良い」-「悪い」%、( )内は1期前調査時予測) 16年 15年 3⽉ 6⽉ 9⽉ 3⽉ 6⽉ (+9) +12 +3 (+16) +19 +3 (+10) +15 +5 (+17) +23 +6 (+16) +12 ▲4 (+21) +25 +4 (+10) +12 +2 (+19) +25 +6 (+7) +6 ▲1 (+18) +22 +4 (+3) +6 +3 (+17) +19 +2 ⼤企業・製造業「悪い」 9(8) 7(7) 7(4) 7(5) 10(6) 10(8) (6) ⼤企業・⾮製造業「悪い」 6(4) 4(4) 4(3) 4(4) 5(4) 6(5) (4) 大企業・製造業 <下段-上段> 大企業・非製造業 <下段-上段> 12⽉ 9⽉ (+6) (+17) (出所)⽇本銀⾏ (次⾴へ) 本レポートは、投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断に 関しましては、お客様ご自身の判断でなさるようお願い致します。 このレポートに記載された内容は今後予告なく変更されることがあります。また、SMBCフレンド証券は、このレポートに記載 された内容に関し、正確性・完全性を保証するものではありませんのでご了承ください。 6⽉調査⽇銀短観は、⼤企業・製造業の業況判断DIは6⽉調査と同⽔準の+6となった。⼤企業・ 製造業の業況判断DIは鉱⼯業⽣産指数の動きと相関性が⾼く、鉱⼯業⽣産指数の前期⽐が概ね横 這い圏であることと整合的な結果になった。 新興国の景気減速や円⾼の進展などで輸出・⽣産にマイナスの影響が出ている。このため2ケタのプラスには ならないが、13期連続で「良い」超を意味するプラスを維持できたことで、底堅さも確認できたと⾔えよう。但 し、想定為替レートが111円41銭であることから、調査機関の最終局⾯で⽣じた英国国⺠投票での EU離脱決定にともなう円⾼の影響はほとんど含まれてはいないようだ。内訳をみると、素材業種は3⽉調査 から3ポイント改善し+6になった。加⼯業種は3⽉調査から1ポイント悪化し+6になった。3⽉調査で 12⽉調査の0から▲22まで急落した中国景気減速の影響を⼤きく受けたとみられる鉄鋼は中国景気 の落ち着きもあり6⽉調査では▲12と3⽉調査から幅がプラス10ポイントとなった。 ⼤企業・製造業で「悪い」と答えた割合は15年6⽉調査・9⽉調査・12⽉調査とも7%だったが、円 ⾼急進などがあった16年3⽉調査で10%に上昇した。今回6⽉調査でも10%だった。 今回6⽉調査の調査期間は5⽉30⽇〜6⽉30⽇である。 6⽉調査の⼤企業・製造業の業況判断DI+6は3⽉調査の「先⾏き」⾒通しが+3に悪化するとみて いたのに対し、3ポイント上回る数字になった。⾜元の景況感が予測よりやや良かったということになる。 ⼤企業・⾮製造業・業況判断DIでは、15年9⽉調査・12⽉調査は+25と91年11⽉調査 の+33以来約24年ぶりの⾼⽔準だったが、16年3⽉調査で+22と3ポイント低下し、6⽉調査 で+19とまた3ポイント低下した。しかし、依然+20前後の2ケタのプラスを維持した。 6⽉調査の⼤企業・⾮製造業・業況判断DIは20期連続のプラスである。これは、最近は中国⼈の爆 買いの動きが鈍化するなどの要因からやや悪化したものの、内需の底堅さを反映したしっかりした動きが続い ていることを⽰唆していよう。 6⽉調査の⼤企業・⾮製造業・業況判断DI+19は、12⽉調査の「先⾏き」+17を2ポイント上 回る数字で、景況感が思ったより良かったことを⽰唆している。⼤企業・⾮製造業で「悪い」と答えた割合は1 5年6⽉調査・9⽉調査・12⽉調査で同じ4%であったが、16年3⽉調査では1ポイント上昇し 5%に、今回の6⽉調査でも1ポイント上昇し6%と、じりじりと悪化している。 ⼤企業・製造業の「先⾏き」業況判断DIをみると、+6と「最近」の+6と同⽔準のDIが⾒込まれている。 「悪い」と答えた割合は「最近」では10%だが、「先⾏き」では4ポイント減って6%になる。⼀⽅、「良い」と 答えた割合は「最近」では16%、「先⾏き」では12%で変化幅が4ポイント減だ。このため「さほど良くな い」と答えた割合は「最近」では74%だが「先⾏き」では82%へと変化幅が8ポイント増加している。依然、 世界経済の先⾏きに対する様々な不安感が広がっていることが感じられる内容だ。 (次⾴へ) 本レポートは、投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断に 関しましては、お客様ご自身の判断でなさるようお願い致します。 このレポートに記載された内容は今後予告なく変更されることがあります。また、SMBCフレンド証券は、このレポートに記載 された内容に関し、正確性・完全性を保証するものではありませんのでご了承ください。 ⼤企業・⾮製造業では「先⾏き」は+17と「最近」の+19から2ポイントの悪化が⾒込まれている。「悪い」 と答えた割合は「最近」では6%だが、「先⾏き」では2ポイント減って4%になる。⼀⽅、「良い」と答えた割合 は「最近」では25%、「先⾏き」では21%、変化幅が4ポイント減だ。このためDIは悪化⾒通しになる。 但し、⾮製造業では「先⾏き」⾒通しがかなり悪化するパターンはよくある現象だ。 ⽇銀短観:中⼩企業業況判断DI 13年9⽉ 13年12⽉ 製造業 ▲9 +1 ⾮製造業 ▲1 +4 (出所)⽇本銀⾏ 備考:プラスは、 07年12⽉の+2以来 92年2⽉の+5以来 14年3⽉ +4 +8 14年6⽉ +1 +2 14年9⽉ ▲1 0 14年12⽉ +4 +1 15年3⽉ +1 +3 15年6⽉ 0 +4 15年9⽉ 0 +3 15年12⽉ 0 +5 16年3⽉ ▲4 +4 16年6⽉ ▲5 0 中⼩企業・製造業の業況判断DIは3⽉調査で▲4と6四半期ぶりにマイナスになったあと6⽉調査では ▲5と1ポイント悪化した。なお、6⽉調査の「最近」▲5は3⽉調査の「先⾏き」⾒通しが▲6に悪化す るとみていたのに対し、1ポイント上回る数字になった。⾜元の景況感が予測よりやや良かったという結果にな った。 ⼀⽅、中⼩企業・⾮製造業の業況判断DIは、13年12⽉調査で+4と92年2⽉の+5以来2 1年10カ⽉ぶりのプラスになった。今回6⽉調査で0と3⽉調査より4ポイント低下したものの11四半 期連続マイナスになっていない。3⽉調査時点の「先⾏き」▲3を3ポイント上回った。予測よりは良かったと いうことになる。雇⽤吸収⼒がある業種が多い⾮製造業のDIが久し振りにプラスまたはゼロ継続となってい ることは、5⽉分の有効求⼈倍率が1.36倍と24年7カ⽉ぶりの⾼⽔準になっていることと整合的だろ う。 中⼩企業・製造業の「先⾏き」業況判断は▲7と「最近」▲5から2ポイント悪化する⾒通しである。また、 中⼩企業・⾮製造業は▲4と「最近」より4ポイントの悪化⾒通しである。中⼩企業、特に⾮製造業では⽐ 較的「先⾏き」を慎重に⾒る傾向があることを考慮すれば、次回9⽉調査の「最近」がそこまで悪くなかったと なる可能性が⼤きいのではないかとみられる。 全規模・全産業の業況判断DIは、過去最悪の98年9⽉調査の▲48に近かった09年3⽉調査 の▲46を底に上昇し、東⽇本⼤震災による⼀時的落ち込みなどを挟んで13年9⽉調査で+2と07 年12⽉以来のプラスになった。消費税率引き上げ直前の14年3⽉調査では91年11⽉の+12 以来の⽔準である+12まで改善していた。