債権総論講義 第2回 明治学院大学法学部教授 加賀山茂 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 1 前回(第1回)の復習 学修目標 六法を見ながら,相手方も納得できる解決案を提示でき る能力をつける。(補足)アイラック(IRAC) 学習方法 全体図を頭に描きながら学修に取り組む。 民法の体系(配布済み) 物権と債権の区別 物権の体系 債権の体系 債権総論の体系 契約中心の体系 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 2 今回の学修テーマ 1.債権の目的 (1) 債権の目的と目的物の区別 (2) 物の定義 (3) 本当は怖い目的と目的物の区別 →民法体系の破綻 2.債権・債務の種類 (1) 明示の債務 と 黙示の債務 ← 契約自由の補充と制限 (2) 与える債務 と なす・なさない債務 ← 強制執行の難易 (3) 結果債務 と 手段の債務 ← 過失の立証責任の転換 定義,区別の基準,立証責任の分配 立証責任の意味 レポート課題 アイラック(IRAC)-法律家の思考方法-,論文の書き方 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 3 今回の学修テーマ (1) 債権の目的 債権の目的とは何か 重要な項目なのに,意外と説明が難しい。 教科書によっては,「債権の内容」のことと書いてある。 でも,「内容」といわれても,無内容(無限定)に等しい。 「債権」でなく「債務」の目的だと考えてみる。 債務とは「~しなければならない」ということ。 それを英語で表現すると“ought to do”となる。 債務の目的とは,ought の目的語(不定詞)なのだ! 債務の目的がサ変名詞・動詞であることに納得 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 4 債務の目的と目的物の区別 債務の主体 債務 債務の目的 目的物 英語 Obligor 債務者は ought すべきである to do ~することを something 目的物に 日本語 債務者は 履行する 債務を負う 目的を 目的物に 売主は しなければ ならない 引渡しを 物品の 買主は しなければ ならない 支払いを 代金の 具体例 (売買) 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 5 レポート課題 債権の「目的」と「目的物」の違いについて,以 下の項目についてレポート(A4版で4頁以内)を 作成し,第7回目の講義(5月20日)までに提出 すること。なお,レポート課題の講評は11回目 の講義(6月17日)で行う。 1.民法399条~419条までの範囲で,現代語 化以前の民法の規定(旧条文)と現代語化され た民法の規定(現行条文)を対比してみると, 旧条文が「債権の目的」と「債権の目的物」とを 間違って規定していた箇所がある。その間違い の箇所をすべて指摘し,現代語化に際して,ど のように改正されたのか,対照表を作成して明 らかにしなさい。 3.物権については,目的と目的 物の区別について改正がなされ ていない。 例えば,民法343条(質権の目 的)の質権の「目的」と,民法344 条(質権の設定)の「目的物」とは, 同じものを示しているはずである。 それにもかかわらず,民法の起 草者が,あえて,両者を「目的」と 「目的物」とに区別した理由は何 か。民法362条(権利質の目的 等)の「目的」が何かを検討するこ とを通じて,考察しなさい。 2.旧条文が,「目的物」を誤って「目的」として いた箇所について,「目的物」と修正せずに,現 行条文が,あえて,「目的」を維持しながら,誤 りを訂正した箇所がある。その理由は何か。 4.債権や物権の「目的」と「目的 物」との違いについて,自らの見 解(私見)をIRACで簡潔に表現し なさい。 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 6 (実習)債権の目的と目的物(1/5) 旧条文 第400条〔特定物引渡 債権における保存義 務〕 債権ノ目的カ特定物ノ 引渡ナルトキハ債務 者ハ其引渡ヲ為スマ テ善良ナル管理者ノ 注意ヲ以テ其物ヲ保 存スルコトヲ要ス 2014/4/15 現行条文 現代語化 第400条(特定物の引渡 しの場合の注意義務) 債権の目的が特定物の 引渡しであるときは,債 務者は,その引渡しをす るまで,善良な管理者の 注意をもって,その物を 保存しなければならない。 