当事者論 - Researchmap

言葉を用いた革命の試み
東北学院大学
小宮友根
はじめに
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自己紹介
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専門はエスノメソドロジー/会話分析、ジェンダー論
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特に人のカテゴリー化にかかわる問題を研究
今日の役割
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「当事者宣言をすること」はどんな営みなのかについて
検討するための視点の提供
「ホットロッダー:革命的カテゴリー」
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H. サックスの1979年の論文
Q. なぜ少年たちは実に見事な車の分類学を身につけて
いるのか?
「ティーンエイジャー」と「ホットロッダー」の違いに
ついて考える必要がある
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ある人(たち)のカテゴリー化に用いられるカテゴリーには
当人たちによっては用いられないカテゴリーがある
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創世記「ヘブライ人アブラハム」
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白人による「ニグロ」
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カテゴリー化は「事実の記述」ではない
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その人たちを「誰がどう見ているか」という視点
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しばしば支配的な「世界の見方」を構成する(ステレオタイプ)
ホットロッダー
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なぜ「ホットロッダー」は革命的カテゴリーか
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「ティーンエイジャー」は「大人」が管理するカテゴリー
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「ホットロッダー」は少年たち自身が管理するカテゴリー
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どんな車に乗るか、誰とレースをするか etc.
カテゴリーの自己執行をとおした認識の転覆がある
A. 車の分類学への習熟は、カテゴリーの「自己執行」の
帰結である
ホットロッダー
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「ホットロッダー」の示唆
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ある人がどうカテゴリー化されるかは、事実としての属性の
問題では必ずしもない
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そのカテゴリーを誰が管理しているかが問題となる場合がある
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カテゴリーの管理は、活動の管理をとおした「人の評価」とし
ておこなわれる
ホットロッダー
当事者論
「当事者とは誰か」問題
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必ずしも属性の問題ではない
どんな活動をしてきたか/すべきか
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HIV/AIDSをめぐる当時者性(本郷 2007)
「薬害」から「STI」へのフレーム転換
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当事者=薬害感染、医療の被害者、責任なし
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当事者=性行為感染、自業自得
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誰もが感染する可能性→「自分事」としての支援
当事者論
当事者論
「当事者とは誰か」問題
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必ずしも属性の問題ではない
どんな活動をしてきたか/すべきか
カテゴリーの管理をめぐる争いも起こる
「裏切り者」問題
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TGにおける「真の当事者」(鶴田 2009)
医療カテゴリーとしての「性同一性障害」の登場
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TS、TG、TV間の序列化
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誰が「真のTS」かをめぐる争い
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「真のTSは缶コーヒーも飲まない」
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「なんちゃってFtM」の「社会性のなさ」
当事者論
当事者論
「当事者とは誰か」問題
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必ずしも属性の問題ではない
どんな活動をしてきたか/すべきか
カテゴリーの管理をめぐる争いも起こる
「裏切り者」問題
Q. どんな活動の管理・人の評価がそこにはあるのか
宣言論
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「当事者宣言」はどんなカテゴリー化実践になっているか
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「革命の試み」とみなせる部分がある
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活動の管理・人の評価をとおした認識の転覆
「宣言」に含まれる「定義」から
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ろう文化宣言
ろう者とは、日本手話という、日本語とは異なる
言語を話す、言語的少数者である
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手話という言語活動・手話話者としての「ろう者」
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{聞こえる>聞こえない}から{日本語を話す=手話を話す}へ
宣言論
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触常者宣言
触常者とは“考える”人である…触常者とは“交わる”
人である…触常者とは“耕す”人である
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触る活動・触ることの専門家としての「触常者」
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{見える人>見えない人}から{見常者=触常者}へ
宣言論
いくつかの問題提起
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「革命の大義」問題
認識の転換はどのように正当化されるのか
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現行の秩序は必ずしも悪いとは限らない
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支持が得られなければ転覆は成功しない
現在おこなわれている活動・評価とどんな関係を取り結ぶか
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「アブノーマライゼーション宣言」の位置
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「革命の後」問題
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転換された認識をどのように維持していくか
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単に認識の問題ではなく、社会生活の中での活動の問題
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「宣言」の課題ではないが、「宣言」を読む者の課題として
問題提起