narcisstic_personality_disorder3

自己愛パーソナリティ障害
http://winnicott.cocolognifty.com/psychoanalysis3/
パーソナリティ障害
 クラスターA (奇異群 : odd type)
風変わりで自閉的で妄想を持ちやすく奇異で閉じこもりがちな
性質を持つ。
301.0 妄想性パーソナリティ障害 Paranoid
301.20 スキゾイドパーソナリティ障害 Schizoid
301.22 統合失調型パーソナリティ障害 Schizotypal
 クラスターB (劇的群 : dramatic type)
感情の混乱が激しく演技的で情緒的なのが特徴的。ストレスに
対して脆弱で、他人を巻き込むことが多い。
301.7 反社会性パーソナリティ障害 Antisocial
301.83 境界性パーソナリティ障害 Borderline
301.50 演技性パーソナリティ障害 Histrionic
301.81 自己愛性パーソナリティ障害 Narcissistic

クラスターC (不安群 : anxious type)
不安や恐怖心が強い性質を持つ。周りの評価が気にな
りそれがストレスとなる性向がある。
301.82 回避性パーソナリティ障害 Avoidant
personality disorder
301.6 依存性パーソナリティ障害 Dependent
personality disorder
301.4 強迫性パーソナリティ障害 Obsessive-
compulsive personality disorder
301.9 特定不能のパーソナリティ障害 personality
disorder Not Otherwise specified
⇒二軸を放棄したDSM-5のなかで基本的に受け継が
れている
DSM-Ⅳのなかでの自己愛パーソナリティ
誇大性(空想または行動における)、賞賛されたいという欲求、
共感の欠如の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々
の状況で明らかになる。以下のうち5つ(またはそれ以上)によ
って示される。
自己の重要性に関する誇大な感覚(例:業績や才
能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず
優れていると認められることを期待する)。
 限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想
的な愛の空想にとらわれている。
 自分が “特別” であり、独特であり、他の特別なま
たは地位の高い人たちに(または団体で)しか理解
されない、または関係があるべきだ、と信じている。

過剰な賞賛を求める。
 特権意識、つまり、特別有利な取り計らい、または
自分の期待に自動的に従うことを理由なく期待す
る。
 対人関係で相手を不当に利用する、つまり、自分
自身の目的を達成するために他人を利用する。
 共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しよ
うとしない、またはそれに気づこうとしない。
 しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉
妬していると思い込む。
 尊大で傲慢な行動、または態度。
→全体に相手をひとりよがりで人のことを考えないで
困らせるパーソナリティとして記述している。

自己愛
ナルキッソス、若さと美
しさを兼ね備えていた彼は、
ある時アプロディーテーの
贈り物を侮辱する。アプロ
ディーテーは怒り、ナルキ
ッソスを愛される相手に所
有させることを拒むように
する。
彼は女性からだけでなく
男性からも愛されており、
彼に恋していた者の一人で
あるアメイニアスは、彼を
手に入れられないことに絶
望し、自殺する。
カラヴァッショ
エコラリア=反響言語=木霊
森の妖精(ニュンペー)のひとりエーコーが彼に恋
をしたが、エーコーはゼウスがヘーラーの監視
から逃れるのを歌とおしゃべり(別説ではおせじ
と噂)で助けたためにヘーラーの怒りをかい、自
分では口がきけず、他人の言葉を繰り返すこと
のみを許されていた。エーコーはナルキッソスの
言葉を繰り返す以外、何もできなかったので、ナ
ルキッソスは「退屈だ」としてエーコーを見捨てた
。エーコーは悲しみのあまり姿を失い、ただ声だ
けが残って木霊になった。
ナルキッソス=水仙
これを見た神に対する侮辱を罰する神ネメシスは
、他人を愛せないナルキッソスが、ただ自分だけ
を愛するようにする。ある日ナルキッソスが水面
を見ると、中に美しい少年がいた。もちろんそれ
はナルキッソス本人だった。ナルキッソスはひと
目で恋に落ちた。そしてそのまま水の中の美少
年から離れることができなくなり、やせ細って死
んだ。ナルキッソスが死んだあとそこには水仙の
花が咲いていた。この伝承から、スイセンのこと
を欧米ではナルシスと呼ぶ。
ナルシシズムの段階論
フロイトの研究
一次性のナルシシズムは人格形成期の6ヶ月
から6歳でしばしばみられ、発達において避け
られない痛みや恐怖から自己を守るための働
きである。
 二次性のナルシシズムは病的な状態であって
自己への陶酔と執着が他者の排除に至るパタ
ーンである。

