日本十進分類法(NDC) 概要とデータ化〔PDF: 829KB〕

日本十進分類法(NDC)概要とデータ化
DC
4.45
N71
NDC
日本十進分類法(NDC)
概要とデータ化
日本図書館協会分類委員会
藤倉 恵一
NDC
日本十進分類法の概要
NDCの経緯と十進分類法の基本
日本十進分類法(NDC: Nippon Decimal Classification)
• 1929年
• 1942年
• 1949年
間宮商店の森清が発表
増補訂正第5版まで改訂を重ねる
縮刷第8版まで重版(増刷)が続く
(1948年,日本図書館協会分類委員会が継承)
•
•
•
•
1950年 新訂6版(2分冊)が刊行(翌年合冊し新訂6-A版)
1961年 新訂7版
1978年 新訂8版
1995年 新訂9版(もり・きよし没後最初の改訂)
• 2014年
新訂10版刊行
日本図書館協会分類委員会
• 2015年4月〜
中井万知子委員長以下8名+事務局1名
大学教員
2名(委員長含む)
国立国会図書館
2名
MARC会社
1名
大学図書館
1名
公共図書館
1名
有識者(元MARC会社)
1名
– 月に1回の定例会議とメーリングリストでの協議・連絡
NDCの普及率
公共図書館
97.1%
大学図書館(短大・高専含む)
96.9%
99.4%
83.4%
89.8%
92.0%
館数
3000
2500
634館
636館
2541館
619館
780館
1335館
2000
584館
613館
2460館
506館
682館
1217館
1500
1000
500
0
1964
1972
2008
採用
1964
非採用
1972
2008
無回答
もり・きよし「NDCのつかい方」(1966),もり・きよし「NDC入門」(1982),
大曲俊雄「わが国における図書分類表の使用状況」(2010)をもとに算出
十進分類法の基本構造
• 主題を10に区分する
– 下位の9区分+その他(0;=総記(General Works))
類(Class)
綱(Subdivision)
目(Section)
細目(Subsection)
0 総記
40 自然科学総記
450 地球科学総記
1 哲学
41 数学
451 気象学
.1 理論気象学
.61 雲
2 歴史
42 物理学
452 海洋学
.2 気象観測
.62 霧
3 社会科学
43 化学
453 地震学
.3 大気現象
.63 露.霜
4 自然科学
44 天文学
454 地形学
.4 風
.64 雨
5 技術
45 地球科学
455 一般地質学
.5 大気の擾乱
.65 雹
6 産業
46 生物化学
456 地史学
.6 凝結現象
.66 雪
7 芸術
47 植物学
457 古生物学
.7 大気中の光・電気・音響現象
.67 霧氷
8 語学
48 動物学
458 岩石学
.8 気候学
.68 氷
9 文学
49 医学
459 鉱物学
.9 気象図誌
.69 降水量
桁が増えるごと(区分が漸進するごとに)細かく分類される
NDCの構成(新訂9版を例に※)
• 本表編
–
–
–
–
–
解説
第1次区分表(類目表)
第2次区分表(綱目表)
第3次区分表(要目表)
細目表
(細目表内に)
– 固有補助表(7種)
• 一般補助表・相関索引編
– 一般補助表
• I
形式区分
• I-a 地理区分
• II
海洋区分
• III
言語区分
• IV
言語共通区分
• V
文学共通区分
– 相関索引
※ 8版・10版とは名称や扱いが異なる箇所がある
補助表(助記表)
• 各主題に共通に用いることができる要素(理論,歴史,出版形式,研
究・指導法など)や地理的区分,言語などを別表に用意し,分類
記号に付加することができる(分類表をその分省略できる)
– 一般補助表
– 固有補助表
例:図書館 010
理論
−01
歴史
−02
日本
−1
アメリカ −53
NDC全体もしくは複数の類で使用できる
特定の類の一部に対してのみ使用できる
図書館論
図書館史
日本図書館史
米国図書館史
010.1
010.2
010.21
010.253
十進記号法の効果・利点
• アラビア数字で表現するため,覚えやすい
• 書架上での排列の順序表示に適している
(数字の大小は理解されやすい)
• 区分の漸進がわかりやすい
(階層構造を視認しやすい;桁が多いほど下位の分類)
4(自然科学)
45(地球科学)
451(気象学)
451.6(凝結現象)
451.64(雨)
451.61(雲)
等位
451.66(雪)
順序としては451.6の後に
.61, .64, .66と並べやすい
