地球内部物理化学 2011年度 実験科学としての地球の物質科学を学ぶ。 地球内部の研究方法・高温高圧実験と放射光 1.地球の弾性的性質 2.地球内部の相転移 3.地球物質の流動特性 4.融解・マグマ・地球内部の分別作用 試験:最終回、地球内部物理化学の要点を配布 参考書 共立出版「地球・生命」 大谷・掛川著 はじめに 高温高圧研究の地球惑星科学への適用 はじめに,超高圧研究は地球・惑星を解明するために不可欠な段 1) 地球惑星内部は高温高圧の世界:地球内部の温度と圧力と地球内 部構造 2) 地球惑星形成期の諸過程の解明: マグマオーシャン,核形成,集 積・衝突過程の研究の鍵 3) マントルと核のダイナミクスと進化:核とマントルの熱史 太陽系の惑星と衛星の内部の圧力 水星 330 GPa 地球 月 火星 木星 土星 天王星 海王星 30GPa 360 GPa 5 GPa 40GPa 4740 GPa 2250 GPa 680 GPa 880 GPa 金星 高圧実験技術と放射光 高温高圧の発生技術と放射光 1)放射光とは:高温高圧X線回折法 2)静的圧力発生法:マルチアンビル高圧装置の概要,その応用 例:相境界の決定:相転移のカイネテイックス ダイヤモンドアンビル高圧装置の概要と応用例: レーザーによる高温高圧発生LHDAC:核の研究 3)中性子回折実験と高温高圧発生法:J―PARCの建設 http://prwww.spring8.or.jp/intro_sr/page3_1a.shtml 放射光とその地球科学への応用 (1)放射光とは何か 光速に近い高エネルギーの電子または陽電子が磁場中を通過すると、磁場によって軌道を 曲げられ,そのとき軌道の接線方向に電磁波(光)を出します(図3-1)。この現象をシンクロト ロン放射、このとき放出される電磁波を放射光といいます。放射光はマイクロ波からX線にい たる広い範囲の連続スペクトルを持っており(ただし、後述のアンジュレータと呼ばれる光源 から放出される放射光は準単色で波長可変)、指向性がよく、偏光しています。このため、現 在では真空紫外からX線に至る波長領域の最も優れた光源として、科学技術の広い分野で 用いられるようになっています。 SPring-8 放射光X線と物質との相互作用 非弾性散乱 メスバウア分光 ● X線回折/散乱 X線を結晶に照射すると、ブラッグ条件(図1)が満たされたとき、X線の回折 がおきます(図2)。得られた回折線の位置や強度(回折像)を解析することによっ て、結晶構造に関する 情報が得られます(図3)。結晶構造は物質の性質を決め る最も基本的なものであり、これを知ることが物性理解の最初の重要な課題で す。X線回折法は、新物質創製、タンパク質結晶構造解析などの先端科学分野 における重要な手法となっています。 ● XAFS(X線吸収微細構造) XAFS(ザフス)は、X-ray Absorption Fine Structure(X線吸収微細構造)の略称で、 XANES(X線吸収端近傍構造)とEXAFS(広域X線吸収微細構造)に大別されます。 図1に示すように、X線を物質に照射すると、X線の一部が物質に吸収されます。入射 X線のエネルギーを変化させて、X線の吸収率を測定すると、図2に示すように、ある エネルギーで吸収率が急激に変化する部分があります。この部分を吸収端とよびます 。吸収端近傍の吸収スペクトルはXANESとよばれ、この部分の解析から、物質中の特 定元素の電子構造に関する情報が得られます。また、吸収端から右側の波打ち部分は EXAFSとよばれ、この部分の解析から、測定対象原子(元素)の周囲の構造に関する 情報が得られます。 EXAFSの波打ち現象は、X線を吸収して光電効果を起こした原子から放出される光 電子の波が、隣接する原子からの反射波と干渉することによって生じると考えられて います(図3)。 ● イメージング X線による物体の透視画像は、物体内部のX線の吸収率の違いの結果として得られます(図1の吸収コントラスト法)。 放射光の光源は、通常のレントゲン撮影用X線と異なり平行性が良いため、放射光を利用したX線撮影は、レントゲ ン撮影に比べ、格段に解像度の高い画像が得られます。また、物体とX線検出器との距離を充分長くとり、X線の屈 折の効果を利用することによって、境界が強調された輪郭強調画像が得られます(図1の屈折コントラスト法)。 屈折コントラスト画像は、通常のX線撮影では得ることができません。屈折コントラスト法は、放射光のような極め て平行性(指向性)の良いX線だけに可能な手法です。図2は、厚さ1.0mmのアルミニウム合金円板を、吸収コント ラスト法および屈折コントラスト法で撮影した画像です。 また、放射光X線のマイクロビームを利用すれば、微小物体のX線CT(X線コンピュータ断層撮影)画像が得られま す。図3は、隕石コンドライトに含まれる球状物質コンドリュール(直径1mm程度)のX線CT法による断面像です。 