投影資料1(エコマインド)

サステナ・ハース代表
中小企業診断士 立山裕二
■アイスブレイク問題
いまここで砂時計をひっくり
返したとします。砂が流れ落
ちています。計ってみると、
1秒間に5ミリリットルずつ
流れています。
さて、このままのスピードで
砂が流れつづけるとすると、
今いる部屋が砂でいっぱいに
なるのは何日後でしょうか。
■アイスブレイク問題のねらい
・地球の資源量・廃棄場所・自然浄化能力は
有限であるという地球の有限性を認識する
こと。
・多くの人は身近なことは理解できても、地球
規模になるとイメージできなくなる。そこで、
地球規模の問題を身近な事柄に置き換えて
説明する工夫が必要であること。
・多くの人は一つの答えを導き出したとたん、
思考停止してしまう。
より良い、より深い、より本質に迫る答えを
追求していこうとする姿勢が大切ということ。
■今日の講座の目的は、以下の
通りです。
1.関連性(つながり)を理解する
2.複合作用を考慮する
3.伝えると伝わるの違いを知る
4.もったいないを極める
5.LCAを理解する
1.関連性(つながり)を理解する
■生物間のつながり
生物間の互いに「食べる
-食べられる」関係を
食物連鎖といい、植物を
生産者、動物を消費者、
土壌生物やバクテリアを
分解者と呼ぶ。
【出典:東京大学大気海洋研究所】
食物連鎖は実際には網の目のように複雑に
からみあい、ニッチ(生態的地位)を維持し
ながら「食物網」という形で機能している。
食物連鎖を経て、汚染
物質濃度が生物体内で
増加していくことを
生物濃縮(生態濃縮)
という。
一般に、人間や生物に有害な
物質は、水に溶けにくく油に
溶けやすいものが多い。
■環境問題のつながり
地球環境問題の全体像:
環境省資料を基にニッセイ
基礎研究所にて加筆・補正
すべての環境問題は
つながっている
生態系の破壊へ
■例えば、魚が棲めなくなるメカニズム
・水質汚染、ゴミと廃棄物
酸性・アルカリ性物質、農薬、抗生物質、界面活性剤、
ダイオキシン類などの合成化学物質の流入による影響
湖沼や内海に自浄能力を超える(合成・天然)有機物や
リン・窒素分が流入することにより、水域が富栄養化し
嫌気性に移行 → 酸欠や重金属汚染
地下水の過剰汲み上げ →
地下水位の低下と空気流入(酸化)による有害金属の
溶解 → 食物連鎖に伴う生物濃縮
・酸性雨
水質の酸性化
→
アルミニウムなど有害金属による汚染
窒素酸化物の流入 → 富栄養化
・地球温暖化
水温上昇に伴う溶存酸素濃度の低下+富栄養化
→ 嫌気性水域へ
植物性プランクトンに栄養塩類が補給できなくなり、
食物連鎖が切断
■飽和溶存酸素
・森林破壊
森林地帯の保水力低下
→
洪水と渇水
栄養分が大量に水域に運ばれることによる富栄養化
森林から水域への栄養補給の断絶
・オゾン層の破壊
有害紫外線が水面付近にいる植物性プランクトンを
直撃し、食物連鎖が切断
環境問題は、関連性(つながり)を
考慮しなければ、ある現象を抑えた
としても、次から次に新たな問題が
発生する。
・大気汚染防止のために高煙突化
→ 排煙が偏西風で長距離越境移動し、酸性雨の原因に
・オゾン層保護のために特定フロン(CFC、HCFC)を廃止
→ 代替フロン(HFC)→ 地球温暖化を加速
・
2.複合作用を考慮する
環境中に放出された化学物質は、単独で存在する
ことはあり得ず、常に複数が同居している。
単独で影響がないからといって、複数では安全で
あるとは限らない。
影響を打ち消しあう場合もあり得るが、その物質
自体は直接作用しなくても、その物質が存在する
ことで他の有害物質が活性化することがある
(触媒効果)。
その物質の濃度は許容限界以下であったとしても、
他の物質との複合作用(相乗効果)で生体に大き
な影響を与えることもある。
<問題>
トリハロメタンが水道水中に含まれ
ている場合、安全に飲用できる濃度
にまで低下させるには、少なくとも
10分以上沸騰させる必要がある。
この記述に問題があれば、指摘してく
ださい。
※トリハロメタン(類)は、 水道水中に存在する有機物と
塩素剤が反応してできる物質。発がん性が疑われてお
り、水道法の水質基準に定められている物質です。
<解説>
沸とうさせると、トリハロメタンは気化して水中から除去
される。ただし5分程度で沸とうを止めてしまうと、水道
水中の有機物と残留塩素が反応し、トリハロメタンが増加
してしまう。しかし図のように10分以上沸とうさせる
と、トリハロメタンを除去することが可能となる。
しかし・・・・
水道水中にはトリハロメタン類以外にも、
様々な物質が同時に存在している。
水よりも沸点が高い(100℃を超える)、
あるいは不揮発性の物質が含まれている場合
は、それらの物質が濃縮され環境や健康への
リスクが高まる可能性がある。
重金属、アスベスト、農薬・・・・
水よりも沸点が高い物質は数多い。
3.伝えると伝わるの違いを知る
情報とは、
伝えようとしたことではなく、
伝わったことを言う。
情報(in+formation)とは、
その受け手に実際に形を与える
ことである。
・・・・デビッド・ボーム(米国の物理学者)
■関心のないものは見えない
いかに関心を持ってもらうか?