Lecture on Obligation 2014 7 (実習)債権の目的と目的物(2/5) 旧条文 第401条〔種類債権〕 第401条(種類債権) ①債権ノ目的物ヲ指示スルニ 種類ノミヲ以テシタル場合ニ於 テ法律行為ノ性質又ハ当事者 ノ意思ニ依リテ其品質ヲ定ム ルコト能ハサルトキハ債務者 ハ中等ノ品質ヲ有スル物ヲ給 付スルコトヲ要ス ②前項ノ場合ニ於テ債務者カ 物ノ給付ヲ為スニ必要ナル行 為ヲ完了シ又ハ債権者ノ同意 ヲ得テ其給付スヘキ物ヲ指定 シタルトキハ爾後其物ヲ以テ 債権ノ目的物トス 2014/4/15 現行条文 現代語化 ①債権の目的物を種類のみで 指定した場合において,法律 行為の性質又は当事者の意 思によってその品質を定める ことができないときは,債務者 は,中等の品質を有する物を 給付しなければならない。 ②前項の場合において,債務 者が物の給付をするのに必要 な行為を完了し,又は債権者 の同意を得てその給付すべき 物を指定したときは,以後その 物を債権の目的物とする。 Lecture on Obligation 2014 8 (実習)債権の目的と目的物(3/5) 旧条文 第402条〔金銭債権〕 第402条(金銭債権1) ①債権ノ目的物カ金銭ナルト キハ債務者ハ其選択ニ従ヒ各 種ノ通貨ヲ以テ弁済ヲ為スコト ヲ得但特種ノ通貨ノ給付ヲ以テ 債権ノ目的ト為シタルトキハ此 限ニ在ラス ②債権ノ目的タル特種ノ通貨 カ弁済期ニ於テ強制通用ノ効 力ヲ失ヒタルトキハ債務者ハ 他ノ通貨ヲ以テ弁済ヲ為スコト ヲ要ス ③前二項ノ規定ハ外国ノ通貨 ノ給付ヲ以テ債権ノ目的ト為シ タル場合ニ之ヲ準用ス 2014/4/15 現行条文 現代語化 ①債権の目的物が金銭であるとき は,債務者は,その選択に従い, 各種の通貨で弁済をすることがで きる。ただし,特定の種類の通貨 の給付を債権の目的としたときは, この限りでない。 ②債権の目的物である特定の種 類の通貨が弁済期に強制通用の 効力を失っているときは,債務者 は,他の通貨で弁済をしなければ ならない。 ③前2項の規定は,外国の通貨の 給付を債権の目的とした場合につ いて準用する。 Lecture on Obligation 2014 9 (実習)債権の目的と目的物(4/5) 現代語化 旧条文 現行条文 第419条〔金銭債務の特則〕 第419条(金銭債務の特則) ① 金銭ヲ目的トスル債務ノ 不履行ニ付テハ其損害賠償 ノ額ハ法定利率ニ依リテ之ヲ 定ム但約定利率カ法定利率 ニ超ユルトキハ約定利率ニ 依ル ②前項ノ損害賠償ニ付テハ 債権者ハ損害ノ証明ヲ為スコ トヲ要セス又債務者ハ不可 抗力ヲ以テ抗弁ト為スコトヲ 得ス 2014/4/15 ①金銭の給付を目的とする債 務の不履行については,その 損害賠償の額は,法定利率に よって定める。ただし,約定利 率が法定利率を超えるときは, 約定利率による。 ②前項の損害賠償については, 債権者は,損害の証明をする ことを要しない。 ③第1項の損害賠償について は,債務者は,不可抗力をもっ て抗弁とすることができない。 Lecture on Obligation 2014 10 (実習)債権の目的と目的物(5/5) 旧条文 第422条〔損害賠償 者の代位〕 債権者カ損害賠償 トシテ其債権ノ目的 タル物又ハ権利ノ 価額ノ全部ヲ受ケタ ルトキハ債務者ハ 其物又ハ権利ニ付 キ当然債権者ニ代 位ス 2014/4/15 現行条文 第422条(損害賠償による代位) 現代語化 債権者が,損害賠償として,その債 権の目的である物又は権利の価額 の全部の支払を受けたときは,債務 者は,その物又は権利について当 然に債権者に代位する。 (問題) 誤りを正すのに,「目的物」と訂正せ ずに,「目的」とした上で「支払」を追 加した理由は何か? Lecture on Obligation 2014 11 物の定義 →目的物,立法理由 →本当は怖い目的と目的物の区別 旧民法財産編 第6条 ①物に有体なる有り無体なる有り。 ②有体物とは人の感官に 触るるものを謂ふ。即ち地所, 建物,動物,器具の如し。 ③無体物とは智能のみを 以て理会するものを謂ふ。 即ち左の如し。 現行民法 第85条 この法律にお いて「物」とは, 有体物をいう。 第一 物権及び人権〔債権〕 第二 著述者,技術者及び発明者の権利 第三 解散したる会社又は清算中なる共通 に属する財産及び債務の包括 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 12 民法85条の立法理由→自滅 (広中俊雄編著『民法修正案〔前三編〕の理由書』有斐閣) 〔旧民法〕同編〔財産編〕第6条は,物の第一の区別として有体物と無体 物との区別を掲げ,且,之が定義を下したり。 然れども,是亦無益の条文たるのみならず,其定義中には往往穏当なら ざる点なしとせず。殊に無体物を以て物権,人権其他の権利を謂ふもの とし,常に物権,人権の目的物たるものとしたるは,甚だ其当を得ず。 其結果として,債権の所有権なるものを認むるに至りては(取〔財産取得 編〕24,68〔条〕)実に物権の何物たるを知ること能はざらしむ。 此の如くんば,所謂人権なるものは常に物権の目的物に 過ぎずして,結局,財産編第1条及び第2条の原則と撞著 〔矛盾〕するに至らん。 