新生ストラテジーノート 第 230 号 2016 年 7 月 4 日 調査部長 江川 由紀雄 [email protected] (03) 6880-6035 史上最低の【フラット 35】融資金利と住宅金融支援機構 MBS について 全期間固定金利型住宅ローンが借り換え対象としての競争力を増している 住宅金融支援機構の証券化支援事情を用いた【フラット 35】(買取型)の7月の融資金利は史 上最低水準となった 1。融資率 90%以下、返済期間 21 年以上 35 年以内の区分で、融資金利 は 0.930%と、初めて1%を切った。なお、省エネ性能や耐震性に優れた住宅などを対象とする 場合(つまり、【フラット 35】S の要件を満たす場合)に、当初5年間(長期優良住宅、認定低炭素住 宅等のとくに性能が優れた住宅については当初 10 年間)、0.3%の金利引き下げの対象になる。 図表 【フラット 35】融資金利の推移 2.0% 1.8% 1 1.6% 1.4% 1.2% 1.0% 0.8% 0.6% 0.4% 0.2% 2016年5月 2016年3月 2016年1月 2015年11月 2015年9月 2015年7月 2015年5月 2015年3月 2015年1月 2014年11月 2014年9月 2014年7月 2014年5月 2014年3月 2014年1月 0.0% 注: 融資率 90%以下、返済期間 21 年以上 35 年以内の最頻値 出所: 住宅金融支援機構 銀行業界における住宅金融支援機構とは無関係な住宅ローンの金利も今月は史上最低水準 1 報道例 時事通信 「過去最低金利を更新=フラット35」 2016 年 7 月 1 日 http://www.jiji.com/jc/article?k=2016070100496&g=eco 金利情報については、住宅 金融支援機構が運営するサイト http://www.flat35.com/kinri/index.php/rates/top 1 新生ストラテジーノート 新生証券株式会社 調査部 または史上最低水準に近い。大手銀行や信託銀行の場合で、変動金利型で 0.6%前後、10 年 固定で 0.4%~0.55%といった水準がいくつか見られる 2。 住宅金融支援機構 MBS への投資判断との関係 これだけ全期間固定金利型に限定されている【フラット 35】(買取型)の融資金利が低くなってく ると、旧来の住宅ローンの借り換え先としての【フラット 35】(買取型)の競争力も高まることになろ う。前人未到の金利環境下なので、過去のデータの分析はあまり役に立たないと筆者は考えてい る。過去の住宅ローンの借り換えの動きが加速し、足もとの史上最低水準の金利水準で住宅ロー ンを借りた人は、将来において、より有利な条件のローンへの借り換えを行うことは容易ではない であろう。となると、住宅金融支援機構 MBS のやや古い回号の裏付資産となっている【フラット 35】 (買取型)には、これからしばらくは、借り換え要因により、やや高めの繰上げ返済が発生し、新発 回号の裏付資産については、今後、借り換えによる繰上げ返済は発生しにくいと想定することもで きよう。こうした可能性を踏まえて、元本償還が予想から多少ずれることになっても許容できるかと いう観点で投資判断を行うことが、機構 MBS への投資を検討する際に重要であるように思える。 たとえば、超長期ゾーンの国債流通利回りとの比較や、機構 MBS の比較的古い回号の裏付資産 の繰り上げ返済が高水準で推移した場合やクリーンアップコールが行使される場合の投資採算、 市場価格がパーからそれほど大きく乖離していない新しい回号の最終利回りとの比較といった点 での検討が求められよう。 (調査部長 江川 由紀雄) なお、【フラット 35】(買取型)の場合は、保証スキームを用いていないので、保証料は不要であ る一方、団体信用生命保険の保険料は別途負担となる。銀行による住宅ローンでは、一般的に、 保険料は銀行負担(よって、計算上、貸出金利に含まれる)となる一方で、一般的に、保証会社に よる保証が要求され、保証会社に対して支払う保証料負担が生じる。こうした条件の差異を踏ま えたうえで、両者を比較する必要がある。 2 2 2 新生ストラテジーノート 新生証券株式会社 調査部 3 名称 :新生証券株式会社(Shinsei Securities Co., Ltd.) 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第95号 所在地 :〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目4番3号 日本橋室町野村ビル Tel : 03-6880-6000(代表) 加入協会 :日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 資本金 :87.5 億円 主な事業 :金融商品取引業 本書に含まれる情報は、新生証券株式会社(以下、弊社)が信頼できると考える情報源より取得されたものですが、弊社 はその正確さについて意見を表明し、または保証するものではありません。情報は不完全または省略されたものである ことがあります。本書は、有価証券の購入、売却その他の取引を推奨し、または勧誘するものではありません。本書は、 特定の商品やサービスの勧誘・提供を行う目的で作成されたものではありません。本書で言及されている投資手法や取 引については、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、これらの投資手法や取引について は、金融市場や経済環境の変化もしくは価格の変動等により、損失が生じるおそれがあります。本書に含まれる予想及 び意見は、本書作成時における弊社の判断に基づくものであり、予告なしに変更されることがあります。弊社またはその 関連会社は、本書で取り扱われている有価証券またはその派生証券を自己勘定で保有し、または自己勘定で取引する ことがあります。弊社は、法律で許容される範囲において、本書の発表前に、そこに含まれる情報に基づいて取引を行う ことがあります。弊社は本書の内容に依拠して読者が取った行動の結果に対し責任を負うものではありません。本書は 限られた読者のために提供されたものであり、弊社の書面による了解なしに複製することはできません。 信用格付に関連する注意 本書は、金融商品取引契約の締結の勧誘を目的としたものではありません。本書で言及ま たは参照する信用格付には、金融商品取引法第 66 条の 27 の登録を受けていない者による無登録格付が含まれる場 合があります。 3 著作権表示 © 2016 Shinsei Securities Co., Ltd. All rights reserved.
© Copyright 2024 ExpyDoc