1 - 福井県高等学校PTA連合会

北信越地区高等学校PTA連合会 研究大会福井大会
特別分科会 2010年7月9日
⑤福井市至民中学校
学級編成型「新ホーム制」
松木 健一
福井大学教職大学院
1
至民中学校は公立の中学校
2008年に移転開校。
中学校を支配する3つの指導
(生徒指導・受験指導・部活指導)
から脱却して知識基盤社会に生き
る子どもたちの学力を培うことを目
指した。
曲線によって描かれた学校
学校建築は空間のデザイン
時間をデザインした教育課程と
相まって初めて成り立つ
2
子どもが育つ学校は
地域が育つ学校でもある
子どもの育つ学校には
教師が育つ仕組みがある
3
市街地のような学校風景
4
異学年の生活の場:クラスター
気楽にくつろぐ生徒
5
学力観の転換が図られた
教科センター方式の学校例
ー福井市至民中学校ー
集団の大きさ(学校全体・学年
集団・クラスター集団・学級集団・
様々なグループ集団)と質の異
なる集団(生活集団・異学年集
団・情報収集の集団・学習活動の
集団・表現する集団)を持つ学校
建築
6
双方向的なコミュニ
ケーションが可能に
なった空間(黒板と掲
示板が壁をなす構造)
生徒の主体的な活動を
支える70分授業
生活空間と学習空間が
分離しつつ接続
教室
葉っぱのエリアへ
トイレ
ホーム予備
2-1ホーム
ラウンジ
1-1ホーム
教員
ステーション
3-1ホーム
国語エリア
ホームの
エリア
教室
教室
階段
教室
トイレ
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至民中学校は
なぜこんな建築
(異学年型教科センター方式)
になったのか
学校建築を通して現代日本の教育課題の解決を目指したから
子どもの学力
教師が育つ学校
生徒指導と授業の関係
地域が育つ学校
8
教育の転換期を迎えた日本
近代日本の3大教育改革
(教育改革)
外圧
鎖国
外圧
占領
GHQ
(教師教育改革)
国民皆学制
師範学校の設置
1872年
1874年
1886小学校令(就学義務教科)
読み書き算盤に加え情操教育
敗戦後1945年の
民主主義教育
専門学校から大学へ
大学での教員養
成(開放制)
1949年
皇国史観の歴史から社会科の設置
1947年教育基本法の設置
中学校の義務化・男女共学 学校の単線化
外圧
経済の
グローバル化
学力観の転換
2010年前後
修士課程での教
員養成2011年?
教育基本法の改正・生活科・総合学習・ゆとり教育の見直し・
教員評価・教員免許更新制 (混乱の最中にある)
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教育の転換期を迎えた日本
近代日本の3大教育改革
(教育改革)
(学校建築)
培いたい学力によって器は変わる
外圧
鎖国
外圧
占領
GHQ
国民皆学制
1872年
1886小学校令(就学義務教科)
読み書き算盤に加え情操教育
敗戦後1945年の
民主主義教育
皇国史観の歴史から社会科の設置
1947年教育基本法の設置
中学校の義務化・男女共学 学校の
単線化
外圧
経済の
グローバル化
学力観の転換
2010年前後
学校建築図説明
及設計大要
1895年(M28)
全国画一的なハモニカ
型の校舎
明治期の富国強兵/
殖産興業、及び、戦
後の高度経済成長は、
同じ学力観で対応で
きた
求められる学力を培
うことのできる建築
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1895年以来画一的になった日本の学校建築
ハモニカ校舎⇒定型化M28(文部省標準型)⇒M34三島通良(衛生面から検討)
収容人数に比し安い建築費
二酸化炭素中毒を
防ぐ天井の高さ
廊下
右利き筆の採光条件
富国強兵を支える良質な
労働力確保・有能者の発見
西4間
8m
50-60人
黒
板
南5間 10m
一斉授業
●教師との1対1のコミュニケーション
中心
●知識情報伝達型コミュニケーション
中心
●情報源が教科書・黒板中心コミュニ
ケーション
●管理中心のコミュニケーション
この様式に見合う学力評価の
方式が定着(例)大学入試11
学力観の転換
21世紀の知識基盤社会に求められる学力
伝統的な知識習得に立った暗記・
復唱型の個人学習中心モデル
(貯金箱モデル)
課題解決に向け協働探究を推進しながら
学習コミュニティを形成するモデル
(社会参加モデル)
12
学力観の転換の契機は何か
量は増やしたが選択すればいい
PISA
(OECD)
学力低下
国際競争力
国力低下
習熟量の増大
指導要領の改訂
教科内容の大幅な増加
思考力・判断力・表現力
道具(情報)の活用能力
21世紀は知識基盤社会
速い社会変動の中で固定した知識は
すぐに陳腐なものになってしまう
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PISAとその背後にあるキーコンピテンシー
異質な集団
との交流
自律的な
行為
大きな展望の
中で活動する
人生設計や 自らの権利
個人的プロ 利害・限界
ジェクトを設 ニーズを 表
計し実行
明
深い省察
他人といい
関係を作る
協力
チーム
で働く
争いを処理
し解決する
対話への
道具活用
言語・シンボル・
テクストを相互作
用的に活用
知識・情報を 技術を相互
相互作用的 作用的に活
用
に活用
PISA
14
PISAとその背後にあるキーコンピテンシー
授業という
「フレーム」
の捉え直し
至民中学校は何をしてきたか
①教科を越えた授業研究
②70分授業で培おうとしている
主体性とカリキュラム改革
異質な集団
③建築を活かした協働性と
との交流
コミュニケーション能力
④学校文化の構築(情報活用力)
PISA
自律的な
行為
文部科学省
対話への
探究
の方略
道具活用
活用
課題解決能力
情報活用能力
習得
