2015年春学期「現代の経営」 第10回 会社の重要機関 株式会社の主な機関の関係図 株主総会(会社の所有者の集まりで、会社の所有者である 株主が、会社の基本に関する重大事項(組織、運営、 管理等)に関して意思決定を下す機関である。 ) 選任 ・ 解任 選任 ・ 解任 報 告 取締役 (取締役会) 選定・解職 代表取締役 監 査 報 告 監査機関 日常業務の 監督と執行 従業員 (業務遂行) 1 4-3-2 取締役と取締役会(p.96) 取締役の選任方法 • 株式会社では、 所有と経営 が分離されている。 • 株主は、株主総会における議題に関して議決権を行使すること ができる。その一方で、株主は、日常的な会社業務に関しては、 取締役あるいは取締役会に意思決定と執行を 委ね ている。 • 取締役は、 株主総会 で選任・解任される機関(自然人)であ る。株式会社と取締役の関係は 委任関係 であり、雇用関係 ではない。 • 取締役会は会社法で設置を義務付けられている場合と任意の (定款で定められている)場合がある。どちらの場合でも、取締役 会を設置するには、株主総会において取締役を 3 人以上選定 しなければならない(会社法第39条)。 2 取締役(業務執行に関する意思決定に加わり、業務を執行する) 取締役とは株主総会で選任・解任される株式会社の機関である。株 式会社と取締役は 委任 関係であり、雇用関係ではない。 ※取締役の人数と取締役の設置の有無によって、権限や手順が異なる。 (業務の執行) 第三百四十八条 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、 株式会社(取締役会設置会社を除く)の業務を執行する。 2 取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別 段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。 3 前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を 各取締役に委任することができない(決議が必要; 単独 不可)。 一 支配人の選任及び解任 二 支店の設置、移転及び廃止 三 第二百九十八条第一項各号(第三百二十五条において準用す る場合を含む。)に掲げる事項 (以下、省略) 3 契約(複数の人間の合意に基づく法律行為;売買、雇用、委任など) A 氏 契約内容 合意(法的に有効) B 氏 ※民法の中では、 「約束」という 言葉は使用さ れていない。 民法上の売買 第五百五十五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に 移転 することを約し、相手方がこれに対してそ の 代金 を支払うことを約することによって、そ の効力を生ずる(=売買契約の成立)。 ※売主(販売者)と買主(購入者)にそれぞれ義務が発生 4 雇用と委任の違い 雇用(従属関係) 委任(対等) 法律 雇用は、当事者の一方が相手 委任は、当事者の一方が 法律行為 行為 方に対して 労働 に従事 をすることを相手方に委託し、相手方が することを約し、相手方がこれ これを承諾すること(643条)。 に対してその 報酬 を与え 受任者は、 特約 がなければ、委任 報酬 ることを約すること(623条)。 者に対して報酬を請求することができな い(648条)。 そ の 他 使用者は、労働者の承諾を得 なければ、その権利を第三者 受任者は、委任の本旨に従い、 善良 に譲り渡せないことができない な管理者の注意をもって、委任事務を処 理する義務を負う(644条)。 (625条)。 ※真面目に受託した内容を行えば、 ※契約通りに働き、そして報 責任は問われない(自由)。 酬を受ける(指示・命令)。 ※『広辞苑』によると、委任とは、ゆだねまかせること。事務の処 理を他人に委託(人に頼んで代わりにしてもらうこと)すること。 5 取締役の職務 1. 取締役会設置会社:取締役会に出席し、重要事項の意思決定 に参加し、そこでの決定事項を執行する。 2. 取締役が2人以上の非取締役会設置会社:取締役の過半数の 承認で業務を決定し、執行する。各自が会社を代表する。 3. 取締役が1人:業務執行に関して意思決定を行い、会社を代表 して業務を執行する) 取締役は株式会社に対して 善良な 管理者としての義務を負う; ① 他の取締役が定款や法令を順守しているかを 監視 する。 ② 注意義務 ;経営判断の間違いをしないように注意する ③ 忠実義務 ;株式会社の利益のために、働く。 競業取引 (その会社で 得た情報などを活用し、顧客を奪うなどの行為)や 利益相反取引 ※非取締役会設置会社では、取締役に対して (会社の利益を犠牲にして、自己あるいは第三者の利益につながる取引)が 原則として禁止されている。 