本案は,左に掲ぐる如く,法律上,物とは単に有体物のみ を指すことに定めたるに依り,右の条文〔財産編第6条〕は, 之を刪除するを至当と認めたり。 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 13 (実習)物権の目的と目的物(1/2) → 物とは? 第206条(所有権の内容) 第342条(質権の内容) 所有者は,法令の 制限内において,自 由にその所有物の 使用,収益及び処 分をする権利を有 する。 物権の目的とは? 質権者は,その債権の担 保として債務者又は第三 者から受け取った物を占 有し,かつ,その物につい て他の債権者に先立って 自己の債権の弁済を受け る権利を有する。 物を使用・収益,又は, 換価・処分すること。 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 14 (実習)物権の目的と目的物(2/2) →民法85条の立法理由の破綻 第343条(質権の目的) 第344条(質権の設定) 質権は,譲り渡すことができ ない物をその目的とすること ができない。 質権の設定は,債権者にその目 的物を引き渡すことによって,そ の効力を生ずる。 (参照) (参照) 第362条(権利質の目的等) ①質権は,財産権をその目的 とすることができる。 ②前項の質権については,こ の節に定めるもののほか,そ の性質に反しない限り,前三 節(総則,動産質及び不動産 質)の規定を準用する。 2014/4/15 第363条(債権質の設定) 債権であってこれを譲り渡すにはそ の証書を交付することを要するもの を質権の目的とするときは,質権の 設定は,その証書を交付することに よって,その効力を生ずる (平成15(2003)年法134本条全部 改正)。 Lecture on Obligation 2014 15 本当は怖い目的と目的物の区別 -民法理論の破綻- →物の定義 次の問題は,民法の起草者(穂積,梅,富井),現代語化(星 野)の立場からはジレンマに陥って,答えることができない。 (怖すぎて,これまで誰も論じることがなかった)。 問題 債権の売買(民法569条参照)から生じる買主の債権(売主の債務)につ いて,債権の「目的」と債権の「目的物」を述べなさい。 答え 1.債権の「目的」:財産権を移転すること(民法555条によって確定)。 2.債権の「目的物」:債権としたいところ。しかし,「目的物」を債権(無体 物と答えると,民法85条と矛盾してしまう。 しかも,民法の立法者のように,「目的物」を「目的」として誤魔化すことも できない。債権の「目的」は,債権の譲渡で確定しているからである。 どうすればよいのか?→困ったときの旧民法(ボワソナード) 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 16 今回の学修テーマ(2) 債務の種類と分類の基準 契約自由の 補充と制限 債 務 の 種 類 契約の目的・性質 黙示の債務 事実たる慣習 信義則上の債務 強制執行の 難易 立証責任の 分配 2014/4/15 明示の債務 与える債務 なす・なさない 債務 金銭債務 (強制執行が容易) 引渡債務 結果債務 手段の債務 Lecture on Obligation 2014 17 契約の類型(13の典型契約) 無償 契 約 各 論 典 型 契 約 財 産 権 移 転 返還不要 財 産 権 非 移 転 2.売買 有償 返還必要 物の利用 3.交換 4.消費貸借 無償 5.使用貸借 有償 6.賃貸借 一般 7.雇用 8.請負 特別 (専門家) 9.委任 10.寄託 役務の提供 事業 紛争の解決 2014/4/15 1.贈与 Lecture on Obligation 2014 11.組合 12.終身定期金 13.和解 18 「結果債務」と「手段の債務」の定義 UNIDROIT Article 5.4 - 特定の結果の達成義務(結 果債務),最善の努力義務(手段債務) (1) 結果債務 当事者の債務が,特定の結果を達成する債務とかか わる場合には,その限りにおいて,その当事者は,そ の結果を達成するように義務づけられる。 (2) 手段の債務 当事者の債務が,ある行為の履行につき,最善の努 力をする債務とかかわる場合には,その限りにおいて, その当事者は,同種の合理的人間が同じ状況におい て為すであろう努力をするように義務づけられる。 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 19 問題 身長160cm,体重が60kgなので,少しスリム になりたいと思い,3カ月で10kg必ず痩せる, しかも,リバウンドしないというエステティック サロンで,痩身のプログラムを実施することに した。 3カ月コースで,10万円を支払ったが,全く効 果がなかった。 