第2部 運用を少し論理的に見てみよう 慶應義塾大学 経済学部 川西 章平

第2部 運用を少し論理的に見てみよう
慶應義塾大学 経済学部
川西 章平
はじめに
投資における時間の役割
 収益と株価
 投資リスク
 運用の際に重要となること
 まとめ

投資における時間の役割
(最高収益率)-(最低収益率)
株式
債券
キャッシュ
1年
15年
25年
時間の経過でどの資産も収益率の散らばりが小さくなっ
ていく。 = 平均への回帰
・短期では魅力的でなかった株式への投資が魅力的な
ものに変化する。
・投資期間の長さで資産配分を決めることができる。
⇒長期の投資になるにつれて株式の割合を高めていけ
ば良い。
収益
収益= インカムゲイン + キャピタルゲイン
(利息,配当)
(価格変動)
↑
↑
予測可能
短期的には予測不可能
⇒インカムゲイン予測を試みるのがよい
株価
株価 ← 企業収益と配当に対するコンセンサス
割引率に対するコンセンサス
コンセンサスを左右する要因
・商品需要,循環に対する予想の変化
・価格や税率
・新しい発見や発明
・競争の変化
・投資のリスクの大きさ
・予想インフレ率
株価予測
短期

投資家心理
人々がいくらまで買うか
↑
人間臭い、非合理的
予測困難

長期

企業収益,配当金額
長期金利
↑
平均への回帰
予測可能

収益率の特徴
平均収益率
株式>債券>短期資産
 標準偏差
株式>債券>短期資産 、 短期>長期

※平均収益率は実質無リスク収益率,インフレプレミアム,リスクプレミ
アムを含んでいる。
⇒・投資家はリスクを取る際に、そのリスクに応じてプレミ
アムを要求する。
・期間を長くとると、割引率より長期予想配当の方が大
事になる。
・インフレを考慮した実質値を考慮する必要がある。
投資家はリスクにさらされる
投資リスク
 価格リスク・・・高価格時に買うと損失
 金利リスク・・・金利上昇で株価低下
 事業リスク・・・業績不振により株価低下
 倒産リスク・・・倒産すると株価価値は無くなる
投資リスク=市場リスク+個別リスク+グループリスク
分散投資によって市場リスクのみにすることができる。
市場リスクの管理を行うことが重要!
運用の際に重要となること

市場リスク水準の選択
自分の許容できる範囲に収めること。

その水準の維持
市場の短期的な変化に感情的になることは大きな損失
を生む可能性が高い。
長期投資の明確な目的を設定し、その目的を実現する
ために投資政策を選択した上で、その政策をしっかり貫
いていくことが大事である。
まとめ

時間の経過で平均への回帰が見られる。

投資家が追加のリスクをとるには、プレミアムを収益率に
上乗せすることを求める。つまりハイリスク・ハイリター
ン,ローリスク・ローリターンの原則。

分散投資で市場リスクのみが問題となり、これを管理す
ることが運用の目的となる。