消費税率引き上げにより悪化し14年9⽉調査で+4になっ ていたが、その後横這いを含みつつ改善し15年9⽉調査で+8、12⽉調査で+9と2期連続改善し た。しかし、前回3⽉調査で+7と2ポイント低下、今回6⽉調査で+4と3ポイント低下した。なお、全 規模・全産業という全体の景況感は13期連続してプラスの⽔準だ。景気が底堅いことを⽰唆する数字だろ う。 また、全規模・全産業の「先⾏き」業況判断は+2と、「最近」+4から2ポイント悪化する⾒通しである。 企業の景気の先⾏きには不透明感が強いことを⽰唆していよう。 (次⾴へ) 本レポートは、投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断に 関しましては、お客様ご自身の判断でなさるようお願い致します。 このレポートに記載された内容は今後予告なく変更されることがあります。また、SMBCフレンド証券は、このレポートに記載 された内容に関し、正確性・完全性を保証するものではありませんのでご了承ください。 今回6⽉調査では、2016年度の想定為替レートは1ドル=111円41銭と3⽉調査の1ドル= 117円46銭から円⾼⽅向になったものの、6⽉末の⽔準が1ドル=103円程度となっている。その 分収益⾒通しなどは実際は下振れる可能性があろう。1ドル=103円は、内閣府の1⽉時点の調査で の輸出企業の採算為替レートである。 ⼤企業・製造業の仕⼊れ価格DIは6⽉調査では▲2になった。3⽉調査の▲8から6ポイント上昇し マイナス幅が縮⼩した。最近の国際商品市況の前⽉⽐での上昇などを反映していよう。⼤企業・⾮製造業 の仕⼊れ価格DIは6⽉調査では+8で3⽉調査の+5から3ポイント上昇した。また6⽉調査の中⼩ 企業・製造業の仕⼊れ価格DIは+7で3⽉調査と同じだった。中⼩企業・⾮製造業の仕⼊れ価格D Iは6⽉調査では+13で3⽉調査の+9から4ポイント上昇した。 6⽉調査の販売価格判断DIは、⼤企業・製造業では▲12と3⽉調査の▲15からは3ポイント上 昇した。⼤企業・⾮製造業では0で3⽉調査▲1からは1ポイント上昇した。中⼩企業・製造業では▲1 2で3⽉調査の▲11からは1ポイント低下した。中⼩企業・⾮製造業では6⽉調査では▲7と3⽉調 査と同じだった。4つのカテゴリーで仕⼊れ価格DIは上昇したが、販売価格判断DIはまちまちで、企業 収益に及ぼす影響は4つのカテゴリーごとに異なっているとみられる。 6⽉調査の2016年度の⼤企業・全産業の設備投資計画は前年度⽐+6.2%になった。製造業 は+12.8%の伸び率で、⾮製造業が+2.7%の伸び率である。過去30年間の平均では製造業 が+5.7%、⾮製造業が+2.0%であることからみると、まずまずの結果と⾔えそうだ。2016年度 の中⼩企業・全産業の設備投資計画は前年度⽐▲14.9%になった。製造業は▲17.8%で、⾮ 製造業が▲13.5%のマイナスの伸び率である。過去30年間の平均では製造業が▲12.7%、 ⾮製造業が▲15.3%であることからみると、こちらは製造業が15年度に+11.5%伸びた反動も あり弱い数字だが⾮製造業はまずまずと⾔えそうだ。中⼩企業の設備投資計画は例年3⽉調査が弱く、そ の後は調査の度に改善していく傾向がある。6⽉調査の2016年度の全規模・全産業の設備投資計 画は前年度⽐+0.4%になった。 ⼀⽅、GDPの設備投資の概念に近いソフトウェアを含み⼟地投資額を除くベースの全産業・全規模の設 備投資は2015年度は前年度⽐+3.9%の実績となった。2016年度の計画は前年度⽐+4. 3%の伸び率で⽐較的底堅い計画になっていると⾔えよう。 資⾦繰り判断DIや⾦融機関の貸出態度判断DIは、09年6⽉調査以降、横ばいの時期もあったも のの、概ね改善傾向が続いてきた。6⽉調査では、全規模・全産業で資⾦繰り判断DIが14で、前回 3⽉調査から1ポイント「楽である」超になった。