教育実習 - 全国社会科教育学会

シェリー・L・フィールド
アーカンソー工科大学
(翻訳:小松真理子・川口広美)
 『…公民的能力推進をめざして社会科学と人文学を統合さ
せた学問。学校プログラムにおいては、社会科は人類学・
考古学・経済学・地理学・歴史学・邦楽・哲学・政治学・心理
学・宗教・社会学の流儀にのっとり、人文学・数学・自然科
学より適切な内容と共に整理され、効率的な学習を提供す
るものである。社会科の第一の目的は、相互依存する世界
の中で、若人らが文化的に多様で民主的な社会の市民と
して公共の善のために十分な情報を得て理由のしっかりし
た決断ができるように支援することにある。』
-NCSS (1994)
社会科の目的とは,公民的諸能力- 生徒らが,公的な暮
らしの中で積極的かつ熱心な参加者であるために必要な
知識・理知的な過程・民主的な志向性の向上である。
NCSSは、公民的能力の向上を中核目標とすることで,民
主的価値や考え方を支持・実践するような生徒の教育の
重要さを強調している。
 NCSSカリキュラムスタンダード(1994, 2010)
 州共通コアスタンダード(2010)
 州ならびに地方のカリキュラムスタンダードなど。
 1994年,教員・学校管理者・教員養成者・カリキュラム開発
専門家によってつくられた委員会で開発
 2010年には「スタンダード開発時から,世界は変化した」こ
とを認識して改訂版を作成
1. 文化
6. 権力 ・ 支配者 ・ 統治
2. 時間 ・ 継続性 ・ 変革
7. 生産 ・ 流通 ・ 消費
3. 人々 ・ 場所 ・ 環境
8. 科学 ・ 技術 ・ 社会
4. 個人の成長とアイデンティティ 9. グローバルなつながり
5. 個人 ・ 集団 ・ 機構
10. 公民的概念と実践
 The National Governors Association Centre for Best
Practices(全米州知事会NGA・最高の実践のためのセン
ター)とCouncil of Chief State School Officers(全米州立教育
長協議会: CCSSO)によって開発された新しい州共通コアスタ
ンダード
 「わたしたちの子どもたちを大学進学ならびに就職に備えるた
め」,また我らの若者らに質の高い教育を授与し,それぞれの学
校における成功のスタンダードが,すべての生徒・保護者・教員
に明確に示されるべき」と意図されている
 歴史と社会科をリテラシースキルと結び付けている
 45の州で採択されている
これらのスタンダードは:
 調査とエビデンスにもとづいたもの
 大学や就職先での要請につながるもの
 綿密・厳格なもの
 国際的な水準となりうる
中心概念と詳細
1. 文章が述べることを明確に理解するため,また論理的推論
を行うために丁寧に読むこと。文章から得られた結論を述べ
るための書き物やスピーチにおいて,テキストとしてのエビ
デンス(証拠)を引用すること。
2. テキストの中心概念やテーマを確定し,その展開を分析する
こと。補完的な概念や詳細を要約すること。
3. 一連のテキストにおいて,個人・出来事・概念が,なぜ・どの
ように展開し影響し合っているかを分析すること。
(つづき)
構成と構造
4. テキストのなかで用いられている単語やフレーズを,技術的,
暗示的,比ゆ的な意味において解釈すること。個別の単語選
択がどのように意味やトーンを形成しているか分析すること。
5. 任意のセンテンス・段落・より大きな文の塊(例:節・章・場・
連)が相互に,また全体とどのように関連づいているかも含
めて,文章の構造を分析すること。
6. 視点や目的によって,文章の内容やスタイルがどのように形
成されているか評価すること。
(つづき)
知識と概念の統合
7. 言語のみならず,視覚的また数量的にも,様々なメディアの形
態で提示される内容を統合し評価すること。
8. テキスト中の任意の主張を,その理由づけの正当性ならびに
証拠の関連性・有効性にも注目して記述し,評価すること。
9. 知識を構築するために,複数のテキストがどのように共通の
テーマや話題を表しているかを分析すること。またそのための
筆者の方略を比較すること。
読解力の範囲と文章の複雑さのレベル
10.複雑な文章や情報文を,独立した熟練した読者として読み,
理解すること。
 伝統的:
大学もしくは短大で学士号(教育大学・一般教養大学・コラ
ボプログラム) もしくは,修士号Master of Arts in Teaching
(MAT) degreeを取得
 代替的免許取得プログラム:
Alternative Certification Programs (ACPs)
- 大学ベース
- 学区
- 地方・州立教職センター
- コミュニティ・カレッジ
- 私立管理プログラム
 独自のコース構成
 教育実習が必修
 教育実習生の評価方法と評価者
 社会科教育法コース
- 教育学
- 教育理論
- 実践
「このコースでは,教員らは教育内容をカリキュラムとして
組み換え,ふさわしい教え方と評価法を選択・実行できる
ように学ぶことが求められている。
社会科教育法コースを通じて,教育実習と合わせて,実
習生は学習者の経験と内容的知識の間のギャップを埋め
る方法を学ばなくてはならないのである。」
–Susan Adler
 深さと広さは,いかほどまで教えるのか?
