初期治療で4週間の大量ステロイド連日投与を行わず治療

小児特発性ネフローゼ症候群
定義
ネフローゼ症候群は糸球体基底膜障害の結果、高度蛋白尿、低蛋白血症と全身性の浮
腫が起こる。
初発時診断基準
高度蛋白尿 3.5g/日以上 あるいは 100mg/kg/日以上 の少ないほう
低蛋白血症 6.0g/dl以下 ただし乳児は5.5g/dl以下
*高コレステロール血症を伴うこと多し、浮腫はこの結果生じるものであり診断の補助
再発: 寛解後尿蛋白40 mg/hr/m2 以上あるいは試験紙法で早朝尿蛋白100 mg/dl 以上
を3 日間示すもの
頻度
わが国では、1 年間に約1300 人が新規発症例として小児慢性特定疾患治療研究事業に
報告され、これによると1 年間に小児10 万人に5 人が発症する。
特徴
ステロイド反応良好 90%
反応不良
10%
反応良好群のうち
35% 再発なし
35% 数回再発
30% 頻回再発
治療指針
初発時の治療
プレドニゾロン
(1)60 mg/m2/日(約2.0 mg/kg 標準体重/日)分3 連日投与 4 週間(最大80 mg/日)
(2)40 mg/m2/日(約1.3 mg/kg 標準体重/回)隔日朝1 回投与 4 週間(最大80 mg/回)
ただし、(2)の減量方法にかんしては、主治医の裁量にゆだねられる部分が大きい。
(注1、2、3、4)
再発時の治療
プレドニゾロン A またはB を選択
(A)(1)60 mg/m2/日(約2.0 mg/kg 標準体重/日)分3 尿蛋白消失確認後3 日まで
(最大80 mg)
(2)40 mg/m2/日(約1.3 mg/kg 標準体重/回)隔日朝1 回投与4 週間(最大80 mg/回)
(B)(1)60 mg/m2/日(約2.0 mg/kg 標準体重/日)分3 連日投与尿蛋白消失確認後3 日
まで~4 週(最大80 mg/日)
(2)60 mg/m2/日(約2.0 mg/kg 標準体重/回)隔日朝1 回投与 2 週間
(最大80 mg/回)
(3)30 mg/m2/日(約1.0 mg/kg 標準体重/回)隔日朝1 回投与 2 週間
(最大40 mg/回)
(4)15 mg/m2/日(約0.5 mg/kg 標準体重/回)隔日朝1 回投与 2 週間
(最大20 mg/回)
ただし、(2)以下の減量方法に関しては、主治医の裁量にゆだねられる部分が大きい。
長期漸減療法も適宜選択する。(注5、6)
注1:持続性血尿、高血圧、腎機能低下、低補体血症を伴う、発症が生後6 か月以内など
微小変化型以外の病型が疑われる場合、プレドニゾロン投与開始前に腎生検を施行する。
治療における問題点
内服ステロイド剤の副作用
–
–
–
–
–
–
小児科領域でもっとも深刻な副作用……..成長障害、骨粗しょう症
眼
緑内障、白内障
皮膚
皮膚線条、多毛、脱毛、にきび
消化器 消化管かいよう
循環器 静脈血栓症、動脈血栓症、大腿骨頭壊死、心筋障害
内分泌 副腎皮質機能低下、中心性肥満
–
神経
精神症状
などなど
※内因性ステロイドの産生は内服後数時間で低下し、持続使用によって副腎皮質機能はすぐに回復しないため、漸減中
止が必須である。
免疫抑制剤の副作用
シクロスポリン、、、腎毒性…血中濃度採血、2-3年に一度Bx
発がん性
エンドキサン、、、、、発がん性、特に膀胱腫瘍、リンパ腫
ミゾリビン、、、、、、、発がん性、高尿酸血症
MMP、、、、、、、、、今後認可されるか?免疫抑制、高尿酸血症
初期治療で4週間の大量ステロイド連日投
与を行わず治療したステロイド感受性小児ネ
フローゼ症候群の予後について
北里大学医学部小児科、大和市立病院♯1、綾瀬厚生病院♯2
中村信也、松浦由希子、岩波直美、越野浩江、守屋俊介、飯高喜久雄♯1、
河西紀昭♯2、石井正浩
背景
小児特発性ネフローゼ
→
ステロイド初期治療
???????使用法は?
