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1
静岡県富士保健所
後藤幹生
低出生体重児・早産児の
◆1.定義と疫学
◆2.原因と予後
◆3.疾病と頻度
2
静岡県富士保健所
後藤幹生
低出生体重児・早産児の
◆1.定義と疫学
◆2.原因と予後
◆3.疾病と頻度
3
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 出生体重による定義
・○低出生体重児
・極低出生体重児
・超低出生体重児
・○正出生体重児
・○高出生体重児
2,500g未満
1,500g未満
1,000g未満
2,500g以上、4,000g未満
4,000g以上
◆ 出生週数による定義
・○○早産児○
37週未満(36週6日以下)
・○超早産児
28週未満(27週6日以下)
・後期早産児
34週以上37週未満
(34週0日~36週6日)
・○正期産児
37週以上、42週未満
(37週0日~41週6日)
4
・○過期産児
42週以上
静岡県富士保健所
後藤幹生
体高
重出
生
正
出
生
体
重
児
低
出
生
体
重
児
極
低
出
生超 生
体低 体
重出 重
超早産児
5
過期
産児
後期
早産児
早産児
〔板橋家頭夫 日小誌 2010 より〕
正期産児
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ H23年も2500g未満の割合は9.6%と横ばい。
6
〔低出生児保健指導マニュアル より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
23年
4822
2819
301
◆ H23年も1500g未満の児の体重別内訳は変化なし。
7
〔低出生児保健指導マニュアル より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
25
(%)
23.0
総数;100,378人
194人
20
15
10
9.7
1,294人
5
9.0
9,333人
8.8
9.4
26,335人 34,981人
10.6
12.5
4,684人
23,557人
-19歳 20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 40-44歳
45歳-
◆ 2500g未満児の割合は、40歳代から急上昇するが、
人数は、30歳代が半数以上を占める。
8
〔平成23年人口動態統計(確定数) より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
〔平成24年人口動態統計月報年計(概数)の概況 より〕
1.41
0.49
0.43
0.25
0.16
9
◆ H18年頃に、 25-29歳<30-34歳
20-24歳<35-39歳 と逆転。
12
(%)
11
10.9
10.2
10.5
10.5
静岡県
10.5
10.2
9.5
H15
H16
9.3
10.4
10.3
9.7
9.7
9.5
9.6
9.6
H18
H19
H20
10.4
11.0
10.7
10.3
9.6
9.4
全国
10.2
10.2
10.4
10
9
富士市
10.2
10.1
9.5
9.6
9.6
H21
H22
H23
9.1
8
H14
H17
◆ 富士市のH22、H23年の2500g未満の児の
割合は、県や全国と較べて高率に見える。
10
〔富士市の資料 より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
富士市
2500g以上の児の人数
2500g未満の児の人数
H20年+H21年
H22年+H23年
4,127人
440人
3,883人
474人
P=0.053
◆ 2年間ずつの比較では、有意な増加とは言えない。
H22年+H23年
富士市
静岡県
全国
2500g以上の児の人数 3,883人 56,673人 1,918,683人
2500g未満の児の人数 474人
6,395人
203,427人
P=0.119 P=0.000003
P=0.004
◆ 富士市だけでなく静岡県全体が、全国より高率である。
11
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆1.2500g未満の低出生体重児の割合は、この約10
年間では大きな変動はない。
◆2.1500g未満の極低出生体重児や10000g未満
の超低出生体重児の割合も、この約10年間では
