メディア社会文化論 2010/02/127 日本の新聞社① • 全国紙 3大紙 朝日、毎日、読売 他にサンケイ、日本経済新聞 • 地方紙 各県紙 • ブロック紙 西日本新聞、中日新聞、等々 日本の新聞社② • スポーツ紙・・・日刊スポーツ(朝日系列)、ス ポーツニッポン(毎日系列)、報知新聞(読売 系列)、サンケイスポーツ(サンケイ系列)、東 京中日スポーツ(中日新聞系列) • 新聞社系以外のスポーツ紙・・・デイリース ポーツ(阪神専門?)、東京スポーツ(虚報と プロレス) 日本の新聞社③ • タブロイド紙・・・日刊ゲンダイ(講談社系列)、 夕刊フジ(サンケイ新聞系列) • 日本の新聞の特質は全国紙が強い。宅配制 度によって一般紙は駅やスタンド売りへの依 存度が低い。 • 日経、スポーツ紙、タブロイド紙は駅のキオス クでの依存が大きい(家で読めない記事 も?!!Cf.「グリーン報知」) 日本の新聞の不偏不党性(1/3) • 不偏不党性=公平中立性 • 日本の新聞社(一般紙)の特質 • ただし法的義務ではない(cf放送局は義務) • スポーツ紙は不偏不党ではない • 読売巨人軍の御用新聞「報知」 • なぜか虎が吠えたときのみ虎が一面の「デイ リー」 日本の新聞の不偏不党性(2/3) • 不偏不党性とはいうものの • 新聞社の「色」はある(2ちゃんで叩かれる) • 「朝日」左・赤、「読売」右、「サンケイ」極右、 「毎日」中道左派 • この色は上層部から若手まで(というか今で は上層部の方が著しい) 日本の新聞の不偏不党性(3/3) • ただしこれは賞品としての棲み分けの「色」 • 他と差別化するため • 資本の原理での「色」 • 系列会社の色は違う 系列会社の色の違い • 「読売」が子会社化した中央公論社の雑誌 『中央公論』は、そもそもは吉野作造、丸山真 男といった「左」の東大教授が書いた雑誌(親 -右が子-左の出版社を買い取る) • 左の「朝日」の子会社「テレ朝」は右(親-左 が子-右のテレビ局を買い取る) テレ朝問題(1/3) • 「石原軍団」に恩義のある「テレ朝」・・・石原 慎太郎(元自民党青嵐会)と石原裕次郎の持 ちつ持たれつの関係 • 慎太郎の芥川賞受賞作「太陽の季節」(裕次 郎がモデル) • 慎太郎原作の「狂った果実」の映画で裕次郎 主役デビュー(弟の主演を条件に映画化許 可)(端役デビューは「太陽の季節」) • 都知事選に「裕次郎の兄、慎太郎です」という テレ朝問題(2/3) • 赤尾好夫(旺文社創業社長)が、日経、東映 と共に日本教育テレビ(NET)を設立・・・テレ 朝の前進 • 赤尾は文化放送、ニッポン放送も設立(旺文 社ラジオ講座)・・・フジ・サンケイグループ テレ朝問題(3/3) • 2ちゃんねらーは、テレ朝を親会社朝日新聞 と同一視して「サヨ」と称する • しかし上記の経緯から全然色合いは違う。 • マルクスのいう「資本の無方向性」 • あるいはジンメルのいう貨幣の哲学 不偏不党性の問題 • 批判するより透明に事実を伝える媒介者を目 指す • 客観報道→データベース産業としての新聞社 の生き残り・・・日経テレコン、聞蔵 • 調査報道から発表ジャーナリズムへ 発表ジャーナリズム(1/4) ・・・温床「記者クラブ」 • 発表ジャーナリズム・・・企業の広報室等によ るプレスリリースや官庁の「記者クラブ」での 大臣や広報官の発表原稿やリリース資料を そのまま記事にするもの • 右のものを左にするだけ • その意味で出版社が商社的機能を増やして いるのと同様の面も • 記事をほとんど書かずに済む記者 発表ジャーナリズム(2/4) • 発表ジャーナリズムのメリット • 1)報道する側の資源の節約 • 2)歪みのない正確な報道 • 3)重要な情報源と良好な関係を保つことで 今後良い情報を得るルートを確保する • 要するにリリースする会社や官庁にとって、 自分たちの意図を正確に報道して貰える 発表ジャーナリズム(3/4) • デメリット • 1)画一的な報道 • 2)批判精神のなさ・・・メリット2)が「正確な報 道」になるのは、元の情報が正確な場合。 