十進記号法の限界・欠点(1)
• 区分肢の数は「9+その他(0)」しか用意できない
– 区分肢が少数の場合,記号配当にムダが生じる
– 区分肢が多数の場合,階層構造が純粋なものでなくなる
• 「その他」を拡大するか,
• 下位の桁に強引に割り当て,字上げ/字下げを用いて階層構造を
記号ではなく印刷上のレイアウトによって視認させる
(これは最初期のDDCでも用いられていた手法)
字上げ(不均衡項目)/字下げ(縮約項目)
• 記号の桁数が必ずしも概念の上位/下位と一致するとは限ら
ない
012
.1
.2
.28
.29
.3
.4
.5
.6
図書館建築.図書館設備
Library buildings
*館種の別なく,ここに収める;ただし,一館の建築誌は,016/018に収
める
建築計画:基礎調査,位置,敷地
建築材料および構造
【不均衡項目】
改修・改築工事
記号上では012.2の下位になるが
維持管理.保護.防火.防水
012.2の等位になっている
建築設計・製図
書庫.書架
【縮約項目】
利用者用諸室:閲覧室,児童室,目録室
記号上は012.3と等位だが
講堂.集会室.展示室.視聴覚室
012.3の下位概念
※ 9版紙面では字上げ・字下げは半角単位で示されているが,このスライドで
は視認性のために10版紙面と同様に全角で表示している
十進記号法の限界・欠点(2)
• 複数主題,複合主題を表現しにくい
– 主題が異なる領域や観点あるいはファセットの場合,これらを一次元に
記号表現することは容易でない
– 記号化しても,複雑になって理解されにくい
• これらは,現在のNDCが抱える問題点とも重なる
– 第1版から現在まで字上げ/字下げによる表示を各所で使用
– 複数主題は件名標目や目録法で補完
– 書誌上では分類を重出させて,複数主題に対しても検索を可能にする
階層構造の補完
• 「字上げ/字下げ」だけでなく,いくつかの手段で十進記号法
の欠点を解消(緩和)している
– 小項目名
その分類項目名の下位区分
– 関連分類項目名 直接的下位区分とはいえないが関連性のある名辞
493
内 科 学 Internal medicine
.1
全身病.一般的疾患
.11
特定難病:ベーチェット病,スモン病
.12
代謝異常.栄養障害・失調
低血糖症.低蛋白血症
– 中間見出し
【小項目名】
【関連分類項目名】
下位に属する分類記号の範囲で階層関係を明示
527 住宅建築 Residential buildings
.1 設計.敷地.間取
<.2/.6
住宅の各部分>
.2 玄関.広間.廊下.階段.地下室
:
.6 浴室.化粧室.手洗所
【中間見出し】
NDCの抱える問題
• 構造的・理論的な問題
– 第1版以降,大規模な再配置などはほとんど行われていない
• 特に新訂8版以降は細分化が中心で,窮屈な箇所がいくつもある
• 長年にわたり指摘された理論上の問題点は解決されていない
• 維持管理体制の問題
– 人的資源の枯渇
• 多種多様な図書の分類経験と,分類法の理論と,データの利活用
すべてをわかっている人は……
– 紙(および生データ)での編集
(基幹となるファイルがデータベース化されていない)
→
要求されるクオリティ,刊行までの時間を達成するには
障壁が多い
NDC
データ化されたNDC
Linked Dataへの前段階
MRDF
(Machine Readable Data File)
• 9版の冊子(細目表+補助表,相関索引)および8版をデータ
ファイル化
– 9版分類表 10,173件
– 8版分類表 8,612件
相関索引29,526件
相関索引30,659件
(件数はいずれも発表時)
• 新訂10版のMRDFは検討中
– 冊子相関索引に掲載しなかった索引語を収録予定
(ヨミの異なるものや字体の違いなども含め)
– 誤植対応がまだ継続中
– 単なる表・索引のデータファイルだけではなく,検索システムや図書館
システムとの連動など,現代にあわせた提供方法を模索
MRDFの中身(細目表・補助表)
• 管理番号・記号の種類・分類記号等を示し,冊子に準じた各
種情報が続く
00001100 A 007
0010 情報科学
00001200 A 007
0020 Information science
00001300 A 007
0040 ここには,情報科学<一般>およびソフトウェア
を収める
00001400 A 007
0041 電子計算機などのハードウェアは,548に収め
る
00001500 A 007
0042 別法:548.9;ただし,情報理論(007.
