オーバーレイ分析 - 地理空間的思考の教育研究プロジェクト

2011年1月31日
第4章 空間解析
1.基本的な空間解析
高橋信人
[email protected]
地理情報科学教育用スライド ©高橋信人
ここで学ぶこと
1.距離・面積の測定
2.フィーチャの選択
GISを用いた空間分析をおこなう際によく使われる操
作である、距離・面積の測定方法や空間データの抽出、
加工方法を学ぶ。
3.オーバーレイ分析
基礎的な空間解析の一例として、オーバーレイ分析
の概念を理解する。
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距離・面積の測定
地理情報科学教育用スライド ©高橋信人
距離の測定
(ベクターデータの場合)
• 空間データの各フィーチャは座標情報を持っている
→ 各空間データの座標値をもとに、2点間の距離を測定する
ことができる。
ID: 1 (𝑥1 , 𝑦1 )
ID: 3(𝑥3 , 𝑦3 )
ID: 2 (𝑥2 , 𝑦2 )
図
ID
1
2
3
フィールドA フィールドB フィールドC
○○駅
△△駅
□□駅
ポイントデータの図形とその属性情報の例
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5
9
7
8
4
12
距離の測定方法
(ベクターデータの場合)
• 2点(𝑥𝑖 , 𝑦𝑖 ) と(𝑥𝑗 , 𝑦𝑗 )の線分のユークリッド距離𝑑は、
以下の式で算出する。
𝑑=
(𝑥𝑖 − 𝑥𝑗 )2 +(𝑦𝑖 − 𝑦𝑖 )2
→ 2点間の距離や線分の長さを足し合わせることで、ラインデータの
長さやポリゴンの周囲の長さを算出することができる
距離 d
注意!
(𝑥𝑗 , 𝑦𝑗 )
(𝑥𝑖 , 𝑦𝑖 )
図
2点間の距離dの算出
算出される距離は、空間データが持つ座標の
単位に依存する。このため、例えば、メートルを
単位として距離を求めたい場合には、あらか
じめ空間データが持つ投影情報を、座標系の
単位がメートルである、UTM座標系や平面直
角座標系に、変換しておく必要がある。
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面積の測定
(ベクターデータの場合)
• ポリゴンデータは、ポリゴンを構成する図形の座標
情報を持っている
→ GIS上では、ポリゴンを構成する座標値をもとにして、
各ポリゴンの面積を測定することができる
ID
1
2
3
図
フィールドA フィールドB フィールドC
○○市
△△市
□□町
ポリゴンデータの図形とその属性情報の例
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6
15
18
14
11
8
面積の測定方法
(ベクターデータの場合)
• 多角形の面積 𝐴 は、まず多角形を三角形に分解した後、以下
のヘロンの公式などでそれぞれの三角形の面積𝐴1 , 𝐴2 , ・・・, 𝐴𝑖
を算出した後に、それらを足し合わせて求める。
𝐴𝑖 =
𝑠𝑖 (𝑠𝑖 − 𝑎𝑖 )(𝑠𝑖 − 𝑏𝑖 )(𝑠𝑖 − 𝑐𝑖 )
ここで、𝑎𝑖 , 𝑏𝑖 , 𝑐𝑖 は、三角形の各辺の長さであり、
𝑠𝑖 =
𝑎𝑖
𝐴𝑖
𝑐𝑖
𝑏𝑖 𝐴3
図
𝐴2
(𝑎𝑖 +𝑏𝑖 +𝑐𝑖 )
2
とする
注意!
