財務管理論前期(12)

1
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
財務管理論
前期第12回
企業の財務行動は健全とは限らない
Stock buybacks, Recapitalization
MBO PEF PIPES Buyout Funds
官民ファンド
2
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
自社株買いは 目的が健全とは限ら
ない
 増資
 行き詰まって行うこともある
 資本金をともかく増やす必要
がある なども
 増資はそのままでは希薄化
 自社株買いを組み合わせる
 自社株買い+増資あるいは
CB発行
 そして
 自社株買い+借入
 自社株買い
 マネーゲームになっている場合
もある
 自社株買い 株価上昇 借入
増加 自社株買い ストックオ
プション ・・・・
3
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
エクイティファイナンス
 基本的目的は自己資本比率の改善だった
 基本的にはダイルーションに結びつくため市場の反応は下げが
生じる。
 手法として 増資 のほかに 転換社債発行
 ダイルーションを避けつつファイナンスするために、自社株買いを
目的の一つとするものが出てきた。
 転換社債の発行では全額を自社株買いに使うものも出ている。
4
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
増資とその目的
 買収資金の確保
 成長資金の確保
 負債処理
負債の償還・買入消却
 過去の優先株処理
 自社株買い
5
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
転換社債
 低金利(利息なしも)
 協調融資の切り替え
 自己資本比率を高める
 自社株買いと組み合わせるものも(recap CB)。
低コスト資金で自社株減少を狙う
資本構成比率の再編成になり自己資本利益率改善効果
実施しただけ自己資本比率は低下しレバレッジ効果が出る
資本コストは減少する
6
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
Recap CB
 Recapitalization CB の意味:資本コストなど 資金調達以外の
目的で市場が使われるようになった ことは大きな変化
 日本では2008年2月のヤマダ電機のケースが最初
 CBを発行(公募私募) 同規模(手元資金合わせ多いことあるい
は少ないこともある)の自社株買いを同時にかけるというもの
 その意味 資本コスト(株式減らして 低コストCB発行)を下げる
ROEの引き上げ狙う
株主を入れ替える(CBを 私募する場合)
7
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
有利子負債の増加
 成長への自信
 低利局面の利用
 短期借入金の返済(長期化)
 自己資本利益率の改善
レバレッジ効果 自社株買い ⇔ 資本効率改善
8
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
自社株買いは企業の成長と矛盾
 自己資本比率 低下 負債比率 悪化につながる。
 借金で行う自社株買いにはそのマイナス面が強い
 アメリカでは経営者へのストックオプションで株が増える対策とし
て借金をして自社株買いする企業も=経営者への報酬を借金で
やっているのと同じ。
 企業の成長のための研究開発投資(R&D)でなく自社株買いが
盛んなアメリカ企業は異常とみるべきではないか。
 日本で自社株買いが盛んになっているが、株価上昇が目的で
あって支持できることではない。⇒ 企業経営としておかしくはな
いか。R&Dや自己資本比率改善が目的であるべき。
9
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
自社株買いをどう考えるか
 自己資本比率が十分高いこと
 手元資金が十分高いこと
⇒ こうした状況であれば株主への利益還元策として自社株買い
は容認できよう(福光)
・・・・・・米国流のファイナンス論では、自己資本比率をできるだけ
小さくすること(レバレッジ倍率をあげるため、あるいは資本効率を
改善するため)、手元資金を圧縮すること(買収ターゲットになるこ
とを避けるためと経営者のムダ使い防ぐため)を目的としているた
め、どうしても自社株買いが推奨される。
10
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
配当と自社株買いの比較
配当
自社株買い
直接受益者
株主全員
買いに応じた株主
株価が上昇したら
株主全員
株主全員
メッセージ効果
今が割安⇒投資家が買い行動
発行済み株式数減れば
1株当たり利益上昇 ⇒ 株価↑
マイナス面
自己資本比率減少
マイナス面
R&D投資を減少させる
11
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
借入による自社株買いもある
会社を使ったmoney game
12
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
自社株買いで株数減少
流動金融資産は抑制⇒自社株買い
経営者にストックオプション
資金
自社株買
い
調達と手
元資金
信用力
株価
増加
上昇
時価総額
増加
13
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
株主利益と対立するものもある
Management buyout:MBO
における利害対立 MBOの意味
14
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
MBO: 一つの説明 債務コストの減
少 株式コストの増加
 低金利と株安が背景 対象企業はCF安定型
 株による資金調達困難 見方を変えると株式による資金調達コス
ト上昇 また上場コストの上昇(株安)
 他方で借入コスト低下(低金利 2011頭:4%前後 2010後半:買
収F向け融資利ざや3%程度
 負債を増やして株を買い取り非上場へ(自社株買いの面)
資本コスト引下げの合理的行動と解釈できる面がある。
・・・・・・・・・・財務管理論での説明
15
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
MBO:説明としての親企業の戦略
スピンオフspin off
 大企業の子会社についての選択を反映。親会社の企業価値の
維持向上に分離独立が良いか社内化がよいか。
 ⇔ 親子上場状態の解消問題
・・・・・・証券市場論での説明
 非中核子会社はスピンオフspin off・・・分離独立認める。
 中核であれば完全子会社化(内部組織化・・・独立を認めない)。
 なお後継者難の中小企業の売り物もあり。
16
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
MBO: なぜ退場が選ばれるのか
もう一つの説明は短期主義批判
 市場の衰退につながる
 背景としての投資家の短期主義・・・・経営も短期的視点に振り回さ
