波形整形増幅器 波形整形回路 微分回路 積分回路 2階微分回路

電子回路
放射線計測エレクトロニクスの信号処理の為の
アナログ電子回路の基礎
第十回
村上浩之
Sep. 22. 2010
目次(7)
• 放射線計測回路の構成
– 検出器
– 前置増幅器
– 雑音
• 雑音の数学的な取り扱い
• 雑音源
• 等価雑音電荷
– 波形整形増幅器
–
–
–
–
–
–
• 波形整形回路
• 微分回路
• 積分回路
• 2階微分回路
パルス波高弁別器
マルチレベルパルス波高弁別器
シングルチャネルパルス波高分析器
マルチチャネルパルス波高分析器
電源
出力装置
Sep. 22. 2010
波形整形増幅器の役割
• パイルアップした波形を一つ一つ独立した波形に変換
– 前置増幅器の出力波形は時定数の長い指数関数波形で放射線が
入射する毎に積み重なった(パイルアップ:pileup)状態になっていて
放射線に関する情報は振幅が急激に変化部分に含まれている。この
状態では放射線の一つ一つの情報を取り出すのは困難なので、波
形整形増幅器で放射線の一つ一つの独立した電圧パルス信号に変
換することで一つ一つの放射線に関する情報を取り出すのが容易に
なる。
• 等価雑音電荷の最適化
– 等価雑音電荷の値は波形整形増幅器のインパルス応答の出力信号
波形の形とピークになるまでの時間(ピーキングタイム: peaking
time ) Tp (単極性波形の場合)に依存している。
等価雑音電荷は入力の静電容量 Cd に比例し Tp に反比例する項と
入力に並列に接続されたコンダクタンス・入力の漏れ電流と Tp に比
例する項の二乗平均で表されるので波形整形回路のインパルス応
答波形 、主に Tp は最適化する必要が在る。
Sep. 22. 2010
波形整形回路の役割
• 前置増幅器の出力信号電圧から物理量の抽出
– 前置増幅器の出力波形に含まれる測定目的の物理量を抽出して電
圧パルス信号のピーク値やゼロ交差時間へ変換を行う。
• 検出器の出力信号には入射した放射線に関する様々な情報が含まれている。
主な情報は、エネルギー(検出器でのエネルギー損失)、入射時刻、入射位置、
放射線の粒子識別などがある。これらの取り出せる情報の種類は検出器によっ
て異なっている。
– 前置増幅器の出力信号の立ち上がり部分の波形と振幅にこれらの
情報が含まれている。
• エネルギー、入射位置等の情報は前置増幅器の出力信号の振幅に含まれてい
る。
• 前置増幅器出力信号の立ち上がり部分の波形には粒子の識別、入射位置、深さ
方向の位置、入射角度、入射時刻等。
– これらの情報は検出器の特性で定まり検出器の選択と情報を引き出
す前置増幅器、波形整形回路の選択は目的の情報(物理量)を的確
に得る為には重要になる。
Sep. 22. 2010
微分回路
• 伝送線路を用いた波形整形
– 遅延線路波形整形(delay line shaping )
• 一方の端子を短絡して接地した特性インピーダンス Zo の遅延線路に時刻 t=0 で
Zo の抵抗を通してステップ電圧 Vin を加えると遅延線路端子の電圧 Vo は t=0 の
時は ½ Vin となりこの電圧信号は遅延線路を短絡した端子に向かって伝わってい
く。t=Td で短絡した端子に到達するとインピーダンスが不整合であるために電圧
の極性が逆の信号となって反射されて戻ってくる。この信号は t=2Td で入力端に
到達する。この時入力信号と反射信号の振幅は同じで極性が逆なので入力端の
電圧はゼロになる。入力信号のステップは形は遅延線路の入力端でパルス幅が
2Td のパルス波形に波形整形される。
2Td
Vin
Zo
Vout
特性インピーダンス Zo
遅延時間 Td
Sep. 22. 2010
Vinに加わったステップパルスは
遅延線路を伝わり終端で反射
して逆位相で 2Td 後に入力端
に戻ってくる。 Vout は二つの信
号が合成された波形となる。
微分回路
• CR微分回路
– ステップ波形を時定数CR=τの指数関数で減衰する波形に変換する。
入力信号がステップ関数
Vi (t)  U(t)
C
1
Vi (s) 
s
R

