母音[i]のF1, F2平均値の分析 大学生40名(男性15名、女性25名)を対象に、 日本語の母音[i]の第1フォルマント(F1)と第2 フォルマント(F2)を測定したところ、男性と女性 の平均値は以下のようになった。性別によって 平均値が有意に異なるかどうかを、t検定を用 いて分析した。 F1 F2 男性 (n=15) 女性 (n=25) 男性 (n=15) 女性 (n=25) 303 370 2256 2757 図1 母音[i]の性別のF1, F2平均 3000 2756.6 2500 2256.3 2000 1500 1000 500 303.2 369.8 男性(n=15) 女性(n=25) 0 F1 男性(n=15) 女性(n=25) F2 性別と第1フォルマントの平均値 はじめに、男女2群の母分散が等しいかどう かを検定した。F検定の結果、有意ではなかっ た(F=2.17, df1=24, df2=14, p=.134)。 そこで、等分散を仮定したt検定を用いて、2群 の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意であった(t=2.90, df=38, p=.006)。 すなわち、母音[i]の第1フォルマントに関して は、女性の方が男性よりも有意に高いと言え る。 性別と第2フォルマントの平均値 はじめに、男女2群の母分散が等しいかどう かを検定した。F検定の結果、有意ではなかっ た(F=2.77, df1=24, df2=14, p=.052)。 そこで、等分散を仮定したt検定を用いて、2群 の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意であった(t=4.52, df=38, p<.001)。 すなわち、女性の方が男性よりも母音[i]の第 2フォルマントの値が有意に高いと言える。 身長2群とフォルマントの平均値 大学生40名の平均身長は162.9センチであっ た。そこで、平均身長との比較により「身長の高 い」群と「身長の低い群」の2グループを設定し、 グループごとに母音[i]のF1, F2の平均値を求め たところ、以下のような結果を得た。 F1 F2 身長低い 身長高い 身長低い 身長高い (n=19) (n=21) (n=19) (n=21) 362 330 2731 2422 図2 身長グループごとのF1, F2平均値の比較 3000 375 2800 361.5 2731.4 2600 350 329.8 325 2422 2400 2200 300 低い(n=19) 高い(n=21) F1 2000 低い(n=19) 高い(n=21) F2 身長と第1フォルマントの平均値 はじめに、身長別2群の母分散が等しいかど うかを検定した。F検定の結果、有意ではなかっ た(F=0.96, df1=18, df2=20, p=.935)。 そこで、等分散を仮定したt検定を用いて、2群 の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意でなかった(t=1.32, df=38, p<.20)。 すなわち、身長によって母音[i]の第1フォルマ ントの値が有意に異なるとは言えない。 身長と第2フォルマントの平均値 はじめに、身長別2群の母分散が等しいかど うかを検定した。F検定の結果、有意ではなかっ た(F=1.71, df1=18, df2=20, p=.246)。 そこで、等分散を仮定したt検定を用いて、2群 の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意であった(t=2.51, df=38, p=.016)。 すなわち、身長の低いグループの母音[i]の第 1フォルマントの値が身長の高いグループよりも 有意に高いと言える。 母音[e]のF1, F2平均値の分析 大学生40名(男性15名、女性25名)を対象に、 日本語の母音[e]の第1フォルマント(F1)と第2 フォルマント(F2)を測定したところ、男性と女性 の平均値は以下のようになった。性別によって 平均値が有意に異なるかどうかを、t検定を用 いて分析した。 F1 F2 男性 (n=15) 女性 (n=25) 男性 (n=15) 女性 (n=25) 481 590 2,090 2,426 図3 母音[e]の性別のF1, F2平均 700 589.7 600 500 2500 2425.6 2400 480.9 2300 400 300 2200 200 2100 100 2000 0 1900 男性(n=15) 女性(n=25) F1 2089.9 男性(n=15) 女性(n=25) F2 母音[e]の第1フォルマントの性別平均値 はじめに、男女2群の母分散が等しいかどう かを検定した。F検定の結果、有意ではなかっ た(F=2.14, df1=24, df2=14, p=.141)。 そこで、等分散を仮定したt検定を用いて、2群 の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意であった(t=4.47, df=38, p<.001)。 すなわち、母音[e]の第1フォルマントに関して は、女性の方が男性よりも有意に高いと言え る。 母音[e]の第2フォルマントの性別平均値 はじめに、男女2群の母分散が等しいかどう かを検定した。F検定の結果、有意であった (F=4.51, df1=24, df2=14, p=.005)。 