Freudにおける万能感Allmacht
1905年「性欲三論文」で登場する
 1909年「ラットマン」で「思考(観念)の全
能(万能)」として概念化される。
→迷信、魔術的思考、幻想分析
 1913年「トーテムとタブー」第三章でアニ
ミズム、魔術、呪術、そして思考の全能とし
て描かれる。

アニミズム論:トーテムとタブー
進化論的文化人類学(スペンサー、フレイザーなど)
類感魔術、模倣呪術:類似
感染呪術:近接
思考の全能によって、統合する
アニミズム段階:思考の全能
宗教段階:神の全能
科学段階:全能の放棄と因果律
シュレーバー
Paul Schreber
(1842-1911)
法律家として成
功した後発病。
彼の手記はシュ
ールリアリズム
などに多大な影
響を残した。
シュレーバー事例
1861
1869
1877
1884
19歳 父親がイレウス(腸閉塞)で死去(53歳).
27歳 法学博士となる.
35歳 結婚.兄がピストル自殺(38歳).
42歳 秋,帝国議会に立候補して落選
(ケムニッツの州裁判所所長時代).これを契機に
重症心気症になる.ライプチヒ大学病院に入院し,
約6ヶ月間,フレヒジッヒ博士の治療を受ける
1885 43歳 年末に退院.
1893 51歳 6月ザクセン州ドレスデン控訴院院長就任の通
告.神経症が再発した夢を何度も見る 10月1日,控訴院院
長に就任.10月末,不眠症を伴って再び入院.入院当初は脳
軟化症にかかったという心気妄想や追跡妄想であったが,次
第に幻視、幻聴が頻発.フレヒジッヒ博士に性的な迫害妄想を
抱く
1894 52歳 6月,ピルナのゾンネンシュタイン精神病院に
転院.主治医はウェーバー博士.
1895 53歳 11月,性的な迫害妄想が宗教的な誇大妄想
へと変化.症状は次第に平穏化.自分がまだ生活力を持っ
ていると主張し退院を要求.ウェーバー博士は退院は不適
当と判断.シュレーバーは裁判所に繰り返し陳述書を提出
.
1902 60歳 7月,禁治産の宣告が解除.12月,妄想体系
は存続したまま退院.その後は定職につかずにいる
1903 61歳 1900年から執筆していた『ある神経病患者
の回想録』を出版.
1907 65歳 5月,母親が死去.11月,妻が脳卒中発作で
倒れる.
1908 66歳 症状が増悪し再び入院.その後,症状は次第
に悪化
1911 68歳 4月,重篤な肺疾患にもとづく心不全のため死
去.
シュレーバーの問題点
悲惨な人生
シャッツマン『魂の殺害者』
→虐待の問題
 精神病的な要素を理解するための生育歴
としての父親の問題
→なぜ父親なのか、父と母ではないか。

シュレーバー、パラノイアの言語論
thesis:同性愛=私は彼(男)を愛する
a)迫害妄想:
私は彼を愛さない→彼を憎む→彼が私を迫害するからだ
b)被愛妄想:
私は彼を愛しているのではない→私は彼女を愛している→彼女が私
を愛している
c)嫉妬妄想
α)アルコール中毒など、男性:
あの男を愛しているのは私ではない→彼女こそあの男を愛している
のだ→女性は疑わしい
β)女性の嫉妬妄想(男性に女性)
d)自我の肥大化=誇大妄想
そもそも私は愛するということをしないし、何人も愛さない
→私は私だけを愛する
自分の世界に耽溺する
妄想や自分が神だと思うプロセス
1. 彼は私を愛する/私は彼を愛する
2. 私は彼を愛さない⇒彼を憎む:彼が私を迫害
するからだ(被害妄想)
3. 私は彼を愛する⇒私は女だからだ(女性化)
4. 私は私ではない⇒彼は私を、私は彼を愛さな
い⇒そもそも私は誰も愛さない(卑小化)
5. 私は私だけを愛する(誇大化)

対象 vs. 内向(Jung)から内在化
internalization,introjection,identification,incorporation
対象の発見の歴史
退行の理由(フェレンチィ→タラソへの内向化)
思考の万能 →現実への譲り渡し
自体愛→自己愛→対象愛
転移神経症=対象の発生
内向と自己愛神経症(精神病)

精神病状態
対象愛→自己愛→自体愛
対象関係の幻想がナルシシズムへの退行 =思考の万能
転移
退行=
子宮内状態
でもなぜ退行(病気)が起こるんだろうか?

