第3回大東文化大学大学院文学研究科交流研究発表会

大東文化大学大学院
第三回 文学研究科交流研究発表会
日時
場所
2016 年 7 月 25 日(月) 14:00 より
大東文化大学板橋校舎
2 号館 2 階 20220 会議室
書道学専攻 博士前期課程二年
山下 敬起
西周康王期における金文の字形考察
青銅器の最盛期といわれる西周初期の字形に魅力を感じ、西周初期でも「大盂鼎」
「小盂鼎」
「庚贏 」など合計 16 器
が出土したとされる康王期の青銅器に絞り研究をする。これらの康王期の金文を比較研究することで字形の特徴を見出す
ことが目的である。第一章では康王期金文の字形考察を行っていく。比較研究の方法として、第一節では同一文字に限定
し 1, 点画の太細 2, 点画の長さ 3, 直線の角度 4, 曲線の反り、張り 以上の 4 点を比較する。第二節の偏と旁も同様に行
う考えである。第二章では他の王期の金文と同一文字の比較研究を行う考えである。現段階で考えているのは、前後の成
王、昭王の時期で考えている。終章では西周康王期金文の字形考察を通して特徴を分析する。
英文学専攻 修士課程二年
飯島 慧巳
The Yellow Wallpaper と女性
Charlotte Perkins Gilman (1860 - 1935) の代表作である、The Yellow Wallpaper (1892) は、これまで英米文学における
フェミニズムの先駆けとなる作品として批評されてきた。本発表では、当時の時代背景や Gilman 自身の生い立ちなどを
鑑みて、当時の精神医学における女性という観点から作品を考察する。
日本文学専攻 博士前期課程二年
根岸 大輔
七〇年代の村上春樹 ――終わった後の物語
一九六〇年代後半に大学生だった、いわゆる「団塊の世代」が起こした「全共闘運動」と呼ばれる社会運動と、それが
終わってしまった後の七〇年代には、現在に続く若者思想の源流があると筆者は考える。当時の若者は何を求めていたの
か、叛乱は何故失敗し、後の世代に何を残したのか。
本論では七〇年台を全共闘運動が〈終わった後〉とし、村上春樹の処女作「風の歌を聴け」を用いて、その時代の若者
が何を見聞きし、どのような事を考えていたのかを考察するものである。全共闘運動の原因と結果を分析し、七〇年当時
における若者の思想を物語に読み込むことを、本研究の目的とする。
中国学専攻 博士前期課程一年
奥田 倖史
消える女としゃべらない男―「李娃伝」は誰の物語か―
「李娃伝」は、そのタイトル通りに理解すれば、李娃という人物の伝記ということである。また、冒頭において、作者
とおぼしき人物が「李娃という妓女の特異な行いを顕彰するために書いたものである」と明言している。これらのことを
踏まえると、この物語は、
「李娃」という人物を中心に展開されていると考えるのが普通であろう。
しかし、その物語は李娃の相手役として登場する「生(若者)
」と称される人物の行動や発言を中心に展開され、李娃
は物語の初めと終わりにしか登場しない。李娃の伝記であるはずなのに、李娃に関する記述は相手役の「生」のそれと比
べて圧倒的に少なく、その大半は「生」の動きに沿って展開されている。このような構成になっているにも拘らず、なぜ
「李娃伝」と称されているのであろうか。
発表者は、近代小説の研究に用いられる「提示と叙述」や「時間標識」という技法の観点から「李娃伝」を読み解くこ
とによって、の疑問に一つの解答を与えたいと考えている。