𝐴1
算出される面積も、距離と同様に
空間データが持つ座標値の単位に
依存する。
多角形の面積の算出方法
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ラスターデータの面積の測定
• 領域に含まれるセルの数に、一つのセルあたりの
面積をかけて算出する。
1つのセルの面積が100m2とすると、
緑の領域の面積:
100m2×9 = 900m2
赤の領域の面積:
100m2×7 = 700m2
図
ラスターデータの面積の算出方法
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ラスターデータの距離の測定
• 2つのセルの間の距離は、各セルの座標値(例えば
セルの中心座標)を元にユークリッド距離を算出して
求める。
• ある属性値をもつ領域の周囲の長さを求めるには、
まず、属性値をもとに領域の境界を見つけ、境界を
構成する各線分の長さを算出して足し合わせる。
図
図 ラスターデータの周囲の長さの算出
2つのセル間の距離の算出
(セルの中心の座標などの距離を算出する) (赤色の領域の周囲の長さを求めたい場合、
青色の線分の長さを求めて足し合わせる)
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フィーチャの抽出
地理情報科学教育用スライド ©高橋信人
簡便な抽出方法
• ある空間データから、特定のフィーチャを抽出する
最も簡便な方法
→ GIS上で、直接、フィーチャを選択する
ID
1
2
3
4
図
市町村名
○○市
△△市
□□町
××町
人口(×1000人) 農地面積(hPa)
14
11
8
7
6
15
18
12
空間データを選択した際のフィーチャと属性テーブル
(選択されている領域を赤線で囲んでいる)
フィーチャを図形から選択するか、あるいは、属性テーブルのレコード(行)から選択する
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属性検索
• ある空間データから、特定の属性値が一定の条件
を満たすフィーチャをまとめて抽出する方法
→ 属性検索(SQLを使う)
GISでは、属性検索により選択された
フィーチャを地図上で確認できる
ID
1
2
3
4
図
市町村名
○○市
△△市
□□町
××町
人口(×1000人) 農地面積(hPa)
14
11
8
7
6
15
18
12
属性検索とそれによって選択されたフィーチャの例
例えば、人口1万人以上の市町村を抽出したい場合、人口のフィールド(列)の属性値を
もとにした属性検索をおこなうと、条件を満たすフィーチャをまとめて選択することができる
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空間検索
• ある空間データから、位置情報、空間関係(位相関
係)をもとに、まとめてフィーチャを抽出する方法
→ 特定のフィーチャとの距離、内包関係、交差判定に
基づいて検索をおこなう
ID
1
2
3
4
図
市町村名
○○市
△△市
□□町
××町
人口(×1000人) 農地面積(hPa)
14
11
8
7
6
15
18
12
点Aから一定距離d内に完全に含まれるフィーチャの選択の例
例えば、点Aから一定距離d 内に完全に含まれるポリゴンを抽出したい場合、点Aから
半径d の円を描き、その円内に収まるフィーチャのみを選択する
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その他の空間データの操作の例
(フィーチャの結合)
• フィーチャの結合:マージ(結合)、アペンド(追加)
→ 同じ属性情報を持つフィーチャを結合・追加する
+
レイヤA
=
レイヤB
図
マージの例
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レイヤA+レイヤB
その他の空間データの操作の例
(フィーチャの切り抜き)
• フィーチャの切り抜き:クリップ
→ 特定のフィーチャと同じ領域を切り抜く
+
=
クリップレイヤ
レイヤA
図
クリップの例
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レイヤAから
クリップレイヤの
領域が切り抜かれる
その他の空間データの操作
(フィーチャの分解と集約)
• フィーチャの分解と集約:ディゾルブ
→ 一つ以上の属性値をもとにフィーチャを分類し、同じ分類
項目に含まれる図形を一つのフィーチャに結合し、属性値
を集約(合計、平均値などの算出)する
同じ属性値を持つ領域が集約される
図 ディゾルブの例
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オーバーレイ分析
地理情報科学教育用スライド ©高橋信人
オーバーレイ分析の概要
• 2つ以上の空間データを重ね合わせることにより、特
定の条件を満たす領域を抽出する。
→ インターセクト(論理積)やユニオン(論理和)など
の処理がおこなわれる。
図 オーバーレイ分析の
概念
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インターセクト(論理積)
• AとBの領域があるとき、A∩Bの領域を求める
ベン図
属性テーブル
の例
インターセクトの
結果、得られる
フィーチャの例
A
ID
1
B
+
フィールドA
1
+
ID
1
=
フィールドB
1
+
図 インターセクトの例
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A∩B
ID
1
=
フィールドA
フィールドB
1
1
=
この例では一つのフィーチャを
持つ空間データが生成される
ユニオン(論理和)
• AとBの領域があるとき、A∪Bの領域を求める
ベン図
属性テーブル
の例
ユニオンの
結果、得られる
フィーチャの例
A
ID
1
B
+
フィールドA
1
+
ID:1
ID
1
=
フィールドB
1
+
図 ユニオンの例
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ID:2
ID:3
A∪B
ID
1
2
3
=
フィールドA
フィールドB
1
1
Null
Null
1
1
=
この例では三つのフィーチャを
持つ空間データが生成される
参考文献
• 高橋昭子, 『てくてくGIS』, http://www.csis.utokyo.ac.jp/~akuri/ (2011年1月閲覧)
• 張長平(2001)『地理情報システムを用いた空
間データ分析』古今書院.
• パスコ, 『GIS用語集と使い方』,
http://www.pasco.co.jp/recommend/ (2011年1月閲
覧)
地理情報科学教育用スライド ©高橋信人