進化と退行
進化:進歩:進展
退化:病理化:退行:崩壊
regression:degeneration
喪とメランコリー

躁鬱病とは何か「対象喪失」
自己愛の喪失
ナルシシズムの導入(1914)
自我リビドーと対象リビドー
2. 対象関係という発想の導入
3. 自我理想と取り入れという概念の導入
1.
→検閲者と自我理想
(大衆心理の論文では区別されていない)
他者(親)の命令→良心
自己愛
自己愛と精神病理
病前性格
発症
メランコリー(躁 自己愛的対
うつ病)
象選択
自己愛的同
一化
統合失調症
自己愛への
(パラフレニー) 退行素因
対象喪失=自我喪失→見捨てた
対象への怒り→自己批判→躁状
態(対象との一体)とうつ(自我へ
の自責)の繰り返し
心気症
特定の器官にリビドーの関心を
向けることで、エネルギーの調整
を行う
自己の身体
への関心
リビドーの外界からの関心の離
反(陰性症状)→自我に向かう(
誇大妄想)、→修復による幻覚妄
想(陽性症状)
クライン学派の継承
防衛としての万能感(クライン)

ポジションの達成に対して退行が起きるの
は、分離、あるいは対象への依存や羨望
が痛みを伴うからである。
否認、分裂、投影同一化、万能的自己愛
→ローゼンフェルドの病的自己愛論、
スタイナーの心的退避論
精神病における対象関係
スコットやローゼンフェルドの仕事から
 悪い乳房
 自我の分裂 スプリッティング
 投影同一視
 (万能的)自己愛
 否認(排除)
→妄想-分裂ポジションへ
部分対象の世界

妄想分裂ポジション:迫害的不安と羨望
投影同一化
万能的自己愛
悪い乳房
迫害的不安
羨望
分割
否認
精神病の場合
自我境界
精神身体境界の脆弱さ
易刺激性
アンテナ感覚
侵入:
第二の皮膚
=筋肉
反転:
知覚外情 鈍感化
報=幻覚
破瓜状態
過緊張=カタトニア
敏感関係妄想
=妄想発展
自己愛をフロイトの文脈で考える
病理的な自己愛組織体(ローゼンフェルド
の弟子たち)があって、それが転移を進展
させないような袋小路を創り出す→転移を
展開させるにはその構造体を引き受けて、
コンテインし続ける必要があるが、たいて
いは進展は阻まれてしまう。
 病理的な視点:閉じこもって出てこないよう
な発達障害を生み出す場に限りなく近い。

自己愛の発達?
欠損がない場合、
それは出たり入ったりするような空想の部
屋、身体化の領域、外と内側の出口の内側、
閉ざされた交流しない孤独を作り出す
 自己愛パーソナリティの形成過程
欠損を埋めるようにして、二つの極端な軸を
作る。過敏な領域(激怒と混乱)と閉所的領
域(誇大、万能感)の二つが共存する。

人格障害における論争
1970年代後半に二人の代表的論客の間で
起きたすれ違い。
 コフートの自己愛人格障害とカーンバーグ
の自己愛の障害(対象関係論)の齟齬
 自己愛(誇大性や理想化)を正常な発達、
パラレルな発達と見なした。なぜなら、転
移が起きるから。
 コフートとカーンバーグの1970年代の論
争は、欠損か葛藤か、正常な発達か病理
かという点で行われた。
自己愛パーソナリティの一般的定義
パーソナリティ障害
 クラスターA (奇異群 : odd type)
風変わりで自閉的で妄想を持ちやすく奇異で閉じこもりがちな
性質を持つ。
301.0 妄想性パーソナリティ障害 Paranoid
301.20 スキゾイドパーソナリティ障害 Schizoid
301.22 統合失調型パーソナリティ障害 Schizotypal
 クラスターB (劇的群 : dramatic type)
感情の混乱が激しく演技的で情緒的なのが特徴的。ストレスに
対して脆弱で、他人を巻き込むことが多い。
301.7 反社会性パーソナリティ障害 Antisocial
301.83 境界性パーソナリティ障害 Borderline
301.50 演技性パーソナリティ障害 Histrionic
301.81 自己愛性パーソナリティ障害 Narcissistic

