なぜ1:1の性比なのか? Fisherの性比理論 突然変異 ♂:♀=1:4 ♂:♀=4:1 ♀ ♀ ♀ ♂♂♂ ♂ ♀♀♀♀ ♂ × 4♀ 5 5 5 計 40 5 4x5 5 20 20 20 計 85 20 N匹の既交尾雌の集団を考える。それぞれがC個 の卵を産み,そのうちの一定の割合rが雄とす る。この集団内に,産卵数は同じであるがr’の 割合で雄を産む突然変異の雌個体が入ったとす る。r’の割合で雄を産む遺伝子が,世代を経るに したがって集団中に広がっていくかどうか考え る。 前提: 交尾は、集団内でランダムに起る。 交尾能力、産卵能力に差はない。 孫世代の卵におけるr'遺伝子の数(Wt) = 雄の子を通して伝わる数 + 雌の子を通して伝わる数 = 1/2・孫の総数・子世代の雄集団におけるr'を持つ割合 + 1/2・孫の総数・子世代の雌集団におけるr‘を持つ割合 S f C (1 r ' ) S m Cr' 1 1 K K 2 S m Cr' NSm Cr 2 S f C (1 r ' ) NS f C (1 r ) ここで K = 孫の総個体数(卵の総数) Sm = 卵から成体になるまでの雄の生存率 Sf = 卵から成体になるまでの雌の生存率 C = 卵数 N = rの割合で産む雌数(元の集団中の雌数) Nが十分大きいとき S f C (1 r ' ) 1 S m Cr' Wt K 2 NSm Cr NS f C (1 r ) m' f ' Wt m f r' 1 r' Wt r 1 r ここで, m'= m= f'= f= (1) ( 2) 突然変異体の息子の数 全正常個体が産んだ息子の総数 突然変異体の娘の数 全正常個体が産んだ娘の総数 r' 1 r' Wt r 1 r (2) ESS性比を求めるには,以下の式を満たすr‘を求める。 Wt 0, r ' r' r 1/r -1/(1-r)= 0 1-r - r = 0 r 0.5 ここで,注意すべきは,性比が1:1であるのは,接合子の 時か,親による世話がある場合はそれが終わった時点で あることである。 その後,性によって生存率が異なり,雌雄が性成熟した 時の性比(実効性比または2次性比という)が大きく変わ る可能性ある。 しかし,そうだとしても,親は性成熟時の雌雄比率の低い 方の性を産みはしない。 というのは,接合子の時点で,その子が,性成熟期まで生 存できるかどうかは分からず,それぞれの子が成体となる 確率、そして成体となった個体の子の数は全て等しいから である。 Wt ' r' r 1 r' 1 r (1 2r ) r (1 r ) r 1 1 r Wt’とr‘は直線関 係にあり,この直 線は(r,2)を必ず とおる。 r < 0.5のとき,右 肩上がりの直線と なり,r‘値が高い ほどよい。 r > 0.5のとき, 右肩下がりの直線 となり,r‘値が低 いほどよい。 通常,ESS性比はm・fの積を最大にするrを求める ことによっても得られる 積定理を利用したエネルギーの最適性配分の解 RqS m R(1 q) S f m f C1 C2 2 R Sm S f C1C2 q(1 q) q=0.5で最大 R=子育てにまわせる全エネルギー資源 q=全エンルギーRのうち雄にまわす割合 C1=1雄の子育てに必要なエネルギー C2=1雌の子育てに必要なエネルギー 子を産んだ直後の性比(雄率r) (一次性比と呼ばれる)は, rC1 = (1-r)C2 (雄と雌にかけるエネルギーが同じ) よりr = C2/(C1+C2)となる。 またはr/(1-r) = C2/C1 C1=1雄の子育てに必要なエネルギー C2=1雌の子育てに必要なエネルギー オスの割合 合っていない 合っていない 演習9(6点) 式6.1において,K = 10000, Sm = 0.9, Sf = 0.7, C = 200, N = 10000, r = 0.5とおき, r’が0.3, 0.4, 0.5, 0.55, 0.6, 0.7のときの,Wtの値を計算 せよ。小数第8位まで求めよ。締め切りは1週間後。 送り先は,[email protected]です。 