野辺山 45 m 電波望遠鏡 45 GHz 帯受信機 (Z45) の アンテナ搭載試験 米倉覚則 (茨城大), 土橋一仁, 下井倉ともみ, 落合哲 (東京学芸大), 中島拓 (名古屋大), 水野 いづみ (鹿児島大/国立天文台) 田中智博, 岡田望, 高津湊, 徳田一起, 長谷川豊, 阿部安宏, 木村公洋, 小川英夫(大阪府立大), 中村文隆, 亀野誠二, 新永浩子, 久野成夫, 高野秀路, 伊王野大介, 川辺良平(国立天文台) 1 要旨 • 我々は野辺山 45 m 電波望遠鏡に搭載する新しい 45 GHz 帯両偏波受信機の 開発を行っている。この受信機の目的は、45 GHz 帯の CCS 分子輝線のゼーマ ン効果の観測により磁場強度を測定し、星形成過程における磁場の役割を明ら かにする事にある。 • 本受信機の野辺山 45 m 電波望遠鏡への搭載試験を 2013年3月31日から6月 10日にかけて行い、下記の結果を得たので報告する。 1) システム雑音温度 (天頂、大気込み) は、43 GHz において晴天時 125 K 程度。 2) 基準となる受信機 (H40) との指向調整 (ビームスクイント調整) 完了 (AZ, EL とも に 3 秒角以内のズレ)。 3) 副鏡焦点位置合わせ完了。 4) ビームサイズ:37 秒角程度。サイドローブレベルはピーク強度の 3 % 以下 (点源 連続波源 3C 279, 3C 84 および SiOメーザー源 R Leo などの観測から算出)。 5) 開口能率は 50 % 程度、主ビーム能率は 58 % 程度である (土星の連続波観測 および上記で求めたビームサイズから算出)。 2 (1) 機器構成 3 (1-1)搭載場所 • 旧系統(H30が設置されていた場所) • ミラーの数が一番少ない 搭載・冷却作業 2013/Mar./25-26 4 (1-2) IF 系ブロック図 5 (1-3) SAM45 との接続 仮設のスイッ チを設置した 2013/Apr./02 6 (1-4) 旧IF系との接続 Z45V Z45H コネクタ背面に入力 EQ CH2 Z45V H30Z45H H40 SELECTOR CH1 1 EQ IN 2 5 3 6 9 #4 #6 MONITOR SELECTOR 7 8 10 11 12 att 4を選択 #5 4 att EQ OUT 5or6を選択 (5を選択するとHをモニタ) (6を選択するとVをモニタ) 1 2 3 4 5 6 7 8 att 15 16 17 CONT BE 9 デジタルボルトメータにつないで、 セレクタで #4, #5, #6 を選択し、 R を見た状態で 0.4 V 以下になるように #4, #5, #6 の att を調整する 10 11 12 #5 13 #6 14 7 (2) 性能評価 • 今回(H25年4-7月)の目標 – 45-m システムに組み込み、データを取得する 8 (2-1) 雑音温度測定 • 受信機雑音温度 (Trx) [hot-cold] 50 – 60 K @ 42-46 GHz (4-8 GHz IF 出力をパワーメータにて測定) (2013/Apr./01 測定) • システム雑音温度 (Tsys*) [R-SKY] – 125 - 150 K (4/2, 4/9) • ライン観測時の qlook 表示値 – H-pol. 180 K, V-pol. 200 K @ 43 GHz (6月9日) – H-pol. 200 K, V-pol. 280 K @ 45 GHz (6月9日) • VLBI BE 32 MHz BW 出力をパワーメータで測定 – (特に V-pol. が高周波側で悪化) 9 (2-2) IF 系レベル調整 • SAM45, VLBI 用 E/O (PolariS へ接続), 旧 IF 系 (連続波 BE へ接続) への入力レベルの適正化を行った (パワー は R 挿入時の値) • 旧 IF 系 EQ selector 前面出力コネクタ部 -47 dBm (Z45) -42 dBm (H40) • SAM45 入力用仮設SW入力部 -28 - -30 dBm (Z45) -35 - -37 dBm (H40) 10 (2-3) ビームスクイント調整 (1) H40 受信機に対する指向調整 1) H40 受信機を用いて pointing error 測定 & 補正 2) Z45 