そこで、等分散を仮定しないt検定を用いて、2 群の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意であった(t=4.91, df=38, p<.001)。 すなわち、女性の方が男性よりも母音[e]の第 2フォルマントの値が有意に高いと言える。 身長2群とフォルマントの平均値 大学生40名の平均身長は162.9センチであっ た。そこで、平均身長との比較により「身長の高 い」群と「身長の低い群」の2グループを設定し、 グループごとに母音[e]のF1, F2の平均値を求め たところ、以下のような結果を得た。 F1 F2 身長低い 身長高い 身長低い 身長高い (n=19) (n=21) (n=19) (n=21) 573 527 2,424 2,186 図4 母音[e]のF1, F2の身長群別平均 580 2500 573 2424 570 2400 560 550 2300 540 527 530 520 2186 2200 2100 510 500 2000 低い 高い F1 低い 高い F2 身長と第1フォルマントの平均値 はじめに、身長別2群の母分散が等しいかど うかを検定した。F検定の結果、有意ではなかっ た(F=0.65, df1=18, df2=20, p=.37)。 そこで、等分散を仮定したt検定を用いて、2群 の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意でなかった(t=1.66, df=38, p=.10)。 すなわち、身長によって母音[e]の第1フォルマ ントの値が有意に異なるとは言えない。 身長と第2フォルマントの平均値 はじめに、身長別2群の母分散が等しいかど うかを検定した。F検定の結果、有意であった (F=3.99, df1=18, df2=20, p=.004)。 そこで、等分散を仮定しないt検定を用いて、2 群の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意でなかった(t=2.03, df=38, p<.053)。 すなわち、身長グループによって母音[e]の第 1フォルマントの値が有意に異なるとは言えな い。 母音[a]のF1, F2平均値の分析 大学生40名(男性15名、女性25名)を対象に、 日本語の母音[a]の第1フォルマント(F1)と第2 フォルマント(F2)を測定したところ、男性と女性 の平均値は以下のようになった。性別によって 平均値が有意に異なるかどうかを、t検定を用 いて分析した。 F1 F2 男性 (n=15) 女性 (n=25) 男性 (n=15) 女性 (n=25) 724 803 1,294 1,480 図5 母音[a]の性別のF1, F2平均 1600 900 1480 1500 803 800 1400 1300 724 700 1294 1200 1100 600 男性(n=15) 女性(n=25) F1 1000 男性(n=15) 女性(n=25) F2 女性が79Hz高い 女性が186Hz高い 母音[a]の第1フォルマントの性別平均値 はじめに、男女2群の母分散が等しいかどう かを検定した。F検定の結果、有意であった (F=3.57, df1=24, df2=14, p=.016)。 そこで、等分散を仮定しないt検定を用いて、2 群の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意であった(t=2.60, df=38, p=.013)。 すなわち、女性の方が男性よりも母音[a]の第 1フォルマントの値が有意に高いと言える 母音[a]の第2フォルマントの性別平均値 はじめに、男女2群の母分散が等しいかどう かを検定した。F検定の結果、有意であった (F=3.10, df1=24, df2=14, p=.028)。 そこで、等分散を仮定しないt検定を用いて、2 群の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意ではなかった(t=1.52, df=38, p=.14)。 すなわち、女性の方が男性よりも母音[a]の第 2フォルマントの値が有意に高いと言える。 身長2群とフォルマントの平均値 大学生40名の平均身長は162.9センチであっ た。そこで、平均身長との比較により「身長の高 い」群と「身長の低い群」の2グループを設定し、 グループごとに母音[a]のF1, F2の平均値を求め たところ、以下のような結果を得た。 F1 F2 身長低い 身長高い 身長低い 身長高い (n=19) (n=21) (n=19) (n=21) 795 754 1,524 1,307 図6 母音[a]のF1, F2の身長群別平均 800 1600 795 1524 780 1500 760 754 1400 740 1307 1300 720 700 低い(n=19) 高い(N=21) F1 1200 低い(n=19) 高い(N=21) F2 低身長グループが41Hz高い 低身長グループが217Hz高い 身長と第1フォルマントの平均値 はじめに、身長別2群の母分散が等しいかど うかを検定した。F検定の結果、有意であった (F=3.46, df1=18, df2=20, p=.009)。 