S f C (1 r ' ) S m Cr' 1 1 K K 2 S m Cr' NSm Cr 2 S f C (1 r ' ) NS f C (1 r ) 異なる環境に対する適応度の変化の程度が性によって異なる場合 各環境の頻度 異なる環境(場所)に,それぞれ,どの割合でオス メスを産むべきか? 環境のよさ a.ESS 寄主などの大きさ,子の養育に向いた環境の程度をx(不連続変 数)とし,その頻度分布をg(x)で表す。そして,それらの環境に はランダムに遭遇し,必ず産卵する(あるいは,g(x)は産卵した 環境の頻度分布としてもよい)。xの環境下で育った場合, 雄は 交尾能力(生涯交尾回数)*(成体になるまでの生存率) で決まる相対適応度W1(x), 雌は (生涯産卵数)*(成体になるまでの生存率) で決まる相対適応度W2(x)実現できるとする。xの環境下での性比 をr(x)とおき,r(x)のESSを求める。それは,積定理を利用して, 次式を最大にするr(x)である。 m f x g ( x ) W1 ( x ) r ( x ) x g ( x ) W 2 ( x ) (1 r ( x )) , 0 r ( x ) 1. m f x g ( x ) W1 ( x ) r ( x ) x g ( x ) W 2 ( x ) (1 r ( x )) , 0 r ( x ) 1. m,fはそれぞれ,孫世代における雄,雌の卵数。 w2(x)/w1(x)が単調に増加(減少)するとき,これは簡単な解を与 える。ESSは,あるxの値(x‘)までは全て雄(雌)を産み,こ れをすぎると全て雌(雄)産むことである。x’においては,ある 定まった比率で雄を産むべきである 。 x'は,g(x),W1(x), W2(x)によって異なる。 b.大きい寄主には雌を産む(Charnovの寄主質モデル) × セグロカマバチ 1 Proportion males セグロカマバチ 0.75 0.5 0.25 0 4.1 4.2 4.3 5.1 Host instar 5.2 5.3 性は,絶対的な寄主の大きさでなく,寄主集団中の相対的な大きさで決まる. b, 1 タ イプ を 連続 供与 a, c: 大ま たは小と ペ アにし て交互に連続 供与。 a, 小と ペア ; c , 大と ペア c.社会順位の高い雌あるいは生理状態の良い雌は雄を産む 子の繁殖成功度 ア カ シ カ 母シカの順位 子におけるオスの割合 Local Mate Competition 理論 子の交配が,親が子を産んだパッチ内でのみ起こるなら, そのパッチで産むメス数が少ないときは,オス間の競争を 減らしてメスを多く産む戦略がESSとなる。 親メス1頭の場合は,1頭のオスとそれ以外はすべてメスを 産むのが一番よい(近親交配すると仮定)。 昆虫(特に寄生蜂,イチジクコバチ),ダニで多く見られる 。 寄生蜂においては,多寄生者あるいは,単寄生者でも寄主がかたまって存在して いる場合に見られる LMCがあるときのESS性比 rの性比を持つ集団の中にr'の性比を作る雌が突然変異で 生じたと考える。r'の性比を引き起こす遺伝子が広まっ ていくかどうか考える。 集団がn頭から構成され,各雌がb頭の子供を産むとす る。 Wt (r’を持つ孫を産む次世代雌の数) = r’ 遺伝子を持つ娘の数 + r' 遺伝子を持つ息子と交尾した次世代雌の個体数 r' b Wt b(1 r ' ) b(1 r ' ) ( n 1)(1 r )b r ' b ( n 1) rb 集団が生み出す次世代のメス総数 Wt r’をもったオスの割合 0, r r' r ' r' = (n-1)/(2n) このESSは,兄妹交配が起こると仮定したが,それが避 けられるとすると r' = (n-2)/(2n-3),(n>1) この場合も,LMCの影響を受ける 寄生蜂で,LMCを示す種は,兄妹交配をしても 二倍体オスが出ない。近交弱勢がない。 イヌビワと イヌビワコバチ の真性相利 共生 イヌビワコバチ ♂
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