2)静的圧力発生法:マルチアンビル高圧装置の概要,その応用 例:相境界の決定:相転移のカイネテイックス ダイヤモンドアンビル高圧装置の概要と応用例:レーザーによる 高温高圧発生LHDAC:核の研究 3)中性子回折実験と高温高圧発生法:J―PARCの建設 2)静的圧力発生法:マルチアンビル高圧装置の概要,その応用 例:相境界の決定:相転移のカイネテイックス ダイヤモンドアンビル高圧装置の概要と応用例:レーザーによ る高温高圧発生LHDAC:核の研究 SPEED-MkII at Spring-8 SPEED 1500 at Spring-8 MAX-III apparatus installed at PF MAX80 at Photon Factory Ge-SSD white X-ray マルチアンビルプレスの比較 装置名 MAX-III MAX 80 SPEED1500 SPEED Mk-II SMAP I SMAP II 設置場所 PF BL14C2 PF-AR NE5C SPring-8 BL04B1 SPring-8 BL14B1 SPring-8 BL22XU 光源 垂直ウィグラー 偏向電磁石 偏向電磁石 偏向電磁石 アンジュレータ 白色/単色 白色/単色 白色 白色/単色 単色 プレスの 最大荷重 700 ton 300 ton 1500 ton 180 ton 180 ton 大容量セル 可 不可 可 不可 不可 共用or専用 共用 共用 共用 原研 原研 ・大型のマルチアンビルプレスが設置されている ・二段加圧式対応の融体実験・変形実験用大容量セルが使用可能 ・白色X線と単色X線の双方が使用可能 ・イメージングに適した広いビーム これらを満たすのは,PFのBL-14C2+MAX-IIIのみ Sample assembly Starting material powder of natural enstatite, (Mg0.99, Fe0.01)SiO3 Pressure measurement Lattice constant of NaCl (Decker,1971), Au (Anderson et al, 1989) Kinetics of the a-b transformation in Mg2SiO4 Experimental Setup 単色X線エネルギー : 23keV アンビル先端サイズ : 6mm & 4mm Experimental Method Nd:YAG laser High pressure apparatus :Diamond anvil cell Diamond (λ=1.064 μm, heating spot size: 50 μm) Sample (Fe-18 wt.% Si) Gasket Re Pressure medium (Al2O3) Culet size 150, 350 μm High temperature apparatus : Nd:YAG laser (λ=1.064 μm, heating spot size: 50 μm) Diamond Starting material : Fe+MgSiO3 Pressure measurement : Ruby or diamond Raman pressure scale (Mao et al., 1978); mean values before and after heating Temperature measurement : 16 Spectrometric method using radiation Diffraction patterns of Fe-9.8wt%Ni-4wt%Si at 300 K 300K λ=0.4108(1) Å The hcp phase is stable at the pressure of the center of the Earth λ=0.4108(1) Å λ=0.4109(1) Å λ=0.4109(1) Å λ=0.4109(1) Å A diamond anvil compressed at 374 GPa and 300 K Asanuma et al. (2009, AIRAPT) Typical X-ray diffraction profile for Fe-9.8 wt% Ni-4.0 wt% Si under high pressures at ambient temperature 25 2-3. Experimental procedure • 非弾性X線散乱法 BL35XU Optics: Baron et al. (2000) Si (9, 9, 9) and Si(11,11,11) Instrument configuration X-ray beam size 70x70 μm2 30 Inelastic X-ray scattering of Iron and Iron-light element alloys E1 k1 photon E2 k2 photon Sound velocity of Earth materials Ultrasonic Brillouin scattering NRIXS (Nuclear Resonance Inelastic X-ray Scattering) IXS (Inelastic X-ray scattering) phonon Q Energy transfer E1-E2= E ・Fiquet et al. (2001) Fe-Vp to 102 GPa 1-200meV Momentum transfer k1-k2 =Q Sound velocity E Q nm-1 ・Antonangelli et al. (2004) Fe Anisotropy of Vp ・Badro et al. (2007) Fe, FeS, FeSi etc ・Fiquet et al. (2009) Fe3C ・Antonangelli et al. (2010) FeNiSi to 70GPa Baron @BL35XU, Spring-8 28 図7マルチメガバール領域での57Feメスバウアー分光測定 放射光顕微メスバウアー分光に よりP>200 GPa領域でのメス バウアー吸収スペクトルが数 時間で測定可能 1.0 0.1 MPa H = 51.4 T QS = 0.2 mm/s 1.0 H = 51.1 T QS = 0.4 mm/s Mitsui et al. (2007) JJAP, 46, L382. 