視 点 城県北山間地域の地域創生 に向けた課題と将来の展望 常陸太田市長 大久保 太一 2014年5月に「日本創成会議」が発表した「消滅可能性自治体」という言葉に、 該当する896の自治体のみならず、全国の地方自治体が危機感を持ちました。 その後、「地方消滅」という言葉に置き換えられ、あたかも地方(=地域)が無 くなってしまうかのような誤解をされている点については留意すべきです。しか しながら、都市部への人口流出や少子高齢化による人口構造の変化に抱く、自治 体運営の破たんを招きかねないという不安は、本市をはじめとする県北地域の各 自治体の共通認識であり、このままでは地域の衰退は避けようのない状況と言わ ざるを得ません。 地域創生に「万能薬」はありませんが、このような状況の中でも、「特効薬」は 必ずあります。それは、自らの地域に誇りを持って暮らし続ける住民の存在と、 安心して暮らしていける環境の存在によって生み出される“地域の元気”そのも のです。 各自治体に求められているのは、そのような「特効薬」を生み出すために、地 域間連携・政策間連携・官民協働といった、様々な要素を調合する「処方箋」を 打ち出していくことだと思います。例えば観光では、これまでの物見遊山的な観 光スタイルから、その土地ならではの食や体験を求める着地型観光へ、主流が変 化しています。また生活環境では、若年層も含めた都市住民が田舎暮らしを求め るという「ふるさと回帰」への関心が高まり、「利便性」よりも「質(=快適性) 」 を優先するというように、求められるライフスタイルが変化してきています。 茨城県北地域は、豊かな自然・歴史・文化などの多くの地域資源に恵まれ、か つ首都圏から近距離にあるという好条件が揃っています。生活の 「利便性」 ではハー ド整備が進んでいる都市部にはかないませんが、「快適性」では自然豊かな当該地 域に分があります。そのため、これらの需要の受け皿として、県北6市町での民 泊事業の展開や、地域の伝統文化を活かした観光事業、県とも連携した二地域居 住の取り組みなどを実施しております。いずれの取り組みも、“地域”や“住民” を主役として、“自然”“農林漁業”“文化”を調合したものです。また、中山 間地としての共通項はあるものの、当然ながらそこに暮らす「ひと」は異なり、 「ま ち」の文化や歴史的背景、「しごと」の特色にも細かな違いがあります。その違い をいかに的確に認識し、その地域に合った「特効薬」の「処方箋づくり」をして いくかが重要なポイントであり、そのためにも、引き続き地域住民をはじめ近隣 市町との連携を図りながら、“地域の元気づくり”に努めて参りたいと思います。 16.7 ’ 3
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