クラスターC (不安群 : anxious type)
不安や恐怖心が強い性質を持つ。周りの評価が気にな
りそれがストレスとなる性向がある。
301.82 回避性パーソナリティ障害 Avoidant
personality disorder
301.6 依存性パーソナリティ障害 Dependent
personality disorder
301.4 強迫性パーソナリティ障害 Obsessive-
compulsive personality disorder
301.9 特定不能のパーソナリティ障害 personality
disorder Not Otherwise specified
⇒二軸を放棄したDSM-5のなかで基本的に受け継が
れている
DSM-Ⅳのなかでの自己愛パーソナリティ
誇大性(空想または行動における)、賞賛されたいという欲求、
共感の欠如の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々
の状況で明らかになる。以下のうち5つ(またはそれ以上)によ
って示される。
自己の重要性に関する誇大な感覚(例:業績や才
能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず
優れていると認められることを期待する)。
 限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想
的な愛の空想にとらわれている。
 自分が “特別” であり、独特であり、他の特別なま
たは地位の高い人たちに(または団体で)しか理解
されない、または関係があるべきだ、と信じている。

過剰な賞賛を求める。
 特権意識、つまり、特別有利な取り計らい、または
自分の期待に自動的に従うことを理由なく期待する
。
 対人関係で相手を不当に利用する、つまり、自分自
身の目的を達成するために他人を利用する。
 共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しよう
としない、またはそれに気づこうとしない。
 しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬
していると思い込む。
 尊大で傲慢な行動、または態度。
→全体に相手をひとりよがりで人のことを考えないで
困らせるパーソナリティとして記述している。

自己愛の理解と治療
Kohut
自己愛の病理
論
共感不全によ
る自己の形成
不全
治療
治療目標
共感的な治療
健全な自己・自
者による自己
己対象の内在化
愛転移
原始的防衛の
全体対象の統合
解釈と洞察
Kernberg
境界例の亜型
Rosenfeld
人格の病的組 陰性治療反応
対象関係の統合
織化
他の取り扱い
一瞬 コフート
コフートの仕事の意義
→自己愛的、自己対象的転移が存在するという進歩させた。
対象愛
原始的自己愛
(太古的自己)
誇大的自己 --- 鏡転移(称賛される
べき自己が排除 されたために生じた
母親に見た姿を見出す)
理想化対象 --- 理想化転移―双子
転移(見失った理想的両親 自分、
欠けた自分を治療者がもっている。
それを補い、取り入れたい。父親)
ハインツ・J・コフート 1913-1981

1913年5月3日にウィーンで生まれた。父親は
第一次世界大戦に服役後、コンサート・ピアニス
ト、1936年に亡くなっている。母親は難物で、強
迫的で潔癖、彼が学会の60年まで生きている。
1979年に出版された「Z氏の二つの分析」にお
いて、同性愛体験をはじめほぼ自伝的症例を書
いている。

19歳でウィーン大学医学部に入学、学生時代
から精神分析に興味を持ち、アウグスト・アイヒ
ホルンの分析を受ける。
1938年、ウィーンを去るフロイト一家を見送り、「汽車
のなかのフロイトが帽子に手をかけて、見送りの人々
に会釈をしたが、その視線は自分に向けられていた」と
思う。
 英国に渡るが、移民キャンプに住み、母方叔父のハン
ス・ランプルを頼って、ロンドンに、そして1940年にビ
ザを発行してもらって、米国へ、当時25セントしかポケ
ットになかったという。
 1945年市民権を得る。友人のレバリーを頼って、シカ
ゴへ、病院でインターンシップをはじめて、神経学科の
住み込み意になり、1947年以降は精神医学に専念、
その間、シカゴ精神分析研究所を卒業した。ルース・ア
イスラーに分析を受ける。シカゴ精神分析研究所、およ
びシカゴ大学教授をつとめる。

