第十一回世界俳句協会日本総会報告 鎌倉 佐弓 街 路 樹 に 若 葉 が そ ろ い 始 め た 四 月 二 九 日 、第 十 一 回 世 界 俳 句 協 会 日 本 総 会 、第 五 回 世 界 俳 句 セ ミ ナ ー が 東 京・板 橋 グ リ ー ン ホ ー ル で 開 か れ た 。ゲ ス ト は 駐 日 モ ロ ッ コ 大 使 館 員 で 詩 人 の ア ブ デ ル カ デ ー ル・ジ ャ ム ッ ス イ な らびにベトナムの在ホーチミン日本国総領事館員で国際日本文化研究セ ンター研究員のグエン・ヴークインニューと国際性も豊かである。 総 会 の 司 会 は 清 水 国 治 。始 め は 、協 会 の 年 刊 出 版『 世 界 俳 句 二 〇 一 六 第 十 二 号 』( 七 月 堂 、 二 〇 一 六 年 ) の 編 者 の 夏 石 番 矢 か ら 同 著 が 四 八 ヶ 国 三 三 言 語 、一 六 四 人 に よ る 多 言 語 俳 句 選 集 と な っ た こ と の 報 告 。さ ら に 鎌 倉 の 会 計 報 告 、二 〇 一 五 年 九 月 四 日 か ら 六 日 に か け て 東 京 で 開 催 さ れ た「 第 八回世界俳句協会大会」の山本一太朗実行委員長による報告記と続いた。 こ の 大 会 参 加 国 は 全 部 で 十 四 カ 国 、人 数 も 三 日 間 で 百 六 十 名 参 加 と い う も の だ っ た 。そ の 後 ゲ ス ト の ジ ャ ム ッ ス イ か ら モ ロ ッ コ で の 俳 句 の 進 展 、お よび七月に開催予定の「第二回モロッコ俳句セミナー」についての説明、 続いて出席者全員による活動報告が行なわれた。 こ れ に 続 く 第 五 回 世 界 俳 句 セ ミ ナ ー は 、先 の 二 人 の ゲ ス ト に ス ペ イ ン 文 学研究者の齋藤康子を加えて行なわれた。司会は夏石番矢。 ま ず 木 村 聡 雄 が ジ ー ン ・ ル ブ ラ ン 編 『 Heart Breaths』( サ イ バ ー ウ ィ ッ ト ネ ッ ト 社 、イ ン ド 、二 〇 一 六 年 )に つ い て 発 表 。こ の 現 代 俳 句 ア ン ソ ロジーは、米国人のほかにカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、 日 本 な ど で 、世 界 俳 句 協 会 が 発 行 し て い る『 世 界 俳 句 』と は 異 な る メ ン バ ーが登場し、作品も新しさと多様性がある。 清 水 国 治 は 、俳 人 伊 丹 三 樹 彦 に つ い て 、写 真 と 俳 句 を 一 緒 に し た 写 俳 の 先 が け で あ る と 同 時 に 、今 年 九 七 歳 に な る が 、ま す ま す 元 気 で 句 作 に 熱 心 な こ と を「 蓮 咲 い て 風 そ の 上 を そ の 下 を 」の 分 か ち 書 き に 触 れ な が ら 言及。 鎌 倉 は 、清 水 国 治 の 三 冊 の 俳 画 集 を 取 り 上 げ 、清 水 国 治 の 俳 画 が あ る こ と に よ っ て 、芭 蕉 が 心 や 自 然 の 機 微 を 詠 も う と し て い た こ と 、清 水 国 治 自 身 の 持 つ 大 胆 さ 、夏 石 番 矢 の 句 の ダ イ ナ ミ ッ ク な 躍 動 感 が よ く 理 解 で き る とした。 会 津 太 郎 は 、 夏 石 番 矢 、 鎌 倉 佐 弓 著 『 百 俳 句 』( サ イ バ ー ウ ィ ッ ト ネ ッ ト 社 、イ ン ド 、二 〇 一 六 年 )の 収 録 句 の 自 由 さ に つ い て 例 を 挙 げ な が ら 発 表。 ベ ト ナ ム の グ エ ン ・ ヴ ー ク イ ン ニ ュ ー は 、 俳 句 雑 誌 『 ト ー 俳 句 』( ハ ノ イ 俳 句 ク ラ ブ 、二 〇 一 六 年 )を も と に 、ベ ト ナ ム の 自 然 を 生 か し た 俳 句 作 り の 試 み 、芭 蕉 の 俳 句 の 研 究 な ど 紹 介 。次 の 句 は 特 に 驚 き と 感 心 を も っ て 読まれた。 Giọt cà phê コ ー ヒ ー 一 滴 Không nói gì も の 言 わ ず Không nói gì も の 言 わ ず Tru Vũ チ ュ ー ・ ヴ ー (和 訳 グ エ ン ・ ヴ ー ク イ ン ニ ュ ー ) 齋 藤 康 子 は 、専 門 の ス ペ イ ン 研 究 を 生 か し て 田 澤 佳 子『 俳 句 と ス ペ イ ン の 詩 人 た ち 』( 思 文 閣 出 版 、 二 〇 一 五 年 ) を 丁 寧 に 読 み 解 く 。 ス ペ イ ン 語 圏 に 初 め て 俳 句 が 導 入 さ れ た の は 一 九 一 九 年 、メ キ シ コ の 詩 人 ホ セ・フ ァ ン・タ ブ ラ ー ダ に よ る と 信 じ ら れ て き た が 、実 は 一 九 〇 七 年 に は す で に 俳 句 は ス ペ イ ン に 知 ら れ て い た と い う 事 実 は 、我 々 日 本 人 に と っ て 貴 重 で あ る。 夏 石 番 矢 は 、金 子 美 都 子『 フ ラ ン ス 二 〇 世 紀 詩 と 俳 句 ジ ャ ポ ニ ス ム か ら 前 衛 へ 』( 平 凡 社 、 二 〇 一 五 年 ) を も と に 、 フ ラ ン ス の ポ ー ル = ル イ ・ ク ー シ ュ ー 、ジ ュ リ ア ン・ヴ ォ カ ン ス 、ポ ー ル・エ リ ュ ア ー ル の 三 名 の 俳 句 が 、日 本 の 俳 句 に 比 べ て も い か に 斬 新 だ っ た か 、わ か り や す く ま と め た 。 