1)は548.1
00001600 A 007
0060 →:010
00001700 A 007.02
0360 →007.2
00001800 A 007.1
0010 情報理論
00001900 A 007.1
0030 コミュニケーションとそのメディア,記号,言語
(数字・映像)とその意味論
00002000 A 007.1
0040 別法:548.1;情報源007.4
00002100 A 007.1
0060 →:361.45;801.2
00002200 A 007.11
1010 サイバネティックス
(参考)9版細目表における同一箇所
• 冊子では,同一ページ内での上位の分類記号(ピリオド以前)は
省略している
007 情報科学 Information science →:010
*ここには,情報科学<一般>およびソフトウェアを収める
*電子計算機などのハードウェアは,548に収める
*別法:548.9;ただし,情報理論(007.1)は548.1
[.02→007.2]
.1
情報理論 →:361.45; 801.2
コミュニケーションとそのメディア,記号,言語(数字・映像)とその
意味論
*別法:548.1;情報源007.4
サイバネティックス
.11+
MRDFの中身(相関索引)
• 索引語と限定語は冊子と同じ表現を用いる
• 排列のためにヨミをもつ
• 地理や言語など一部の項目には符号がつく
00000100X617.8
00000200X479.64
00000300X577.99
00000400X191.7
00000500X141.62
00000600X181.6
00000700X158
00000800X2-164
00000900X2-5352
00001000X645.9
00001100X789.25
0070あい(作物栽培)||アイ(サクモツ サイバイ)
0070あい(植物学)||アイ(ショクブツガク)
0070あい(染料)||アイ(センリョウ)
0070愛(キリスト教)||アイ(キリストキョウ)
0070愛(心理学)||アイ(シンリガク)
0070愛(仏教)||アイ(ブッキョウ)
0070愛(倫理)||アイ(リンリ)
0070@相生||アイオイ
0070@アイオワ州||アイオワシュウ
0070愛玩動物||アイガン ドウブツ
0070合気道||アイキドウ
(参考)9版相関索引における同一箇所
• 冊子体では,同一カラム内の同一索引語を省略している
• 地理区分を表す記号には*を付し,斜体にしている
あい(作物栽培)
(植物学)
(染料)
愛(倫理)
(キリスト教)
(心理学)
(仏教)
相生
アイオワ州
愛玩動物
合気道
617.8
479.64
577.99
158
191.7
141.62
181.6
*164
*5352
645.9
789.25
MRDFの問題
• MRDFはあくまで細目表・索引をデータ化したもの
– 要約表(第1次区分表~第3次区分表)をもっていない
– 補助表を使うことで表現できるような主題には対応していない
• 「図書館論」010.1は細目表に列挙されているので問題ないが,「図
書館史」は細目表にない
• プログラミングで記号を合成させる(補助する)方法があるかもしれ
ないが,それには主題の専門知識と高度な技術を要する
• 事前に考え得る補助表記号をすべて用意することは事実上不可
能である(たとえば主題一つに対し,あらゆる国と地域を区分した記
号を与えると,莫大な件数になる)
• 利活用の具体的な方法について見いだせていない
– OPACへの投入・案内などの具体例に乏しい
– 10版改訂作業の下地にはしたが,完全なマスターファイルにはなりえて
いない
委員会側の経緯
• 2009年秋 NDC10版試案説明会(中間報告)
– 電子データ形式のNDCの可能性・試案
たとえばMRDFをEPWINGのような電子書籍形式で検索可能なデータ
ベースとして販売あるいは頒布するなど
• 2013年冬 NDC10版改訂の終盤
– 検索補助ツールとしてのNDCの可能性
SKOSやOWL,トピックマップなど構造化されたデータ形式で,検索補助
ツール(あるいはソース)として活用できるか
• 2014年冬 国立国会図書館からLinked Data化共同研究打診
– MRDF9およびMRDF8を提供
– JLA理事会で承認,覚書を締結した
→ 共同研究開始(2015年4月~)