『自己の分析』1971年以後
1964-66年には全米精神分析協会の会長をつとめ
ている。「ミスター精神分析」と呼ばれる。ハインツ・
ハルトマンから尊敬されていたにもかかわらず。
 アンナ・フロイトはこれをあまり評価せず、アイスラー
は「よく分からない」と語ったという、1970年のシカ
ゴ精神分析研究所の委員に再選されず、国際精神
分析学会の会長にも、ランジェルらの策によって、選
出されなかった。
 正統派からはみ出していく、自己研究会を開催した。
ジェド(後に離反)、ゴールドバーグ、バッシュ、オー
ルシュタイン、ウォルフなどの弟子を輩出した。

精神分析の中での革命
→1977年『自己の修復』を出版、1981年になく
なっている。没後、三部作と呼ばれる『分析治療
はどう行うか(自己の治癒』が出版されている。
それらはどれも邦訳されている。
 精神分析の歴史の中では、自己愛の障害を発
見し、フロイトが述べた自己愛を病理の中ではな
く、健康な発達の中に位置づけた。それが生涯、
治療の中でも発達する可能性を探索し続けた。
 自己心理学が独自の発展をして、アメリカの精
神分析の新しい流れを作るモーメントの一つに
なっている。

自己人格障害の発見
自己愛人格障害の分析治療における発見
傷つきやすい人々 治療的な接近によっ
ては防衛を固くする、あるいは怒りが爆発
する。神経症者のようにアンヴィバレントな
感情を向けてくるのではなく、自分の延長
のように治療者を考える。
 自己愛転移→自己対象転移

自己愛転移


自己愛転移が起きる→自己愛人格障害と診断
幼児期には自己愛を充足する人間関係が必要である
対象愛

原始的自己愛
誇大的自己(太古的自己) ---- 鏡転移(称賛されるべき
自己が排除 されたために生じた母親に見た姿を見出す)
理想化対象(理想的 両親像)-- 理想化転移―双子転移(
見失った自分、欠けた自分を治療者がもっている。それを補
い、取り入れたい。父親)
パラレルな発達
自己愛と対象愛は並行して発達する
自己愛の領域
抑圧
垂直分割
水平分割
自己対象の発見
(→ 間主観性)
 写し返された自己対象 mirroring selfobject
 理想化された親イマーゴ
双極性の自己 bipolar self
執行機能
緊張のバランスのなか
誇大的自己(野心)
理想化対象(理想)
経験に近い臨床感覚と理論
自己(自我という精神装置ではない) -- イニシアティブ
自己と対象との相互作用=変容性内在化
一貫性のある(断片化されたボーダー)
→新しい臨床的知見
(怒りは二次的で、防衛は自己の保護)
変容性内在化 :変化させながら、取り入れる。自己対象
としての親の機能の共感不全に対して自己対象が機
能するように確かな対象となる。
ストロロウ、R,D 19421964年 ハーバード大学、生物学専攻を卒業し、1970年に臨
床心理学を卒業して、その間ニューヨークで精神分析を受けたと
いう。「理論はその人の心理生活に起源があるとした」トムキンス
やアトウッドらの理論に傾倒し、しだいに人格理論における主観
性の役割についての理論を構成していった。→Faces in a
Cloud(1979)
コフートの著作に関する書評から、交流が始まり、コ
フートは彼を自己心理学会に招聘講演に招いた。そ
の後の彼とコフートの交流が自己心理学が新たに発
展する機会となった。
 Structures of Subjectivity(1984)
 Intersubjective Approach(1987)

Stolorow、R.D
中立的な治療者の脱神話化

「精神病理学があたかも患者の中だけに所在するかのように
扱う古典的精神分析」

禁欲原則は患者の目に中立的な姿勢として映ることはない

治療の目標は主観的世界の展開、解明、変形にある:持続的
共感的探索

探索態度は一環して患者の主観的な準拠枠から考える

作業同盟は独特な転移の枠であり、治療者の要求によって合
わせるものではない

治療場面における抵抗はつねに外傷体験の再現の切迫を意
味する

自己対象としての母親の仕事は情動調律である。
間主観性の場
精神分析の仕事は解釈ではなく、交流の場をつく
ることにある。自己の変容的内在化の促進と関係
論的な進展が治療の場で起きること。
 分析家は被分析者の人生や発達に関して客観
的な知識をもっているわけではない。
→診断やアセスメントに対する異議
分析の仕事:分析データを筋のある主題や関係性
のなかでオーガナイズすること
 二つの主観性の交差が構成する
→相互作用と文脈を無視できない
治療者:情動調律の精神分析
情動の弁別と自己体験の言語化
 情動的に矛盾した体験の統合
 情動耐性と自己に対する信号としての情
動の利用
 情動の脱身体化と認知的言語化
人と人との心を合わせるような自己の発達を
育むような関係が、自己愛を転移の中で育
てる可能性を示唆した。

