高感度VLBIによるSgr A*近傍のブラックホールの探査

高感度VLBI観測によるSgr A*
近傍のブラックホールの探査
2015年10月11日(日) BH地平面研究会@山口
山口大学大学院 理工学研究科物理・情報科学専攻
電磁宇宙物理学研究室 修士1年
木村 靖伊奈
INTRODUCTION
BHの質量と形成
形成過程が未解明
~102 M
>20M 大質量星の超新星爆発
5 M -15 M 
恒星質量BH
http://chandra.harvard.e
du/photo/2011/cygx1/
の超大質量星の
重力崩壊?
102-4 M 
IMBH
https://ja.wikipedia.org/wiki/HLX1#/media/File:ESO_243-49_(HST).jpg
106-9 M 
SMBH
https://public.nrao.edu/images/galleryimages-medium/sgra_radio_medium.jpg
質量獲得メカニズム①
① ガスの降着
重力
降着
エディントン限界光度
L  LE 
4GMmc
T
輻射圧
1
エディントン降着率 M crit
L
   M 
 E2  1.4 1018 
 

c
 0.1   Mo 
Z~6におけるSMBHの発見
Narayanan & Lupton et al. 2001
ガスの降着のみではSMBHは形成不可能?
[g/s]
質量獲得メカニズム②
② BH同士の合体成長
大質量銀河は複数の銀河の合体を通し
て形成
→大質量銀河には複数のIMBH、SMBH
が存在するはず
IMBHは観測数自体が少ない
http://www.nikkei.com/news/imagearticle/?R_FLG=0&ad=DSXBZO406200402004201
2000001&bf=0&dc=1&ng=DGXNASGG1901M_Q2
A420C1000000&z=20120424
暗くて見えない?
合体して個数が少ない?
2個以上のSMBHがある銀河はほとんど見つかっていない
中心核と合体?
N体シュミレーション
Z~6で109 M 
1つのBHのみ成長
BH同士の合体成長によりSMBHは形成可能
Li, Y., Hernquist, L., Robertson, B., et al. 2007
Tanikawa, A., & Umemura, M. 2011
銀河と中心BHの共進化
回転楕円成分
と
中心BH
には相関関係がある
マゴリアン関係
𝑀𝐵𝐻 𝑀𝑏𝑢𝑙 ≈ 10−3
Marconi & Hunt 2003
3C66B
~10-2 pc
3C66B:衝突直前のブラックホール
http://almaintweb.mtk.nao.ac.jp/~ig
uchi/press_release/imag
es/topsummary2.jpg
数百年後に合体?
Tanikawa, A., & Umemura, M. 2011
軌道周期:1.05±0.03年
Hiroshi Sudou, Satoru Iguchi, Yasuhiro Murata etal. 2003
研究目的
Sgr A*の近傍にも合体の証拠となる銀河系内BHが浮遊して
いるのではないか
Sgr A*近傍の浮遊BH発見
GCのコンパクト天体の探査
予想される浮遊BHの特徴
•
コンパクトである
•
スペクトルがフラット
•
短期の強度変動を示す
•
背景AGNとは異なる固有運動を示す
Sgr A*の特徴より
SOURCE SELECTION
使用カタログと選定条件
Lazio & Cordes ,2008
2LCカタログ
• GC方向のコンパクト天体
• 直径2°内部
• 170天体
• VLA A configuration 5 GHz, 1.4
GHz
• 角分解能 1″ at 5 GHz , 2.″4 at 1.4
GHz
選定条件
•
1.4 / 5 GHzの両方で検出
•
5GHzでのフラックス密度が10mJy以上
•
5GHzでのサイズが0.25秒角以下
•
スペクトル指数が-1より大
5天体選出
天体情報
RA (J2000.0)
Dec (J2000.0)
5 GHz
No
Name
hh
mm
ss
dd
mm
ss
S
[mJy]
size
[sec]
1.4-5 GHz
Spectral
Index
1
358.917+0.072
17
42
44.013
-29
49
15.98
99.4
0.08
-0.7
2
359.388+0.460
17
42
21.46
-29
12
59.96
37.2
0.25
-0.7
3
359.558+0.803
17
41
26.158
-28
53
28.97
15.2
0.23
-0.8
4
5
000.192-0.687
000.491-0.777
17
17
48
49
45.68
49.018
-29
-28
7
55
39.2
5.36
83.8
12.1
0
0.16
1
-0.1
上記5天体をVLBIで観測
※1 pc=3.1×1013 km
OBSERVATION
VLBI (Very Long Baseline Interferometry)
VLBIの特徴
•
•
高分解能
高輝度天体を選択的
に検出できる