れる 長期的戦略を企業はたてにくい
 成長戦略・事業構造の組み替え・・・業績悪化 株主は我慢するかど
うか
 上場公開 経営に規律付け与え経営を透明にする‥というお話
しかし現実には
 投資水準 非公開企業は公開企業より高い傾向
改革の方向
 長期保有を優遇する配当・税制
 運用者の報酬を長期に成績に連動させる
17
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
なぜ非上場化が起きるのか
上場企業
非上場企業
資本コスト
高くなる傾向
下げられる
投資水準
株主への配慮必要
常に高められる
株高という局面
利用できる
利用できない
上場という地位
利用できる
利用できない
上場費用
発生する
発生しない
被買収リスク
高い
低い
18
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
MBO: 少数株主からの買取価格の
不透明性
 株主は上場廃止になると市場で売却できず、換金には買い取り
請求が必要。
 2007年9月 経済産業省がMBO実施の指針を公表 第三者委
員会の活用を掲げる 第三者委員会設置始まる
19
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
MBO:株主を裏切った2つの事例
 レックス(2006年8月業績下方修正 2006年11月TOB発表 過
去1ケ月+13.9%) 株価算定のプロセスや算定根拠(株価算定
評価書)を示せず 2008年9月 東京高裁はTOB価格を10万
上回る価格(約33万円)を公正な価格と決定 最高裁決定(2009
年5月)
 サンスター(2006年業績下方修正 2007年2月TOB発表(650
円 過去6ケ月+19%) 大阪高裁は発表直前に行われた2006年
11月業績下方修正を安値誘導工作と指摘 決定1年前の株価
700円+20%:840円を妥当とした。2009年9月)
20
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
MBO:買取価格
 経営者ができるだけ安く買おうとする利害と、株主の意向にそって高
く売らねばならない利害との間に「利益相反」。究極のインサイダーと
もされる。
論点
 算定期間をどうするか(1ケ月平均 6ケ月平均)
 プレミアム(上乗せ幅)・・上乗せ幅の根拠(20%台多い)
改善の方向
 算定根拠(評価報告書)の明示 第三者意見の添付の義務化
 算定期間直前の操作の排除(例 業績下方修正などの情報操作の
有無)
21
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
MBO 目的が健全とは限らない
 理屈はスプンオフ カーブア
アウト
 しかし実は既存の株主の締
め出し=スクイーズアウトが
狙いの場合も。
 少数派株主から株を安い値
段で買い取り、企業を買収。
非公開化。
22
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
株主への裏切りとファンド
PEFとPIPES 官民ファンド
23
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
PEFs:private equity funds
 非公開株投資 代替投資alternative investmentの一分野(非公
開株 土地 商品 ヘッジファンド)
 創業期非公開企業に投資 ベンチャーキャピタルventure capital
 成熟期公開企業に投資して非公開化 バイアウトファンドbuyout
funds 公開企業の非公開化 買収ファンドと呼ばれることもある
 世界三大御三家 カーライル(12.05上場) KKR ブラックストー
ン(07.06上場)
24
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
PIPEs(パイプス)
 Private Investment in Public Equities
 PEF(買収ファンド)に対して上場会社が第三者割当するもの
 1)創業期企業への出資
 1)資金調達に窮した成熟企業への出資
つまりPEFの動きを投資行動としてみるとPIPESになる
 PEFからみると投資(市場価格より安く入手 経営にも関与 投資
回収上 意思決定変わらないのは難点 株価が経営改革や投資
回収制約)
 上場企業の立場維持 迅速な資金入手 上場廃止に抵抗感
ファンドの経営力・資金力に期待
25
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
日本では担い手として
なぜか増える官民ファンド
 企業再生支援機構(日本航空など・)を地域経済活性化支援機構
に改組130318発足
 産業革新機構(ジャパンデイスプレイなど)
 原子力損害賠償機構(東京電力)
 東日本大震災事業者再生支援機構
 農林漁業成長産業化支援機構
 ・・・・出資分が劣後ローンなどが事業の成長で戻ることを想定:財
務省としても折り合える
 民間がでないから官がリスクの担い手か
 あるいは官の肥大化なのか?
26
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
続々と官民ファンドを作られている
 リスクの担い手か官僚の天下り先か?
 海外進出支援ファンド
 不動産の耐震化促すファンド
 農業の再生・・・・
27
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
背景:金融機関主体のファンドは
できなくなった
 金融機関に対して新しい自己資本比率規制はファンド出資を厳
格に評価 企業再生から手を引く必要
 産業再生機構(2003設立 07解散)の成功経験
 企業再生支援機構 2009・09設立 地方の中小・中堅企業の
再建を支援
 官は信用保証の力を使って資金を集める。金融機関はそこで安
心して資金を出す。官民ファンドが「投資」をする。しかし官民ファ
ンドに目利き(投資先の選別)はできるの?
28
地域経済再生支援機構発足
13/03/18
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
円滑化法廃止による全国5-6万の中小企業破綻に
備える
 資本金231億円 政府保証の出融資枠1兆円
 中小企業向け出融資に使う 中小企業の事業再生
 補正予算の30億円でファンドを全国に作る
 事業再生ファンドを全国に20
 地域再生ファンドを47都道府県に1つずつ
 総額で2000億円規模のファンド
 このほか中小企業再生支援協議会(再生計画の策定支援) 中
小企業支援ネットワーク
29
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
政府系金融機関
 日本政策金融公庫
する枠組みを新設
 日本政策投資銀行
中小企業 零細企業に劣後ローンを供給
30
Copyright:Hiroshi FUKUMITSU
演習
 自社株買いが正当化されるのはどのような場合か。述べなさい。
 自社株買いが好ましくない場合を説明しなさい。
 株式買収ファンドとして、民間のファンドと官民ファンドではなにが
どのように違うのかを説明しなさい。