平成27年11月8日 障害学会第12回大会 大会校企画 「(発達)障害学生支援と合理的配慮提供の実際 —「障害学会」が貢献できるもの」 実践報告: 「京都大学における発達障害学生支援」 京都大学 学生総合支援センター 障害学生支援ルーム チーフコーディネーター(助教)/村田 淳 1 報告要旨 1) 京都大学における障害学生支援 2) 発達障害学生支援の現状 —個別支援と修学支援 3) 社会を見据えた支援のあり方 —移行支援の視点 4) 今後にむけた課題(学会等への期待) 2 1)京都大学における障害学生支援 <支援の特徴> ① 支援対象者が学部生だけでなく、大学院生にも多く含 まれること →情報保障の質、学外の活動における移動介助等が課題に。 ② 障害学生の把握(正式登録)を障害の有無ではなく、 支援の必要性の有無(「社会モデル」)で捉えること →相談のみの場合は、この限りではない。 3 1)京都大学における障害学生支援 <支援対象者の登録状況> 視覚障害 :2名 聴覚障害 :5名 ※2014年度 肢体不自由 :7名 病弱虚弱 :9名 発達障害 :9名 その他(精神障害等):5名 合計37名 ※その他、個別相談のみの学生が、20〜30名程度 4 1)京都大学における障害学生支援 <主な役割> • 障害のある学生の相談、修学支援 • 学生サポーターの養成、派遣 • 学内のバリアフリー化に関すること • 障害のある学生の就職活動支援 • 研修、理解啓発 • 受験希望者の事前相談、オープンキャンパスでの支援 • シンポジウム等の開催 • 障害に関する科目提供 etc 5 2)発達障害学生支援の現状 —個別支援と修学支援 <個別支援> …意思やカウンセラーなどと基本的に1対1の関係のなかで 自己と向き合い、解決策などを導いていくこと。 【主な窓口:健康科学センター(保健診療所)、カウンセリングルーム】 <修学支援> …学習や研究を進める上で必要となる特別な支援や配慮など を指し、社会モデルの考え方で支援を実施すること。 【主な窓口:障害学生支援ルーム】 6 2)発達障害学生支援の現状 —個別支援と修学支援 <修学支援のポイント> • 発達障害学生のニーズは個別的で多様であるため、修 学支援も個別性が高い。 • 学生本人の特性と修学環境の双方を丁寧にアセスメン トする必要がある。 • 複数の専門的な支援者の力が必要になることが多く、 医療や心理、教育、福祉などの支援者が必要に応じて 連携する必要がある。 7 2)発達障害学生支援の現状 —個別支援と修学支援 <修学支援の実際> • 授業、定期試験、研究室における環境調整が中心 • 必要に応じて、人的支援を行う場合もある • 授業担当教員、指導教員などにコミュニケーション上 の配慮を依頼する(学生の特徴を伝え、効果的な関わ り方を伝える) • 必要に応じて、録音、撮影などの許可をもらう etc 8 2)発達障害学生支援の現状 —個別支援と修学支援 <修学支援を行う上での留意点> • 「発達障害だから」という理由で決まった支援を行う のではなく、個々の学生の特性やニーズ、環境によっ て実施する支援は異なる。 • 合理的配慮を判断するための基準が明確ではないため、 現時点においては(ある一定のエビデンスやアセスメ ントの結果をふまえつつ)学生本人や授業担当教員等 との対話によって、合意形成をはかり、支援を実施す るというプロセスとなっている。 9 3)社会を見据えた支援のあり方 —移行支援の視点 <より包括的なアプローチとしての「移行支援」> • 短期間の状況変化に伴う移行の支援ではなく、社会を 見据えた支援を中長期的に実施することで、長い目で 見た移行支援が必要ではないだろうか。 • (現時点では)大学生になってから発達障害が顕在化 するというケースが多く、学生本人の障害特性に対す る考え方や支援等のニーズが定まっていない場合が少 なくないため、場当たり的な支援のみでは社会を見据 えた支援になりにくいと考えられる。 10 3)社会を見据えた支援のあり方 —移行支援の視点 <「移行支援」とは…> • 自分自身の特徴をふまえた支援(環境調整等)のあり 方、あるいは環境との折り合いの付け方(他者の思考 や行動を理解した上での自己のあり方等)を発見する プロセスであると考えている。 • 必ずしも社会モデルだけでなく、少なからず個人モデ ルとしての視点も含まれている部分があるが、これが (現時点の)支援現場で実感する発達障害学生支援の 現状である。 11 3)社会を見据えた支援のあり方 —移行支援の視点 <移行支援の展開> • 社会を見据えた移行支援の視点を背景に、修学支援を 実施することで、より効果的な支援となることを実感 しているが、まだまだ模索段階であるといわざるを得 ない。 • 修学支援以外では、グループワーク(現在は2つのプ ログラムがある)を実施したり、企業や就労移行支援 事業所などとの連携による就職活動支援(インターン シップ等)を実施している。 12 4)今後にむけた課題(学会等への期待) • 大学入学後に顕在化するようなケースが多い状況下で、 社会モデルとしての視点だけでは対応しきれないこと が多いのが現状である。この状況を、社会としてどの ように捉えるのか、また、大学としてはどのようにア プローチすることができるのか。 • 発達障害学生が直面するディスアビリティの解消は重 要な課題であるが、そのような支援を実施するための 「合理的配慮のエビデンス」や「効果的なアセスメン ト方法」などを蓄積する必要があるのではないか。 13 参考: 『知のバリアフリー』嶺重 慎,広瀬浩二郎編, 京都大学 学生総合支援センター 障害学生支援ルーム協力, 2014, 京都大学学術出版会. ご清聴ありがとうございました。 京都大学 村田 淳 14
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