自己愛パーソナリティ障害に戻ると
彼らが嫌なのは….
人より優れていると信じている/権力、成功、自己の魅
力について空想を巡らす/業績や才能を誇張する絶え
間ない賛美と称賛を期待する/自分は特別であると信
じており、その信念に従って行動する/人の感情や感
覚を認識しそこなう/人が自分のアイデアや計画に従
うことを期待する/人を利用する/劣っていると感じた
人々に高慢な態度をとる/嫉妬されていると思い込む/
他人を嫉妬する/多くの人間関係においてトラブルが
見られる/非現実的な目標を定める/容易に傷つき、
拒否されたと感じる/脆く崩れやすい自尊心を抱えて
いる/感傷的にならず、冷淡な人物であるように見える
アメリカ医学会の共通の認識
人口は疫学的に1パーセント程度、がその比率は増えている。
〈原因〉
→過度の甘やかし
 生来の過度に敏感な気質
 現実的ではない、バランスの悪い過度の称賛
 良い行動には過度の称賛、悪い行動には過度の批判が幼少
期に加えられた
 親、家族、仲間からの過剰な甘やかし、過大評価
 並外れて優れた容姿や能力に対する大人からの称賛
→共感不全
 幼少期の激しい心理的虐待
 予測がつかず信頼に足らない親の養育
 親自身の自尊心を満足させるための手段として評価された
重い見方(カーンバーグ)

分裂機制に基づいて、万能的な自己愛に閉じこも
っている。そのため自己愛性パーソナリティ障害に
内在する誇大性は極端で、その防衛機制は分裂
を中心として、脱価値化・理想化・否認である。分
裂の元で他者は、唯一の役割である賞賛と是認を
与えることで奉仕する、彼らの延長として操作され
た人々、あるいは自己愛者の誇大性と共謀するこ
とが出来なかったために、価値がないと見なされ
た人々のどちらかである。自己愛性パーソナリティ
障害の人格構造は誇大的自己とだめな自己に分
裂しており、真の現実と等しい自己像がない。
そしてその治療は…
境界例の治療者であるマスターソンは、「自己愛
パーソナリティ障害の精神内界構造は、誇大自己
表象と万能対象表象から成り立っているが、この
両者は融合して一つの単位となり、継続的に活性
化されて、基底にある攻撃的な、あるいは空虚な
対象関係融合単位に対して防衛している。このよ
うに絶えず活性化されているので抑うつを経験す
ることが少ないのである」と述べている。つまり治
療は自分の弱い側面を包含した抑うつであると考
えている。
いくつかの類型を考える
自己愛パーソナリティの分類を考える人たちは大きく
分けて、病理的な視点で、その重症度によって異なる
が、二つを分ける傾向がある。
 境界例治療の立場であるマスターソンは自己顕示
型(exhibitionistic)と引きこもり撤去型(closet ;
臆病な型)に、恥の視点からブロチェックは自己中
心型(egotistical)と解離型(dissociative)に分
類した。またクライン学派のローゼンフェルトも厚皮
(thick skinned)と薄皮(thin skinned)とに分け
ている。これらをギャバードが、二つに分けた。
自己愛性パーソナリティ障害の2つのタイプ
無関心型 (無自覚型)
oblivious type
過敏型 (過剰警戒型)
hypervigilant type
1. 他の人々の反応に気
づかない
2. 傲慢で攻撃的
3. 自分に夢中である
4. 注目の的である必要
がある
5. 「送話器」はあるが「受
話器」がない
6. 見かけ上は、他の人々
によって傷つけられたと
感じることに鈍感である
1. 他の人々の反応に過敏である
2. 抑制的、内気、表に立とうとし
ない
3. 自分よりも他の人々に注意を
向ける
4. 注目の的になることを避ける
5. 侮辱や批判の証拠がないかど
うか他の人々に耳を傾ける
6. 容易に傷つけられたという感情
をもつ。羞恥や屈辱を感じやすい
Gabbard(1997)