 幅広い学習者のニーズを,どこまで強調するのか?
 どれほどの時間を,実習生の州指定の評価のための準備に費やす
のか?
 社会科学分野の十分な背景知識の学習に,どれほどの重きを置く
か?
 知識の性質とは?
 知識は専門家から伝達されるのか,それとも個々の学習者
によって構築されるのか?
 コース自体が,どれほど知識の社会構築性を咀嚼している
のか?
また,その実践をどれほど実感する機会があたえられてい
るか?
 コース内での必読文献や課題は?
 学習者の幅広いニーズにどれほどの重きを置くか?
 授業計画をどのようにつくり,またどう評価するか?
 指導において,なにを強調してゆきたいか?
 統合カリキュラム
 教科内容の網羅の程度
 教授のための資料・教材
 テクノロジーの役割
統合カリキュラム
 社会科の内容を他科目分野のものと統合するという考えは,
何十年も前からあった。 (Hinde, 2005)
 初等教育段階では統合が一般的:特に社会科と英語・国語
 そもそもぼやけてしまっている社会科の目標と目的が,統
合的に企画された授業の二の次になってしまうようでは,
問題である。(Alleman & Brophy, 1993)
 教育内容の統合は,技術的に長けていれば成功も可能
(Field & Bauml, upcoming; Field & Bauml, 2012;
Bellows, Bauml, Field, & Ledbetter, 2012)
教育内容の網羅
 教えられるべきカリキュラムとは?
 深さ vs 広さについて,教員志願者はどのように考えるべき
か?
 スタンダードを,どのようにとらえるべきか?
 学力テストを受ける学年を教えるとき,内容をどれほどカ
バーするのか?
教材として
 教科書
 補助教材
 音楽・ビデオ・オンライン情報といったデジタル教材
 第一次・第二次情報源
 文献
 コミュニティのリソース
 テクノロジーなしでも行えた学習を超える学びへ拡充すること
 文脈を踏まえてテクノロジーを導入すること
 科学と技術と社会の関係性を研究する機会をもつこと
 民主的社会における良き市民としてのスキル・知識・参画の
成長を促すこと
 社会科とテクノロジーについての研究と評価に貢献すること
 アリゾナ州立大学
 ジョージア大学
 テキサス大学オースチン校
 白人 61%
 アフリカ系 5%
 ヒスパニック 19%
 アジア系 6%
 アメリカン・インディアン系 2%
 その他 7%
初等 (1-8年)
 社会科教育法のコース(Social Studies Methods)
 サービスラーニングのコース
 第3学年: 1セメスターあたり75時間のフィールド実習(2か所)
 第4学年:研修(実習)(1年間の教育実習)
 学校担当コーディネーター/メンター教員
 1年あたり4つのパフォーマンス評価,8つのウォーク・スルー評価
中等(7-12年)
 社会科教育法のコース(Social Studies Methods)
 第3学年: 1セメスターあたり75時間のフィールド実習(2か所)
 第4学年:研修期間(1年間の教育実習)
 臨床教授/メンター教員
 各セメスターで4つのパフォーマンス評価
 白人 76%
 アフリカ系 7%
 アジア系 8%
 ヒスパニック 4%
 その他 5%
初等(幼稚園前‐5年)
 社会科教育法コース(Social Studies Methods)
 2~3セメスター:短期実習(2~4週間)
 1セメスターの教育実習(student teaching)
 大学の指導教員/メンター教員
 教育実習中,約5~6つの評価
中等(6-12年)
 社会科教育法コース,社会科カリキュラムコース,社会科セミナー
 学校実習入門/学校実習総括:短期実習(週あたり3~4時間)
 1セメスターの教育実習
 大学の指導教員/メンター教員
 教育実習中,約3~4つの評価
 白人 50%
 アフリカ系 5%
 ヒスパニック 20%
 アジア系 18%
 その他 7%
初等(幼稚園前‐6年)
 社会科教育法コース(Social Studies Methods course)
 ESL(英語を第二言語とする生徒の教育)の資格
 1セメスター:12時間/週
 2セメスター:16時間/週
 3セメスター:全て教育実習
 大学のファシリテーター/メンター教員
 教育実習中,6-7回の評価
中等(7-12年)
 社会科教育法コース,社会科教育法発展セミナー
 1セメスター(10時間,初等学校)
 2セメスター(20時間,中等学校(middle school))
 3セメスター(45時間,高等学校)
 4セメスター(すべて教育実習)
 大学のファシリテーター/メンター教員
 教育実習中,5回の評価
初 等
大学名
ASU
UGA
UT
コース
社会科教育法
サービスラーニング
社会科教育法
社会科教育法