大きな変動はない。
◆3.平成22年から富士市の低出生体重児の割合が
増加しているかどうかは、今後の集計の結果を
待つ必要がある。
12
静岡県富士保健所
後藤幹生
低出生体重児・早産児の
◆1.定義と疫学
◆2.原因と予後
◆3.疾病と頻度
13
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 理論上の2大原因
1.早産児の増加 …早産であるほど児は低出生体重
2.SGA*児の増加 …正期産児でも低出生体重が増加
*:Small for Gastational Age
◆ 社会的な原因
・出産年齢の上昇
・妊娠中の栄養摂取量の減少
・生殖補助技術による妊孕率の増加
・帝王切開率の上昇
14
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 感染
性器感染症、細菌性膣炎、絨毛膜羊膜炎、尿路感染症、
歯周病、性感染症、その他の全身感染症
◆ 母体合併症
は、公衆衛生の増進で予防可能
妊娠37週未満の前期破水、妊娠高血圧症候群、
前置胎盤、多胎妊娠、絨毛膜下血腫、羊水過多、
子宮頚管無力症、子宮頚管短縮、子宮形態異常、
妊娠中の体重増加不良、原因不明の性器出血
◆ 母体既往症
早産(特に妊娠中期の早産)の既往、前期破水の既往
◆ その他
15
胎児機能不全、母体の喫煙、母体のアルコール摂取、
若年(17歳未満)または高齢(36歳以上)の妊婦、
母体のやせ、経済的弱者
静岡県富士保健所 後藤幹生
◆ 喫煙妊婦は、喫煙しない妊婦と較べて、
・早産率は、1.4~1.5倍。
・児の出生体重は、平均200g軽い。
・2500g未満の低出生体重児を出産する率は、2倍。
◆ 妊娠3~4か月までに禁煙すれば、低出生体重児を出
産する頻度は喫煙しない妊婦と変わらなくなる。
◆ 両親とも喫煙していると、乳児突然死症候群(SIDS)を
起こす率は、4.7倍。
16
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ SGAの定義;出生時の体重・身長ともに在胎期間別出
生時体格標準値*の10パーセンタイルを下回る場合。
ただし、-2.0SDを下回る場合をいうこともある。
* http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_100924.pdf
◆ SGAの原因;
①胎盤・臍帯(33%); 臍帯付着異常、胎盤血管腫、胎盤梗塞、
胎盤機能不全、臍帯血管異常
②母体(30%);
低栄養、高地在住、妊娠高血圧症候群、
心疾患、呼吸器疾患、薬剤、麻薬、
アルコール、喫煙
③胎児(23%);
多胎、染色体異常、奇形症候群、
胎児感染症、先天性代謝異常
④不明(14%)
17
〔2012,神戸大学周産母子センター 藤岡ら〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ SGAの頻度;
入院新生児のうち、
正期産児の5割弱、
早産児の5割強、
超早産児の9割弱。
◆ SGAの児に起こり
うる問題;
①低身長
②発達障害
③脳性麻痺
④メタボリック症候群
18
〔2012,神戸大学周産母子センター 藤岡ら〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ SGAの児の身長の経過;
・SGAの児が成人になったときの平均身長は、-1SD。
・典型的には、1歳からcatch-up現象が始まり、2~4歳
までcatch-upは続く。
・最終的には、32週以上または1000g以上で出生した
児の90%、それ以外の児の70%は、3歳までに-2SD
以上の身長に達する。
◆ SGA性低身長症;
・定義;以下の3つを全て満たす。①SGA児
②出生時の体重または身長が週数相当の-2SD未満
③暦年齢2歳までに身長が-2SD以上にcatch-upせず
・成長ホルモン治療の開始基準;以下の3つを全て満たす
①暦年齢が3歳以上
②身長が-2.5SD未満
③身長の成長率が標準未満
19
静岡県富士保健所 後藤幹生
◆ SGAの児の脳性麻痺のリスク;
・在胎32週以上では、SGA児はAGA児の4~6倍の
脳性麻痺のリスクがある。
◆ SGAの児の発達障害のリスク;
・出生時の低体重・低身長・小頭囲が、発達障害の発症と
相関する。
・身長や頭囲のcatch-upが見られないSGA児が、発達
障害のリスクが高い。
◆ SGAの児のメタボリック症候群のリスク;