⼀⽅、全規模・全産業の⾦融機関の貸出態度判断DI は23で、こちらは3⽉調査と同じ「緩い」超幅であった。総じてみれば、⾦融環境は良好な状況になってい ると⾔えよう。 (次⾴へ) 本レポートは、投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断に 関しましては、お客様ご自身の判断でなさるようお願い致します。 このレポートに記載された内容は今後予告なく変更されることがあります。また、SMBCフレンド証券は、このレポートに記載 された内容に関し、正確性・完全性を保証するものではありませんのでご了承ください。 7⽉4⽇に発表された「企業の物価⾒通し」によると、全規模・全産業ベースの販売価格⾒通しの平均は、 1年後が+0.2%と3⽉調査から0.1ポイント低下した。3年後と5年後の販売価格⾒通しの平均 はともに0.2ポイント低下し、各々、+0.8%、+1.1%になった。 ⽇銀短観「企業の物価⾒通し」(前年⽐)全規模・全産業 2014年3⽉ 2014年6⽉ 2014年9⽉ 2014年12⽉ 2015年3⽉ 2015年6⽉ 2015年9⽉ 2015年12⽉ 2016年3⽉ 2016年6⽉ (出所)⽇銀 (%) 販売価格の⾒通し 物価全般の⾒通し 1年後 3年後 5年後 1年後 3年後 5年後 1.1 1.8 2.1 1.5 1.7 1.7 1.1 1.9 2.3 1.5 1.6 1.7 1.1 1.8 2.1 1.5 1.6 1.7 1.0 1.7 2.0 1.4 1.6 1.7 0.9 1.7 2.2 1.4 1.6 1.6 0.9 1.7 2.1 1.4 1.5 1.6 0.7 1.4 1.8 1.2 1.4 1.5 0.5 1.3 1.6 1.0 1.3 1.4 0.3 1.0 1.3 0.8 1.1 1.2 0.2 0.8 1.1 0.7 1.1 1.1 全規模・全産業ベースの物価全般の⾒通し平均は、1年後が+0.7%と3⽉調査から0.1ポイント 低下した。3年後の物価全般の⾒通し平均は3⽉調査と同じ+1.1%、5年後の物価全般の⾒通し 平均は0.1ポイント低下し、+1.1%になった。 この調査が始まった2年3カ⽉前と⽐べると、全規模・全産業ベースの物価全般の⾒通し平均は、1年後が 0.8ポイント低下した。3年後は0.6ポイント低下、5年後が0.6ポイント低下になった。⽇銀の超 緩和的な⾦融緩和政策が実施されてきたにもかかわらず、原油価格の⼤幅低下、⾜元の円⾼の動きなども あり、企業の予想インフレ率は低下傾向であることを⽰唆する結果となっている。マーケットで⼀段の⾦融緩 和への期待が⾼まる内容であろう。 今回の短観は、全規模・全産業ベースの「最近」業況判断が3⽉調査に⽐べ3ポイント低下し、+4にな り、「先⾏き」が+2に低下するなど、不透明な経済環境の下、企業の景況感がやや下振れていることを⽰ 唆する結果になった。しかし、DIがプラス圏を維持していること、6⽉調査の「最近」業況判断は3⽉調査 の「先⾏き」⾒通し+1にくらべ3ポイント上振れ、事前の予想よりは良かったことなど、底堅さも感じられる。 (7⽉4⽇現在) 本レポートは、投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断に 関しましては、お客様ご自身の判断でなさるようお願い致します。 このレポートに記載された内容は今後予告なく変更されることがあります。また、SMBCフレンド証券は、このレポートに記載 された内容に関し、正確性・完全性を保証するものではありませんのでご了承ください。
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