そこで、等分散を仮定しないt検定を用いて、2 群の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意でなかった(t=1.14, df=27.0, p=.266)。 したがって、身長によって母音[a]の第1フォル マントの値が有意に異なるとは言えない。 身長と第1フォルマントの平均値 はじめに、身長別2群の母分散が等しいかど うかを検定した。F検定の結果、有意であった (F=5.10, df1=18, df2=20, p=.0007)。 そこで、等分散を仮定しないt検定を用いて、2 群の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意でなかった(t=1.57, df=24.3, p=.13)。 すなわち、身長によって母音[a]の第2フォルマ ントの値が有意に異なるとは言えない。 母音[o]のF1, F2平均値の分析 大学生40名(男性15名、女性25名)を対象に、 日本語の母音[o]の第1フォルマント(F1)と第2 フォルマント(F2)を測定したところ、男性と女性 の平均値は以下のようになった。性別によって 平均値が有意に異なるかどうかを、t検定を用 いて分析した。 F1 F2 男性 (n=15) 女性 (n=25) 男性 (n=15) 女性 (n=25) 505 492 1,136 1,060 図7 母音[o]の性別のF1, F2平均 1,200 510 505 1,150 1,136 500 492 1,100 1,060 490 1,050 1,000 480 男性(n=15) 女性(n=25) F1 男性が13Hz高い 男性(n=15) 女性(n=25) F2 男性が76Hz高い 母音[o]の第1フォルマントの性別平均値 はじめに、男女2群の母分散が等しいかどう かを検定した。F検定の結果、有意でなかった (F=0.71, df1=24, df2=14, p=.44)。 そこで、等分散を仮定するt検定を用いて、2 群の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意であった(t=-0.53, df=38, p=.60)。 すなわち、性別によって母音[o]の第1フォルマ ントの値が有意に異なるとは言えない。 母音[o]の第2フォルマントの性別平均値 はじめに、男女2群の母分散が等しいかどう かを検定した。F検定の結果、有意でなかった (F=0.42, df1=24, df2=14, p=.060)。 そこで、等分散を仮定するt検定を用いて、2 群の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意ではなかった(t=-0.41, df=38, p=.69)。 すなわち、性別によって母音[o]の第2フォルマ ントの値が有意に異なるとは言えない。 身長2群とフォルマントの平均値 大学生40名の平均身長は162.9センチであっ た。そこで、平均身長との比較により「身長の高 い」群と「身長の低い群」の2グループを設定し、 グループごとに母音[o]のF1, F2の平均値を求 めたところ、以下のような結果を得た。 F1 F2 身長低い 身長高い 身長低い 身長高い (n=19) (n=21) (n=19) (n=21) 479 513 1,098 1,079 図8 母音[o]のF1, F2の身長群別平均 520 513 1,100 1,098 510 1,079 1,075 500 490 480 1,050 479 1,025 470 1,000 460 低い(n=19) 高い(n=21) F1 低い(n=19) 高い(n=21) F2 高身長グループが34Hz高い 低身長グループが19Hz高い 身長と第1フォルマントの平均値 はじめに、身長別2群の母分散が等しいかど うかを検定した。F検定の結果、有意でなかった (F=0.73, df1=18, df2=20, p=.507)。 そこで、等分散を仮定したt検定を用いて、2群 の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意でなかった(t=-1.46, df=38, p=.15)。 したがって、身長によって母音[o]の第1フォル マントの値が有意に異なるとは言えない。 身長と第1フォルマントの平均値 はじめに、身長別2群の母分散が等しいかど うかを検定した。F検定の結果、有意ではなかっ た(F=0.73, df1=18, df2=20, p=.50)。 そこで、等分散を仮定したt検定を用いて、2群 の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意でなかった(t=0.103, df=38, p=.92)。 すなわち、身長によって母音[o]の第2フォルマ ントの値が有意に異なるとは言えない。 F2のはずれ値の存在が性別平均値に影響 母音[u]のF1, F2平均値の分析 大学生40名(男性15名、女性25名)を対象に、 日本語の母音[u]の第1フォルマント(F1)と第2 フォルマント(F2)を測定したところ、男性と女性 の平均値は以下のようになった。性別によって 平均値が有意に異なるかどうかを、t検定を用 いて分析した。 