6 取締役会とは • 取締役会は、株主総会で選出された 取締役 全員(3名以上) から構成される。 • 株主総会の決議事項以外の会社の業務の執行に関する意思決 定を行う。 • 主な業務は、①会社の業務(営利活動)執行、②取締役の職務 の監督、③代表取締役の選定・解職である。 ※取締役会は、代表取締役と監査役会からの報告に基づいて、代表取締役 の監査を行い、必要があれば、代表取締役を解職する(取締役に降格)。 • 取締役会の招集 招集権者(取締役と 監査役 )が原則として開催日の1週間 前までに招集通知を取締役と監査役に発送(取締役と監査役 が 全員 同意すれば、手続き不要) • 取締役会の決議(一人一票:全取締役が同等) 定足数 の要件は議決権のある 取締役 の過半数出席とな る。出席した取締役の過半数が承認することにより議決となる。 ※非取締役会設置会社は、株主総会の決議事項以外は、取締役が決定する (取締役の過半数の承認が必要)。 7 代表取締役へのステップ • 代表取締役は 取締役会 の決議に基づいて 取締役 の 中から選定される。 • 取締役会を設置するには、取締役が3人以上必要。 • 取締役は 株主総会 で選任されなければならない。 社内外の人材(財) 株主総会 選定・解任 取締役 (就任) 取締役 取締役 ・・・ 設置 代表取締役 ※代表取締役 はいつでも 選定・解職(委任関係) 取締役会 (委任を承諾) 辞任できる。 ※取締役会の決議で解任できる。 その場合、普通の取締役に戻る。 (取締役解任には株主総会の決議) ※株主が代表取締役を解任したければ、取締役を解任すれば、自動的に代表 取締役の資格を失う。代表取締役選定や解職の権限は取締役会にあるので、 直接代表取締役を選定・解職できない。 8 代表取締役の権限(営業行為に関して会社を代表) • 代表取締役は株主総会の下の取締役会の 下部 機関 • 代表取締役は、 株主総会 や 取締役会 (上部機関) で決定された事項を執行するのが職務となる。 • 代表取締役は取締役会で委任された範囲内で意思決定を行 い、職務を執行する権限がある。 • 代表取締役は対外的な活動(営業)を執行する権限を持つ。 同時に、説明責任もある(訴訟関係の行為を会社を代表して 行う)。 • 会社(株主総会や取締役会)は、代表取締役の権限に必要 に応じて 制限 を加えることができる。 ※代表取締役が制限を超えた契約を行った場合に、そのことを知らない 第三者( 善意の第三者 )には、無効や取り消しはできない。 ※代表取締役は、3か月に一度以上は業務の執行状況を に報告する義務を負う。 取締役会 9 4-3-3 監査役と監査役会(pp.99) 監査役とは • 監査役は、 大会社 (5億円以上の資本あるいは200億円以上の負債を有して いる株式会社)および 公開会社 (譲渡制限の無い株式を発行している株式会 社)において設置が義務付けられている機関である。 • 監査役は、 株主総会 において選任される。監査役は、株式会社で行われてい る業務に対して、法令や 定款 などに違反していないかを監査し、会社に対して 監査した結果を報告する義務を負う。 • 原則として、監査役の業務の中に、取締役の 経営判断 の妥当性を調査・判定 することは含まれておらず、 著しく不当 であると思われる件については調査・ 判定することは可能である。 • 監査役は、株主総会の 議案 が法令や定款に違反していないかを事前に調査 し、取締役会を招集する権限を持つ。さらに、取締役に対して 訴訟 を行う場合 には、監査役が会社を代表することになる。 • 監査役は 取締役会 への出席が義務付けらており、必要に応じて、意見を表明 することが求められる。 10 監査役とは(株主総会で選任) • 監査役は、株主総会で選任される機関。会社で行われている業 務が、法令や定款などに違反してないかを監査する。 ※監査役の業務に取締役の判断の妥当性を調査・判定することは含まれな いが、著しく不当な件に関しては調査・判定することができる。 ※例えば、ある不動産を法令や定款に従って購入した。しかし、不当に高額 で代表取締役の親族から購入していた場合は、監査の対象になりうる。 • 監査役の義務 ①会社に対して、 監査報告書 を提出する義務を負う。 ②社内における法令や定款違反行為を会社に報告。 ③ 取締役会 への出席義務(必要に応じて、意見を表明)。 ④株主総会の 議案 を調査し、法令や定款に違反等の有無 を報告。 11 監査役の権限 ➀取締役や会計参与およびその他の 従業員 から事業報告 を請求できる(自ら会社の業務や財産を調査できる)。 ② 子会社 に対しても➀と同様のことができる。 ③取締役会を招集できる。 ④取締役に対して 訴訟 を行う場合、監査役が会社を代表す る。 