社会保障論講義 2章「本当に重要なことだけを必要最 小限にまとめた社会保障入門」6節 学習院大学経済学部教授 鈴木 亘 6.介護保険制度の基礎知識 • 我が国の介護保険制度は2000年に開始。「保 険の原理」が比較的守られており、理論的にわ かりやすい。高齢者の負担も比較的大きく、「リ スクが同質な集団にかけられる」という保険の原 理に近い。また、保険料は、基本的に(応益負 担)。所得再分配という要素も小さい。 • もう一つの特徴は、(市場メカニズム)を一部取 り入れ、民間活力を利用した仕組み。居宅の介 護保険サービス分野は、全ての種類の業者に参 入が自由化され、株式会社や有限会社といった 営利法人でも経営できる。 • どの業者と契約するかという選択は、利用者 が自由に行なえる。( )、つまり行政による 福祉サービスの配給制度として、これまで利 用者の自由がなく、サービスの質が利用者に 問われなかった福祉の世界では、実に画期的 なこと。 • 望ましい特徴がある一方で、2つ残念な面。 • 一つは、公費の負担割合が非常に大きいこと。 全体の給付費の半分以上が公費で賄われて いる。 • もう一つは、創設当初の高齢者やその後の 高齢者に適切な負担を課さず、またもや財政 方式として( )を採用してしまったこと。 保険料と公費負担 • わが国の介護保険制度は大まかにいうと、 ( )以上の全住民から介護保険料を徴収 し、原則( )以上で要介護状態になった場 合に、介護保険サービスを( )の自己負 担で受給できるという制度です。 • 保険者は、基本的に各市町村。( ) としていくつかの市町村がまとまって運営して いるところもある。 • 保険料の徴収ベースは、65歳以上を ( )、40歳から64歳を( )とし て分け、前者は年金給付額からの天引き、後 者は医療保険と合算しての徴収が行われてい る。 • それぞれの負担する額は、まず国全体のレベ ルでは、1号被保険者と2号被保険者の人口 割合に応じて、現在、給付費のそれぞれ19% と31%を負担することになっている。1号被保 険者の保険料負担は、現在、平均的には月当 たり4090円。住んでいる自治体のサービス水 準によって大きく異なる。 • 所得再分配要素として、自治体ごとに決めら れている保険料基準額を元に、収入によって 5段階の保険料(最大基準額の1.5倍、最小基 準額の0.5)区分がある。減免制度は、災害な どの特殊な事態がない限り、基本的に認めら れない。 • 一方、2号被保険者の保険料率は、2008年現 在、政府管掌健康保険(きょうかい健保)で、 1.13%。1号被保険者の保険料は、( )に 一度、改定。 • 公費部分については、国が20%、都道府県と 市町村が12.5%ずつ負担し、残りの5%は財 政調整である( )。 給付の仕組み • 介護保険で介護サービスを受けられるのは、基本 的には65歳以上の1号被保険者で、介護が必要と 認定された( )及び( )。 • 介護サービスを受けたい希望者は、まず、市町村等 の保険者に要介護認定の申請を行う。すると、市町 村のケースワーカーや保健師などが派遣され、詳 細な項目について日常生活動作にかかる時間や状 況の調査を行い、機械的にコンピューターによる要 介護度の判定が行なわれる。次に、医師の意見を 加えて、保険者に設置された介護認定審査会にお いて最終判断が行われて、申請者に通知される。 図表 2-16 要介護認定の流れ 名前 具体的な内容 STEP 1 申請 本人や家族のほか、在宅支援事業者などが申請書類を市町村の窓口へ提出 STEP 2 訪問調査 市町村職員や介護支援専門員(ケアマネジャー)が訪問し、82項目の調査票について聞き取り 準備 STEP 3 コンピューター判定 訪問調査の結果をコンピュータを使って判定(第1次判定) 実施 STEP 4 介護認定審査会 介護の必要度合いについてのかかりつけ医師の意見書と1次判定の結果に基づいて第2次判定を行う STEP 5 認定通知 介護認定審査会で決定された要介護度が本人に通知される(申請から30日以内) STEP 6 介護サービス計画作成 ケアマネジャーが本人や家族の希望を聞きながら、サービス計画を作成する STEP 7 サービスの利用 サービス計画に基づいて、在宅サービスを利用したり、施設へ入所したりする。 • 通知される要介護認定の区分は非該当(自 立)・要支援(1・2)・要介護(1~5)。利用可能 なサービスの上限額( )が設定されて いる。その後、( )という介護サービス 利用のスケジュール表を、 ( )が作成する。ケアマネー ジャーは、要介護者・要支援者の状況に合わ せてケアプランを作成し、利用業者の選定か ら発注までを行う。 図表 2-17 在宅サービスの支給限度額と利用者負担額(月額) 要介護度 要支援1 要支援2 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5 身体の状態(目安) 利用できるサービス 1ヶ月の利用限度額 自己負担(1割) の目安 日常生活の能力は基本的にあるが、 要介護状態とならないように一部支援 介護予防サービス が必要。 立ち上がりや歩行が不安定。排泄、入 浴などで一部介助が必要であるが、身 介護予防サービス 体の状態の維持または改善の可能性 がある。 立ち上がりや歩行が不安定。