1.00 1.0 121 GPa QS = 1.1 mm/s 0.9 1.0 0.90 0.80 205 GPa 57Fe O 2 3 0.8 -15 252 GPa E.T. = 2 hr. -10 QS = 1.4 mm/s -5 0 5 Velocity [m m/s] 10 15 252 GPa hcp-Fe 110 Pt 311 0.8 hcp-Fe 102 Pt 220 QS = 1.0 mm/s hcp-Fe 101 91 GPa Pt 111 1.0 hcp-Fe 100 Pt 200 0.8 Relative transmission Relative transmission 43 GPa Intensity [a.u.] 0.8 IS = -0.85 mm/s XRD@SP8 BL10XU 57Fe -10 10 -5 12 14 16 18 20 22 2 [degree] ¹ = 0.41704 Å 0 Velocity [m m/s] 5 24 10 15 核ブラッグ反射を利用した高輝度超単色X線の生成 エネルギー可変の核分光器によるエネルギースキャン エネルギー領域放射光57Feメスバウアー分光法の原理 Ie 放射光 自然幅 14.4 keV V Ig 反強磁性体 57FeBO 単結晶 3 Energy ΔE~neV @ ~ Neel temp. External magnetic field 電子禁制・57Fe-核共鳴散乱が許 容なブラッグ反射による超単色 X線の生成 Smirnov et al. (1997) Phys. Rev. B 55, 5811.Mitsui et al. (2007) Jpn. J. Appl. Phys. 46, L821. 放射光 試料 エネルギー可変の核 モノクロメーターによる エネルギースキャン Mitsui et al. (2007) JJAP, 46, L930. ✓顕微メスバウアー分光測定が可能な装置・技術が整備済 ➡アンジュレータ・ニ結晶分光器・X線集光光学系 ✓XRDとMSの装置が干渉しない ✓X線集光光学系により10–30 min.で測定可能!? ✓BL10XU既存の測定技術・装置が使用できる ➡冷凍機,加熱システム,ラマン散乱システム etc. BL10XUでの高圧XRD・エネルギー領域放射光 57Fe-MS同時測定 世界で唯一のビームライン NMC @BL10XU 0.004˚ (0.06 mrad, 13 arcs) 放射光 SU8-CRL 0.01˚ (0.2 mrad, 38 arcs) 二結晶分光器 アンジュレータ X線集光光学系 DAC 14.4 keV (43.2 keV) 検出器 (IP/CCD) GC-CRL 0.001˚ (0.02 mrad, 4 arcs) OUT IN 14.4 keV 高温発生用 赤外レーザー Energy 図4 XRD 高温高圧 57Fe-MS High-pressure Brillouin scattering using DAC Diamond Anvil Cell (DAC) apparatus Ar laser (514.5nm) 6-pass tandem Fabry-Perot interferometer High-pressure Brillouin scattering system A12 高温高圧中性子実験 EGU 2005 Vienna Satellites of Jupitor: Gallian satellite Io Europa Ganimede Ice volcanism in Triton Callisto Neptune Photos by Voyager 2 9 6軸プレス「圧姫」の検収 住友重機械の新居浜工場 Future perspective for Neutron study in J-PARC New system for Neutron studies: DIA type multianvil apparatus in J-PARC; diffraction and imaging in the range exceeding 15 GPa 1. 2. 3. 4. Hydrogen in magma and fluid: structural and radiography studies Hydrogen in minerals and transport of water into the deep mantle Narture of hydrogen bonding of various hydrous silicates and oxides at high pressure and temperature Effect of H in transformation kinetics: Diffraction study
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