えさっさ - Researchmap

2013/3/2(土) 日本民俗音楽学会 第2回例会
於:国立音楽大学
児童臨床における
わらべうたの活用
森
明日佳
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科附属メディアデザイン研究所
([email protected])
リサーチャー
目次
わらべうたとは
 これまでの活用法
 現状への疑問
 わらべうたの働き
 事例紹介
 従来の児童臨床との比較
 わらべうたこれから

わらべうたとは

定義
・「作曲者,作詞者が不明であり,自然発生的に伝承されてきた歌」
・「伝承的な遊びの中で歌を伴うものであり,一般大衆の生活の表現
として生まれた歌が,歌い継がれたもの」
・「子どもが遊びや行事,日常的な行動の中で,無意識のうちに自然
に歌い,遊び仲間によって集団的に伝承してきた,動作を伴う歌」
・「子どもが中心となり,口承されたものであり,地域性が存在し,
日本語のイントネーションに合った旋律・リズムを持ったもの」
・「伝承という姿を取った,“町の芸術家”の生み出した民衆の音楽」
わらべうたとは・・・
特定の作者が存在せず,地域の子どもの間で自然に
発生し,遊びの中で歌い継がれ,口頭で伝承されてき
た,日本語に即した歌
これまでの活用法
軍国主義
昭和7年~国民精神高揚のため,子どもの愛国心を養
う目的で,「尋常小学唱歌」にわらべうたが取り上げら
れる

伝統尊重
昭和33年~西洋化の影響を受けてきた学校音楽教育
の場で,教師の中に伝統音楽への傾斜が芽生えはじ
め,わらべうたブームが起こる

保育
昭和42年~「コダーイ・システム」が日本に紹介され,
乳幼児の保育にわらべうたを用いる運動が展開される

現状への疑問

コダーイわらべうた保育の問題
・全国で統一された歌詞・音程
・固定された遊び
・現代で作られたわらべうたの混在
疑問
・現代においてわらべうたの価値を
有効に活用できているのか?
・わらべうたの価値とは!?
・それを生かした活用法とは!?
わらべうたの働き
発達
心 対人関係能力,自己認識,自己統制促進…

体
平衡感覚,瞬発力,敏捷性,巧緻性…
知
理解力,判断力,集中力,想像力,忍耐力…
治療
音楽療法,ダンスセラピー,タッチセラピー,
遊戯療法

‘わらべうた療法’として活用の可能性!
事例紹介(1/2)
声の出せない低学年児童Aの事例
じゃんけんうた“たけのこめだした”
「えっさえっさ えさっさ」声が出る
⇒わらべうたは心を解き放つ力を持つ

読売新聞(2001/3/7)
自閉傾向にある幼児Bの事例
呼びかけに反応がなかったが、他クラスの遊びに
も参加するようになる
⇒わらべうたは保育者と子どもに同一の期待を共
有させ、同調させる。保育者は子どもに応答するた
め、子どもを肯定的に受け止めようとする

和田(2011)
事例紹介(2/2)
極小未熟児、水頭症、歩行訓練中の幼児Cの事例
他者との交流が一方的、大人への不信感が見られたが、
皆の動きを模倣し、集団遊びができるようになり、大人に
安心して体を預けるようになる。歩行器を支えに、初めて
立って歩く
⇒輪の隊形の中で、わらべうたのリズムが可視化され、振
動が音を生じさせ、リズムを体感し共感できるようになる。
遊びへの意欲とともに下半身の動きが促進される

和田(2011)
知的発達に遅れのある幼児Dの事例
一人遊びのみしていたが、他者との関わりを持つようにな
る。能動的な意思・挑戦心を発揮するようになる
⇒めぐる(繰り返す)ことで少しずつ冒険を重ね、自信を
強め、成長のきっかけを掴む

和田(2011)
従来の児童臨床との比較
表情
上手
下手
準備
触れ
合い
遊戯療法
遊戯療法
箱庭療法
箱庭療法
真剣
あり
必要
なし
わらべうた療法
わらべうた療法
笑顔
なし
不要
あり
わらべうたこれから
 アイデンティティ形成
 対人スキルの養成
 地域活性
 クール・ジャパン
 生きる力
ご清聴ありがとうございました
[参考文献]
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藤田恵一(1992). 子育てにわらべうたを エイデル
研究所.
木村はるみ・蔵田友子(2001). わらべうたと子ど
も 古今社.
宮田知絵(2008). 伝承わらべうた"かごめかごめ"
に関する学際的手法による研究 創発 :大阪健康
福祉短期大学紀要 7, 75-85.
永田栄一(1982). 子どもの文化の見直し 青木書店.
大島清・大熊進子・岩井正浩(2002). わらべうた
が子どもを救う:教育の原点は「言葉みがき 」
健康ジャーナル社.
和田幸子(2011). わらべうたを用いた障害児保育
の実践 三学出版.
(アルファベット順)