Vi
ラプラス変換すると
Vo
R
sCR 1
Vo (s) 
Vi (s) 
1
1 sCR s
R
sC

1

1
s
CR
ラプラス逆変換すると
Jul..22.2010

Vo (t)  e

t
CR
電荷有感増幅器の出力が指数関数の場合
• 入力信号がステップ関数ではなく時定数 τf の指数関数である場合CR微
分回路の出力信号はアンダーシュートのある指数関数になる。
Vi (t)  e
入力信号が指数関数
CR  
C

Vi
R
Vo

t
f
ラプラス変換すると
Vi (s) 
とすると
1
s 1  f
s
1
Vo (s) 
1 s s  1  f

1
s

 (s  1  )(s  1  f )
ラプラス逆変換すると

Jul..22.2010
  f 1  t 1  
 e  e
Vo (t) 
 f   
f


f



t
アンダーシュート波形
• 前置増幅器出力波形の時定数が10Tのパルスを時定数Tで
微分した波形
Sep. 22. 2010
極とゼロ相殺法
• CR微分回路の入力信号が時定数 τf の指数関数のとき出力
信号はアンダーシュートのある指数関数波形になる。
• 図のようにCに並列に抵抗Rpzcを接続すると分子のゼロと入
力信号の極とが相殺してアンダーシュートのない出力信号と
なる。
入力信号
Vi (s) 
Rpzc
1
s 1  f
Vo (s)  Vi (s) 

Vi
Jul..22.2010
C
R

Vo
R pzc
R pzc
1 sCRpzc
1
CRpzc

R R 1
 R s  pzc
R pzc CR
s
1
CRpzc
1


1
1
s
s
CR
f
Rpzc>>Rならば
s
 f  CRpzc とすると
1
Vo (s) 
s  1 CR

極とゼロ相殺(PZC)回路の波形
• PZCの定数( RpzC )を変えた時の CR 微分回路の出力波形
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積分回路
• RC積分回路
– ステップ波形信号を積分して時定数 RC=τ で立ち上がるステップ波形
に変換する。
入力信号がステップ関数
Vi (t)  U(t)
ラプラス変換すると
1
Vi (s) 
s



1
1

RC s s  1 RC 
ラプラス逆変換すると

Sep. 22. 2010
1 sC
1 1
1
Vout s 
  
R  1 sC s s sRC  1
1
Vout t  
RC 1 et RC 1 et RC
RC
積分パルス波形
• ステップパルスを時定数Tで積分した波形
Sep. 22. 2010
演算増幅器を用いた能動積分回路
Z1  R1
Z2  R2
1
Z3 
sC2
1
Z4 
sC1
e4
 G(s) 
e1
e1 e2  i1Z1
e2  e3  i2Z2

e4
 i2Z 3
K
e2  e4  i4Z 4  (i2  i1)Z 4
e3  i3Z 3 
e4  Ke3
i1 i2  i4  0
Z3
e3  e2
Z2  Z 3
e2  i2(Z2  Z 3)
Jul..22.2010
K

1
R1R2C1C2
 1
1
1 
1
s2  s

 (1 K)