ま た 現 代 の フ ラ ン ス の ジ ョ ル ジ ュ・フ リ ー デ ン ク ラ フ ト『 夢 の 小 道 で 命 に 音 楽 を 入 れ る た め の 詩 』( デ イ エ リ ・ サ ジ ャ 社 、 パ リ 、 二 〇 一 五 年 ) で は、俳句でも一行、三行など自在な詩形式であることを指摘した。 石 倉 秀 樹 は 、『 世 界 俳 句 二 〇 一 六 第 十 二 号 』 に 掲 載 さ れ た 五 つ の 俳 論 を 簡 潔 に 発 表 し た 。夏 石 番 矢 の「 俳 句 と 世 界 」は 、俳 句 が 三 つ の 要 素 に よ っ て 一 つ の 世 界 を 生 み 出 し 、そ れ が こ れ か ら も 世 界 に 俳 句 が 広 が る 上 で 欠 か せ な い 。モ ロ ッ コ の ア ブ デ ル カ デ ー ル・ジ ャ ム ス イ「 ア ラ ビ ア 語 俳 句 は 可 能 か 」は 、ア ラ ビ ア 語 圏 の 詩 の 歴 史 に 触 れ つ つ 、俳 句 の 将 来 に つ い て 可 能 性 に 満 ち て い る 。米 の ジ ェ ー ム ス・シ ェ イ「 循 環 的 な 影 響 ― 俳 句 の 翻 訳 」 は 、俳 句 と い う 詩 の 翻 訳 は 、誤 解 も あ る が か え っ て 豊 か な も の を 生 み 出 す 。 ポ ル ト ガ ル・ブ ル ガ リ ア の ズ ラ ト カ・テ ィ メ ノ ヴ ァ「 俳 句 、女 の 色 彩 」は 、 俳 句 の 持 つ 女 性 性 に つ い て 鋭 く か つ 自 在 な 思 考 を 展 開 し て い る 。小 川 静 枝 「 フ ラ ン ス 圏 な ど の 俳 句 」は 、カ ナ ダ 、ベ ル ギ ー 、フ ラ ン ス 、ア イ ル ラ ン ド な ど の 詩 祭 で の 経 験 か ら 、実 際 に 俳 句 が 人 々 の 中 に 生 き て い る こ と の レ ポートである。 そ の 後 、懇 親 会 場 の レ ス ト ラ ン・サ ン イ チ に 場 所 を 移 し 、八 木 美 知 依 に よ る 二 十 一 弦 あ る い は 十 七 弦 筝 の 独 奏 、な ら び に 伴 奏 で 俳 句 の 朗 読 が 行 な わ れ た 。彼 女 の ダ イ ナ ミ ッ ク か つ 繊 細 な 演 奏 は こ れ ま で の 日 本 人 の 筝 の 常 識 を 超 え る も の で 、す で に 六 十 カ 国 か ら 招 か れ 演 奏 し て い る の も う な ず け る。ここでの司会は竹凡。 主 な 多 言 語 俳 句 朗 読 の 作 品 。 土の底 川は泣いている 明 日 の 町 グ エ ン ・ ヴ ー ク イ ン ニ ュ ー Sâu trong lòng dat sông thon thuc thành pho cua ngày mai Nguyen Vu Quynh Nhu 国 王 の 最 後 の 夢 は ピ ラ ミ ッ ド His last dream is an eternal life the pyramid 山笑ふ天高く詩客小さきと。 会 津 太 郎 Taro Aizu 石倉秀樹 shān xiào tiān gāo shī kè xiǎ o Hideki Ishikura 「 春 だ 」 叫 ん で 大 地 は 口 を 閉 じ た 鎌 倉 佐 弓 The earth cries out, “It’s spring” and closes its mou th Sayumi Kamakura イ ン ド ラ の 横 走 り の 火 矢 人 叩 く 竹 凡 Divine Indra Zigzag lightning arrows Beating mankind Chikubon 冬 の 朝 階 段 の 音 に も う ひ と り の 我 In the echose of the stairs Another me Winter morning 夏石番矢 Ban’ya Natusishi 柿 一 つ さ れ ど 無 限 の 青 き 空 長 谷 川 隆 A few kakis surplus of emptiness Takashi Hasegawa 丘 の 上 の 虹 透 き 通 る 約 束 A promise : the rainbow will become transparent on the hill Shinji Noya 木 の 陰 が 鱗 の ご と し 秋 の 道 The shadow of trees look like squamae an autmun road 野谷真治 山岸竜治 Ryuji Yamagishi な お 、齋 藤 康 子 は ス ペ イ ン の フ ェ デ リ コ・ガ ル シ ア・ロ ル カ の 詩 か ら「 ギ ター」を美しいスペイン語で朗読した。 会 の 様 子 は イ ン タ ー ネ ッ ト の YouTube で も 見 ら れ る 。 第 11 回 世 界 俳 句 協 会 日 本 総 会 ビ デ オ http://www.worldhaiku.net/movie/11th_J_conf_videos.html
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