企業の経営者は

企業の仕組み
第13回 企業の社会的責任
来週は学期末試験を行います。
※持ち込みは可ですが、電子機器の使用は禁
止します。
※今回は救済は行わないので、確認テストで40
点以上失った人で試験を受けないでください。
受けなければ評価は無資格(※)としますが、
受けた場合は、DあるいはEを付けます。
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企業(組織)統治の定義
※組織は企業を包括するより広い概念
「企業(組織)統治とは、組織が自らの決定および活動の与え
る影響に責任をもち、 社会的責任 を適切に果たせるよう
に組織全体を統合・管理していくことである。」
※もっとも決定的な要素が(自らの決定と行動に対する)社会的責である。
「社会的責任という文脈で考えたときの組織統治は、組織が行
動するときにしたがうべき中核主題であると同時に、他の中核
主題との関連で社会的に責任ある行動をとるための組織の能
力を高める手段でもあるという特殊な性格をもっている」
企業
責任
社会
(ステークホルダー)
企業は社会(多様なステークホルダー)
に責任があり、それを遂行するための
決定や行動を企業が採用できるような
組織構造を整える必要がある。
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(企業の)社会的責任の定義 (ISO 26000による)
“The responsibility of an organization for the impacts of its
decisions and activities on society and the environment (through
transparent and ethical behavior that contributes to sustainable
development, including health and the welfare of society); takes into
account the expectations of stakeholders; is in compliance with
applicable law and consistent with international norms of
behavior; and is in compliance with applicable law and consistent
with international norms of behavior; and is integrated throughout
the organization and practiced in its relationships.”
(健康と社会の反映を含めた持続的な発展に貢献する透明かつ倫理的
な行動を通じて、)組織の決定及び活動が社会及び環境に及ぼす影
響への組織の責任は、
ステークホルダーの期待(利害)に配慮し、
関連 法令 の遵守および国際行動規範を尊重し、
組織全体で統合され、その組織の中で実践されるものである。
※社会の発展に寄与する責任感を有し、それに沿って組織的に行
動することは、多様な企業の利害関係者にとって有益となる。 3
●多様なステークホルダーへの責任
政府
投資家
(株主)
取引先
債権者
(企業)
従業員
地球
環境
消費者
地域
住民
企業が多様なステークホルダーに対して、
①国内外の法律や行動規範を遵守し、倫理的に行動すること、
②ステークホルダーの利害や人権を尊重すること、
③企業活動の透明性を確保し、 説明責任 を果たすこと、
が求められている。
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社会的責任の基本的要素:企業(組織)統治
ステークホルダー
株主/従業員/地域社会
企業
活動
誰のために企業が活動するのか?
あるいは
誰が企業の所有者(主権者)か?
企業統治:ステークホルダーの利益を
尊重する組織(仕組み)を設計
↓↓ (指示・命令・監督)
マネジメント:効果的・効率的に遂行
多様な社会的責任を遂行
多様なステークホルダーに影響
例えば、人権問題、労働慣行、
環境付加、公正な事業慣行、消
費者課題、コミュニティへの参
画やコミュニティの発展など。
※企業統治がうまく行われて
いる会社は、多様なス
テークホルダーに対する
社会的責任を適切に遂行
している。
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米国型企業統治の特徴
米国型企業統治の典型的な考え方
「企業とは、所有者である株主への 利潤 の分配という
目標をもって、財とサービスの生産および流通に従事して
いる私的に所有されたものである。」(フリードマン)
• フリードマンの主張の根底には、企業は、財やサービスを生
産し、市場に適正な価格で提供することが大前提となってい
る(適切な活動が消費者のためになる)。
• そして、資本主義経済と人間社会の幸福が矛盾するもので
はないとしている。
※株主は、企業活動をチェックし、適正な利潤の分配を受ける。
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米国型企業統治の根拠と問題点
(大企業が生み出した問題)
フリードマンの主張
1. 企業の所有者は株主であり、企業の利潤は株主に帰属す
る。経営者は株主のエージェント(代理人)であり、 株主
の利害に反する経営の権限は与えられていない(他のス
テークホルダーには納税を通して貢献しているので、あまり
考慮しなくて良い)。
2. 企業はステークホルダーと 契約関係 に有る。企業と株
主の間には、株主に利潤を分配するという契約関係が有り、
経営者と従業員には給料、地域社会には納税、取引先や
消費者には(需給によってきまる)価格での売買が該当す
る。
※自発的な契約による調整を尊重(市場の機能による利害
調整が前提)。
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米国型企業統治の問題点
(大企業が生み出した問題)
ジャコビによる大企業の批判
1. 公衆の利害に反する経済力の行使(市場支配)
2. 公衆の利害に反する政治力の行使(ロビー活動)
3. 一部のエリートによる企業支配
4. 労働者や消費者の人間性の軽視(搾取)
5. 環境や生活の質の低下
※企業は株主だけのものではない