・SGAの児はメタボリック症候群の発症リスクが高い。
・幼児期・小児期の急激な体重増加は、肥満や高血圧の
リスクになる。
・その肥満のリスクは、乳児期の母乳栄養で予防できる
可能性がある。
20
静岡県富士保健所
後藤幹生
出生体重
500〜749g
750〜999g
1000〜1249g
1250〜1499g
性別
体重
頭囲
身長
男児
60か月以降
21か月
42〜48か月
女児
60か月以降
22か月
60か月以降
男児
22か月
15か月
30〜36か月
女児
22か月
14か月
30〜36か月
男児
16か月
10か月
30〜36か月
女児
15か月
7か月
24〜30か月
男児
13か月
7か月
21か月
女児
10か月
6か月
14か月
◆ 出生体重が小さいほど、catch-upは遅くなる。
21
〔板橋家頭夫ほか 新生児誌 1994 より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
kg 男児 体重
標準
−1SD
−2SD
10パーセンタイル
= ー1.28SD
3パーセンタイル
= ー1.88SD
http://www.niph.go.jp/wadai/mhlw/1992/h041222.pdf
歳
◆ 男女別に身長、体重、頭囲の発育曲線がある。
22
〔板橋家頭夫ほか 平成4年分担研究 より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
cm
標準
−1SD
−2SD
−2.5SD
−3SD
女児 身長
歳
23
〔板橋家頭夫ほか 平成4年分担研究 より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 在胎34週0日〜36週6日に出生した児。
◆ 正期産児に較べて、
・出生直後には、呼吸障害、黄疸、哺乳不良のリスクが
高い。
・乳児期には、母体からもらう移行抗体の量が少ない
ので、ウイルス性・細菌性の感染症のリスクが高い。
・乳幼児期には、脳性麻痺や発達遅滞のリスクが高い。
・学童期には、学校教育での問題が起こるリスクが高い。
24
〔低出生児保健指導マニュアル より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 定義;退院時の体重や身長、頭囲が、そのときの
修正週数における10パーセンタイル以下の場合。
◆ 子宮外発育遅延に関連する因子;
・在胎週数が短い。
・SGA。
・出生体重に復帰する日齢が遅い。
・経腸栄養の開始が遅れる。
・経腸栄養がフルに達する日齢が遅い。
・修正36週の時点で酸素投与を要する。
◆ 子宮外発育遅延の問題;
・その後の神経学的な予後や発育・発達と関連。
・NICU入院中の体重増加が18か月時の発達に関与。
・NICU入院中の母乳摂取量が30か月時の発達に関与。
25
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 在胎週数が短い児ほどより高率である。
◆ 体重が最も高率で、頭囲は低率である。
26
〔低出生児保健指導マニュアル より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
100
運動発達指数
精神発達指数
90
発
達
指 80
数
70
60
50
12.0
27
15.6
17.8
1日あたりの体重増加グラム数
21.2
◆ NICUでの体重増加が良いほど、発達も良好であ
静岡県富士保健所 後藤幹生
る。
◆
修
超正
低月
出齢
生で
1500~
1999g
体比
重較
児し
1000~
はて
1499g
運も
動、
発極
達低
が出
正期産児 <1000g
遅生
い、
。
修正月齢
8
28
10
〔低出生児保健指導マニュアル より〕
12
14
16
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 異常;以下の3つのいずれかに該当
①自立歩行が不可能な脳性麻痺
②両眼失明
③精神発達遅滞(DQの2項目<70+1項目<80)
◆ 境界;以下の3つのいずれかに該当
①自立歩行が可能な脳性麻痺
②片眼失明
③精神発達遅滞(DQの1項目<70+1項目<80
または3項目<80)
◆ 正常;上記以外
※ DQ項目;遠城寺式の「対人関係」 「発語」 「言語理解」
29
〔上谷良行ほか 平成16年度総括・分担研究報告書 より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