F1 F2 男性 (n=15) 女性 (n=25) 男性 (n=15) 女性 (n=25) 361 428 1,458 1,579 図10 母音[u]の性別のF1, F2平均 500 1,600 450 428 400 1,500 1,579 1,458 1,400 361 350 1,300 300 1,200 男性(n=15) 女性(n=25) F1 女性が67Hz高い 男性(n=15) 女性(n=25) F2 女性が119Hz高い 母音[u]の第1フォルマントの性別平均値 はじめに、男女2群の母分散が等しいかどう かを検定した。F検定の結果、有意でなかった (F=0.49, df1=24, df2=14, p=.12)。 そこで、等分散を仮定するt検定を用いて、2 群の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意であった(t=2.10, df=38, p=.042)。 すなわち、女性は男性よりも母音[u]の第1フォ ルマントの値が有意に高いと言える。 母音[u]の第2フォルマントの性別平均値 はじめに、男女2群の母分散が等しいかどう かを検定した。F検定の結果、有意でなかった (F=0.87, df1=24, df2=14, p=.74)。 そこで、等分散を仮定するt検定を用いて、2 群の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意ではなかった(t=1.20, df=38, p=.24)。 すなわち、性別によって母音[u]の第2フォルマ ントの値が有意に異なるとは言えない。 身長2群とフォルマントの平均値 大学生40名の平均身長は162.9センチであっ た。そこで、平均身長との比較により「身長の高 い」群と「身長の低い群」の2グループを設定し、 グループごとに母音[u]のF1, F2の平均値を求 めたところ、以下のような結果を得た。 F1 F2 身長低い 身長高い 身長低い 身長高い (n=19) (n=21) (n=19) (n=21) 422 386 1,599 1,474 図11 母音[o]のF1, F2の身長群別平均 450 430 1,700 422 1,600 1,599 410 1,500 1,474 386 390 370 1,400 350 1,300 低い(n=19) 高い(n=21) F1 低い(n=19) 高い(n=21) F2 低身長グループが36Hz高い 低身長グループが125Hz高い 身長と第1フォルマントの平均値 はじめに、身長別2群の母分散が等しいかど うかを検定した。F検定の結果、有意でなかった (F=0.68, df1=18, df2=20, p=.41)。 そこで、等分散を仮定したt検定を用いて、2群 の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意でなかった(t=1.09, df=38, p=.28)。 したがって、身長によって母音[u]の第1フォル マントの値が有意に異なるとは言えない。 身長と第1フォルマントの平均値 はじめに、身長別2群の母分散が等しいかど うかを検定した。F検定の結果、有意ではなかっ た(F=1.26, df1=18, df2=20, p=.62)。 そこで、等分散を仮定したt検定を用いて、2群 の平均が等しいかどうかの検定を行ったとこ ろ、有意でなかった(t=1.27, df=38, p=.21)。 すなわち、身長によって母音[u]の第2フォルマ ントの値が有意に異なるとは言えない。 F1平均値の性別比較のまとめ 母音 男性 女性 P値 判断 i 303 370 0.006 男性<女性 e 481 590 <0.001 男性<女性 a 724 803 0.013 男性<女性 o 505 492 0.60 有意差なし u 361 428 0.042 男性<女性 ※F1は高母音(狭めが強い)ほど低くなる。 F2平均値の性別比較のまとめ 母音 男性 女性 P値 判断 i 2,256 2,757 <0.001 男性<女性 e 2,090 2,426 <0.001 男性<女性 a 1,294 1,480 0.14 有意差なし o 1,136 1,060 0.69 有意差なし u 1,458 1,579 0.24 有意差なし ※F2は前舌母音ほど高くなる。後舌母音は共鳴空間が長く、周波数が 母音フォルマント値と性別 各母音のF1、F2の平均値を性別で比較すると、 「女性>男性」の傾向があると言える。 なぜだろうか? F1平均値の身長別比較のまとめ 母音 低い 高い P値 判断 i 362 330 0.10 有意差なし e 573 527 0.10 有意差なし a 795 754 0.27 有意差なし o 479 513 0.15 有意差なし u 422 386 0.28 有意差なし 基本的に、低身長Gの方が低いF1値が観測されるが、 有意な差ではない。 F2平均値の身長別比較のまとめ 母音 低い 高い P値 判断 i 2,731 2,422 0.16 有意差なし e 2,424 2,186 0.053 低い>高い a 1,524 1,307 0.13 有意差なし o 1,098 1,079 0.92 有意差なし u 1,599 1,474 0.21 有意差なし 低身長グループの方が高いF2値が観測されるが、 [e]のみで有意である。(標本数が多ければ有意差を期待できる) 母音フォルマント値と身長(体格)要因 各母音のF1、F2の平均値を身長要因で比較す ると、 「低身長>高身長」の傾向が示唆される。 なぜだろうか?
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