Bassモデルにおける 最尤法を用いたパラメータ推定 大井 憲人 Bassモデルのベース dN (t ) q p N (t )m N (t ) (1) dt m N (t ) : t時点における累積購買 者数 m : 潜在市場 p : innovation効果 q : imitation効果 離散的なモデル • 新しい消費者向け製品の初回購入のタイミン グを考える上で、Bassは離散的でベースのモ デルと類似な方程式を用いた。 q P(t ) p ( ) N (t 1) m P(t ) : 期間(t 1, t )において購買し始める 確率 N (0) 0 増分採用者の期待値 • t-1期に採用者でないままでいる数は、m-N(t) である。 • よって、期間(t-1,t)における採用者X(t)は q E ( X (t )) ( p N (t 1))( m N (t 1)) (2) m OLSを用いたパラメータの推定 X (t ) pm (q p ) N (t 1) q / mN 2 (t 1) また 1 pm, 2 q p, 3 q / mの推定として、 最小二乗法より 1 , 2 , 3を推定する事が出来れ ば p 1 / m q m 3 2 2 41 3 m 2 3 2 として p, q, mを推定することが出来 る。 OLSを用いたパラメータの推定 T(時間) S(購入者数) N(累積購入者数) f(N(t-1))(推 定) (f(N(t-1))S)^2 0 32 0 39.37854 54.44289 1 50 32 48.80318 1.432372 2 62 82 62.64112 0.411034 3 69 144 78.29608 86.41719 4 89 213 93.76069 22.66418 5 140 302 110.662 860.7211 6 150 442 130.304 387.9332 7 128 592 141.9269 193.9578 8 122 720 144.1376 490.0713 9 140 842 139.6383 0.130841 10 123 982 126.5303 12.46276 11 119 1105 108.0071 120.8436 合計 1224 1224 2231.488 OLSを用いたパラメータの推定 160 140 39.3785426 b= 0.301451229 c= -0.000216601 R^2= 0.872194303 m= 7.09358E-05 q= 1.53648E-08 p= 555129.1134 120 100 SALES a= 80 ACTUAL PREDICTED 60 40 20 0 0 1 2 3 4 5 6 TIME 7 8 9 10 11 OLSを用いた推定の問題点 • 明らかに、α1,α2,α3の代替改良が無限に可 能である。(Heeler and Hustand) • (2)式の左辺はN(t)の導関数であり、X(t)で表 して区別すべきでない。 X(t)は採用率がピークに達する前の時間にお いて、dN(t)/dtを少なく見積もってしまう。また ピーク後は大きく見積もってしまう。 最尤法 • 最尤法(Maximum likelihood estimation:MLE) とは、統計学において与えられたデータから それが従う確率分布の母集団を推測する為 に用いられる方法で、尤度の概念を利用する ものである。 Bassモデルへの応用 • 最尤推定法を用いてパラメータを推定する。 観測された標本は「最も尤もらしい状況」が起 きた結果、と考えるのは推定の発想として自 然である。 標本に対する尤度関数を作り、標本の値を固 定し、尤度関数(対数尤度関数)を最大にす るような最尤推定量(パラメータ(a,b,c))を算 出すれば良い。 尤度関数の導入 • F(t)の導入は省略 ( p q )t 1 e F (t ) (*) q ( p q ) t 1 e p F (t ) : 0時点から t時点までの累積販売確 率分布 p : innovation効果 q : imitation効果 尤度関数の導入 • (※)が適しているのは、最終的に普及購買し た採用者が市場全体を占めたときである。 採用時間において無条件な確率は、c(最終 普及率)を用いて表す。 bt c(1 e ) F (t ) (3) bt (1 ae ) where a q/ p b ( p q) 尤度関数の導入 • 潜在採用者の総数を新たにMとすれば、実 際に推定したい最終的な採用者mの値は m=cMより求めることが出来る。 よって時点 tにおける累積採用者数 N (t )は E ( N (t )) cMF (t ) Differenti ating dE ( N (t )) q p E ( N (t )) cM E ( N (t )) (4) dt cM 尤度関数の導入 • SchmittleinとMahajanが改良したモデル((4)式)は 採用時の分布で始まるものであるのに対し、 Bassのベースのモデル((1)式)は微分方程式を定 式化したものであり、その間には違いがある。 累積分布関数の影響や予想される動作に基づ いて、パラメータpとqはまだ革新と模倣の係数と して解釈されるかもしれないが、最小二乗法で 得られた推定値p,qを直接比べることは出来ない。 尤度関数の導入 T : データが利用出来る期 間 xi : 期間(ti 1 , ti )における採用者数 (i 1,2,..., Tであり、 t0 0, tT ) ここで、 xT 個々人はtT 1時点まで採用しなかっ た 事は分かるが、彼らの 採用時期についての情 報 は持っていない。つま xT M t 1 xi T 1 となる。 り 尤度関数の導入 以上より、尤度関数は T 1 L(a, b, c, xi ) 1 F (tT 1 ) T F (ti ) F (ti 1 ) i x x i 1 となり、 対数変換をした対数尤 度関数は 1 e bti 1 e bti1 1 e btT 1 l (a, b, c, xi ) xi ln c ln xT ln 1 c bti bti 1 btT 1 1 ae 1 ae 1 ae i 1 となる。 T 1 推定量 a, b, cの推定量を aˆ , bˆ, cˆとすると p, q, mの推定量は bˆ pˆ (aˆ 1) aˆbˆ qˆ (aˆ 1) mˆ cˆM で表す。 推定値について • L(a,b,c,xt)を最大にするパラメータa,b,cの明示 的な式は存在しない。 最尤推定量はHooke-Jeeves加速パターン検 索(Himmelblau 1972)を使用することで得ら れる。 その時の制約条件は(a≧0,b≧0,0≦c≦1)であ る。 最尤法について • 尤度関数は標本の関数なので、他の推定量 と同じく最尤推定においても、標本が異なれ ば異なる推定量が得られる。すなわち最尤推 定量は確率変数である。 最尤推定量は分散を持つので、標本の大き さや信頼区間といった標本調査の枠組みを 用いた検定をすることが出来る。 推定量の漸近正規性 • 推定量は漸近的に正規分布従う。 小さい規模のサンプルの特性を得ることはシ ミュレーションを除き困難であるが、MLEの漸 近正規性を用いることで可能。 パラメータa,b,cの漸近的な共分散行列を得る ことで、対応するp,q,mについても発生させ る。 最尤法について • 通常の耐久消費財のように標本数が膨大なも のには標本誤差が小さくなりすぎてしまい、実際 以上に信頼度が高くなってしまう。 その他の誤差についてはモデルに組み込まれ ていない(口コミ効果など)で、標本数が膨大な ものには不向きである。(この問題を解決したの が非線形推定法) • またcは割合なのでm=cMのM(潜在採用者の総 数)は何らかの方法で推定しなければならない。 参考文献 • David C. Schmittlein and Vijay Mahajan/” Maximum Likelihood Estimation for an Innovation Diffusion Model of New Product”, Marketing Science, Vol. 1, No. 1 (Winter, 1982), pp. 57-78
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