日本の大都市制度改革論議

日本における大都市改革論議
〜地方分権・国家成長戦略のミッシング・チャプター?
分節的リスケールは地域主権改革の予期せぬ帰結か?〜
2012年6月27日 韓国行政学会
首都大学東京 大学院教授
大杉 覚
Satoru Ohsugi, Prof. of Tokyo Metropolitan Univ.
[email protected]
http://satoru4789.wordpress.com/
(参考)日本の地方自治制度
道(1)
府(2)
県(43)
市町村
うち
中核市(4
1)
特例市(4
0)
中核市は人口
30万,特例
市は20万な
どの基準
指定都市
(20)
人口50万以上
(100万程度で
運用.合併特例で
70万以上)
横浜市368万人
大阪市266万人
名古屋市226万
人
市町村
都
(1)
広域の地方
公共団体
特別区
(23)
基礎的な地
方公共団体
人口:最大で
86万(世田
谷区),最小
で4万(千代
田区)
日本の大都市制度の特徴
〈基本型〉特例か〈特別型〉一
般か
○ 〈基本型〉自治制度の特例とし
ての政令指定都市制度
○ 〈特別型〉自治制度の一般とし
ての都区制度
4
(参考)大都市制度の歴史的分岐
戦前の六大都市(東京・京都・大阪・名
古屋・横浜・神戸)のうち,東京のみ
「都」に
⇒東京都制(1943年:東京府・市統合)
を経て,地方自治法(1947年)
に規定
※残りの五大市は,地方自治法に規定された,
特別市が予定されたが実現せず,指定都市
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大都市制度の位置づけ
特別地方公共団体
普通地方公共団体
特別型
基本型
特例
都道府県
特別市
特別区
町村
一般市
特例市
プラス
都区
制度
権限移譲
道府県制度
都制度
大都市制度
(一般制度)
中核市
政令指
定都市
6
大都市
制度
(特
例)
これまでの大都市制度改革論議
大都市制度論議の<不決定>
○ 大都市(とくに五大都市)およびそ
れを包含する府県との対立と均
衡
○ 他方,東京都・特別区関係は複
数にわたる改革
○ 大都市制度一般に関わる改革論
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(参考)都区制度改革の変遷:4度にわたる大改革の遂行
(注)特別区制度調査会資料による
都区制度の「根幹」か
つ「真髄」としての都
区財政調整制度
○都区間で利害対立を生
じる素であり,求心力で
もある
○地方交付税制度上の都
区合算規定と東京都の都
区財調への財源依存(道
府県分で2年連続財源不
足)
○財政調整は都区間のみ
ならず,市町村部とも
(参考)都市町村総合交付金:
平成22年度435億円
平成23年度448億円
~多摩・島嶼部の都への依
存?
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大都市制度改革の争点化
「大阪都」構想のインパクト
①
○ 大都市地域を広域自治体と統合
する改革案の提起
・政令指定都市の〝府県独立路線〟
の放棄(⇄横浜市「特別自治市」構
想)
・他地域の追随(「中京都」構想
(愛知県と名古屋市,「新潟州」構
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大都市制度改革の争点化
「大阪都」構想のインパクト
②
○ 国民的知名度の高い橋下徹(知事,
現在は市長)による提起
○ 地域政党の躍進,国政を巻き込
む論議に(アジェンダ設定に成功)
・地方制度調査会で大都市制度を検討
・各政党が競って都構想実現に向けた法案
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大都市をめぐる分権単位のリスケール
化
○ 大都市地域における分権は,国
からの分権という点で共通
○ ただし,分権の単位の多様なリ
スケールへ
・府県から独立の大都市/大都市を
包括する広域自治体である〝都〟/
広域自治体を包括する〝都市圏〟
(道州制?)
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大都市における民主政赤字論への注目
○ 大都市は基礎自治体か広域自治
体か
○ 大都市内分権の提起〜近接性に
向けたリスケールと「大都市の
一体性」の緊張関係
○ 民主政赤字論democratic deficiencyと
陳腐化した公選観・議会観の課
題
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大都市経営の最適化指向
○ 大都市経営の最適化に向けた改
革を指向
○ 大都市の規模・地理的位置・産
業構造等により,〝最適〟な制
度選択の分岐
○大都市経営戦略は不明確;国家レ
ベルの成長戦略との連携は不明
瞭
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《結論》
1
大都市改革論議を通じて,
autonomy / democracy / governance
をめぐる論点が提起され,議論活
性化
2
在
3
国家によるリスケール戦略は不
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分節的リスケールが国家成長戦