排泄、入 介護サービス(介護給付) 浴などで一部介助が必要。 49,700円分 4,970円 104,000円分 10,400円 165,800円分 16,580円 起き上がりが自力では困難。排泄、入 介護サービス(介護給付) 浴などで一部または全介助が必要。 194,800円分 19,480円 267,500円分 26,750円 306,000円分 30,600円 358,300円分 35,830円 起き上がり、寝返りが自力ではできな い。排泄、入浴、衣服の着脱などで全 介護サービス(介護給付) 介助が必要。 日常生活能力の低下がみられ、排泄、 入浴、衣服の着脱など多くの行為で全 介護サービス(介護給付) 介助が必要。 日常生活全般について全介助が必 要。意思伝達も困難。 介護サービス(介護給付) • 利用できるサービスの種類は、大まかに、① 居宅(在宅)サービス、②地域密着型サービス、 ③施設サービスの3つ。 • 居宅サービスは、訪問介護( )、訪問 入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、 通所介護( )、通所リハビリテーション ( )、短期入所生活介護・短期入所療 養介護( )、特定施設入所者生活介 護( )などが存在。 • また、地域密着型サービスとしては、認知症 対応型通所介護( )や、認知症対応 型共同生活介護( )がある。 • 施設サービスは3種類で、介護老人福祉施設 ( )、介護老人保健施設 ( )、介護療養型医療施設 ( )となっている。この施設介護 の分野は、居宅サービスとは異なり、参入が 規制されており、社会福祉法人や医療法人、 自治体などに設立主体が限られている。 • また、医療計画と同様、自治体は ( )として、施設の「必要入所定 員数」を定め、それを超える施設の設置が申 請された場合に、拒否できる仕組みとなってい る。 図表 2-18 介護保険サービスの種類 居宅(介護予防)サービス 訪問サービス 訪問介護(ホームヘルプサービス) 訪問入浴介護 訪問看護 訪問リハビリテーション 居宅療養管理指導 通所サービス 通所介護(デイサービス) 通所リハビリテーション(デイケア) 短期入所サービス 短期入所生活介護(ショートステイ) 短期入所療養介護[老健](ショートステイ) 短期入所療養介護[病院等](ショートステイ) 福祉用具・住宅改修サービス 福祉用具貸与 福祉用具購入費 住宅改修費 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、ケアハウスなど) 介護予防支援・居宅介護支援(ケアマネージメント) 地域密着型(介護予防)サービス 夜間対応型訪問介護 認知症対応型通所介護(デイサービス) 小規模多機能型居宅介護 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 地域密着型特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、ケアハウスなど) 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 施設サービス 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 介護老人保健施設(老人保健施設) 介護療養型医療施設(療養型病床群) • このため3施設では、入居費を含めた利用費 が特定施設よりもかなり低いことと相まって、 (待機者問題)が深刻。現在、全国で40万人 程度の待機者が存在するとみられており、2~ 5年程度待つことは当たり前。 • サービスの時間当たりの利用料金は、 ( )として、医療保険同様に統制 価格で固定されており、その1割を利用者が自 己負担をし、残りの9割を保険者が支払う仕組 み。 • この介護報酬単価も、保険料と同様に、3年に 一度改定される。 2005年改革 • 2005年介護保険改革の概要 • 介護予防サービスや地域支援事業の創設 • 施設介護入居者に対する食費と居住費の一 部の自己負担化 • 立ち入り調査権や適正化指導などの自治体 権限の強化( ) • 特定施設に対する総量規制導入 • の介護予防サービスとは、要介護度状態にな ることや要介護度の進行に対する予防を中心 としたサービスで、要支援者や要介護者の一 部が利用できる。これに対して、要支援と判定 されない人々にも利用できるサービスとして、 地域支援事業が創設され、総合相談や虐待 防止などの支援を介護保険からの費用で実 施。 • 施設介護の入居者については、1割の自己負 担のほかに、これまで介護保険から支払われ ていた食費や部屋の居住費( ) が自己負担となる。 • ただし、経過的軽減措置が行なわれているほ か、所得状況によって食費や滞在費が補助さ れる(補足給付)という仕組みが導入されてい ますので、それほど大きく費用負担が上昇し たわけではなく、依然、居宅介護に分類されて いる特定施設との費用負担の差は大きい。 • さらに、2006年から自治体が精力的に行 なっているのが、特定施設に対する ( )。 • 保険料上昇を何とか押さえたい自治体の要望 もあり、特定施設にも参入規制の網がかかる ことになってしまった。
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