中間発表 都市計画決定の訴訟のあり方に関する研究 環境公法研究室 久満優善 1 目次 1章 研究目的・背景・方法 2章 都市計画決定に関する訴訟問題 2 1章 目次 1-1 背景 1-2 目的・方法 3 1-1 背景 現在都市計画に関する訴訟は大きな転換期にある。 住民が、自治体の行った都市計画決定を裁判で争う場合、 裁判所は多くの場合、「都市計画はその性質上裁判では争 えない」として、その訴えを却下してきた。ところが、行政事 件訴訟法が2006年に改正されると、これまで却下してきた都 市計画(土地区画整理事業計画)を裁判で争えるという全く 逆の判決を下すようになった(平成17年(行ヒ)第397号) 等の判例変更)。 このように裁判所は都市計画の裁判を認める傾向がみら れるが、「どの程度まで処分性を拡大するか」については依 然不透明である。というのも、このように都市計画の裁判を 認めるにしても、後に述べるようにそこには厳然たる限界が 存在することも確かだからである。そのため現在では通常の 訴訟ルートとは異なる、都市計画独自の争訟制度の在り方 も模索されている。 4 1-2 目的・方法 ・研究目的 都市計画の訴訟の限界を明らかにし、それを 踏まえて今後の都市計画争訟のあり方を提 示することを目的とする ・研究方法 文献調査 5 2章 都市計画決定に関する訴訟問題 2-1 2-2 2ー3 2-4 2-5 2-6 2-7 2-8 取消訴訟の流れ 処分性とは 土地区画整理事業とは 完結型・非完結型都市計画 S42青写真判決 概要と問題点 H20青写真変更判決 概要と問題点 考察 今後の課題 6 2-1 取消訴訟の流れ 訴訟要件 ①処分性(3条2項「処分」) ②訴えの利益 ③原告適格(9条1項) ④その他 本案 7 2-2 処分性とは • 行政訴訟法3条2項「行政庁の処分その他公権力の行 使に当たる行為」に当たるか否かを判断する基準 ⇒本案に入るためには処分性が必要 • 具体的にすると 「行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではな く、公権力の主体たる国または公共団体の行う行為のうち、 その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはそ の範囲を確定することが法律上認められているもの(最判昭 和39・10・29民集18巻8号1809頁)」 8 司法の範囲 「具体的な争訟について、法を適用し、宣言す ることによって、これを裁定する国家の作用」 「具体的な争訟」 =裁判所法三条の「一切の法律上の争訟」 法律上の争訟とは 「法令を適用することによつて解決し得べき権 利義務に関する当事者間の紛争」(最判昭和 29年2月11日民集8巻2号419頁) ①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関 係の存否に関する紛争であること ②法律を適用することにより終局的に解決する ことができるものであること(終局性) →裁判所が解決できる問題は限られている 2-3 土地区画整理事業とは 2、区域区分 土地利用計画 3、地域地区 4、地区計画等 5、遊休土地転換地用促進 区域 都市施設の 都市計画法 1、整備,開発及び 保全の方針 整備計画 6、都市施設 7、市街地開発事業 市街地開発事業の 計画 事業型 土地区画整理事業 8、市街地開発事業計画 9、促進地区 10、被災市街地復興促進地域 11 2-4 完結型・非完結型都市計画 ゾーニング型(完結型)・・・後に事業が予定 されてない。用途地域、地域地区、区域区分等 事業型(非完結型)・・・後に事業が予定され ている。土地区画整理事業等 12 土地区画整理事業流れ 土地区画整理事業の都市計画決定 土地区画整理事業の認可 争えない(s42) →争える(H20) 事業計画の決定・告示 換地計画の決定 土地区画整理審議会で換地計画など審議 争える 仮換地指定 移転工事、道路・公園整備の実施 換地処分(具体的な移転先) 土地・建物の登記・清算 保留地処分(事業費充当) 13 今回取り上げる判例 (1)高円寺青写真判決 (昭和37(オ)122号) 土地区画整理事業計画の処分性を否定した (2)平成20年9月10日判決 (平成17年(行ヒ)第397号) 土地区画整理事業計画の処分性を肯定 =青写真判決を変更した 14 2-5 S42青写真判決 概要 <原告の主張> 地区内に居住、借家する者 原告らは利害関係人であるので訴えを提起す る利益を有する。 <被告の主張> 東京都知事 事業計画自体は原告等の権利を具体的に侵 害するものではなく、訴えの利益はない。 15 判旨 ①青写真論(処分性) ②付随的効果論 ③訴訟の成熟性 ⇒処分性を否定 本案に入れなかった 16 ①青写真論 ・土地区画整理事業計画は「高度の行政的・技 術的な裁量によって、一般的・抽象的に決定 するもの」であり、 ・「特定個人に向けられた具体的な処分」では なく、「土地区画整理事業の青写真たる性質 を有するにすぎない。」 