25.0
総合発達評価 境界
%
総合発達評価 異常
19.6
20.0
20.3
18.2
15.0
14.9
14.9
14.1
12.0
10.0
脳性麻痺
17.1
16.3
14.3
12.4
10.9
1990年
1995年
2000年
2005年
◆ より重症の児が救命されるので、全体的に増加。
◆ 総合発達評価異常と脳性麻痺は近年減少傾向。
◆ 総合発達評価境界は、増加傾向がつづく。
30
〔上谷良行ほか 平成16年度総括・分担研究報告書 より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
8.0
両眼失明
%
6.0
片眼失明
5.0
5.5
弱視
6.1
4.0
3.6
2.2
2.0
1.2
0.6
0.6
0.7
0.0
1990年
1995年
0.4
0.0
0.3
2000年
2005年
◆ 眼の障害は減少傾向。
31
静岡県富士保健所
後藤幹生
%
12.0
10.0
聴力障害
ぜんそく
11.1
8.0
8.0
6.0
4.0
2.0
てんかん
在宅酸素療法
反復性呼吸障害
9.2
8.6
7.2
8.1
4.3
3.6
5.1
3.8
3.7
4.6
4.4
3.7
4.0
3.2
2.2
2.2
2.4
1990年
1995年
2000年
1.7
0.0
2005年
◆ 反復性呼吸障害は減少傾向。
◆ その他は、横ばいがつづく。
32
静岡県富士保健所
後藤幹生
20.0
18.2
%
15.0
10.0
17.5
13.4
13.1
9.6
知的障害
13.5
境界知能
17.5
16.4
14.5
脳性麻痺
5.0
3歳
6歳
9歳
◆ 知的障害と境界知能は、6歳で増加するが、9歳では
増加しない。
◆ 脳性麻痺は、3歳以降は増加しない。
33
〔上谷良行ほか 周産期医学 2009 より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
15.0
両眼失明
片眼失明
%
12.6
弱視
11.1
10.0
5.5
5.0
3.7
2.2
0.0
0.6
3歳
2.2
0.9
6歳
1.8
9歳
◆ 弱視は6歳で、失明は9歳で、やや増加する。
34
静岡県富士保健所
後藤幹生
15.0
%
聴力障害
てんかん
AD/HD
9.8
10.0
5.8
4.3
5.0
4.2
0.0
1.6
2.0
2.0
3歳
6歳
9歳
3.3
◆ てんかんは、徐々に増加するが特に9歳で急に増加。
◆ 注意欠陥/多動性障害は、9歳で少し増加。
◆ 聴力障害は、増加しない。
35
静岡県富士保健所
後藤幹生
15.0
%
反復性呼吸障害
喘息
在宅酸素療法
10.9
10.0
9.1
7.8
8.8
5.0
3.8
4.0
0.0
0.0
0.0
6歳
9歳
0.0
3歳
◆ 在宅酸素療法は6歳で、反復性呼吸障害は9歳で
消失する。
◆ 喘息は、減少しない。
36
静岡県富士保健所
後藤幹生
0%
20%
6歳
60%
456 人
普通学級
就学猶予
9歳
40%
障害児学級
未定
204
80%
100%
27 29
養護学校
盲学校
10 13
◆ 6歳・9歳とも80%以上の児が普通学級に就学し、
3年後の進級による移動はほとんどない。
37
〔中村肇ほか 日小誌 2009、分担研究報告 2011 より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
10
6歳
100
50
10
1
1
1
1
1
1
1
1
10
1
正常
境界
10
9歳
100
50
10
1
1
1
1
1
1
1
1
1
10
1
1
1
1
1
1
1
1
脳性麻痺
10
10
1
1
1
1
1
1
1
1
◆ 6歳で脳性麻痺と診断されていた児の約30%は、
9歳で正常か境界まで改善する。
38
〔中村肇ほか 分担研究報告 2011 より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
10
6歳
100
1
1
1
1
1
1
1
1
10
5
9歳
100
1
10
1
5
10
正常
10
5
境界
1
1
1
1
1
1
1
1
10
5
5
10
1
5
1
1
1
1
1
1
遅滞
1
10
1
5
1
5
1
1
1
1
1
1
◆ 6歳での精神発達評価の約30%は9歳で変更される。
◆ 9歳で約40%は評価が改善し、約15%は悪化する。
39
