発表スライド PCCH2013terao

数学の講義を補完する
自習ウェブサイトの構築
寺尾 敦
青山学院大学社会情報学部
[email protected]
Twitter: @aterao
1.はじめに
• 全国的な背景:「学生の十分な質を伴った主
体的な学修時間の増加・確保」(中央教育審議会
答申“新たな未来を気づくための大学教育の質的転換に向
けて”)
• われわれの学部での背景:2科目の数学科
目を選択必修で履修.
– 演習の時間を確保してはいるが,授業外での学
習も必要
– 文系学生が半数以上
• 学習意欲が高い学生であっても,(特に理系
科目では,)授業外での自学自習は容易では
ない.
– 本音:学習意欲の低い学生のことは・・・
• 学部では「数学質問部屋」を開設.積極的に
利用している学生が何人かいる.
– 望ましいことだが,自学自習の難しさを示してい
るとも言える.
• 数学の講義を補完する,テキストを自学自習
するためのウェブページの作成.
– 統計学(北大・大学院文学研究科「魅力ある大学
院教育」)
– 線形代数
• Question:こうしたウェブページは(学習意欲
のある)学生に受け入れられるのか?
– 学生に実際に学習してもらい,有用性を評価.
2.方法
• 参加者:線形代数の入門講義を受講していた
1年生に対して,評価実験への参加者を募集.
– 謝礼は4,000円.
• 4名の学生が募集に応じた.
材料
• テキスト:足立俊明・山
岸正和『入門講義線形
代数』(裳華房)
• 第1章を解説したウェブ
ページを作成
– テキストの内容の補足
説明
– 演習問題の解答・解説
– 数式の記述には
MathML を使用.
テキストの内容の補足説明
演習問題の解答・解説
参考:類似の試み
• ビショップ『パターン認
識と機械学習の学習
上・下』(丸善出版)の
学習を助ける書籍
手続き
• ウェブページを利用してテキスト第1章の内
容すべてを学習.
– 主要な教材はテキスト
– ウェブページはテキストの補助教材
– いつ,どのようにウェブページを利用するかは,
参加者にまかされた.
• テキストの記述に沿って配置されていた6つ
の演習問題はすべて解く.章末問題に取り組
むかどうかは自由.
• 学習の終了後に,いくつかの質問項目に解
答した.
3.結果と考察
評価実験前の学習
• 今回の学習より前に,テキストの第1章を
何%ぐらい学習していましたか?
カ
バ
ー
率
(
%
)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
評価実験前に,
学習事項のすべて,
あるいは大半を,一
度は学習していた.
参加者A
参加者B
参加者C
参加者D
評価実験前の理解度
• 今回の学習より前に,テキストの第1章を
何%ぐらい理解できていましたか?
理
解
度
(
%
)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
評価実験前に,
学習事項の大半を
理解できていた.
(自己評価)
参加者A
参加者B
参加者C
参加者D
評価実験後の理解度
• 今回の学習で,テキストの第1章の,何%ぐら
いを理解できましたか?
理
解
度
(
%
)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
いずれの参加者も
理解度の自己評価
は10%アップした
学習前
学習後
3時間
50分
2時間
3.5時間
学習に要し
た時間
参加者A
参加者B
参加者C
参加者D
テキスト理解に役立った?
• 全体として,ウェブページはテキストを理解す
るのに役立ちましたか?
1.
2.
3.
4.
5.
6.
とても役に立った
役に立った
やや役に立った
あまり役に立たなかった
役に立たなかった
まったく役に立たなかった
参加者
A, D
参加者
C
参加者
B
• ウェブがテキスト理解に役立ったかの評価は
分かれた.
– AとDは高評価
– B(否定的評価)と C は評価があまり高くない
• 参加者Bは,評価実験の前に,テキストの内
容のほとんど(90%)を理解できていたため
に,新たに役立つ内容がなかったかもしれな
い.評価実験に要した時間は1時間以内だっ
た.
• 他の章でもこのような解説ページがウェブに
用意されたら利用しますか?
1.
2.
3.
4.
5.
利用する可能性が非常に高い
おそらく利用する
どちらとも言えない
参加者
B
おそらく利用しない
利用する可能性は非常に低い
参加者
A, C, D
有用性についての評価が否定的であった参加者Bも含め,
すべての参加者は肯定的な回答.
4.おわりに
• 数学の講義で,授業を補完するウェブページ
を作成すれば,授業外の学習でそれを利用
する学生は存在する.
• どれほど多くの学生のニーズがあるかは不
明.
– 参加者の募集に応じたのは,わずか4名.
– しかし,たとえ少数でも,学習意欲の高い学生の
支援をすることには意味があると考える.
今後の予定
• 統計学の入門講義での,テキスト・授業を補
完するページ
• 高校2年,3年生程度の数学を解説するペー
ジ
– リメディアル教育
– 社会情報学部での数学の入門講義を補完
• 問題演習のページ
– 計算問題については STACK を利用
• 類似のウェブページ,電子教材が増えてきた
とき,それらに勝つには?
– 内容のわかりやすさ.この点は自信を持ってい
る.数学,認知科学(教育心理学),情報科学の
教員で連携
– 十分な範囲をカバーする.この点は自信がない.
ページのソースを書く作業をほぼ1人で行ってい
るため.
謝辞
• 研究プロジェクト「数学系講義を補完する自
習システムの構築」(2013-2014年度,代表
者:寺尾敦)に対して,青山学院大学総合研
究所からの支援を受けました.