R1C1 R2C1
R2C2  R1R2C1C2
1
K
 R1R2C1C2
(s  x) 2
C  C1  C2
1
R  xR1  R2
x


K 1
K 2
x 1
x 2
K 5
x3
K  10
x4
CR 1階微分・RC N階積分波形整形回路
+1倍
緩衝増幅器
CR微分
1段目
Vi
C
R
R
+1倍
緩衝増幅器
RC積分
1段目
R
C
1
Vi (s) 
s
RC積分
N段目
C
入力信号が
ステップ関数
とすると
ラプラス変換をした
入力信号Viは
全体の伝達
関数G(s)は
 1 N
s
1 RC
1 RC
s
G(s) 


  
s  1 RC s  1 RC
s  
1 RC RC  s  1 RC N 1
Vo s  G(s) Vi

ステップ関数が入力端に
加わった時の出力信号

波形Vo(t)は
Jun.09. 2010
出力信号Voは
Vo
N
t



1
t
Vo t   L1Vo s    e RC
N! RC 
となる。
出力信号波形
• 出力波形が最大になる時間は1階微分ーN階積分の場合はNTとなる。波
形が最大となる時間をTpとすると波形整形回路の時定数はTp/Nとなる。
• 積分階数Nが大きくなると波形はピークに対して対称な波形に近づく。
1  t 
Vo t     e
N! RC 
N
t

RC
Nt



1 Nt
Tp
 
e


N! 
T
 p 
N
但し: T  RC 

Jul..22.2010
Tp
N
N
Vo(Tp)
1
0.368
2
0.271
3
0.224
4
0.198
5
0.175
6
0.161



CR2階微分ーN階積分回路
• CR微分を追加してCR2階微分ーN階積分にすると出力波形は双極性波
形になり N=1 の時は t  2RC でゼロと交差する。
 1 N
s
s
1 RC
1 RC
s2
G(s) 


  
s  1 RCs  1 RC s  1 RC
s  1 RC RC  s  1 RC N 2
 1 N
s
Vo s   
RC  s  1 RC N 2
N  1 の時
t

1   RC
Vo t   1
t t e
 2RC 
Sep. 22. 2010
ゼロ交差時間
• ゼロ交差時間は信号の振幅に依存せずに一定になる。
信号の振幅を0.2から
1.0まで変えた時の出
力波形。
ゼロ交差時間は振幅
に依存せずに一定と
なっている。
Sep. 22. 2010

信号の立ち上がり時定数が異なる場合
• CR-RC波形整形回路(時定数T2 )に立ち上がり時定数 KT2 のステップパル
スを入力した場合
Vo s 
1 KT2
1
1
1
1


s  1 KT2 T2 s  1 T2 2 KT22 s  1 KT2 s  1 T2 2
ラプラス逆変換をすると
K
Vo t  
e
KT2

t
KT2
t

e
1 K T2

t
T2

K
1 K 
K=1の時はCR-RC2 波形整形回路と同じになるので
2
t



1 t
Vo t     e T2
2 T2 

Sep. 22. 2010

2
e
t
T2
信号の立ち上がり時定数のCR-RC 波形の影響
• CR-RC 波形整形回路(時定数 T )に立ち上がり時定数 KT の
ステップパルスを入力した時の出力波形
Sep. 22. 2010
CR2-RC波形整形で立ち上がり時定数が異なる場合
• CR2-RC 波形整形回路(時定数T2 )に立ち上がり時定数 KT2 のステップパ
ルスを入力した場合
1 KT2
1
s
1
s
Vo s 


3
s  1 KT2 T2 s  1 T2  KT22 s  1 KT2 s  1 T2 3
ラプラス逆変換をすると
t
t  
t
2







K
t
1
KT2
T2
T2


Vo t  
e

e


e


3 
 2T 2 K 1 T K 1 2 
K
1
  
 
  2
2

Sep. 22. 2010
K を変えた時の CR2-RC 波形整形回路の出力波形
• 信号波形の立ち上がり時定数を変えた時の CR2-RC 波形整
形回路お出力波形。
– ゼロ交差時間は立ち上がり時定数で移動する。
Sep. 22. 2010
Sep. 22. 2010