情報源の不正確さの二つの水準 ①意図せずに不正確に ②広い意味で世論操作をしようと不正確に 発表ジャーナリズム(4/4) • メリット「2)歪みのない正確な報道」がたとえ 可能であっても、「発表ジャーナリズム」に 頼っていては、多様な報道は確保されない ←物事は捉える角度によって違って見える。た とえどれほど正確さを競っても、このことだけ は否めない • 3)調査報道に反する 記者クラブ 桂敬一「第6章 メディア産業と組織」竹内郁郎・児島和人・橋元良明編『新版メディア・コミュニ ケーション論Ⅰ』(北樹出版,2005) • 中央官庁や地方の県・市庁、警察などの主要 官庁、大企業や業界団体は、メディアにとっ て重要な取材源だが、それらのどこにも、戦 時中にできた記者クラブがあり、メンバーの 記者が常駐、ニュース・ソースの発表を得て 報道に当たっている。だが、そうしたクラブの 横並び体制が画一的な発表報道や取材源と 情報源の癒着を生み出す傾向のほか、クラ ブの成員でないものに取材を許さない閉鎖性 を伴う・・・(点に問題がある)。 発表ジャーナリズムと効果論(1/2) • 「発表ジャーナリズム」・・・不偏不党性、ただ し色合い(朝日サヨ、サンケイ反動)は違う • 議題設定機能・・・議題を提示することにメ ディアは大きな力、議題の賛否ではなく。 • 新聞の二つの機能に照らすと・・・ 事実報道機能・・・議題設定・・・大きな影響力 論評機能・・・賛否・・・弱い影響力 発表ジャーナリズムと効果論(2/2) • いわば「色合いの違い」は、議題の賛否のレ ベル、抑もマスメディアの効果の及びにくい範 囲 • →効果論の知見から、発表ジャーナリズムは やはり言論の力を殺ぐことに • 官庁や企業は人々を操作できる。 通信社依存(1/2) • 記者クラブとほぼ同じ側面は、通信社依存 • 通信社・・・いわば「新聞紙を印刷しない新聞 社」・・・自前の取材網を使ってニュースの収 集活動を行うが、そこで作られた記事を、自 前の新聞紙に印刷し発行することはなく、か わりに、その記事を、各新聞社に配信するこ とで商売しているニュース企業(後藤将之『メディア 論』1999) 通信社依存(2/2) • 通信社に頼る記事・・・全国紙の場合、海外 のニュースの大半。地方のニュースの一部。 • 地方紙の場合、地元の記事以外のかなりの 部分。 調査報道(1/2) (←発表ジャーナリズムの対概念) • 調査報道・・・ジャーナリストが自分の脚で稼 いで情報を得ていく報道の仕方 • 「コツコツと真相を調べてゆく調査報道は、結 果的によほどの衝撃的なスクープにでもなら ない限り、高い視聴率は望めない。それがス ポンサーに厭われる。ましてや、地道な調査 報道でこそ、その資質が生かせるビデオ・ ジャーナリズム・スタイルの番組作りがスポン サーに支持されるはずもない」(武田徹)。 調査報道(2/2) • 「しかし・・・、こうした状況が健全とは決して言 えないだろう。たしかに視聴者はストレート ニュースをより強く求めている。メディアは透 明な存在になって欲しいと思っている。出来 事と直接向かいあう「幻想」を抱きたがってい る。・・・」 • →透明性の対として調査報道 5.3 日本の新聞社の丸抱え主義と、 二つの機能の関わり • 先にも述べたように、出版社は仕事を分業・ 外注 • 印刷屋・編集(出版屋)・販売(本屋)が比較 的分業されていなかった時代(17-18世紀 頃まで?)