隔日漸減方式
大量4週使用後で減量
ISKDC
連日漸減方式
大量4週以内で減量
小児ネフローゼ症候群薬物治療
ガイドライン作成委員会
その他長期隔日漸減方式
国際法との比較
60/m2
北里方式
ISKDC
60mg/m2
60mg/m2
40
40
30
20
10
4週
5
4週
2週ずつ隔日漸減
消失3日まで
(最長4週)
Case by caseで使用
対象
平成3年~12年に北里大学病院で治療したステロイド
感受性ネフローゼ症候群 35例
年齢 2歳~15歳 (平均8.4歳)
男
23人
女
12人
結果
平均観察期間5.5年
経過中微小変化群と考えられた症例
→
28例
治療前に慢性腎炎と判断されず初期治療を行った症例
→7例 (IgA 2例、nonIgA 3例、 FSGS 2例)
全体
35
8.4才
11日
腎炎加味
7
9.5才
10.7日
MCNS?
28
8.0才
11.3日
初期治療に要
した日数
99日
112日
96日
治療1年目の
再発
1.45回
1.85回
1.41回
治療1年目の
ステロイド量
4.1g/M2
5.2g/M2
3.9g/M2
再発時期
36週
30週
37週
例数
平均年齢
60mg/M2
投与期間
60mg/M2初期投与日数と再発時期
再発までの週数
再発なし
250
200
150
100
50
0
0
5
10
15
60mg/M2投与日数
20
25
30
60mg/M2初期投与日数と1年目再発回数
再発回数
7
6
5
4
3
2
1
0
0
5
10
15
60mg/M2投与日数
20
25
30
Initial 6,12 months classifications
Non relapser
Kitasato(6→12m)
45.5% (→ 31%)
Infrequent relapser
47.5% (→ 62%)
Frequent relapser
7%
( → 7%)
ISKDC(6m)
40.8%
20.1%
28.1%
(Polldck,JASN,1996)
結語
60mg/M2の平均投与期間は11日であったが、投与期間と再
発までの日数、一年間の再発回数の間に相関関係は認め
なかった。
35例全例において6ヶ月以内の再発率はISKDCより少なく
頻回再発はさらに少なかった
(54.5%vs 59.2%、7%vs28.1%)。
発症一年目のステロイド投与量は平均4.1g/M2で、ISKDC
の平均5g/M2に比し少なかった。
考察
小児特発性ネフローゼ症候群の治療ガイドラインは固まりつつある
も、初期4週間の投与は必要とされ、4週以内に減量することに対す
る検討はあまりされていない。
ISKDC再発時プロトコールの変法を用いて初期治療を行ったが、
1年間のステロイド投与量は少なく、ISKDCの初期治療以上の効果
が得られる印象があった。
60mg/M2投与期間を短縮しても再発までの期間、再発率が変わら
ないのであれば、短縮により高用量ステロイドによる合併症を減らせ
るのではないか?
蛋白尿はなぜ出るか?
糸球体異常
基底膜の変化
構築異常→IVコラーゲン異常….alport syndrome
電荷の喪失→ 微小変化型ネフローゼ。。。これだけが原因ではないが、、、
上皮細胞の変化
スリット膜→ ネフリン、ポドシン異常…先天性ネフローゼ、微小変化型ネフローゼ、FSGS
尿細管異常
尿細管組織の破壊→間質性腎炎
※通常糸球体から5-15mg/dlの蛋白が漏れ出ており尿細管で再吸収している。