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日米の企業統治の違い
隠蔽体質や株主軽視(不正の温床や資産の有効活用軽視)
• 日本型企業統治では、株主を軽視し、従業員を重視した
終身雇用制度(労使協調体制)や年功序列賃金を通して、
長期的 な視点で経営が行われてきた。
• しかし、米国型企業統治では、株主とROEを重視し、株主
の利害に反する行為を防止するための情報開示や監視体
制の メカニズム を強化した。
• 企業には、株主以外にも多様なステークホルダーが存在
し、長期的に彼らへの社会的責任を果たしていくことが求
められている。米国型企業統治が最終形態とは言えない。
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企業の境界の拡大とステークホルダー
小規模企業のステークホルダー
価値連鎖に直結するステークホルダーの優先順位が高い。
債権者
政府
投資家
(所有者)
価値連鎖
(事業直結)
(企業)
取引先
消費者
従業員
地球
環境
地域
住民
※企業規模の巨大化に伴い、影響力が増すので、企業活動
(価値連鎖)の外側のステークホルダーへの配慮が必要になる。
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企業の社会的責任論
フェーズ1:利潤最大化マネジメント
個々人が自らの利益を追求していれば、市場の機能(見えざる
手)によって、公共の利益をも実現する( アダム・スミス )。
競争的市場の規制下で、企業が利潤最大化を目指して行動を
行うことによって、公共の利益も最大化する。
この段階では、
• 消費者は自らの 危険負担 で商品を市場から購入するの
で、経営者は消費者に対して、販売とそれに付随するサービ
ス以外に特別な行動を採る必要が無かった。
• 労働 は、市場で取引される商品と同等に考えられていた。
※経営者は、他のステークホルダーを考慮せずに、
図れば良かった。
利潤最大化
を
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フェーズ2:多様なステークホルダーへの配慮の始まり
• 所有権(株主)の 分散 によって、雇用経営者が経営の主流
になった。それによって、株主の企業の物的財産に対する支配
力が失われ、株主が単なる報酬の受取人になった。その際に、
経営者の 説明責任 (accountability)が重要となった。
• これによって、企業に貢献あるいは影響を及ぼす消費者、従業
員、供給業者、政府などのステークホルダーを認識し、彼らへ
の配慮を行うようになった。
※経営者は所有者の利益と他のステークホルダーの利害をバラ
ンスさせることが重要となった。
その他の
ステーク
株
ホルダー
主
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フェーズ3:社会の利益(生活の質)重視
• 物質的な豊かさの次に、 精神的 な豊かさ(日常生活の満
足感や充足感)が重要な時代になった。
• 企業の雇用経営者も、社会の利害に配慮した意思決定を行う
ことが当然になった。
• 経営者の説明責任は、株主だけでなく、多様なステークホル
ダーに向けてなされるようになった。
• 個人主義よりも集団的参加が組織の成功要因にとして注目さ
れるようになった。
現代企業の社会的課題
社会的制度としての企業と経済的実態としての企業の2面性の両
立が課題となっている。企業の経営者は、単なるヒューマニズム
の観点からでなく、企業の長期的維持・発展のために、両面を調
和させたマネジメントを可能にする企業統治の仕組みを整備しな
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ければならない。
株式会社以外の会社
株式会社と合同会社/合名会社/合資会社の比較
株式会社
合同会社
社員の責任
有限責任社員のみ
債権者保護
債権者の計算書類を閲覧・謄
写権有り(財産の流出防止策)
株主総会
義務
所有と経営 分離(社員≠経
(業務執行)
営者、従業員)
合名会社
合資会社
無限責任社員
のみ
有限・無限社
員混在
無限責任社員から回収(利益
の配当は自由に行える)
不要(取締役や執行役も不要)
原則として、業務執行義務の義務がある。
(社員=経営者あるいは従業員)
持分の譲渡 公開会社と非
全社員の同意が必要(定款変更も全員の同意
が必要)
社員の個性 無関係(株主
強く反映(持分譲渡や定款変更以外の重要事
項の決定には過半数の同意が必要となる。)
公開会社並存
総会で反映)
※株式会社以外は比較的簡単に設立でき、利益の配分などが自由であるが、信
用不足の問題、無限責任問題、全社員の同意の必要な事項などある。
※外国企業は日本国内で合同会社を設立する理由は、少人数の出資者(社員)
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で会社を支配したいからである。
外国会社:外国の法令に準拠して設立された法人その他の
外国の団体であって、会社と同種のもの又は会
社に類似するもの(会社法の第2条)
海外
日本国内
外国の法令
日本の会社法
適 ※財務情報など
• 国内での登記の際には、日
用
の情報開示
準
拠
会社や類
似の法人
ステーク
ホルダー
• 海外の会社は国内での登記
手続きが終わるまで 継続
的に国内での取引はできな
い(利害関係者の保護目的)。
登記
「外国会社」
・継続的取引
・営業所設立
ステークホルダー
本在住の 代表者 が必要。
• 海外の会社が日本国内で登
記をする際に、最も 類似
している会社形態を選択し、
その形態に必要な 内容
を登記しなければならない
(合名会社なら合名会社の内
容;外国会社)。
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出資者
(株主)
まとめ
協力者
(取引先/家
計/市場)
代金
代金
資源調達
(人材・材料等)
会社
顧客
販売網を整備)
(消費者や
利用者)
財やサー
(加工し、流通 ビス提供
会社に必要なものは資源(人、モノ、金、情報)+仕組み
株主総会
選任
解任
選任
解任
報
告
取締役
(取締役会)
選定・解職
代表取締役
監
査
報
告
監査機関
日常業務の監督と執行
従業員 (業務遂行)
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