パリティ対称性の破れ

1957楊振寧・李政道
対称性とは?
 図形の対称性
対称性の例
 並進対称性
 回転対称性
パリティ変換
 パリティ変換=座標の反転:(x,y,z)→(-x,-y,-z)
ex)原点に電荷Q、位置𝑟 = (𝑥, 𝑦, 𝑧)に質量mで電
𝑄𝑞
荷qの質点
質点の運動方程式は𝑚𝑟 = 𝑘0 𝑟
𝑟3
ここで𝑟 → −𝑟と変換しても運動方程式
は変わらない
→パリティの対称性
4つの相互作用のうち、弱い相互作用を除く重力、電磁
気力、強い力の現象についてはパリティ対称性が成立
→パリティの対称性はエネルギー保存則のような基本
的な法則ではないかと考えられていた
極性ベクトルと軸性ベクトル
 極性ベクトル
 パリティ変換をすると符号が-になる
Ex)位置ベクトル、速度ベクトル、加速度ベクトル、
力
 軸性ベクトル
 パリティ変換をしても符号が変わらない
Ex)角運動量ベクトルL、磁場B、スピン
(L=r×p→L’=(-r)×(-p)=r×p=L)
(F=qv×B→(-F)=q(-v)×B’)
量子力学におけるパリティ対称性
 パリティ変換を2回すると元に戻る
 量子力学では、状態にパリティ変換にあたる演算子
を作用
(x→f(x)みたいなもの)
Ex)状態をψとすると、パリティ変換を1回した状態を
P(ψ)と書く。
2回パリティ変換をすると元に戻る
→P(P(ψ))=ψ→P(ψ)=±ψ
量子力学におけるパリティ対称性
 P(ψ)=ψのとき、状態ψは偶のパリティを持つといい、
P(ψ)=-ψのとき状態ψは奇のパリティを持つという。
 最初と終わりの状態のパリティが変化しないとき、
パリティが保存されるという。
 パリティが保存されるとき、パリティ対称性が成り
立つという
 電磁気力や強い相互作用の反応から、パリティ保存
則の成立より、素粒子のパリティを決めることがで
きる(陽子、中性子が偶のパリティを持つと定義)
2つの似た粒子~θとτ~
 𝜏+ → 𝜋+ + 𝜋+ + 𝜋−
 𝜃+ → 𝜋+ + 𝜋0
 不安定な粒子はいつも定まった方法で崩壊すると考
えられていた
 この2つの粒子の質量、寿命などが一致
 崩壊前と崩壊後でパリティが保存すると考えると、2
つの粒子は一致しない(πは奇のパリティを持つ)
 ではなぜ質量と寿命が一致するのか→謎
ヤンとリーの解釈1956年
 そもそも弱い相互作用に関してはパリティが保存さ
れているという証拠はない
 Θとτは同じ粒子(今はK中間子と呼ばれる)の別の崩
壊過程である
 つまり、パリティの保存則は破れていると考える
ウーによる実験1957年
 𝐶𝑜 60 のβ崩壊
スピ
ン
60
𝐶𝑜
スピ
ン
60
𝐶𝑜
電子
極低温
電子
極低温
もしパリティが保存されているなら、電子の飛び出す方向
はスピンに対して同じ方向に出なければならない
→パリティ対称性が破れている
パリティ対称性が破れていたら…
 今、私たちが生きている世界と鏡の中の世界を区別
することができる
 遠く離れた子供に右手がどちらかを教えることがで
きる
 空間を移動しても、回転しても対称なのに、なぜ鏡
に映したときだけ対称でなくなるのか?
 パリティの保存則はエネルギー保存則のような基本
的な法則ではないかと考えられていたので、大きな
衝撃を与えた
時が進んで
ジェイムズ・クローニン、ヴァル・フィッ
チによるK中間子の崩壊の観測からCP対称性が破れ
ていることが発見
1972年小林誠と益川敏英がCP対称性が破れる1つの可
能性として、6種類以上のクォークが存在すること
を提唱
6種類のクォークが発見
Bファクトリーの実験の結果、CP対称性の破れが小
林・益川理論の予言と一致
2008年 小林誠と益川敏英がノーベル賞を受賞
 1964年
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なぜCP対称性の破れが重要?
 CP対称性が成立=粒子と反粒子に同じ物理法則が適
用される
 宇宙初期の高温・高密度の状態では粒子も反粒子も
多数存在した
 現在の宇宙は反粒子よりも粒子の方がはるかに多い
 粒子と反粒子の差を生んだのがCP対称性の破れで、
現在の宇宙が物質からできている理由を説明する可
能性
今後の課題
 宇宙が物質からできている理由を説明するのに、小
林・益川理論から予測されるCP対称性の破れから説
明するのは困難
 レプトンのCP対称性の破れを調べる
 CPT対称性が成り立つと予想され、さらにCP対称性
が破れている
 T対称性が破れている?