【事例】40代男性 自己愛パーソナリティ障害、引きこもり
20代に大学を卒業して就職したが、数カ月で会社に行け
なくなり、以後自宅に引きこもっている。父親は企業の役職
を持ち、家は豊かなので、部屋から日中はあまり出ずに、ぶ
らぶらしており、時々外に出て本屋で本などを買って、部屋
の中で読んでいる。兄弟がなく一人っ子で、母親はボランテ
ィアなど外に出ることが多いので、大きな家で一人だけ、冷
蔵庫などを物色している生活だった。引きこもって数か月後
に精神科を受診させられているが、そこでの診断は退却神
経症、その後あまり事態が好転しないので、家族が捜してい
くつか精神科を受診しているが、最終的にはうつ病という診
断となっている。その後特に、変化なく、投薬も効果がないよ
うなので、当時の精神科医から心理療法の依頼があり、相
談所でセッションを開始した。家族の、特に母親に強い嫌悪
感を持っており、彼女のために自分はこうなってしまった。
だから自分を家族はケアする必要があるし、将来にわたって
、自分を養う義務があると、目上から目下のものに言うような
言い方で、セラピストも含めて、何もできない、愚かな人たち
という態度で接する。力動的な診断は自己愛パーソナリティ
障害であった。当初私が精神科医であると思っていたときに
は、敬意を示していたが、心理士であるとわかると「ただのカ
ウンセラー」と侮蔑するような態度を取り、さらにセラピストが
大学教員で、自分より偏差値の高い大学を出ていることがわ
かると、また態度が変わるといった「過敏型」の傷つきやすさ
をもっていたように見えた。私は、その高飛車な態度、そして
家族が自分を懺悔のようにして養育するのが当然だという考
え方にもついていけず、しばしば「でも働くことは当然だ」とい
った、明らかに超自我的な態度を取るようになっていた。
週二回の心理療法を3カ月ほど続けていて、次第に彼はセ
ッションの時間を守らなくなった。遅れてくる、時には最後20
分あるいは10分といった具合に遅れてきて、それほど悪びれ
も、申し訳ないというのでもなく、
私は時間をつぶす以外に方法がないこと、それでいて、遅れ
てもキャンセルになってもお金を最後に払う。
そんな彼に私はあるセッションで「これでは面接にならない
し、あなたは遅れてきても私が待っているのが当然だと思っ
ている」ことを非難したが、彼はもともと薬もこの面接もたいし
て役に立っていないことを次の回に力説した。私は八方ふさ
がりで余裕がなかったし、彼とのセッションを始めたことその
ものが間違っていたとまで思うようになっていた。考えてみれ
ば、彼と治療同盟を作れていないし、契約も行っていない。む
しろただ彼の高飛車な態度を自己愛として記載していただけ
であった。そこでもう一度、彼が来ない時間を使って、彼がど
のような人で、だからこそ私がどうしてこんな思いをしている
のかを考えることにした。そして私が自分で耐えられなくなっ
ている思い、つまりたいして役に立っていないが、目標がない
のに、彼ただ働けといっている自分の姿は、彼の自己像に近
いのではないかと考えるようになった。
そして治療者としての私の無力こそ、彼が感じている自己の無力
感であると考えるようになった。彼が遅れてくると、私はそこで考え
たことを、彼に伝えるようにしてみた。一つには一人っ子で母親が
外出の多かった彼自身の幼児期のことを、「あなたは心ここにあら
ずで、自分のことを放置していく母親のことを考えて幼児期を過ご
したのかもしれない」だから「あなたは、社会から撤退して自分を
養育する、そしてここで母親にお金を使わせることで、せめて経済
的に自分の世話をさせているのだろう」、あるいは「私があなたに
とって役に立たないことを証明するために、あなたは私の目の前
に心をもってこないようにしている」といった彼の心が私の前に現
れることすらなく、それによって自分自身をどうでもよい、価値のな
い存在であると思って、見捨てられることを期待しているのではな
いかと指摘した。彼は黙って聞いていたが、次第に自分が強迫症
状をもっていて、ここに来るだけでも大変でさまざまな洗浄儀式の
ために一日の時間があっというまに経ってしまうことを語り始めた
。おそらく彼にとっては羞恥を越えて、自分が外に出るのが怖い
背景を、はじめて人に相談することだったのだろう。こうして治療
は強迫症状を対象に組み立てなおされるようになった。