伝えようとしていること(データ、
数字や言葉の羅列)をいかに情報に
変換するか?
①やさしく(易しく、優しく)、
②身近な話(喩えなど)を活用し
て、
③気づきを促し(ハッと思わせ)、
④関心を持ってもらえる
ような言葉や表現を用いる。
■例えば、生態系の大切さをセーターに
喩えると・・・・
セーターを形作って
いるのは、もともと
1本の毛糸。
1本の毛糸が編み合わ
され、セーターという
生態系をつくってい
る。
セーターがほつれた。
生態系がほつれた(命の
つながりが切れた)。
ほつれが軽微なときは、
ワッペンなど継ぎ当てを
施すことでごまかせるが
・・・・
やがて修復不能になって
しまう。
ほつれたセータを修復
するのは限度がある。
最も良い方法は、ほつれないように
きちんと手入れすること。
予防(未然防止)が極めて重要!
生態系も一緒で、切れてしまった
つながりを修復するのは至難のワ
ザ。最悪の場合、修復不可能になり
かねない。
どうすれば修復不可能になる前に
解決できるのか、一人ひとり真剣に
考えよう!
ゲーム(クイズ)感覚で
エコを伝える。
例えば、ごみや水汚染問題について
専門外の人には、専門用語や細かい数値を
避け、概略やイメージで伝える。
以下は一例です。参考にしてください。
例1)
ごみってどのくらい
出ているの?
<問題1>
1年間に日本全国の家庭など
から出るごみ(一般ごみ)の量は?
およそ
5000万
トン
それは2トントラックで
およそ62万台分!
<問題2>
日本人ひとりが1日に出す
ごみ(一般ごみ)の量は?
およそ
1000
グラム
いちばん多いのは大阪府で
1085グラム。
いちばん少ないのは熊本県で
832グラム。
(2011年:平成23年)
それでも大阪府も努力して、ゴミの
排出量が減ってきています。
<問題3>
日本人ぜんたいでは、食べ物
の
およそ
40 パーセントを
生ごみとしてすてている。
それは1000円で食べ物を
買ってきて、
400円すてるのと同じ。
なんと
もったいない!
<みんなで考えよう>
汚いものですか?
ごちそうさま、
と言った瞬間、
が
生ごみ
という名前に変わる。
このことをどう感じますか?
生ごみは
ごちそう、そして
栄養そのもの。
栄養だから肥料になる。
例2)
水の汚れについて
考えよう!
食べたり飲んだりした
残りものを捨てると、
水が汚れてしまいます。
水が汚れると、魚などが
生きていけなくなります。
では、
ペットボトルキャップ
1ぱい分をうすめて
コイやフナが生きて
いけるようにするには、
ペットボトル何本分の
水が必要でしょうか?
<問題1>
ラーメンの汁(スープ)
ペットボトル
50
本ぶん
<問題2>
コーヒー
ペットボトル
10
本ぶん
<問題3>
お米のとぎ汁
ペットボトル
6
本ぶん
<問題4>
コーンスープ
ペットボトル
260
本ぶん
<問題5>
牛
乳
ペットボトル
150
本ぶん
<問題6>
しょうゆ
ペットボトル
300
本ぶん
<問題7>
てんぷら油
ペットボトル
2000
本ぶん
<問題8>
マヨネーズ
ペットボトル
2400
本ぶん
■根拠は?
コイ・フナが棲めるBOD5㎎/L以下の
水質にするために、どのくらいの水が
必要かを示している。
※ヤマメ、イワナなどの清水性魚類は2㎎/L以下、
アユ、マスなどは3㎎/L以下とされている。
※BOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的
酸素要求量)の略。
有機物による水の汚濁の程度(可能性)を示す指標で、
水中の汚濁物質が20℃で5日間のうちに微生物により
酸化分解される過程で消費される酸素量を表す。
<問題9>
なぜ魚が死んでしまうの?
①毒(どく)だから
②おぼれるから
③水に溶けている酸素が
なくなってしまうから(酸欠)
<正解>
③
水に溶けている酸素が
なくなってしまうから(酸
欠)。
水の中にいる微生物が酸素を
消費して(使い尽くして)しま
<問題10>
おさらについたマヨネーズを
『水で洗う』のと『ティッシュ
ペーパーでふきとる』のとでは、
どちらがエコ?
