2013年度法情報学演習 第15回 レポート(ゼミ論文)作成・講評 2014年1月23日(木) 東北大学法学研究科 金谷吉成 <[email protected]> 2013年度法情報学演習 1 2014年1月23日 最終レポート(ゼミ論文) 最終レポート(ゼミ論文) – 各自が選択し報告したテーマをレポートにまとめる – 各自が報告したテーマとは別に、ゼミ論文用にテーマ を選択し直してもよい 大学院科目として受講している者は、レポートに代えて判例 評釈を行うことを予定していたが、今回は報告テーマが大変 興味深い内容だったので、レポートで掘り下げることでも構わ ない。 形式 – ワープロソフトでA4印刷できるよう作成 – 電子メールにより電子的に提出 – レポート枚数および様式は問わない 個別報告の内容をまとめるだけでも最低2~3ページにはなる のではないか 提出期限:2014年1月31日(金) 2014年1月23日 2 2013年度法情報学演習 論文の構成 <例1> 章・節・款・項・目 <例2> はじめに 1. 問題意識 2. 本稿の構成 第1章 ○○○○ 第1節 ×××× 1. 2. 第2節 ×××× はじめに 第4節 小括 第2章 ○○○○ 4 ×××× Ⅱ ○○○○ 終章 **総括と今後の課題 Ⅴ 総括と課題 2014年1月23日 Ⅰ ○○○○ 1 ×××× (1) (2) 2 ×××× 3 2013年度法情報学演習 論文の構成を考える アウトラインの作成 – フリーライティング 論文を書き始める前に、トピックについて思いつくままに 何でも書き出してみる 「私はこう思う」「私が言いたいことは○○だ」というもの を見つけ、そこから枝を伸ばして論点を書き出していく さらに、各々の論点の根拠や具体例を挙げていく – cf. マインドマップ – 目次を作ったり、図を作ったりするのも効果的 見出しを付ける – 文章を書き始める前に付ける – 文章を書き終わってから付ける 2014年1月23日 4 2013年度法情報学演習 表現する 一文一義 – 一文はできるだけ短く – 一つの文で一つのことをいう 主語と述語を対応させる – 悪い例:「法情報学演習では、情報に関する法律 問題について、個別報告を行う。」 主語と述語が対応していない – 長い文章では気付かないこともある 接続助詞「が」はなるべく使わない – 悪い例:「法情報学演習ではさまざまなテーマを取 り扱ったが、どの問題も興味深かった。」 逆接なのか単純接続なのかわかりにくい 2014年1月23日 5 2013年度法情報学演習 注の付け方 頁毎 章毎 巻末 第2章 ○○○○ 1. 総説 ~~~~~~~~ ~~~~1)、~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~2)。 ~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~24)。 参考文献 1) ~~~~~~。 2) ~~~。 2014年1月23日 注 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) ~~~~~~。 ~~~~~~。 ~~~~~~。 ~~~~~~。 ~~~~~~。 ~~~~~~。 ~~~~~~。 ~~~~~~。 6 <第1章> ○○『××』(△、2012) ○○『××』(△、2012) ○○『××』(△、2012) ○○『××』(△、2012) <第2章> <第3章> 2013年度法情報学演習 著作物の「引用」について 科学=先人たちの膨大な研究業績の積み重ね – 自然科学 ニュートンvs.アインシュタイン – ニュートン力学から相対性理論へ – 社会科学 歴史的所産の蓄積を基礎としてはじめて、新たな知見を築くこ とができる 「引用」は、先人に対する敬意であるとともに、後進 への橋渡しでもある – 出典を明示することで、読者が後でその情報にアクセ スでき、より深い知識が得られる – 引用の仕方や引用元の信頼性に誤りや問題がないか なと、事実関係が調査できる 2014年1月23日 7 2013年度法情報学演習 著作物の「引用」 「引用」とは – 著作権法32条1項「公表された著作物は、引用 して利用することができる。この場合において、 その引用は、公正な慣行に合致するものであ り、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目 的上正当な範囲内で行なわれるものでなけれ ばならない。 」 2014年1月23日 8 2013年度法情報学演習 適法な「引用」とは 公正な慣行に合致するものであり、かつ引 用の目的上正当な範囲内で行われるもの であること(著32条1項) カギ括弧を付けるなど、自分の著作物と引 用部分を区別すること(明瞭区別性)* 自分の著作物が主で、引用される他人の 著作物が従であること(主従の関係)* 出所(出典)を明示すること(著48条) *最判昭和55年3月28日民集34巻3号244頁。 