〔中村肇ほか 分担研究報告 2011 より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 出生体重のSD値が小さいほど、不注意、多動性、
衝動性という特徴がより強く現れる傾向にある。
・このような行動問題は、兄弟の人数などの家庭環境
によって軽減される可能性がある。
・精神発達遅滞のある児の家庭では、物や経験を提供・
整備する環境に困難さがある。
・学習障害のある児の家庭では、生活習慣・しつけを
教える環境に困難さがある。
〔糸魚川ほか 2007 より〕
◆ 慢性肺疾患(CLD)だった超早産児は、学齢期になっても
末梢気道に閉塞性障害が残っている。 〔住田裕ほか 1996 より〕
40
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆1.早産児・低出生体重児が生まれる原因は、大きく
分けて、医学・医療の進歩と社会環境の変化の
2つの要素がある。
◆2.早産であるほど、低出生体重であるほど、児の
精神運動発達のハンディのリスクは大きくなるが、
こどもにはcatch-upしていく力がある。
◆3.早産児・低出生体重児のcatch-upの原動力は、
適切な栄養摂取と家庭環境である。
41
静岡県富士保健所
後藤幹生
低出生体重児・早産児の
◆1.定義と疫学
◆2.原因と予後
◆3.疾病と注意
42
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 定義;
先天奇形を除く肺の異常により、酸素投与を必要とする
ような呼吸窮迫状態が、新生児期に始まり日齢28を
超えて続くもの。
◆ 原因;
①絨毛膜羊膜炎などの子宮内の感染症
②サーファクタント欠乏の無気肺への人工換気
③上記①②から起こる白血球、貪食細胞等の活性化や
炎症性メディエータの亢進による未熟な肺への損傷
◆ 問題点;CLDの児は、
・NICUでの挿管・入院の期間が長くなる。
・在宅酸素療法となる率が高い。
・呼吸器感染症や喘息発作を繰り返し頻繁に入院する。
・精神発達遅滞・脳性麻痺のリスクが高い。
43
〔NICU看護の知識と実際 第4版 より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 出生体重が小さいほど高率で、600g台が最多。
44〔周産期母子医療センターネットワークデータベース2009
より〕静岡県富士保健所
後藤幹生
CLD at 28 d By gestational age
No
N=20485
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
Yes
No
◆ 在胎週数が短いほど高率で、26週が最多。
45〔周産期母子医療センターネットワークデータベース2009
mong
infants with live birth, remained and alive at 28 days of age
より〕静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 出生体重が小さいほど高率で、600g台が最多。
46〔周産期母子医療センターネットワークデータベース2009
より〕静岡県富士保健所
後藤幹生
HOT By gestational age
No
N=20554
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
Yes
No
◆ 在胎週数が短いほど高率で、24週が最
47〔周産期母子医療センターネットワークデータベース2009
より〕静岡県富士保健所
among
infants 多。
with live birth, remained and alive at discharge
38
39
40
後藤幹生
◆ 多呼吸が呼吸困難症状の中で、最も鋭敏で客観的
・普段から、その子の調子が良いときの1分間の呼吸数
を機嫌のよいときに計測して、知っておく。
◆ 多呼吸(異常に多い(速い)呼吸のこと)の目安;
・年齢によって、異なる。
年齢
2か月以下
3〜11か月
1〜5歳
6〜11歳
12歳以上
48
1分間の呼吸数
60回以上
50回以上
40回以上
30回以上
20回以上
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 定義;
側脳室周囲の上衣下胚層血管からの出血。
◆ 原因;
低酸素状態や循環不全による虚血後の再還流の際に、
鋭角に走行し脆弱な上衣下胚層の血管が破綻しやすい
ため。
◆ 問題点;IVHの児は、