社外 監査役とは、株式会社の監査役であって、過去に当該株 式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法 人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役又 は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。(会 社法2条16項) 12 監査役会 • 監査役会は、大会社 かつ 公開会社において設置が義務付け られている機関である。 • 監査役会は 3 人以上の監査役から構成される組織体であり、 その過半数は 社外監査役 でなければならないとされている。 ※社外監査役とは、株式会社の監査役であって、過去に当該株 式会社又はその子会社において取締役、会計参与(会計参与 が法人の場合は、その職務を行うべき社員)もしくは執行役又 は支配人その他の使用人となったことがないものとされている。 • 監査役会の職務として以下の3つが規定されている(会社法第390 条)。 (1) 監査 報告。 (2) 常勤 の監査役の選定及び解職。 (3)監査の 方針 、業務・財産の状況の 調査 およびその方 法などに関する事項の決定。 13 監査役会の運営 監査役会は必要に応じて開催される。 監査役会の招集権は、各監査役が持つ。 招集したい場合は、➀事前に全監査役に通知 あるいは ②監査役 全員 の同意 が必要となる。 監査役会の議決は、全監査役の過半数で承認される。 ※取締役と同様に 委任 はできない 取締役会の議事は議事録(参加した監査役は押印または署名)を 作成し、10年間本店に保管しなければならない。 ※株主(親会社株主含む)と債権者は裁判所の許可を得られれば、議 事録の閲覧・謄写を請求できる(許可をされない場合もある)。 14 会計参与とは(設置は任意) 会計参与の職務 取締役 と共同して、計算書類及びその附属明細書、臨時計算書 類並びに連結計算書類を作成する(会計参与報告作成)。 ※委員会設置会社の場合は「取締役」とあるのは「 執行役 」になる。 会計参与の権限 ①閲覧及び謄写 ・ 会計帳簿 又はこれに関する書面 ・会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成され ているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令 で定める方法により表示したもの ②取締役及び支配人その他の使用人に対して会計に関する報告 を求めることができる ③会計参与設置会社の 子会社 に対して会計に関する報告を 求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。 ※子会社は、正当な理由があるときは、報告又は調査を拒むことができる。 15 会計監査人とは ・会計監査人の設置が義務付けられているのは、 大会社 と委員 会設置会社である。 ・会計監査は専門的な知識と経験が必要となるので、公認会計士 または 監査法人 となる。 ・会計監査人の職務 ①計算書類と付属明細書などに監査する。 ②会計監査報告を作成する。 ・会計監査人の権限(会計参与とほぼ同じ) 16 4-3-4 委員会設置会社(pp.100) • 委員会設置会社とは、監査役制度に代わり、社外取締役が軸になっている 監査・指名・報酬の3つの 委員会 によって統治されている株式会社。さ らに、業務執行を担当する役員として執行役が置かれ、経営の 監督 機 能と 業務執行 機能とが分離されている。 ※委員会設置会社の取締役の任期は 1 年。 ※各委員会は 取締役 が3名以上から構成され、その過半数は 社外取締役 で構成。 監査 委員会:株主総会に提出する取締役(会計参与も含む)の選任や解任 に関する議案の内容の決定 指名 委員会:個人別の役員報酬等の内容の決定 報酬 委員会:執行役・取締役(会計参与も含む)の職務の執行の監査およ び監査報告の作成 ※日本取締役協会によると委員会設置会社の上場企業は57社(2014年6月現在)。 17 委員会設置会社の執行役 委員会設置会社では、 監督 (取締役会)と 執行 (執行役)が 制度的に分離されている。 • 取締役会は、会社の基本的事項を決定し、各種委員会の委員 や執行役を選定し、会社が適正に機能するように監督することに、 専念。 • 取締役会は 執行役 に業務の執行を委託(権限移譲)する。 ※委員会設置会社(株式会社)では、所有と経営の分離に加え て、監督と執行も分離(経営が分割)されている。 執行役の特徴 1. 執行役は委員会設置会社の 機関 (会社法上の制度)。 2. 執行役は取締役会の決議で選任・解職( 委任 関係)。 3. 執行役は取締役会で委任された事項に関して意思決定と執行 を行う。 4. 会社法上の特別の責任を負う(一従業員ではない)。 18
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