芝浦工業大学 工学部 電気工学科 高電圧・電力機器研究室 教授 1. はじめに 人類が築いた最も有用で最大のシステムは電 力システムであり、日本では最大 180GW の電力 がリアルタイムで制御されています。ここで使わ れている高電圧大電力機器には、電力を発生させ る発電機、発生した電力を効率良く送電するため の変圧器や高電圧送電線、需要家の要求に合わせ て配電するための変電機器、ならびにこれらの機 器に付随する開閉装置や無効電力補償装置など があります。 日本における電気エネルギーの比率は年々高 くなっており、全一次エネルギーに対する電力化 率は近い将来 50%を超えると言われており、「安 全・安心」に「快適性」を加えた持続的発展社会 のインフラとしてゆるぎない地位を今後も築い ていくと言えます。 研究室では、高い信頼性や効率向上、損失低減、 省エネルギー、環境負荷低減の視点から将来のグ ローバル化した社会にも迎合される高電圧電力 機器の実現を目指して日々研究を行っています。 松本 聡 (7) 統計手法を用いた設計パラメータの最適化 (8) テスラコイルの製作と高電圧測定 3.研究設備 200kV 試験用変圧器,部分放電測定器,420kV イ ンパルス電圧発生器、標準抵抗分圧器、電圧測定 システム、微小電流測定器などがあります。また、 現象解明に必要な各種解析ソフトを導入してい ます。 4.おわりに 電力・エネルギー分野は巨大なシステム技術の 集大成です。ここでは、電気磁気学、交流回路、 高電圧工学、電気材料、電気機器、電気電子計測、 制御工学、送配電工学、電子回路、信号処理、電 気通信、系統保護、センサ関連技術など幅広く多 種多様な知識が求められます。これらの分野で活 躍を目指す人の積極的な参加を期待しています。 研究成果は学会発表、特許出願などで公開して います。 2. 研究テーマ 高電圧試験・高電圧計測技術に関する研究、な らびに放電現象の解明を理論と実験により推進 しています。特に、近年の電力システムでは高経 年機器が多数使用されていますので、絶縁診断技 術の向上、ならびに取得したデータの信号処理に ついても研究を実施しています。また、風力発電 設備の雷害防止を目的とした雷放電シミュレー ションの研究や、「ものづくり」の体験もできま す。主な研究テーマは以下の通りです。 (1) 部分放電現象を対象とした超高速高感度計測 技術の研究開発 (2) 絶縁診断アルゴリズムの研究開発 (3) ユビキタスインテリジェントセンサの研究 (4) 高電圧雷インパルス試験波形解析 (5) 電力経済工学とアセットマネジメント (6) 雷放電シミュレーション手法の研究開発 自作した300kVテスラコイル(上)と200kV試験用変圧器(下)
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