化学物質過敏症

化学物質過敏症
2016.02.10
奥田昌之
• シックハウス症候群
• 化学物質過敏症
http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~okuda/
シックハウス症候群
Sick house syndrome, SHS
Sick building syndrome, SBS
Sick school syndrome, SSS
「居住者の健康を維持するという観点から問題の
ある住宅にみられる健康障害の総称」
(厚生労働省)
「特定の家屋で経験される急性の健康影響あるい
は気分の変調の総称」(標準公衆衛生・社会医学)
シックハウス症候群の主要症状
既知の特定の疾病や原因で説明できない
症状の種類
主な症状
中枢神経症状 頭痛、眩暈、傾眠、不安、うつ、注意
集中困難、行動異常、被刺激性亢進
など
眼症状
角膜乾燥、刺激感、結膜充血、流涙
など
呼吸器症状
鼻閉、鼻汁、咽頭痛、喘鳴、呼吸困難
など
皮膚症状
掻痒感、乾燥、皮疹など
全身症状
倦怠感、易疲労感、筋肉・関節痛
要因
• 住宅に使用されている建材や家具、日用品
などから様々な化学物質が発散
• 住宅の気密性が高くなった
• ライフスタイルが変化し、換気が不足しがち
原因物質の可能性
発生源 建材や家具、室内で用いるもの
化学物質 揮発性有機化合物
volatile organic compounds, VOC
化学的 ホルムアルデヒド
トルエン、キシレン
アセトアルデヒド
生物学的 真菌類、ハウスダスト
(一部アレルギー)
Volatile organic compounds
揮発性有機化合物
沸点によって分類(WHO)
POM
SVOC
VOC
VVOC
particulate organic matter
semivery
シックハウス症候群の対策
対策
• VOC含有量の少ない建材の使用
• 換気の励行
• ベークアウト(過剰暖房)
室内濃度の指針値(H9~H14) 厚生労働省
建築基準法改正(H15) 国土交通省
建材の規制や24時間換気の設置義務
住宅相談統計年報2013
公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター
600
件
400
15
%
10
200
5
0
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
0
平成17年度室内空気中の化学物質濃度の実態調査
国土交通省
40
%
30
ppm
0.08
0.06
20
0.04
10
0.02
0
0
H12 H13 H14 H15 H16 H17
室内濃度指針値
揮発性有機化合物
ホルムアルデヒド
アセトアルデヒド
トルエン
キシレン
エチルベンゼン
スチレン
パラジクロロベンゼン
テトラデカン
クロルピリホス
フェノブカルブ
ダイアジノン
フタル酸ジ-n-ブチル
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル
室内濃度指針値*
100μg/m3(0.08ppm)
48μg/m3(0.03ppm)
260μg/m3(0.07ppm)
870μg/m3(0.20ppm)
3800μg/m3(0.88ppm)
220μg/m3(0.05ppm)
240μg/m3(0.04ppm)
330μg/m3(0.04ppm)
1μg/m3(0. 07ppb)
小児の場合0.1μg/m3(0.007ppb)
33μg/m3(3.8ppb)
0.29μg/m3(0.02ppb)
220μg/m3(0.02ppm)
120μg/m3(7.6ppb)
現時点で入手可能な毒性に係る科学的知見から、ヒトがその濃度の空気を一生涯
にわたって摂取しても、健康への有害な影響は受けないであろうと判断される値を
算出したもの。
総揮発性有機化合物(TVOC)について
室内空気質のTVOC暫定目標値を 400μg/m3 としている。この数値は、国内家屋の室内
VOC実態調査の結果から、合理的に達成可能な限り低い範囲で決定した値であり、室
内空気質の状態の目安として利用されることが期待される。
建築基準法
• クロルピリホス 使用禁止(シロアリ、農薬)
• ホルムアルデヒド 規制(面積、換気、場所の条件)
平成15年改正
他の物質は?
今のところは規制対象でない
シックハウス対象以外では、石綿 全面禁止。
化学物質過敏症
本態性環境不耐症
idiopathic environmental intolerance, IEI
(多種類)化学物質過敏症
multiple chemical sensitivity, MCS
極微量の化学物質曝露により、従来の中毒や
アレルギーの概念では説明不可能な機序に
よって生じる健康障害
原因物質
Sick house syndromeの原因物質と同じものが
多い。
ホルムアルデヒド
トルエン
有機リン系殺虫剤
家屋以外のもの
発症までの過程
発症前(感作段階)
化学物質
微量・長期間の曝露
あるいは 高濃度の急性中毒
発症
比較的低濃度の同一・同種の化学物質曝露
症状
急激な発症
極低濃度でも発症
多種類の化学物質に反応
化学物質過敏症 診断基準
厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー研究班
つまり、国によって、異なる。
主症状
頭痛、筋肉痛・不快感、倦怠感・疲労感、関節痛
副症状
咽頭痛、微熱、下痢・腹痛、便秘、羞明・一過性暗点、興奮・精神不安定・不眠、皮
膚掻痒・感覚異常、月経過多
検査所見
視覚空間周波数特性、瞳孔異常、眼球視点追従運動、大脳皮質機能、誘発試験
診断基準
主症状2+副症状4
主症状1+副症状6+検査所見2
病態 未解明
中枢神経系 → 大脳辺縁系の機能異常
(過敏状態)
アレルギーとは言わない。抗原性?
内分泌かく乱物質に近い?(極低用量)
Low dosage chemical exposure syndrome
「室内空気質健康影響研究会報告書:
~シックハウス症候群に関する医学的知見の整理~」
H16
室内環境
アレルギー
咳、喘鳴
湿度、カビ、ダニ、ペット
呼吸器 喘鳴、悪性腫瘍
暖房器具、調理器具
悪性腫瘍
ラドン
感作性物質
物質の抗原性に対して免疫応答が過剰に働き
健康障害がおこる。
抗原(アレルゲン)
高分子 それ自体
低分子 ハプテンとして、キャリア蛋白質と結合
新しく見つかる健康障害、原因がわからない
水俣病
曝露要因
→ 用量依存的な健康障害
原因究明
救済・給付(生活の保障)
補償(つぐなう)
調査のためには定義が必要
障害のすべてではない。
子宮頸がんワクチン
子宮頸がん
性行為によるヒトパピローマウイ
ルス(HPV)感染
日本人女性では年に約1万人
(上皮内がんを除く)が罹患(り
かん)し、約3千人が死亡。
ワクチン接種後
原因不明の全身の痛みや運動
障害 重篤300件ぐらい
接種による心身の反応 vs. 「HPV
ワクチン関連神経免疫異常症候
群」?
原因不明の健康障害
原因 曝露状況
はっきりしている ⇔ はっきりしない
健康障害 既知の病態(類似の状態)
はっきりしている ⇔ はっきりしない
調査
まず記述的 → 比較(曝露と非曝露)
→ (動物)実験
対策
予防、治療、保障や補償
個人的な差異