VLA(A configuration ) : 1″
VLBI(本観測) : 8.4 mas
コンパクトで高輝度な天体に適している
HⅡ領域などからの熱的放射の可能性を排除
観測パラメータ
•
•
•
•
日時:2014年6月9日12:30-18:00(UT)
観測周波数:8.192-8.704 [GHz]
帯域幅:512 [MHz]
観測局:山口、つくば、日立
観測の流れ(1セット)
NARO530 → J1745-28 →
source1 → J1745-28 →
source2 → J1745-28 →
source3 → J1745-28 →
source4 → J1745-28 →
source5
1セット×5回
JVNのアンテナ位置
アレイ性能
基線
基線長[km]
角分解能[mas]
つくば-日立
85
86.3
つくば-山口
804
9.2
山口-日立
873
8.4
RESULT
検出天体
4
つくば-日立
1
5
23
観測トラブル
山口-日立
各天体の信号対雑音比(SNR)
検出天体
source1, source2, source4, source5
検出天体のフラックス密度
140
source1
source2
source4
source5
フラックス密度[mJy]
120
100
分解できないくらい
コンパクト
80
60
40
20
0
0
200
400
600
800
1000
基線長[km]
フラックス密度
基線
つくば-日立
つくば-山口
山口-日立
source1
[mJy]
38.5
40.5
26.1
source2
[mJy]
32.2
…
…
source4
[mJy]
133
60.3
45.4
source5
[mJy]
33.0
41.6
27.4
DISCUSSION
ガウス型輝度分布天体と仮定
𝐷
𝑆 𝐷 = 𝐵 𝜃 𝑒𝑥𝑝 −2𝜋𝑖 𝜃 𝑑𝜃
𝜆
𝐷 2
− 𝐷
𝑒 0
𝑆 𝐷 = 𝑆0
𝜆
𝜃0 =
𝜋𝐷0
フラックス密度[mJy]
天体サイズ推定
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
Source1
0
FWMH= 2 ln 2 𝜃0
source4
短基線[mJy]
38.5
133
長基線[mJy]
33.3
52.8
D0[km]
2203
869
FWMH[mas]
1.77
4.49
400
600
基線長[km]
800
1000
160
フラックス密度[mJy]
source1
200
140
source4
120
100
80
60
40
20
0
0
200
400
600
基線長[km]
800
1000
輝度温度推定
ガウス型輝度分布
𝐵 𝜃 = 𝐵0 𝑒
−
一様輝度分布
𝜃2
𝜃2
0
𝑐2 𝑆
𝑇𝐵 =
2𝑘𝐵 𝜈 2 Ω𝑆
𝑐2
𝑇𝐵 =
𝐵0
2
2𝑘𝐵 𝜈
source1 [K]
source4 [K]
source2 [K]
source5 [K]
2.1×108
1.2×108
8.5×104
7.6×106
観測まとめ
GC方向のコンパクト電波源5天体をVLBIで探査
→4天体を検出(1天体は既知の系外天体)
3天体
• コンパクト(masスケール)
• 高輝度(>~105K)
非熱的放射
(シンクロトロン放射)
系内BH?背景AGN?
距離の推定が必要
PROSPECT
今後の展望①
予想される浮遊BHの特徴
•
コンパクトである
•
スペクトルがフラット
•
短期の強度変動を示す
•
背景AGNとは異なる固有運動を示す
距離の推定
固有運動と強度変動の観測
固有運動と強度変動
JVN観測(実施中)
•
4 epoch : 2015/6/17, 7/20, 8/20,
10/15
•
時間 : 6hr/epoch
•
周波数:8.192-8.704 [GHz]
•
帯域幅:512 [MHz]
•
観測局:山口、つくば、日立
固有運動
銀河中心 6 mas/yr
測定可能
強度変動
VERA観測(実施予定)
Source2のみ
•
4 epoch
•
epoch interval : 1.5ヵ月
•
時間 : 5hr/epoch
•
周波数:22 [GHz]
•
帯域幅: 256 [MHz]
•
観測局:水沢、入来、小笠原、石垣
H. Falcke, A. Cotera, W.J. Duschl 1999
変動を捉えられるかも?
今後の展望②
広範囲でのコンパクト天体の探査
4カタログ
・GC方向を含む
・コンパクト天体
・約1500天体
6
galactic latitude [degree]
4
2
・ l = 355◦ − 5◦ の範囲
に位置
・56天体選出
0
-2
-4
-6
6
4
2
0
-2
galactic longitude [degree]
-4
-6
JVN観測(実施予定)
•
周波数:8.192-8.704
[GHz]
•
帯域幅:512 [MHz]
•
観測局:山口、つくば、日立
まとめ
• SMBHは形成過程が未解明
→BH同士の合体成長?
• Sgr A*の近傍の合体成長の証拠となるような浮遊BHを探査
• GC方向のコンパクトで高輝度な天体を高感度VLBIで検出(5
天体中4天体、1天体は系外天体)
• 検出天体(3天体)の固有運動の測定による距離推定
• 広範囲でのコンパクト天体の探査