介護保険サービスの 地域間格差是正 問題意識① 問題意識② 問題意識③ 高齢化が進行し、介護サービス に対する需要が高い地域におい て、保険料が安いのは何故か? ⇒サービス供給不足 先行研究① 介護保険サービスと介護保険料の 地域間格差を研究した論文として、 安藤(2008)がある。この論文では、 全国規模の保険者データを用いた回 帰分析によって、保険給付水準に影 響を与える要因を分析している。 (出所)介護給付水準と介護保険料の地域差の実証分析 -保険者データを用いた分析 先行研究② ≪説明変数≫ 1.Income⇒所得水準 2.Needs⇒介護ニーズ 3.Family⇒家族の介護力 4.Access⇒介護サービスへのアクセスの しやすさ 5.District⇒その他の地域特性 6.Supply⇒供給要因 (出所)介護給付水準と介護保険料の地域差の実証分析 -保険者データを用いた分析 先行研究③ 介護保険料に影響を与える、地 域の所得水準や県レベルの施設 定員率、保険者の裁量的な抑制 や調整の対象とはなりにくい。 ⇒「受益者負担の原則」の意図 に反する。 (出所)介護給付水準と介護保険料の地域差の実証分析 -保険者データを用いた分析 テーマ① 介護保険においては、市町村による財 政規律を与えるために、市町村を保険 者としてきた。 しかし、所得水準や高齢化率という保 険者の裁量ではどうにもならない要因 が大きい。 ⇒地方では準市場が成立せず、結果的に地 方から都市への資本流入が起こっている のではないか?? テーマ② 提案① 保険者+要介護認定:市町村 準市場整備:国 提案② 保険者:国 要介護認定:市町村 準市場整備:国 Le grand 準市場5つの成功条件 ・市場構造⇒供給主体間の競争や新規参入策・退 出防止策 ・情報の非対称性⇒費用、質についての情報が必 要 ・取引コスト⇒不測の事態や処理の遅延・損害に 対するコスト ・動機付け⇒供給者が利潤動機、購入者は利用者 の福祉追求という動機をもつことが 必要 ・クリームスキミング⇒「いいとこ取り」を防止 (出所)社会保障の行政管理と『準市場』の課題 市場構造の論点① どういった供給主体を参加させるか、 どういった競争状態をつくるかという論点 ⇒日本の福祉サービスは様々な性格を持つ 供給主体によって、一定の競争状態のも とで運営されるようになったが、供給主 体への法的規制・補助金・税制優遇措置 などの政府関与は大きく異なっている。 ⇒イコール・フッティング論 (出所)社会保障の行政管理と『準市場』の課題 イコール・フッティング論① 営利法人等に参入できないサービスが あること(参入規制)、営利法人等に 参入が認められたにも関わらず社会福 祉法人と比較して補助金や税制優遇措 置に大きな差があること、などに対す る批判。 (出所)社会保障の行政管理と『準市場』の課題 イコール・フッティング論② (出所)社会保障の行政管理と『準市場』の課題 社会福祉法人の公益性① ①支払能力が低い者を排除しない ・特養における利用者の所得区分 ・介護保険、障害者自立支援法におけ る利用料の減免措置 ・僻地でのサービス提供 ②労力・コストがかかる者を排除しな いこと ③制度外のニーズに対応すること (出所)社会保障の行政管理と『準市場』の課題 社会福祉法人の公益性② 佐々:開設主体ではなく、機能によって診療 報酬で足りない部分は補填していける 制度になると非常にいいと感じます。 小山田:公は民でできない部分、欠けている が必要な部分を行うのが原則です。 公と同じようにやってくれる民には、 公と同じように補助金を出すべきで す。 (出所)医療における公正な競争とはどうあるべきか 市場構造の論点② 強い規制と財政措置による社会 福祉法人の存在は、比較的弱い 規制と財政措置による営利法 人・NPO法人で代替可能?不 可能?? (出所)社会保障の行政管理と『準市場』の課題 介護保険指定事業者の母体の地域差 (出所)介護保険制度の総合的研究 地域別の介護供給主体 二木(2007) 東京都区部・大阪市内⇒営利企業の「連携」 …土地という制約 都市部⇒私的医療機関の「複合体」 …取引コストの減少 …医療の出口に福祉の入り口がある 地方⇒社会福祉法人 …営利企業も私的医療機関も参入しない (出所)介護保険制度の総合的研究 介護保険の市場構造 介護市場においては、営利企業、私的医療 機関による「クリームスキミング」が発 生していると考えられる。 ⇒クリームスキミングの要因 ⇒クリームスキミングの解決策 Le grand 準市場5つの成功条件 ・市場構造⇒供給主体間の競争や新規参入策・退 出防止策 ・情報の非対称性⇒費用、質についての情報が必 要 ・取引コスト⇒不測の事態や処理の遅延・損害に 対するコスト ・動機付け⇒供給者が利潤動機、購入者は利用者 の福祉追求という動機をもつことが 必要 ・クリームスキミング⇒「いいとこ取り」を防止 (出所)社会保障の行政管理と『準市場』の課題 介護保険の意義 「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み」 ⇒自立支援:単に介護を要する高齢者の身の回り の世話をすることを超えて、高齢者の自立を支 援する。 ⇒利用者本位:利用者の選択により、多様な主体 から保健医療サービス、福祉サービスを総合的 に受け入れられる制度 ⇒社会保険方式:給付と負担の関係が明確な社会 保険方式を採用 (出所)介護保険制度の概要 要支援1~要介護1発生率 (出所)介護保険事業状況報告 要介護4~要介護5の発生率 (出所)介護保険事業状況報告 介護予防居宅サービス内訳 (出所)介護給付費実態調査 介護サービス内訳 (出所)介護給付費実態調査 家族構成と軽要介護度の関係 (出所)介護保険論 訪問通所におけるケアマネ誘発需要 湯田(2005)は、two-phase model を用 いて、介護サービス市場における供給者 誘発需要仮説の実証分析を行い、通所介護 のみにおいて誘発需要が生じていることを 確認した。 ⇒何故、通所介護のみ生じたのか? 施設供給不足がもたらす居宅給付費の増大 田近・菊池(2003)は、施設給付費は 施設定員率によって決定されていること、 居宅サービスが施設サービスを代替してい ることを示している。 ⇒過疎化が進行している地方では居宅サー ビスは割高である。 まとめ 介護サービスの地域間格差は ・介護供給主体(高齢者密度・所得水準) ・家族構成(介護のホームヘルパー化) ・施設整備度 により生じていることを検証する。 定期巡回型在宅ケアの推進による介護サー ビスの変化を検証する。 参考文献① ≪参考文献≫ 池田省三(2011)『介護保険論』中央法規 大熊由紀子(2010)『物語 介護保険(上・下)』 児山正史(2004)『準市場の概念』日本行政学会編 坂本 忠次 ・住居 広士(2006)『介護保険の経済と財政』勁草書房 佐藤進(2003)『介護保険運営における自治体の課題』法律文化社 佐橋 克彦(2006)『福祉サービスの準市場化』MINERVA社会福祉叢書 椋野 美智子・田中 耕太郎(2001)『はじめての社会保障』有斐閣アルマ 堤修三(2010)『介護保険の意味論』中央法規 二木立(2007)『介護保険制度の総合的研究』勁草書房 参考文献② 安藤道人(2008)『介護給付水準と介護保険料の地域差の実証 分析-保険者データを用いた分析』 季刊社会保障研究 第44巻 第1号 池田省三(2000)『サブシディアリティ原則と介護保険』 季刊社会保障研究 第36巻 第2号 佐橋克彦(2008)『「準市場」の介護・障害者福祉サービスへ の適用』 季刊社会保障研究 第44巻 第1号 圷洋一(2008)『福祉国家における「社会市場」と「準市 場」』 季刊社会保障研究 第44巻 第1号 狭間直樹(2008)『社会保障の行政管理と「準市場」の課題』 季刊社会保障研究 第44巻 第1号 参考文献③ 田近栄治・菊池潤(2003)『介護保険財政の展開―増大する居 宅介護給付』 季刊社会保障研究 第39巻 第3号 湯田 道生(2005)『介護事業者密度が介護サービス需要に与 える影響』 季刊社会保障研究 第40巻 第4号 冨岡 悟・小山田 惠 ・佐々 英達 ・河北 博文(2004) 『医療における公正な競争とはどうあるべきか 』 病院63巻 2号 参考文献④ ≪参考URL≫ 厚生労働省(2007) 「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指 針」の見直しについて」 (http://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/dl/fukusijinzai_0007.pdf) 厚生労働省(2008)「賃金構造基本統計調査」 (http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/52-22.html) 厚生労働省(2008)「平成20年患者調査」 (http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/08/index.html) 厚生労働省老健局(2003)「高齢者介護研究会報告書」 (http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kentou/15kourei/index.html) 国立社会保障・人口問題研究所(2008) 「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)」 (http://www.ipss.go.jp/pp-pjsetai/j/hpjp2009/gaiyo.pdf)
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