処分は具体的でないといけない 17 ②付随的効果論 公告されると土地所有者に対し一定の制限が なされるものの、これは「法律が特に付与した 公告に伴う付随的な効果」であり、「公告その ものの効果として発生する権利制限とはいえ ない」 建築制限は公告の本質的効果ではない 18 ③訴訟の成熟性 公告段階で訴えの提起を起こさなくとも、その 後の「具体的処分の取消(又は無効確認)を 訴求することができる(後続行為訴訟可能 論)」ため、「直接それに基づく具体的な権利 変動の生じない事業計画の決定ないし公告 段階では、理論上からいっても、訴訟事件と して取り上げるだけの事件の成熟性を欠く」 後の具体的処分で訴訟を起こせば十分 19 2-6 H20青写真変更判決概要 <原告の主張>地区内に土地を所有する者 ①仮換地の段階で計画が違法とされた場合には事業はかなり 進行しており計画に大きな影響が出る。 ②①により事情判決になる可能性が生じる ③計画決定すると事業の対象となる地位をもたせることになる ④事業計画の決定は公共団体に事業施行権限を付与する <被告の主張>浜松市 ①青写真判決と同一型である ②s60年の第2種市街地開発事業とは事実関係が異なる ③早い段階での権利救済の条項を置いていない 20 判旨 ①事業の予測が具体的に可能 ②法的地位への直接的な影響 ③実質的救済 ⇒処分性を肯定 本案を争える 21 ①事業の予測が具体的に可能 事業計画が決定されると、当該土地区画整 理事業の施行によって施行地区内の宅地所 有者等の権利にいかなる影響が及ぶかにつ いて、一定の限度で具体的に予測することが 可能になる 青写真論を否定した 22 ②法的地位への直接的な影響 施行地区内の宅地所有者は、建築行為等の 制限を継続的に受け、このような規制を伴う 土地区画整理事業の手続に伴って換地処分 を受けるべき地位に立たされる。 →付随的か否かではなく(法律自体の法的効 果の有無ではなく)、法的地位に変動がある か否かという観点 「付随的」でも「本質的」でも法的地位に 影響を与えることに変わりはない 23 ③実質的な救済 換地処分等の段階では事情判決がされる可 能性が相当程度あるのであり、宅地所有者 等の被る権利侵害に対する救済が十分に果 たされるとは言い難い。 →実質的救済という観点から見た時この時点で も合理性は認められる。 事情判決だと結局計画通り事業が進行してしまい 本当の意味での救済にはならない!! 24 処分性を認めた論理 青写真論 付随的効果論 訴訟の成熟性 一般・ 付随的で 今である 抽象的 本質的でない 必要性がない 付随的でも 今でないと 法的地位に 実効的救済に 変動を与える ならない ある程度具体的 に予測が可能 25 2-7 考察 ①判例変更には「実効的救済」の観点が大きな影響 ②行政訴訟法改正に伴い裁判所に意識変化が生じた 「処分性に当てはまるか否か」 →「どこに処分性を見出すか」 ③今後も裁判所においては「実効的救済」という観点 が処分性の判断に大きな影響を及ぼすと予想される 26 処分性を持つことによって生じる問題 ①公定力と違法性の継承 ②出訴期間と経過措置的解釈 ③第3者効と第3者の手続保障 27 都市計画の現状(仮) 都市計画種類 処分性 完結型 2 区域区分 × 完結型 3 地域地区 × 完結型 4 地区計画 × 非完結? 5 都市施設 調査中 非完結型 6 市街地開発事業(土地区画整理事業) ○ 非完結型 7 市街地開発事業(第2種市街地開発事業) ○ 非完結型 8 市街地開発事業(第1種市街地開発事業) × 28 2-8 今後の課題 <現在の行政事件訴訟法の限界を探る> ①土地区画整理事業計画以外の都市計画法 における処分性の問題点の整理 ②訴訟要件を拡大した場合に生じる問題に関 する学説の整理 <新しい争訟制度の検討> ③新しい争訟制度案の問題点と対策の整理 29 参考文献 • • • • • • • • • 塩野宏 『行政法Ⅱ[第4版]』(2006)有斐閣 櫻井・橋本 『行政法』(H19)弘文堂 人見剛「土地区画整理事業の事業計画決定の処分性」 『ジュリNo1376』(2009) 有斐閣 山村恒年「土地区画整理事業計画決定取消請求事件」『判例自治』 (H20) ぎょ うせい 行政法研究部「42年ぶりに青写真判決を変更した最高裁大法廷平成20年9月10 日判決について」 加藤了「土地区画整理事業の事業計画決定と抗告訴訟ー最高裁大法廷平成20 年9月10日判決、民衆62巻8号2029頁」『環境法研究』(35) [2010.10]有斐閣 山下竜一「市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定と抗告訴 訟の対象」『民商』(2009) 大貫裕之「市町村の施行に係る土地区画整理事業計画の決定が、行政訴訟法 三条二項にいう「行政庁の処分その他の公権力の行為」に当たるとされた事例 『判例時報2069号』判例時報社 山村恒年「土地区画整理事業計画決定取消請求事件」『判例自治』 30 ご清聴ありがとうございました 31
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