2014年1月23日 9 2013年度法情報学演習 法律文献等の出典の表示方法 法律編集者懇話会 「法律文献等の出典の表示方法」 http://www.law.kobe-u.ac.jp/citation/mokuji.htm 2014年1月23日 10 2013年度法情報学演習 2013年度法情報学演習で扱ったテーマ 加藤「電子商取引及び消費者取引の成立について」 (2013/10/31) 高山「ファイル交換ソフトの法律問題」(2013/11/7) 菊地「Tor悪用事例と対処法」(2013/11/14) 秋田谷「著作権と情報・通信~まねきTV・ロクラク事件に 見る、TVのあり方と著作権~」(2013/11/21) 嶺井「国際訴訟~マレーシア航空事件、円谷プロ事件 ~」(2013/11/28) 中嶋「サイバー戦争」(2013/12/5) 佐藤「名誉毀損とインターネット」(2013/12/12) 神保「Facebookと個人情報保護について」(2013/12/19) 高橋「迷惑メール~インターネット、特定電子メール法、 損害賠償請求~」(2014/1/9) 田中「違法アップロードと違法ダウンロード」(2014/1/16) 2014年1月23日 11 2013年度法情報学演習 情報に関する法律問題 情報のデジタル化、ネットワーク化 – 情報の価値の高まり 劣化しない 大量のデータを処理することが可能 新たな付加価値が生ずることもある 容易に伝達することができる – 地球規模のコミュニケーション 新たな法律問題 2014年1月23日 12 2013年度法情報学演習 法律や制度はどうあるべきか 情報化が適切に進展するための制度整備 – 標準化、技術開発 – 既存の法律がデジタル化やネットワーク化の障害 になっているような場合は、法律の本来の目的を 損なわないようなかたちで障害を取り除く 規制緩和、環境整備 新たに発生する問題に対するルール整備 – 現行法によるルールが有効かどうか – 新たな法律・制度をどのように整備すべきか 実体法:法的責任の明確化 手続法:法的追求を容易にする手続きの整備 2014年1月23日 13 2013年度法情報学演習 今後の課題 今後も新しい問題が生ずる – いまはまだ法律や制度が十分に対応しきれて おらず、判例等の蓄積も多くない – 個々の具体的な事例等について、その都度考 えていく必要がある 法律の知識だけでなく、さまざまな分野の知識が必 要となる 広い視野を持って問題と向き合ってもらいたい 2014年1月23日 14 2013年度法情報学演習 最近の話題①:SNSでのトラブル FacebookやTwitterなどで、従業員や学生 等が不適切な書き込みを行う事例 – 未成年者の飲酒・喫煙、無免許運転や遺失物 横領、窃盗など犯罪行為の告白、犯罪予告 – 守秘義務違反、個人情報流出 病院に医療事務員として4月からの就職が内定し、 研修中の医療専門学校の学生が、twitterに「○○ (ある有名スポーツ選手)のカルテみてみた」との書 き込みを行った。(2013年1月16日) 学校は学生の処分を決定、学生は内定を辞退 一方で、企業等では、SNSの積極的な活用 が求められる面も 2014年1月23日 15 2013年度法情報学演習 最近の話題②:個人情報の意図せぬ収集 M2Mサービスの進展 – M2Mとは、Machine-to-Machineの略語で、ネット ワークにつながれた機械同士が人間を介在せず に相互に情報交換を行い、さまざまな制御を自動 的に行う仕組み 自動販売機の在庫管理、業務車両の位置情報、監視カ メラ、気象データの観測など これが進むと……?私たちの生活に直接関係する電化 製品(冷蔵庫、洗濯機、調理器、湯沸器、電灯など)もい ずれネットワーク化されるかもしれない – 便利になる反面、個人情報流出の危険が増大 GPS情報の利用 – スマホ、デジカメ写真(位置情報や撮影日時が自 動的に記録される) 2014年1月23日 16 2013年度法情報学演習 最近の話題③:ライフログ ライフログ(Life Log) – 人間の生活・行動を、デジタルデータとして記録す ること 食べた物、会った人、行った場所、読んだ本、買った物 などを記録 体重や体調、起床・就寝の時刻、エクササイズの記録 (歩数、消費カロリー数)、ドライブレコーダー ブログやSNSに書き込んだり、Evernoteなどのクラウド サービスを利用したり – 何の役に立つのか? 過去を楽しむ、将来の行動を予測する ウェブサイトで自動的に「おすすめ」が表示される、場所 や嗜好に合ったクーポン券を発行 – プライバシーへの不安 2014年1月23日 17 2013年度法情報学演習 最近の話題④:ソーシャルゲーム ソーシャルゲームの課金システム – 基本的には無料で遊べるが、アイテムやアバター などを有料で提供しているものが多い – 重課金で遊んでいる一部のユーザと、その他大多 数の無料ユーザ それでもペイする、むしろ現在の日本のゲーム市場は ソーシャルゲーム全盛時代になっている 何らかの「中毒」をもたらしているのではという懸念 出会い系サイトとして利用されることの懸念 射幸心をあおるコンプリートガチャ 消費者庁による規制の動き 未成年者への超過課金問題(未成年者へは月間利用 上限を設定しているが、システムの設計ミスにより、上 限を超過してゲーム利用料金を課金してしまった) 2014年1月23日 18 2013年度法情報学演習 最近の話題⑤:ステルスマーケティング ステマ – 2012年ネット流行語大賞 – 消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること、 口コミサイトに行為的な投稿を多数投稿するなどの手法が 用いられる 消費者庁の対応 – 消費者庁「インターネット消費者取引に係る広告表示に関 する景品表示法上の問題点及び留意事項」(2011年10月) 「商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段とし て、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼し て掲載させ、当該『口コミ』情報が、当該事業者の商品・サービス の内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に 係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認さ れるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題 となる。」 → 消費者庁による措置命令 → 命令に違反した場合は罰則 ただし、具体的な表示が景品表示法に違反するか否かは、個々 の事案ごとに判断される 2014年1月23日 19 2013年度法情報学演習 インターネット上の情報発信 ウェブ→ソーシャルメディア(SNS) – インターネットの特質 情報の広がり・拡散、反応の早さ 予想外の反応=炎上 コミュニティの種類と規模 1対1 → 知り合い、関係者 特定グループ → 仕事、趣味、サークル、ゼミ 不特定グループ → 共通の話題、趣味の情報交換 公開 → 誰でも見られる、誰が見るかわからない 規模が大きくなりすぎると、発言数が多くなり、情報を取 りこぼしたり、混乱したりする。混乱すると、魅力が失わ れて廃れることもある。 やっかいなのは、公開サービスで特定グループの場合 – Twitterで仲間同士の情報交換のつもりが世界に公開 2014年1月23日 20 2013年度法情報学演習 ソーシャルメディア利用時の注意点 1. 話題の選び方、表現によっては、意図しな いコミュニケーションが生じるおそれ 2. 想定外の閲覧者の目に触れるおそれ 3. 匿名性は不確実 4. 投稿の削除が困難 2014年1月23日 21 2013年度法情報学演習 意図しないコミュニケーション 悪気のない投稿内容が他人を不快にして しまう場合がある – さまざまな立場、地域、文化的背景、価値観 – 不正確、攻撃的、無配慮と思われる可能性 – 違法な行為、社会的モラルに反する行為につ いては、悪気がなくとも批判が巻き起こる可能 性(炎上) 話題の選び方、表現に注意する 公開メディアでは多様な閲覧者が存在することを意 識する 2014年1月23日 22 2013年度法情報学演習 想定外の閲覧者 友人・内輪のつもりの軽い投稿も、公開さ れてしまう可能性 – 公開範囲を制限する機能の有無・設定を確認 – 再掲載されて情報が拡散する可能性 – 想定外の他人に閲覧される可能性 – 想定外の他人には誤解・批判される可能性 公開範囲を制限したつもりでも、設定ミス・操作ミ ス・運営者のミス・システムの故障なども起こり得る 多様な閲覧者を想定して投稿する 2014年1月23日 23 2013年度法情報学演習 匿名性は不確実 実名:仮名:無名 匿名(仮名や無名)でも特定されることがある – 過去に行った複数の発言やプロフィールを分析し て特定 – 実名・所属・住所などの情報が暴露される可能性 プライバシー侵害、業務妨害 所属先への抗議、炎上 個人が特定される可能性を想定しておく – 身バレしても困らないように注意して行動 2014年1月23日 24 2013年度法情報学演習 投稿の削除が困難 不用意な投稿を後で削除しても、インター ネット上から完全に消し去ることは難しい – 検索サイトのキャッシュ – 第三者による複製・保存 – 引用、再掲載、アーカイブ 責任を持てるかどうかを考えて発言するしかない その一方で、SNSの公式利用への期待も大きい – 企業、大学、行政機関等の公式広報 – 公式アカウントによる情報発信 – 「中の人」の個人的な意見 2014年1月23日 25 2013年度法情報学演習 クラウドサービス利用時の注意点 クラウド – インターネット上で手軽に利用できる情報サービス – メール、SNS、掲示板・連絡板、検索、翻訳、ファイル 保存、ファイル交換、日程調整、日本語変換 – 業務の効率化や経費節減の効果も期待できる 安全か? – 利用時に、どのような情報がサービス提供者に送信さ れて蓄積されるのか – どういう範囲の人々に見られる可能性があるのか – 入力した情報をサービス提供者が再利用する可能性 内容そのもの、利用動向・履歴、利用者情報 無償サービス提供の対価は何か 利用規約をよく読む必要があるが、利用規約が変更になるこ ともある 2014年1月23日 26 2013年度法情報学演習 参考Web 法人におけるSNS利用に伴うリスクと対策 (JPCERTコーディネーションセンター) – http://www.jpcert.or.jp/research/sns2012.html SNSの安全な歩き方(日本ネットワークセ キュリティ協会) – http://www.jnsa.org/result/2012/sns.html 2014年1月23日 27 2013年度法情報学演習 おしまい この資料は、2013年度法情報学演習の ページからダウンロードすることができます。 http://www.law.tohoku.ac.jp/~kanaya/infosemi2013/ 授業アンケートのお願い – この場での記入をお願いします。 – 提出したら退席して構いません。 – レポート作成についての質問等があれば、引 き続き受け付けます。 2014年1月23日 28 2013年度法情報学演習
© Copyright 2024 ExpyDoc