受信機を用いて pointing error (dAZ,dEL) 測定 (補正は行わ ない) 3) (dAZ,dEL) => (dX,dY) [下部機器室の受信機設置位置の座標系]への変換 (dX, dY の座標軸は、下部機器室の通路に対して30度回転している) dX =1.24 ´ éëdAZ ´ cos ( EL + 30) - dEL ´ sin ( EL + 30)ùû dY = -1.24 ´ éëdAZ ´ sin ( EL + 30) + dEL ´ cos ( EL + 30)ùû 1) Z45 受信機を物理的に動かす (dX,dY) 2) 上記 1) から 4) を繰り返す AZ, EL ともに、 3 arcsec 以内のズレに Z45 設置位置を調整した 11 (2013/Apr./02) (2-3) ビームスクイント調整 (2) • Z45 受信機は回転ステージ上に搭載されているため、「回転 軸」と「受信機の電波軸」とを、一致させる必要がある。 • 回転ステージを 30 度ずつ回転させながら、pointing error を 測定し、受信機設置位置のズレ量をみつもった(回転軸、電 波軸は、ともに鉛直であると仮定) 測定 (2013/Jun./09) 手順の確認ができた 正確な位置合わせは今年秋以降 の再搭載時に実施 円形の部分が回転する 12 (2-3) ビームスクイント調整 (2) つづき 回転ステージの回転角 13 (2-4) 副鏡焦点位置合わせ • 副鏡位置 (dZ) を -5, 0, +5 mm の3通りに変え て、saturn の十字スキャン観測を行い、強度 を測定。 • 最適位置を算出 • dZ を最適位置付近 (-2, -1, 0 mm)に設定して、 再度十字スキャン観測を行い、強度が最大に なるかを確認 ↓ • dZ = -1 mm が最適位置 • (2013/Jun./09測定) 14 (2-4) 副鏡焦点位置合わせ 15 (2-5) ビームサイズ • 十字スキャン • 連続波@43 GHz • 3C279 • 37 秒角 2013/Jun./09 AZ scan (scan no. 奇数) El scan (scan no. 偶数) 16 (2-6) ビームパターン • 2013/May/05, R Leo, SiO maser OTF • サイドローブレベルは peak 強度の 3 % 以下 • CONTOUR_levels=[1,2,3,5,10,20,30,50,80,90,100] % H 偏波 V 偏波 17 (2-7)主ビーム能率、開口能率 • 観測 (2013/Jun./09) – 連続波@43 GHz – 土星 – 十字スキャン • 結果 – peak 強度〜14 K • 解析 – 視直径 18.4 秒角 – ビームサイズ 36.6 秒角 – 土星の輝度温度 150 K を仮定 • 結論 – 主ビーム能率 = 58 % (参考)S40 (status report 2012-2013) – 開口能率 = 50 % 主ビーム能率 76%、開口能率 56% 18 (3) 問題点 (1) ライン観測時の強度 (Z45+SAM45, H40+SAM45, S40+AC の観測結果を比較) – 点源 (SiO maser) • Z45+SAM45 の強度が他に比べて顕著に強い – 広がった天体 (CCS core) • 有意な違いはみられない (ただし S/N 不足) • (参考)連続波観測時の強度 (Z45+contBE, H40+contBE の観測結果を比較) – 点源 (3C279) • 有意な違いは見られない – 広がった天体(Saturn, Jupiter) • 有意な違いは見られない (2) 高周波側で雑音温度が高い (p9 参照) 19 20 今後 (H26.6くらいまで) の予定 • 改造(7〜9月) – 雑音温度向上 – 周波数特性向上 – アイソレーターを交換する • 再搭載/立ち上げ(9月後半搭載?) – PolariS の立ち上げ – 受信機の性能評価 • 周波数特性 • 出力強度/偏波の安定性 – 偏波校正 – SiO maser の zeeman 効果試験観測 • 強度問題の解明に向けて – 45m搭載後、いろんな組合せで測定する? 21
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