フィールド
ワーク/
教育実習
75時間/セメスター(2か
所)
第4学年:教育実習
2セメ:2週間
3セメ:4週間
1セメスター全部教育実習
1セメ:12時間/週
2セメ:16時間/週
3セメ:全て教育実習
指導教員
学校担当コーディネーター 大学の指導教員
メンター教員
メンター教員
大学のファシリテーター
メンター教員
評価
4回のパフォーマンス評価
8回の walk-through評価
教育実習中6-7回
教育実習中5-6回
中 等
大学名
ASU
UGA
UT
コース
社会科教育法
社会科教育法
社会科カリキュラム
社会科セミナー
フィールド
ワーク/
教育実習
第3学年: 75時間/
セメスターのフィールド
実習(2か所)
第4学年:1年間の教育実
習
主要な現地実習/
4年の現地実習
(週あたり3-4時間)
1セメスターすべて教育実
習
1セメ:(10時間の初等学校)
2セメ:(20時間の中等学校)
3セメ:(45時間の高等学校)
4セメ:(すべて教育実習)
指導教員
臨床担当授
メンター教員
大学の指導教員
メンター教員
大学のファシリテーター
メンター教員
評価
各セメスターに4回
教育実習中3-4回
教育実習中5回
社会科教育法コース
社会科教育法発展セミナー
伝統的な社会科の教員養成は,場所によって様々である。
必修の社会科教育法のコースの数も1つ~3つと異なる。
フィールド実習も,2~4セメスターと異なっており,また,セメス
ターで求められる時間数も多様である。
教育実習の期間は,1セメスターから1年と開きがある。
評価の数もプログラムによって異なる。
社会科教育法の分析についてはさらなる吟味が必要。
 Castro, A.J., Field, S.L., Bauml, M. & Morowski, D. (2012). I want a
multicultural classroom:” Preservice teachers’ perspectives on teaching
social studies in a culturally diverse world. The Social Studies 103(3), 97106.
 Webeck, M.L., Field, S.L. & Salinas, C. (2004). Tell me more: Boundaries,
expectations, challenges and possibilities for civic education in preservice
methods of teaching courses. In Gregory E. Hamot, John J. Patrick, &
Robert S. Leming (Eds.), Civic learning in teacher education: International
perspectives on education for democracy in the preparation of teachers,
Vol. 3 (pp. 147-166). Bloomington, IN: ERIC Clearinghouse for Social
Studies.
 Kohlmeier, J. & Saye, J. (2012). Justice or care? Ethical reasoning of
preservice social studies teachers. Theory & Research in Social
Education 40(4); 409-435.
以下は,今後の研究のための問いである。(先行研究ですでに
行われた問いも含まれるかもしれないが)
 日本の教員志望学生は,どのように社会科カリキュラムを理解しているか?
 日本の教員志望学生は,カリキュラムを教える際にどのような方法/教材を用い
るのか?何のために用いるのか?
 日本の教員志望学生は,公民に関する理解や参画を教えるという自らの役割を
どのように認識しているのか?こうした役割は教室においてどのように成り立って
いるのか?
 日本の教員志望学生は,どのように歴史的思考を学んでいるか,どのように歴史
的思考を教えているのか?
 日本の教員志望学生にとって,ディスコースはどのような役割を担っているか?そ
して,結局彼らはどのようなときにそれを教えるのか?
 日本の教員志望学生は,どのように多文化的な課題を学び,それらをどのように
教えているか?
全国社会科教育学会に感謝
 溝口和宏先生,田口紘子先生:
「他者」についての初等教科書の研究に対して
 溝口和宏先生,田口紘子先生:
将来実施する日本とアメリカの子ども達の経済・地理・政府
に対する思考の研究に対して
 小川正人先生:
中等段階の歴史教科書内容と初等学校の教育法について
の研究に対して