・側脳室の拡大を伴わないGrade IIまでの児は、後遺症は
ほとんどない。
・Grade IIIで水頭症に対するV-Pシャント(髄液を腹腔に
逃がすため側脳室と腹腔を管でつなぐ)手術を受けた児
では、ときに脳性麻痺、軽度精神発達遅滞、てんかん。
・脳実質内にも出血が広がったGrade IVの児では、脳性
麻痺や精神発達遅滞が重度になることが多い。
49
〔低出生体重児Q&A より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 出生体重が小さいほど高率で、600g台が最多。
50〔周産期母子医療センターネットワークデータベース2009
より〕静岡県富士保健所
後藤幹生
Intravetricular hemorrhage By gestational age
No
N=22942
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
◆ 在胎週数が短いほど高率で、24週が最多。
Yes
No
51〔周産期母子医療センターネットワークデータベース2009
mong
infants with live birth and remained
より〕静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 定義;
側脳室周囲の白質(神経線維が多く走行している部分)
に軟化(組織の壊死)が起こること。
◆ 原因;
側脳室周囲の白質は、脳動脈の還流の境界領域のため
循環障害が起こりやすく、これが原因といわれている。
◆ 問題点;PVLの児は、
・上肢より下肢に程度の強い脳性麻痺になりやすい。
・精神発達遅滞は軽度であることが多い。
・重症例では、視力障害、てんかん、重度の精神発達
遅滞を伴うことがある。
52
〔低出生体重児Q&A より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
④
①
②
⑤
③
①:側脳室内の出血=IVH
②:広範な神経膠化(虚血による神経線維の減少、瘢痕化)
③:局所的な嚢胞状の白質の神経線維の壊死=PVL
④:側脳室の拡大=水頭症
⑤:髄鞘化の不足(神経線維の成長障害)
53
〔カリフォルニア大学サンフランシスコ校のホームページ より〕静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 出生体重に関連なく、数%発生。
54〔周産期母子医療センターネットワークデータベース2009
より〕静岡県富士保健所
後藤幹生
PVL By gestational age
No
N=22799
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
Yes
No
◆ 在胎週数に関連なく、数%発生。
55〔周産期母子医療センターネットワークデータベース2009
among
infants with live birth and remained
より〕静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 早産児の網膜の血管は、網膜の周辺まで生えきっていな
い。
◆ 出生後、様々な原因で、網膜の血管の伸び方がうまくい
かず、増殖性変化、出血、網膜の牽引、網膜剥離、瘢痕
形成などを起こし、視力障害の原因になることがある。
◆ 一方、血管の増殖性変化が、自然に正常化する(自然寛
解)こともある。
◆ 増殖性変化(I型3期の中期)の進行や急に網膜剥離にな
るタイプ(II型)は、光凝固や冷凍凝固術を行う(生後10〜
12週頃、修正在胎週数32〜36週頃)。なお、これらの凝
固術は、児の負担が大きい。
◆ 網膜剥離を起こした場合は、硝子体手術などを行う。
56
〔低出生体重児Q&A より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
光凝固の痕
無血管野
部分的網膜剥離 全網膜剥離
網膜血管
新生期
57
境界線
形成期
硝子体内
浸出と
増殖期
〔九州大学医学部眼科のホームページ より〕
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 出生体重600g台が、高率かつ最多。
58〔周産期母子医療センターネットワークデータベース2009
より〕静岡県富士保健所
後藤幹生
Treatment for ROP By gestational age
No
N=21785