問題分析能力
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PISAとその背後にあるキーコンピテンシー
キャリア教育・道徳強化として具体化
キャリア教育
⇒職業教育
文部科学省の方略
⇒人間関係形成能力
就業力の乏しい青年
情報活用能力
の増加に対し
異質な集団
意思決定能力
国家存亡にかかわ
との交流
将来設計能力
るような危機感
Cタイム・クラスター活動
①生活の中の学び
②地域と結びついた学び
③協働やコミュニケーション形態
自律的な
を介して授業と結びつく学び
行為
PISA
対話への
探究
道具活用
活用
社会参画の取組が就業力を促す
世代継承生成サイクルの実現が就業力を高める
習得
16
170万人の
フリーター・ニート数
17
64万人のニート数
18
在職期間別離職率の推移(高等学校卒業者)
60
47.2
50
41.8
46.6
50.3
46.8
48.1
43.2
9.2
40
9.7
13.8
12.6
49.3
9.1
14.8
13.8
24
24.6
9.7
9.6
9.1
9.4
9.9
9.8
14
13.9
14.3
14.6
47.9
合計%
8.8
10.4
8.8
14.7
9.3
10.6
8.8
30
49.5
39.7 40.3
45.1
11
48.9
48.2
47.5
48.5
9.5
14.7
14.8
11.6
12.1
13.2
14.6
23.8
24
14.1
12.4
12.9
20
10
21.5
21.6
20.4
19.3
18.7
19.9
21.2
26.3
25.9
25.3
25.1
25
25
23.7
21.5
0
19
18
17
16
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
平
成 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年
元
3年目
2年目
1年目
19
厚生労働省「新規学校卒業就職者の就職離職状況調査」
在職期間別離職率の推移(大学卒業者)
33.6 32.5
40
27.6
35
25
27.9
26.5
23.7
30
32
32
9.2
8.5
8
7.4
20
8.3
9
8.8
8.9
11.6
11.3
10.8
15.7
15.2
15
35.9 合計%
9.7
9.1
11
11.8
11.8
15.3
15.1
15
9.4
9.3
8.4
6.8
6.6
7.1
11
10.4
10.6
15
35.8
8.9
9.1
36.6
34.7
35.4
34.3
24.3
9.1
25
36.5
8.2
11.3
10.9
9.8
8.8
7.6
7.8
10
5
10.7
10.3
9.9
9.5
9.4
10.7
12.2
14.1
13.8
12.9
13.9
14.6
12.9
0
19
18
17
16
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
平
成 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年
元
3年目
2年目
1年目
20
厚生労働省「新規学校卒業就職者の就職離職状況調査」
新至民中学校の理念を実現する3本柱
生活の基盤となる
異学年型クラスタ-制
・世代継承サイクル(文化継承)
・自治組織の運営
(4つの小さな学校)
・CAP(キャリアデザインプロジェクト)な
どのCタイム運用
クラスターでの職場体験
ギャラリーしみん運営参加
学びの継承
学力充実の場となる
教科センター方式
・学びのサイクルの構築
70分授業での問題解決型学習
20分REタイム等での学び方学習
・学びエリアのデザイン・運営
授業改革を
ベースとした
学びと生活の
融合
社会の一員として生きる
互恵的な地域連携
・日常的な学校開放、情報発信
「学校案内ボランティア」
・学校は地域の文化拠点
(生徒はその重要な担い手)
「ギャラリーしみん」
福井市特別研究指定校
「至民アカデミー俱楽部」
福井大学教職大学院
拠点校
参観から参加へ
「地域公開講座」
曲線で囲まれた
特徴的な校舎
オープンな教室
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学力観の転換と学校建築
知識習得型学力観
社会参画型学力観
教師を中心に一方向的で
放射線状コミュニケーション
子ども同士が中心に双方向的で
螺旋状コミュニケーション
一斉授業型教室と
個人研鑽室(図書室など)
情報収集教室、協働学習空間、
学習表現・学習成果物蓄積空間
生活空間
学校は、指示を受け行動する時間と
空間が多く、ストレスフルなため、反
発や癒しを求めることが多くなる。
学校=「私」が小 歪んだ「公」が大
生活空間と学習空間の
分離による統合
「私」が活かされて「公」が形作られ
るコミュニケーションを生活でも学習
場面でも多くする
「私」⇒「公」 あるいは「公」⇒「私」
の意思決定とコミュニケーション
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教師の協働を実現できる学校建築
これまでの学校建築
新しい学校建築
教師が孤立していた教室
開放的な教室・協働の学び
(学級王国)
(壁のない教室・授業を見合える教室)
指導法に関する教師の
個人技能中心の教室
校務分掌(生徒から離れて)
一斉授業(集団を相手に)の
空間しかない学校
意図的に教える教室から無意
識に学んでしまう学校空間
(学びの学校文化)
校務分掌(生徒から離れて)
双方向的な授業(集団を相手に)
生徒と1対1の学びの対話が
実現できる学校
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