The Unfolded Protein Response Mediates Adaptation to Exercise in Skeletal Muscle through a PGC-1α/ATF6α Complex Cell Metabolism , Vol 13, 160-169, 2011 J. Wu, J. L. Ruas, J. L. Estall, K. A. Rasbach, J. H. Choi, L. Ye, P. Bostro¨ m, H. M. Tyra, R. W. Crawford, K. P. Campbell, D. T. Rutkowski, R. J. Kaufman and B. M. Spiegelman 骨格筋において、PGC-1α/ATF6α複合体による 小胞体ストレス応答は、運動への適応をもたらす。 2016/01/12 M1 眞野 僚 タンパク質の品質管理 UPR leading.author.4.e009 (2015) UPR(小胞体ストレス応答)とは leading.author.4.e009 (2015) 背景と目的 ・骨格筋は、低酸素、グルコース欠乏、同化刺激、カルシウム恒常性 の異常を含むUPRを引き起こす生理学的なストレス要因に感受性を 示す。(1)(2) ・PGC-1α(PPARγコアクチベータ―)は、様々な組織において ミトコンドリアの機能、酸化代謝、エネルギー恒常性の重要な制御因 子である。(3) 本研究では、運動によって骨格筋のUPRが活性化するのか、 またそれらの分子メカニズムの解明を目的とした。 (1) Acosta-Alvear et al, Mol.Cell (2007) (3) Lin et al, Cell Metab. (2005) (2) Iwawaki et al, Nat. Med. (2004) 運動によって骨格筋のUPRの活性化は起こるのか?① 野生型のC57/Bl6マウスをトレッド ミルで5時間運動させた後、 四頭筋を単離して、 mRNAの発現量(RT-PCR) を調べた。 HKⅡ:ヘキソキナーゼ Ⅱ PDK4:ピルビン酸デヒドロゲナーゼ キナーゼ シャペロン コシャペロン ストレスマーカー タンパク質の折り畳みに関わるシャペロンの発現量と、 小胞体ストレスマーカーのいずれも運動によって発現量 が増加した。 運動によって骨格筋のUPRの活性化は起こるのか?② 野生型のC57/Bl6マウスをトレッドミルで 5時間運動させた後、四頭筋を単離して、 BiP、eIF2α-Pの発現量(WB)を調べた。 Supplement Figure 1B-C (Thapは、初代培養した筋管細胞に 100 nMのThapを8時間添加した後WB) Thap:タプシガルギン 筋小胞体へのカルシウムの流入を阻害 するとともに、細胞質への流出を引き起こす UPRに関わるBiPの発現量、 eIF-2αのリン酸化の割合が 運動によって増加した。 Supplement Figure 1E-G Gastrocnemius 腓腹筋(筋組成が異なる) Erector Spinae 脊柱起立筋 (背筋の中で体重による負荷 を受けない筋肉) UPRの活性化は、 ・筋収縮によって引き起こされたストレス ・運動に直接関わる筋肉の局所的な代謝変化 が重要な役割を果たす。 定期的な運動はUPRの活性化に関わるのか? 野生型のC57/Bl6マウスをト レッドミルで5時間運動させた 後、四頭筋を単離して、 mRNAの発現量(RT-PCR) を調べた。 Rest コントロール Naive : Run 今回初めて運動させた Trained : Run 週5回1時間の運動を 4週間予め行ったマウス ・穏やかな運動によるERストレスでは適応する ・さらなるストレスから守るように備える 上記の可能性が示唆された。 Figure 1のまとめ ・運動によってUPRが活性化した。 (直接かかわる筋肉のみ) ・穏やかな運動やそれに付随する生理的なERストレスに 対しては、骨格筋は適応し、さらなるストレスからのダメー ジを防ぐように働く。 筋管細胞におけるPGC-1αとERストレスの関わり 初代培養細胞に10 µM BAPTAを1時間添加 その後、100 nM TGを6時間添加 (5 mM DTT or 10 mM 2-DG) ⇒PGC-1αのmRNA発現量をRT-PCRで測定 DTT ジチオスレイトール ジスルフィド結合形成を阻害する還元剤 2-DG 2-デオキシグルコース 解糖系で代謝されないため、小胞体内で フォールディングの際にエネルギー飢餓を 引き起こす TG タプシガルギン 筋小胞体へのカルシウムの流入を阻害す るとともに、細胞質への流出を引き起こす BAPTA カルシウムイオンのキレート剤 カルシウムイオンに関わるシグナルを 弱める TG+BAPTAではPGC-1αの発現の上昇を完全に 阻害できていない。 ⇒別のシグナルが関与している可能性がある。 骨格筋におけるPGC-1αとERストレスの関わり 単離した腓腹筋のmRNA量を RT-PCRで測定 MCK-PGC-1α PGC-1αはもともとヒラメ筋のような遅筋に 多く含まれるが、全身の筋肉に同等量の PGC-1αが発現しているトランスジェニック マウス CytC シトクロームc(今回はポジコン) 一部のシャペロンやストレス マーカーの発現が増加した。 ⇒PGC-1αがこれらの遺伝 子の発現を上昇させた。 