①水で洗う
②ティッシュペーパーで
ふきとる
③その他
実は、答は③です。
マヨネーズがお皿に
つかなければ
水もティッシュペーパーも
どちらもいらないですよ
二者択一で迷った場合は、
必ず第3・第4の方策があると信じる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ということを踏まえて、マヨネーズがお皿に
つかない方法を考えてみましょう。
でも、こぼしてお皿についてしまったら?
では、なぜマヨネーズを使うのでしょうか?
どんどん思考(議論)を深めていきましょう!
■二者択一思考からの脱却
を迫られたとしても・・・・
そのまま進んでもいいし・・・・
飛び越えてもいいし・・・・
トンネルを掘ってもいいし・・・・
道がなければ切り拓けばいいし・・・・
引き返してもいいし・・・・
壁を突き破って進んでもいい
4.もったいないを極める
◆もったいないとは?
①たくさんある物をやたらに使っては惜しい
②その人、その物を活かしきっていない
=「勿体あらしめる」の反対語としての
「勿体ない」
=「この世に存在する、あるいはこの世に
生まれてきた目的を果たせずにいる」
ことを惜しむ気持ち。
◆「もったいない」と賞味期限切れ食材の取扱い
①「出たものをどう処分するか」という発想
残り物がたくさん出てきたからといっ
て、
やたらと廃棄するのは「もったいな
い」。
だから廃棄しないように食品(商品)に
使ったのだ!
②「出ないようにするにはどう活かすか」
という発想
たくさん残り物や廃棄物を出すこと
自体が、その食材を活かしきっていない
という意味で「もったいない」。
だから残り物が出ないように、つまり
捨てるものがなくなるように計画し
実行したのだ!
世界中に「物を活かしきる」という
「もったいない」を拡げていきましょう!
5.LCAを理解する
■LCA(ライフサイクルアセスメント)とは?
製品の製造から、販売・使用され廃棄されるまでの間に、
どの程度環境に負荷を与えるかを定量的に評価する手法。
企画段階で考慮するLCAは、実際に
どうなるのかを証明するものではない。
現実には、廃棄後に続く「蓄積・溶出
→他の環境との接触・他物質との相乗
作用→拡散→食物連鎖による生物濃
縮」などは、あまり考慮されていない。
廃棄した後のことも熟慮している企業
は、まだまだ少ない。
ここに社会問題化するリスクがある。
■LCAで考慮すべき「3つの可能性」
①第1の可能性
今まで自然に存在しなかった物質は、自然に
とっての汚染源となる可能性がある。
自然界になかったということは、それらを分解する
微生物も存在しない確率が高い。従って、それらが
環境に放出された時、長期に渡って悪影響を与え続
けることが予想できる。
食物連鎖による生物濃縮や他の物質との複合作用も
考える必要がある。
例)環境ホルモンや核廃棄物・産業廃棄物など。
②第2の可能性
ある条件のもとでは安定かつ安全な物質で
あったとしても、廃棄されるなどして別の
条件下に置かれた時、環境汚染物質に変化
する可能性がある。
これを防ぐには、放出された後の移動経路(流通
経路)を予測し、そこで遭遇するであろう諸条件
を考慮しておく必要がある。
例)フロンが成層圏でオゾン層を破壊する。
無機水銀が海底の微生物や光の作用(光化学
反応)によって有機水銀に変わる。
③第3の可能性
現時点ではまったく問題のないもので
あったとしても、将来現れる(可能性
のある)新たな物質と反応して問題を
生じる可能性がある。
例)塩素系洗剤と酸性洗剤とが反応して塩素
ガスが発生する。
乳製品の成分であるタンパク質に次亜
塩素酸ソーダ(塩素系消毒剤)が作用し、
猛毒のシアン化合物が生成する。
■LCAの発想を現場で活かすには?
◆乾いた雑巾を絞る
乾いたように見える雑巾であっても絞れば
多少の水が出るように、合理化もやり尽く
したように見えても諦めてはいけない。
「乾いた雑巾だから無理」ではなく、
「乾いた雑巾のようでも、まだチャレンジ
する価値がある」ということ。
◆乾いた雑巾を絞る具体例1
●濡れた(乾いた)状態にも程度があると認識する
→ 雑巾の水分量を減らす方法を考える
→ 元々の水分量を減らすことを考える
→ 元々のエネルギー使用量・資源使用量を削減する
●雑巾の数を減らす。
●雑巾より有効な代替物を探す。
●雑巾も代替物も使わない方法を考える。
●製造プロセスを見直す。
◆乾いた雑巾を絞る具体例2
●製造プロセスそのものを変更する。
●そもそも、その部品・商品は必要なのか
検討する。
●その部品・商品がなくても同じ機能を
発揮させる方法はないかを考える。
●その部品・商品を廃止する。
●個々の企業だけでなく、業界全体として、
場合によっては世界全体で)部品や商品を
統一化することを提案する。
ご静聴ありがとうございまし
た。