→分業・外注化の流れ • 新聞社はこの出版社の流れの逆(最近まで は少なくとも)・・・発表ジャーナリズムは別 自前の記事が多い • 通信社の役割も、発表ジャーナリズムもあ る・・・ • 全国紙の国内記事の紙面のほとんどは自前 • ただし記者が書いた原稿がそのまま載るわ けではない→内部の精査のプロセス • 記者の原稿→各部のデスク(副部長級)、部 長の判断で、修正・差し戻し→ • 整理部(編集作業を行う部局)での合議(見 出しやリード付け、記事の割り振り(価値づ け・序列づけ)、構成の変化) 紙面に載る全てを審査 • 投書でさえ、採用後に改稿されるし、広告内 容に至るまで、掲載可否の判断の対象にな る(後藤将之『メディア論』P.109) • 以上、記事等、紙面に載るものは自分らで チェック • →自己完結的なシステムの一環 自己完結的なシステムを作りたがる 新聞社① • 印刷も自前の印刷所をもつ(出版社が外の印 刷屋に委託するのと対照的) • 「大手の新聞社にとりわけ顕著な特性として、 自前の「取材網」および「印刷工場」所有とい うことがある。これらによって、大手の新聞の 高い独立性が保証されている」(後藤(将) 1999 114) • 販売網も宅配制とそれを支える系列新聞店 のシステム(あとで詳述) 自己完結的なシステムを作りたがる 新聞社② • 新聞社の独立性の保持の必要性・・・日本の場 合は戦時中の反省・・・用紙統制 • 「戦前戦中の新聞統制は、「用紙の統制」という 手段をとおしても行われた。いかに取材ができ、 記事を書くことができても、用紙が入手できなけ れば、そもそも印刷ができない。これはペンを持 つ者にとっては無念の事態であろう。このような 間接的な言論統制によって苦渋をなめた記憶か ら、一見して過剰ともみえるほどの「自社内での 自給自足」体制志向が生まれた」(後藤将之『メ ディア論』)。 自己完結的なシステムを作りたがる 新聞社③ • 事件の発生以外全て、自己完結の環の中と (後藤将之『メディア論』) • しかしそうか? • 事件の発生が自作自演・・・「やらせ」・・・批判 の対象 自己完結的なシステムを作りたがる 新聞社④ • とはいえ新聞社はイベントという意味での事 件を自らつくって来た • 新聞社の事業部 • 昔は博覧会の主催 • 今は美術展、スポーツイベント(選抜高校野 球、高校野球夏の大会、箱根駅伝)の主催 自己完結的なシステムを作りたがる 新聞社⑤ • 野球チームの所有(巨人軍、ドラゴンズ)(昔 オリオンズ) • なぜ新聞社はイベントをしたがるか?・・・ ニュース枯れ対策。ニュースのない時期は新 聞の売れ行きが落ちるとの心配があり、それ が消える・・・いわば高度なやらせ 新聞の宅配制度① • 定期購読契約による宅配制度 • 3大全国紙の売り上げの9割が宅配 • 価格の35%が販売店の収入に。ただし販売店 は厳しいノルマを課せられる→過大な販売促 進(怖いお兄さま)、行き過ぎた景品戦略 新聞の宅配制度② -メリット、デメリット • 買う側のメリット・・・スタンド売りよりも遙かに 割安 • 作る側のメリット・・・売れ残りが少なく、安定し た経営基盤が築ける • 社会の側のメリット・・・新聞がセンセーショナ ルなニュースを無闇に追わなくても済む 新聞の宅配制度② • 社会の側のデメリット・・・新聞社が内容面で 競争をせずに、景品で競争をし、結果的に横 並びの似たような報道内容になる • ←発表ジャーナリズムに依存し、調査報道を しない原因にもなる 自己完結的システムへの評価① • メリット・・・新聞社の自律性の確保、記事の 品質保証(誤報が減るチェック体制) • デメリット・・・横並びの報道 • 新聞の「論評・報道機能」を高めるための自 律性の確保。 • ところが「論評機能」を弱める方向に宅配制 度などは作用 自己完結的システムへの評価② • 新聞社が記事制作よりも、商社的機能を強く 果たすように・・・自己完結的システムを不要 にしていく可能性 • 自前の記事を作らず、他社と記事を融通し合 うように(新聞離れ、ネット依存→特に毎日新 聞)
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