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
Yes
No
◆ 在胎週数が短いほど高率で、25週が最多。
59〔周産期母子医療センターネットワークデータベース2009
among
infants with live birth and remained
より〕静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ どちらもに早産児に多い。
・鼠径ヘルニアは750g未満の児の40%、750〜999g
の児の27%、1000〜1249gの児の17%。
◆ ヘルニアの中身;
・鼠径ヘルニアは小腸が多いが、女児では卵巣も。
・臍ヘルニアは小腸。
◆ 鼠径ヘルニア嵌頓
・ヘルニアの中身が、ヘルニアの袋から元の位置に戻ら
なくなること。臍ヘルニアには嵌頓はまずない。
・鼠径ヘルニア嵌頓の症状は、不機嫌に泣く、ヘルニア
部位がふだんより硬く腫れて触ると痛がる、嘔吐。
◆ 治療;
・鼠径ヘルニアには自然治癒がないので、手術。
・臍ヘルニアは、1歳までに90%が自然治癒。2歳で
治らなければ手術。〔低出生体重児Q&A より〕静岡県富士保健所 後藤幹生
60
◆ 未熟児骨減少症(未熟児代謝性骨疾患、未熟児くる病)
・胎児期のカルシウム、リン、ビタミンDの蓄積量が少
ないため。
・治療は、それらの内服や母乳添加用粉末による補充。
日光浴もビタミンDの活性化のためには重要。
・血液検査や尿検査、手首の骨のレントゲン写真で、内服
の終了を決定。
◆ 未熟児貧血(鉄欠乏性貧血)
・胎児期の鉄の蓄積量が少ないためや、母親の鉄欠乏
性貧血のため。
・治療は、鉄剤の内服による補充。
・血液検査で内服の終了を決定。
61
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ RSウイルス感染症の予防
・RSウイルス感染症は、低出生体重児や早産児のみ
ならず、全ての乳児にとって入院の最大の原因となる
呼吸器感染症。
・特に低出生体重児や早産児では重症になる。
・現時点ではRSウイルスのワクチンはなく、RSウイルス
に有効な抗ウイルス薬もない。
・感染予防は、遺伝子組み換え技術で献血に依らずに
合成されたRSウイルスに対する抗体(シナジス®)を
4週間に1回外来で筋肉注射する。
・RSウイルス感染症の流行期である9〜3月に投与。
・シナジスは、ワクチンではないのでワクチンと同日に
投与可能、ワクチンとの間隔の考慮も不要。
62
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ RSウイルス感染流行初期1)において
・在胎期間28週以下の早産で、12か月齢以下の
新生児及び乳児。
・在胎期間29週〜35週の早産で、6か月齢以下の
新生児及び乳児。
・過去6か月以内に気管支肺異形成症(BPD)2)の治療を
受けた24か月齢以下の新生児、乳児及び幼児。
・24か月齢以下の血行動態に異常のある3)先天性
心疾患の新生児、乳児及び幼児。
1):毎年9月頃を流行初期とすることが多い。
2):慢性肺疾患(CLD)とほぼ同義。
3):手術で血行動態が正常化したら異常なしとなる。
63
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆ 早産児・低出生体重児は、あらゆる感染症が重症化しやすい。
◆ 特に百日咳、インフルエンザ、ロタウイルス性胃腸炎は、重症化や
合併症でたいてい入院するので、ワクチン接種が必要。
◆ 早産児・低出生体重児の予防接種時期は、修正月齢ではなく、
出生日からの月齢(暦月齢)に行う。
◆ 同時接種も安全であるが、特に先天性心疾患のハンディのある児
では、その主治医の意見に従う。
◆ 予防接種に際して、NICUでの輸血・免疫グロブリン投与や外来で
投与中の薬剤が問題となることは、ほとんどない。
◆ 全身麻酔での予定手術がある場合は、ワクチンの可否を主治医
に確認した方が良い。
◆ 早産児・低出生体重児の家族のワクチン接種や、家族からの接触
感染・飛沫感染の予防も極めて重要である。
64
静岡県富士保健所
後藤幹生
◆1.こどもが小さな大人でないのと同様に、早産児・
低出生体重児は単に小さな赤ちゃんではなく、
特有の疾患と弱さがある。
◆2.早産児・低出生体重児に特有な疾患は、こどもの
発育発達により自然に治癒していくものが多い。
◆3.しばらくの間、特有な弱さを持つ早産児・低出生
体重児であっても、家族や医療者の注意観察や
環境整備で守ることができる。
65
静岡県富士保健所
後藤幹生