〈実践レポート〉金型プレスによるパイプ成形加工

実践レポート 1
金型プレスによる
パイプ成形加工
国本工業㈱
国本工業(浜松市)は、金型プレスにより金属
しかし、加工にはてこずった。曲げ R が「S 字」
パイプ材を成形加工し、駆動系、排気系などの自
のように連続してあり、部位によって曲げ角度も
動車部品を低コストで製造する。コア技術は曲げ、
異なるため、形状や肉厚を公差内に収めることが
せん断、拡管・縮管、増肉、成形などを組み合わ
難しかった。試行錯誤のうえ、約 8 カ月かけて金
せたチューブフォーミングと呼ばれる工法で、今
型を複数工程に分けるトランスファ工法を開発。
や「パイプから何でもつくり出す会社」として知
「やっとの思いで納期に間に合わせた」と同社の
られている。工法開発と設備開発力を強みとし、
國本幸孝社長は述懐する。
ロット数の多い生産品は、パイプ加工に特化した
一般に、金属パイプの曲げ加工ではベンダ(ベ
複数の設備で構成する独自の自動化生産ラインを
ンディングマシン)を使用する。同社も当初はベ
構築。一層のコスト低減と納期短縮に努めている。
ンダを購入するつもりだったが、機械の原価償却
ベンダでは困難な
連続 R 曲げに成功
同社は 1960 年の創業で、1990 年代までは、主
に自動二輪車のスタンドやマフラーなどを生産し
ていた。パイプの特殊加工に取り組んだのは 2001
年。地元の自動車部品メーカーから、複雑に湾曲
の見通しが立たず、やむを得ず金型プレスでトラ
イした。しかし、エキマニパイプ(写真 1)の加
工を通じて金型プレス工法に自信を深めた。
「加
工方法に応じた金型を用意すれば、ほとんどの加
工がこなせる」ことがわかったためだ。しかも、
「ベンダに勝る効果がある」と。
たとえば、ベンダ曲げ加工はパイプの端を掴ん
したステンレスのエキマニパイプ(排気集合管)
で軸を中心に曲げて角度を付けるため、パイプ径
の加工注文を得たことに始まる。生産個数が少な
の 1.
5 倍以上の掴みしろが必要。これに対し金型
いうえ加工難度が高く、受注条件はよくなかった
プレス曲げは、金型内で成形するため、掴みしろ
が、主要取引先の海外移転などで経営が苦しいと
は不要で、材料の無駄が少ない。厳密に言うと、
きであったため、渋々ながらも引き受けた。
会
社
概
要
会 社 名:国本工業㈱
代 表 者:代表取締役 國本幸孝
本
社:431−3104 静岡県浜松市東区貴平 320
TEL : 053−434−1237
設
立:1970 年
資 本 金:2000 万円
従業員数:91 人(非正規社員を含む)
業務内容:金属プレス加工
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写真 1 ステンレス製のエキマニパイプ(排気集合管)
プ レ ス 技 術