筋管細胞におけるPGC-1αとERストレスの関わり アデノウイルスを用いて、初代 筋管細胞にPGC-1αをトランス フェクトした後、mRNAの発現 量をRT-PCRで測定 筋管細胞でも同様に上昇した。 Figure 2のまとめ ・ERストレスによってPGC-1αの発現量は増加した。 (Ca2+に依存しない経路が考えられる) ・PGC-1αは、初代筋管細胞やin vivoの骨格筋において、 UPR遺伝子の発現を制御している。 (ただし、細胞や組織特異的) PGC-1αのノックアウトがUPRの活性化に与える影響 Cre/loxPシステムを用いて、 PGC-1αノックアウトマウスを 作製し、筋芽細胞を単離 分化させた後、10 or 100 nM TGを8時間(Cのみ16時 間)添加した (A)XBP-1s(B)eIF-2α-Pを ウエスタンブロットで定量 (C)ERストレスマーカーの mRNA発現量をRT-PCRで 定量 PGC-1αはUPRの 下流の遺伝子を制御 している。 Figure S3 A:PGC-1αの有無による変化なし B:CHOPの発現は、PGC-1αが存在する方が増える。 Figure S3 MKO-PGC-1α 筋肉のPGC-1αをノックアウトしたマウス 今回は、ControlとMKO-PGC-1αマウスを一組として、 等距離を走らせた。 PGC-1αのmRNAの発現量がはるかに低いため、運動時 のUPRの活性化には別の経路が関与しているかもしれな い。 PGC-1αのノックアウトがUPRの活性化に与える影響 Wild-TypeとMKO-PGC-1α を4日間予め運動 1日置いてから、四頭筋を単離 し、RT-PCRによりmRNAの発 現量を測定 PGC-1αの欠損により、シャペロンの増加は起こらないが、 XBP-1sの発現は上昇 ⇒小胞体ストレスは増加している可能性 Figure 3のまとめ ・PGC-1αは、運動に対応して骨格筋のUPRを 制御している。 ・UPRのシグナルの下流に関与している可能性がある。 PGC-1αがUPRの転写因子に与える影響 C2C12筋芽細胞にそれぞれの 転写因子をトランスフェクト さらにPGC-1αとRat BiP Promoter-luciferaseを トランスフェクトして、分化させた後、 ルシフェラーゼアッセイを行った。 COS細胞にトランスフェクト Flagに対する抗体で免疫沈降 HAに対する抗体で検出 PGC-1αがATF-6αと結合し、共活性している。 転写因子の欠損がUPRの遺伝子産生に与える影響 Cre/loxPシステムを用いて、 ATF-6α、IRE1αノックアウトマウスを 作製し、筋芽細胞を単離 分化させた後、アデノウイルスベクター を用いて、PGC-1αをトランスフェクト UPR関連遺伝子をRT-PCRで測定 ATF-6αのKOでは、発 現が減少したが、IRE6αのKOでは、同様の値 を示した。 Figure 4のまとめ ・PGC-1αはUPR遺伝子の発現を刺激する。 そして、少なくとも一部はATF-6αとの 共活性によるものである。 Figure S5A-S5B 骨格筋のグリコーゲンの貯蔵量、血清中の乳酸の量は 変わらない ATF-6αのKOがUPRの遺伝子発現に与える影響 ATF-6αのKOマウスを作製 コントロールと等距離を トレッドミルで走らせた後、 1時間 or 1日置いてから、 四頭筋を単離して RT-PCR CD68:マクロファージの マーカー ATF-6αの欠損に より、受けるストレ スがより厳しく なった。 ATF-6αの欠損により、運動時のBiPの発現量は減少した。 ATF-6αのKOが運動能力に与える影響 運動させたWild-TypeとATF-6α-/-マウスから 血液を採取し、血清を分離 キットを用いて、クレアチンキナーゼの量を測定 4日間運動させたマウスの 4日目の走行距離を測定 ATF-6αの欠損により ・4日後のクレアチンキナーゼが減少しなかった。 ・走行距離も著しく減少した。 Figure 5のまとめ ATF-6αによって制御されるUPRは ①激しい運動の後の骨格筋の統合性を保存する ②反復運動による適応に重要である。 CHOPのKOが運動能力に与える影響 PGC-1αとCHOPのKOマウスを作製 限界までトレッドミルで走らせた後、 (A)走行距離を測定(B)血液を採取し、 クレアチンキナーゼ活性を測定 CHOPの欠損により、運動能力 が改善し、筋損傷も防ぐことが 出来た。 Figure 6のまとめ Chopの遺伝的欠損によるERストレスが誘導する細胞死 を防ぐことで、MKO-PGC-1αの運動後の筋損傷を防ぐこ とができる まとめ ・骨格筋や筋管細胞において、PGC-1αがATF-6αと 結合して、UPRを活性化する。 ・ATF-6α欠損マウスでは、運動からの回復が損なわれる。 ・CHOPの欠損による小胞体ストレス由来の細胞死を防ぐ ことで、運動能力が一部改善した。 骨格筋の小胞体ストレスを緩和させることで、 筋委縮症や筋ジストロフィーといった病気の治療に有効 である可能性がある。 Figure S1 Am J Physiol Endocrinol Metab 299: E145–E161, 2010. Figure S2A TM ツニカマイシン N型糖鎖付加阻害剤 Figure S2 “Protein Folding”は、 5番目に多くPGC-1αによって制御されている。 Figure S2
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