エステティックサロンに対して,10万円の損害 賠償を請求できるか。 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 20 結果債務と手段の債務の判断基準 UNIDROIT Article 5.5 - 関連する義務の種類(結果債務か手 段債務か)の決定 当事者の債務が,どの程度まで,行為の履行における最 善の努力債務または特定の結果の達成債務とかかわる のかを決定するに際しては,とりわけ,以下の各号の要 素が考慮されなければならない。 (a) 契約の中でその債務がどのように表示されているか (b) 契約の価格,および,価格以外の契約条項 (c) 期待されている結果を達成する上で通常見込まれるリスクの 程度 (d) 相手方がその債務の履行に対して及ぼしうる影響力 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 21 結果債務と手段の債務とで異なる 立証責任の分配(問題)→解答 証明主題 結果債務 手段の債務 債権者 債権者 ? ? 因果関係 債権者 債権者 損害の発生 債権者 債権者 債務不履行 帰責事由 (債務者の故意・過失) 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 22 結果債務と手段の債務とで異なる 立証責任の分配(解答)→問題 立証責任 結果債務 手段の債務 債務不履行 債権者 債権者 帰責事由 (債務者の故意・過失) 債務者 債権者 因果関係 債権者 債権者 損害の発生 債権者 債権者 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 23 (実習)立証責任の意味(問題)→解答 過失あり (原告立証) 真偽不明 無過失 (被告立証) 過失責任 (手段の債務) 中間責任 (結果債務) 無過失責任 ○:原告勝訴 ×:原告敗訴 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 24 (実習)立証責任の意味(解答)→問題 過失あり (原告立証) 真偽不明 無過失 (被告立証) 過失責任 (手段の債務) ○ × × 中間責任 (結果債務) ○ ○ × 無過失責任 ○ ○ ○ ○:原告勝訴 ×:原告敗訴 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 25 結果債務と手段の債務の区別による 難解な判例の解読 最一判昭41・9・8民集20巻7号1325頁 他人の権利を目的とする売買の売主が,その責に帰すべき事 由によって,該権利を取得してこれを買主に移転することがで きない場合には,〔悪意の〕買主は,売主に対し,民法561条但 書の適用上,担保責任としての損害賠償の請求ができない。 そのときでも,なお債務不履行一般の規定〔民法415条〕に従っ て,損害賠償の請求をすることができるものと解するのが相当 である。 難解な点 「特別法(民法561条)は,一般法(民法415条)を破る(排 除する)」のではないのか? 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 26 民法561条と415条との関係 一般法:債務不履行責任(民法414条以下) 損害賠償責任の原則(民法415条) 特別法:売主の担保責任(民法560条以下) 他人物売買 買主善意:売主の結果債務(財産権移転の結果達成) →民法561条が適用される 買主悪意:売主の手段債務(財産権移転のための最 善の努力義務) →民法415条が適用される。 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 27 債務の種類のまとめ 契約自由の 補充と制限 債 務 の 種 類 契約の目的・性質 黙示の債務 事実たる慣習 信義則上の債務 強制執行の 難易 立証責任の 分配 2014/4/15 明示の債務 与える債務 なす・なさない 債務 金銭債務 (強制執行が容易) 引渡債務 結果債務 手段の債務 Lecture on Obligation 2014 28 (復習)民法の体系 第2編 物権 財産法 第1編 総則 第3編 債権 民法 第4編 親族 家族法 第5編 相続 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 29 民法総則の体系 →復習 第2章 人 権利の主体 第3章 法人 第1編 総則 権利の客体 第4章 物 第1章 通則 第5章 法律行為 権利の変動 第6章 期間の計算 第7章 時効 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 30 債権と物権との区別 →復習 債権 物権 人 債権者 請求 担保物権 債務者 支 使用・収益 配 換価・処分 支 配 物 物 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 請求 担保 債権者 31 物権法の体系 →区別 第2編 物権 第1章 総則 第2章 占有権 本権 第3章 所有権 用 益 物 権 第4章 地上権 第5章 永小作権 第6章 地役権 第7章 留置権 制限物権 担 保 物 権 第8章 先取特権 第9章 質権 第10章 抵当権 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 32 担保物権の新しい考え方→区別 量的強化 債務者以外の 人に責任を 負わす (人的担保) 債務と保証 との結合 保証 連帯債務 担保法: 事実上の 掴取力の強化 優先弁済権 履行拒絶の 抗弁権 質的強化 優先弁済権 (物的担保) そのもの 法律上の 優先弁済権 優先弁済権 +留置効 優先弁済権 +追及効 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 留置権 先取特権 質権 抵当権 33 債権法の体系 →区別 成立 Ⅲ 債 権 債権 総論 債権 各論 契約 総論 契約 事務管理 契約 各論 効力 解除 不当利得 不法行為 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 34 契約の流れ(手動) →復習 Start 成立 Yes 有効 No(不成立) 不当利得 No(取消し・無効) (停止条件・始期が未到来) 効力 発生 履行 No(条件・期限) Yes No (解除条件・終期が到来) 未発生 履行強制 No(不履行) No(救済) 免責 Yes 契約解除 損害賠償 End 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 35 債権総論の体系 →復習 債権の目的 対内的効力 債権の効力 対外的効力 債 権 総 論 可分・不可分債権 多数当事者関係 債権の譲渡 履行強制 損害賠償 債権者代位権 詐害行為取消権 連帯債務 保証 弁済 相殺 債権の消滅 更改 免除 混同 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 36 (補足1)アイラック(IRAC) →復習 -法律家の思考方法- IRAC(アイラック)で考え,論証する 論点・事実の発見 Issue 法的分析 Rules の能力 ルールの発見 Application ルールの適用 A Argument 法的議論 の能力 Conclusion 2014/4/15 原告・被告の議論 具体的な結論 Lecture on Obligation 2014 37 (補足2)論文の書き方 →復習 アイラック(IRAC)で書く 問題提起 本論 結論 2014/4/15 • I:重要な問題を発見したことの経緯を述べる • R:その問題を解決する視点と仮説を提示する • A:問題をいくつかのブロックへと分割する • A:ブロックごとに問題を展開しすべてを解明する • C:問題を展開して得られた答えを1つにまとめる • I:残された問題に対する展望を行う Lecture on Obligation 2014 38 レポート課題(確認) 債権の「目的」と「目的物」の違いについて,以 下の項目についてレポート(A4版で4頁以内)を 作成し,第7回目の講義(5月20日)までに提出 すること。なお,レポート課題の講評は11回目 の講義(6月17日)で行う。 1.民法399条~419条までの範囲で,現代語 化以前の民法の規定(旧条文)と現代語化され た民法の規定(現行条文)を対比してみると, 旧条文が「債権の目的」と「債権の目的物」とを 間違って規定していた箇所がある。その間違い の箇所をすべて指摘し,現代語化に際して,ど のように改正されたのか,対照表を作成して明 らかにしなさい。 3.物権については,目的と目的 物の区別について改正がなされ ていない。 例えば,民法343条(質権の目 的)の質権の「目的」と,民法344 条(質権の設定)の「目的物」とは, 同じものを示しているはずである。 それにもかかわらず,民法の起 草者が,あえて,両者を「目的」と 「目的物」とに区別した理由は何 か。民法362条(権利質の目的 等)の「目的」が何かを検討するこ とを通じて,考察しなさい。 2.旧条文が,「目的物」を誤って「目的」として いた箇所について,「目的物」と修正せずに,現 行条文が,あえて,「目的」を維持しながら,誤 りを訂正した箇所がある。その理由は何か。 4.債権や物権の「目的」と「目的 物」との違いについて,自らの見 解(私見)をIRACで簡潔に表現し なさい。 2014/4/15 Lecture on Obligation 2014 39
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